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4thSEASON
危機
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(1)
「すまんかった!俺達も反省している」
渡辺君が立ち上がって頭を下げる。
僕はそんな渡辺君を見ながら食事をしている。
「事情は深雪先輩から聞きました。仕方ないです。俺達も理解はしてます」
真鍋君が言う。
「冬夜君も一言あってもいいんじゃない?」
愛莉が言う。
「別グループを作ったのは俺だ。俺にも責任がある」
誠が謝る。
「まあ、そう仕向けたのは僕だけどね」」
僕が言う。
「片桐先輩から謝罪は無いんですか?」
咲さんが言う。
「とっさの判断だったし説明する暇も余裕もなかった、言い訳にしか過ぎないけど悪いと思ってる」
ただ、そうしないと晶さんの奪還は不可能だった。何もしてないアピールは必要だった。そう説明する。
結果論的には何もできなかったんだけど。
「ユニティのリーダーは俺だ。すべての判断は俺が責任を取る。そうしないと冬夜が自由に動けない」
渡辺君が言う。
「俺達……これからどうなるんですか?やっぱり狙われるんですか?ユニティにいる限り」
「だからSPつけてるじゃない」
「しかしそのSPですら刃が立たない相手じゃないですか?」
真鍋君と恵美さんが口論になった時だった。
テーブルをバン!と叩く咲良さんがいた。
「ちょっと真鍋君達なんでも人に頼ろうとするのはおかしいですよ~。晴斗ですらバイトを休んで訓練を受けたんですよ~当事者と認識してるならどうして受けなかったんですか~?」
「俺達だって仕事があって……」
「渡辺先輩や晴斗はバイト休んで受けたんですよ~。……守られてるだけって気楽でいいですね」
咲良さんが言う。
真鍋君は何も言えなくなってしまった。
「これからも戦いは続く!ブルっちまった奴は今すぐ抜けてしまえ!」
美嘉さんが事態をややこしくする。
ちなみにここは居酒屋。
週末にこれだけ大多数の人が集まれる場所なんて限られてる。
ジャッカルたちの襲撃があってから一週間。
未だに彼らのジャブは続く。
それぞれの家に手紙が入れられてたりあからさまに尾行をされていたり。
しかし手出しはしてこない。
彼等の狙いはユニティのメンバーの不安を煽りたて勢力を削ぐことなのは明白だった。
実際こうして皆は揺れ動いている。
何か対策を講じなければ。
その為に今日皆で集まった。
しかしやはり戦闘派と非戦闘派で分裂してしまっている。
そんなやりとりを聞きながらだし巻き卵を食べていた。
「美嘉の言う事は暴論だ。俺達は暴力団とかそういう類じゃない。真鍋君の意見が本来は正しいんだ」
「でも為すがままにされるってんも面白くないよね?」
渡辺君と公生が言う。
「公生みたいな中坊でも戦う意思をみせてるんだぞ!情けないと思わないのか!?」
カンナが言う。
「問題を履き違えないでください。私達だって戦う意思はある。今回は私達に隠し事してたことが問題です」
咲さんが言う。
最近ビールとから揚げの組み合わせも興味を示した。結構いけるなこれ。
ご待望の水炊きが来た。これがまた美味いんだよね。
寒い時期にぴったりのメニューだ。
「だからそれは悪かったと思ってる。だけどああするしかなかった。それは理解して欲しい」
「私がスマホを奪われたから仕方ないと思ってる。全員で別グル行ったら怪しまれるでしょ?敵を欺くにはまず味方から。片桐君のとった行動はそう言う事なの」
渡辺君と晶さんが弁明する。
それを聞いて黙ってるような人達じゃないと思うけど。
愛莉が鍋の具材を取ってくれる。
それを食べる僕。しめはチャンポンで決まりだね。
「片桐先輩食べてばっかりじゃなくて何か言ってください」
「冬夜、お前から何も無いのはおかしいだろ。もとはお前の判断なんだろ?」
僕は焼き鳥を食べながら答えた。
「運命は残酷だ。されど彼女を怖れるな女神が戦わぬ者に。微笑むことなど決してないのだから」
僕達はもう途中下車は許されない列車に乗ってしまている。
「皆何時までも無力じゃない戦おう。気紛れな運命と未来を取り戻す為」
戦い方はそれぞれある。でも無抵抗ってわけには行かない。戦わなきゃ、諦めたら駄目だ。
「すまんが、みんなの命をくれ」
ぽかっ。
「だからアニメの台詞真似るのは止めなさいって言ってるでしょ!皆大真面目に話してるんだよ!」
愛莉に叱られた。
「俺は平気っすよ!冬夜先輩に命預けるっす!」
「俺達も何度も言ってきた。ユニティに……片桐先輩に未来は託すと」
「俺達も同じです。片桐君に命を救われたも同然。片桐君に命預けます」
ハルトと、西松君と、亀梨君達4人が言う。
他の皆も同じ様だ。
「心配しなくていいよ、本当に死なせるつもりは無いから」
僕は笑って言う。
「お客様……これ、他のお客様からの注文なんですけど……」
店員がもってきたのは鴨吸いだった。
「他のお客さまって?」
僕が聞く。
「それがもう、会計済ませて帰ってしまわれたんですよ」
ジャッカルだ。こういう真似をするのはジャッカル以外に考えられない。
ならば、毒を盛るなんて姑息な手は使わないだろう。
「ありがとうございます」
店員にそう言うと店員が「そろそろドリンクのラストオーダーの時間になりますが」という。
「僕ハイボール」と注文すると皆各々ドリンクを注文する。
そして鴨吸いを食べる。
締めはやはりチャンポンが良いらしい。
皆心配そうに見てる。
「毒は無いみたいだよ」と笑って答える。
「何でお前は食い物と見ると何でも食いつくんだ!?」
カンナに怒られる
「ジャッカルはそんな姑息な手は使わないよ」
「ジャッカル!?」
晶さんが聞き返す。
「多分僕たちを絶えず見張ってるって脅しなんだろうさ」
鴨を送ってきた事にも意味があるんだろうと説明する。
「どうする?また罠に嵌めるか?」
渡辺君が聞いてくる。
「いや、今夜は皆で騒ごう。折角皆集まったんだし」
明日も休みだしね。
その後2次会はカラオケで楽しんだ。
真鍋君達は相変わらず緊張している。
自分たちが狙われるんじゃないのか?と
まあ、無理もないね。
亜依さん達が歌ってる中、真鍋君達に酒を勧めた。
「こんなことしてる場合なんですか?」
真鍋君が言う。
「こんな状況だからこそ騒ぐのさ。気分が暗くなってたって何も始まらない。相手の思うつぼだ。だから泣いてやらない。笑ってやるんだ」
「片桐先輩は強いです……」
「そんなことないよ……弱いさ。だから足掻くんだ。思い通りになるのは癪だからね」
「俺達にできることありますか?」
「今は騒ごう。とことん騒ごう。光が射すまで騒ぐんだ。そしたら気分も晴れるよ」
そう言って真鍋君に酒を勧める。
真鍋君は一気にのみほす。
「言っとくけど俺ザルですからね?」
「そうこなきゃね?」
僕が言うと真鍋君は笑っていた。
「なんだ!?飲み比べか!?じゃあ、私達もまざるぞ!」
カンナと美嘉さんが混ざる。
こんな時だからこそ騒ごう。
空元気だっていい。
いつか本当に笑える時がくるから。
(2)
「お帰りなさい、アレン」
「ただいま、皆」
アレンは皆と抱擁していた。
そして祝杯を挙げる。
アレンが戻ってきた。
それは九尾の狐の完全再生を意味する。
俺も祝杯を飲む。
「それで現状は?」
「変わっていない。申し訳ないが……」
「そう焦ることは無い。焦ったらまた失敗してしまう」
アレンはがそう言うとヴァイパーはほっとする。
「これからどうするんだい?アレンさん?」
俺はアレンに聞いてみた。
「君がジャッカルか……なかなか有能な戦士のようだな」
アレンは俺を見て言う。
「ヴァイパーほどじゃないさ」
「謙遜することは無い。君とエックスの活躍は聞いた」
「で、俺達はこれからどうするんだ?」
「しばらくは須藤グループのお遊びの手伝いをしてやろう。月からの指示もないしな」
月?
「月ってのはなんだ?」
「闇夜を照らす影の支配者」
「言ってる意味がよくわからないがそれは太陽の騎士団より格上なのか?」
「君がそれを知る必要は無いよ」
ここは素直に従っておいた方がいいさ。
「分かった。あんたの言う通りにしよう。俺にも遊び道具が出来たしな」
「物分かりが良い奴で助かる」
「ジャッカル、そろそろ時間だ。彼等が動く」
「と、いうわけだ。アレン。俺はそろそろ動かなくちゃならない」
「火遊びには気をつけろよ」
「わかってる」
そう言ってエックスとビルを出る。
「あの男信用してもいいのか?」
エックスが聞く。
「一応月ってのは調べておいた方が良さそうだ」
「わかった」
そして次の標的のもとへ向かう。
次の標的は……。
(3)
車の修理が済んで今日納車だ。
それまでは代車で学校に通っていた。
修理代は高額だったけど任務中の事故というわけで恵美の会社が払ってくれた。
「いっそのこと車を買い替えたらいいのに、もっといいのに乗りたいでしょ?」
恵美が言う。
「初めて買った車なんだ。それなりに愛着があるよ」
「そんなものなのね」
恵美には興味なさそうだ。
「で、今日はどうするの?」
恵美が聞いてきた。
今日は皆おやすみの日。
用事も特にない。
こんな時にしてやれる事なんてそんなにない。
「試運転もかねてドライブに行こうかと思ったんだけど」
「じゃあ、着替えてくるわね」
そう言って寝室に行く恵美。
恵美が準備してる間に拳銃の手入れをしていた。
あの夜の事を思いだす。
僕と片桐君二人がかりでも捕らえられなかった相手。
片桐君から話は聞いていた。
あの晩挑発があったことを。
銃を組み立てながら考える。
どうすればあいつらに勝てる?
もっと力をつけないと。
春休みにでも特訓を受けるか?
でもそろそろ就活しないといけないな。
ああ、恵美の会社に就職が決まってるんだった。
恵美に感謝しないとな。
その分恵美をしっかり守らないと。
恵美のお出かけの準備が済んだ。
僕達は家を出る。
「山と海どっちがいい?」
「運転手に任せるわ」
「じゃあ、どっちも行くね」
そう言って車を出す。
「実家に寄ってもいいかしら?」
「どうしたの?」
「公生と奈留も誘ってやろうと思って」
「なるほどね」
恵美の実家に寄って、公生と奈留を拾う。
「ごめんね。折角のデートだったろうに」
「私が誘ったんだから気にしないで」
公生と恵美が話をしてる。
「不気味ですね、不気味すぎるほど平和……」
奈留がそう呟く。
「平和でいいじゃないですか。物騒な日よりはよっぽどいい」
「そうですけど……嵐の前の静けさっていうか……」
奈留はそう言うと黙ってしまった。
僕達は山をいって海を見に行った。
帰りに青い鳥に寄る。
青い鳥には酒井君と一ノ瀬さん、中島君に晶さんがいた。
「今日もバイトなの?大変ね」
「そうなのよ、まあバイトできる時間も平和でいいけどね」
晶さんが言う。
「この平和が続くと良いんですけどね」
一ノ瀬さんがそう言った時だた。
カランカラン。
知らない男が店に入ってきた。
「ブレンドコーヒーを一つ」
男はコーヒーを注文する。
酒井君がコーヒーを運ぶ。
堂々とゆっくりとコーヒーを味わっていた。
「この店は煙草はすってもいいのかな?」
「あ、どうぞ。今灰皿お持ちします」
一ノ瀬さんが灰皿を持ってきた。
酒井君も何かを感じ取ってるのか警戒している。
僕も彼から目を離すことができなかった。
この人どこかで見たことがある……。
どこだ?
思い出した時僕は咄嗟に懐に手を入れる。
すると男はこちらを見ることなく言った。
「今日はコーヒーを味わいに来ただけだ。それを出されたらおじさんも本気にならざるを得ない。しまっておけ」
事態が呑み込めない皆。
「皆さんこいつがヴァイパーです!」
僕が叫ぶと皆その男を見た。
「見事な観察力だ。さすがだな。ヘッジホッグ……それに死神。だが君達は警戒心を出し過ぎだ。それだと気配を読まれるぞ」
皆の動きが止まる。
「で、そのヴァイパーが何の用なの?」
晶さんが言う。
「そうだな、こちらも見破られた事だしちょっと友達を呼ぶとしよう」
そう言って男は電話をする。
カランカラン。
入ってきたのは3人の男。
ジャッカルとノートPCを持った男。……あと一人は?
「この人はアレン・スミルコフ。九尾の狐の創設者だ」
ヴァイパーが紹介するとノートPCを持った男も自己紹介した
「僕の名前はエックスと呼んでもらおうかな」
恵美は紅茶を飲みながらこっちを見ることなく皆に連絡している。
「大物が首を連ねて乗り込んできてどういうつもり?」
晶さんが聞く。
「コーヒーを楽しみにきたじゃいけなかい?」
「そんなに美味いのか?じゃあ俺達にも一杯もらおうかな」
ジャッカルが言う。
酒井君はコーヒーを三つ用意した。
「ほう、確かにこれは上手い」
ジャッカルがコーヒーの味を堪能している。
アレンもエックスも同様だった。
「で、コーヒーを飲んだらドンパチするわけ?」
晶さんが聞くとヴァイパーは笑った。
「そんなつもりはない、ただどんな相手なのか観察したくてね。俺の顔を覚えてる者が来るとは思ってなかった」
「コーヒーを堪能してただお終いってわけじゃないわよね?」
恵美が言う。
「ここは良い店だ、雰囲気をぶちこすような真似はしねーよ」
ジャッカルが笑いながら言う。
「すぐに帰るつもりだ。心配するな」
ヴァイパーが言う。
「しかし次に会う時はお互い敵同士。遠慮なくやらせてもらうよ」
「戦いましょうって挨拶に来ただけ?大した自信ね」
恵美が言う。
「出来れば会いたくないけどね。どうしてもクライアントの邪魔をするなら相手をせざるを得ない」
「クライアントは誰?須藤グループ?」
「察しがいいね」
「何が目的?」
「残念だが我々にも守秘義務がある。その質問には答えられない」
「正体を明かしてただで帰すと思った?」
「ここで戦闘はしたくない、折角の店の雰囲気を台無しにする」
「我々はプロだ。仕事以外での戦闘はしない。今日は楽しみに来ただけだよ」
アレンが言った。この人もプロだろう。
敵は少なくとも三人はプロ。残りエックスの戦闘力がわからないけど現状でも数的不利を生み出している。
恵美と晶さんは変身できるけど中島君達が無防備だ。
例えば中島君たちに拳銃を突きつけられたらそこで終わる。
この人たちは躊躇いなく撃つだろう。
「そろそろ出ようかヴァイパー」
コーヒーを飲み終えたアレンが席を立つと4人とも立つ。
会計を払うと店を出る。
「じゃあ、次合う時を楽しみにしてるよ。ヘッジホッグ」
ヴァイパーはそう言い残して店を出た。
僕達も席に戻る。
「どうして手を出さなかったの?」
「手を出さなかったんじゃない出せなかった……そうだね。石原君」
恵美が言うと酒井君が答えた。
酒井君の言う通りだ。手を出せなかった。
殺気は感じなかったけど隙も見せなかった。
店を壊したくないというのは本気のようだ。
恵美が着信を受けて電話をしている。
電話を終えると舌打ちをしている。
「どうしたの?」
「尾行をつけたけど上手い事撒かれたわ」
「そうだろうね……」
ジャッカルと言う人の運転技術は片桐君並だから。
加えてあの戦闘力。厄介な相手だ。
九尾の狐というのはああいう相手ばかりなのか?
「これからどうなるんですか……私達?」
穂乃果さんは怯えている。
今は中島君が落ち着かせているけど。
これからどうなる?
それは僕達にもわからなかった。
唯一の手掛かりは、戦いに仕事以外の戦闘はしない。クライアントは須藤グループという事だけ。
わざわざそれを伝えに来た?
何もするな?そうした何もしない。
そう言いたいのか?
「やっぱり手を引いた方がいいんじゃ……」
穂乃果さんは言う。
でも片桐君達は戦うだろう。
ユニティに手を出したら割に合わない。
それを思い知らせるために。
その方法を模索してるのだろう。
戦いに私情を挟むな。常に冷静であれ!
師から言われた言葉。
迷いを捨てろ、情に流されるな、そして恐怖を断ち切れ。
そう教え込まれてきた。
「無言の圧力でしょうね。須藤グループから手を引けという……」
「須藤グループ=九尾の狐ということね?」
「間違ってないと思います」
僕は晶さんに答える。
今までのプレッシャーもそう言う事だろう。
須藤グループは何かを企んでる。
今のスティンガーの運営を円滑にするための圧力?
片桐君からメッセージが。
グループチャットだ。
「気にすることないよ、今まで通りで問題ない」
「呑気なものですね。自分が同じ目に遭ったら冷静でいられるんですかね!?」
穂乃果さんが憤慨している。でも……。
「彼は同じ目に遭ってきた。この前の晩も一歩間違えたら死ぬ寸前のところを渡ってきた。自分の肉親だって攫われてる」
恵美が言う。
穂乃果さんは黙ってしまった。
どう穂乃果さんに声をかけて良いのか分からなかった。
穂乃果さんも被害者の一人なのだから。
「穂乃果!」
そう声をかけたのは中島君だった。
「穂乃果は攫われたり親を傷つけられたり酷い目に遭ってるのはわかる。でもそれをユニティのせいにするのは間違ってる。現実を受け入れなきゃ。もう逃げられない。駆け抜けるしかないんだ」
「中島君は他人事だからそう言えるのよ!」
「他人事じゃない!穂乃果って大切な人を傷つけられた一人の被害者だ。それだけじゃない、皆仲間を傷つけられてるんだ。他人事で済ませるような薄情な奴はユニティにはいないよ」
「なおさら手を引くわけにいかなくなったみたいね」
恵美が言う。
「そうね、ここで尻尾撒いて逃げたら皆に迷惑かける。何より私達が平穏を取り戻す事が出来ない」
晶さんが言う。
「まだ続ける気なんですか?」
穂乃果さんが言う。
「当然!」
恵美と晶さんが言う。
「……まずは須藤グループ、紅会のしっぽを見つけないとですね」
僕が言うと3人が頷いた。
須藤グループ・紅会の目的を掴むこと。それは僕の仕事じゃない。誠君達の仕事だ。
僕は言われた事を忠実に果たすのみ。
だけどその尻尾は依然として見つからないでいた。
(4)
信じられない!
バイトが終わって家に帰ると休まる時間が無い。
廊下のきしむ音が鳴るたびにびくっとなる。
そして隣の部屋のドアが開く音を聞いて胸をなでおろす。
何をしていても落ち着かない。
テレビを見ていても気がまぎれない。
仕方ないからユニティの皆とチャットをする。
「みんな無事?」
「今のところはね」
「大丈夫だよ」
「穂乃果は平気?」
平気なわけないけど
「うん、平気」
すると遠坂さんから個人チャットが届く。
「今日は大変だったね」
「はい……」
「怖いんでしょ?恐ろしいんでしょ?」
「遠坂さんはいいですね、片桐君がそばにいてくれるから」
「私も怖いよ」
え?
「私のせいで冬夜君が傷ついたら、もしものことがあったらどうしようって思うと怖い」
そうか……私のせいで隆司君が傷ついたらと思うと怖い。
私の電話に着信が入った。
遠坂さんからだ。
「もしもし?」
「多分一人で怯えてるだろうからって冬夜君が言うから電話してみた~。大丈夫?」
私は今思ってる事を全部遠坂さんにぶつけた。
ユニティへの不満も込めて。
「多分そうだろうと思った」
遠坂さんには隠し事は通用しないのだろうか?
「女性陣はみんな同じだよ。ただ考え方が違うだけ。穂乃果は真鍋君と考え方が同じなんだね?」
真鍋君と?
「大切なものを失いたくないから、失う事を恐れているから。だから迷っている」
「遠坂さんは違うんですか?」
「私は冬夜君に背中を預けてるから、冬夜君に隠れてるから。その代わり冬夜君の背中を支えてる。飛び出すタイミングにちゃんと飛び出せるように、私は大丈夫だよって足に力を込めて震えを止めている」
「遠坂さんは強いんですね」
「強い弱いの問題じゃない気の持ちようだよ」
「どういう意味ですか?」
「私のせいで冬夜君がタイミング間違えてミスったらいやだ。だから後ろで支えてるの。今だよって送り出してあげるの」
「足を引っ張るなって事ですか?」
「中島君は前に飛び出す役割じゃない。真鍋君と同じ。ユニティを維持する係。穂乃果も一緒だよ。二人でユニティを支えてればいい」
片桐君が最も怖いのは自分が傷つく事じゃない、他の人を巻き込んで怪我させてユニティを空中分解させることだと遠坂さんは言う。
「多分今はまだ序の口。これからもっと激しくなると思う。その時に私達が笑っていられればユニティの力になる」
私達の役割は見知らぬ恐怖におびえる事じゃない、見知らぬ明日に希望をもって笑っている事だという。最後に勝つのはユニティだと信じて。
私や真鍋君でも力になれる?
「冬夜君は言っていた。『皆で勝とう』って」
「うん……勝とうね」
「もう大丈夫かな?」
「ありがとう……」
「また何かあったら電話ちょうだい。いつでも相談に乗るから。うちの指揮官様は大変なんだよ。皆の事をずっと考えてる」
「遠坂さんも大変だね」
「えへへ~。じゃあまた」
「また、今度ナポリタン奢りますって伝えてください」
「冬夜君喜ぶよ。また」
電話は終わった。
その時呼び鈴が鳴っている。
誰だろう?
ドアを開けると隆司君が立っていた。
荷物が多い。
「しばらくここに泊めてもらうよ」
「え?」
「今穂乃果を一人になんてさせられない。事件が片付くまでここにいさせて」
隆司君も私の事気にとめてくれてるんだ。
私も背中を隆司君に委ねよう。
二人でユニティを守ろう。
それが私達に出来る最大限の戦い。
(5)
私は外で子供の帰りを待っていた。
そろそろ送迎バスがつく頃だ。
なのにまだくる気配が無い。
いやな予感がする。
電話をかけるがなかなかつながらない。
やっとつながった
「うちの光莉と朱莉が帰ってこないんですけど」
「それが……」
教諭が言う。
バスはとっくに出たのに皆帰ってないという。
いやな予感が現実化した。
でも私が家を空けている間に子供たちが帰ってこないというケースもある。
身動きできずにいると、主人から電話があった。
「光莉と朱莉帰ってないか!?」
「帰ってないけどどうしたの?」
「やっぱり!」
「ねえ、何がやっぱりなの?」
主人は言う。
組織的な犯行。
地元内の幼稚園殆どで誘拐事件が起きてるという。
私はその場に崩れ落ちる。
「おい真由美!大丈夫か!?」
「子供たちはどうなるの……?」
「相手の要求待ちだ。何を企んでるのか分からない」
何て理不尽な犯行なんだろう?
恐怖と怒りで頭が混乱する。
「送迎バス付の幼稚園だけの犯行だ、目的はまだ分からない」
その時FAXが届く。
俺達に手を出すとこうなる unity。
ユニティ、最近世間を騒がせているグループ。
ただの身内グループだとテレビではやっていたが。
そのことを主人に知らせる。
「それは多分はったりだ!ユニティはそんなグループじゃない!」
主人はユニティの事を知っているようだった。
「でも犯人の像は絞り込めた。ありがとう真由美。また捜査が進んだら知らせる」
そう言って主人は電話を切った。
私は泣き叫んだ。
床を叩いた時だった。
上の階で爆発音が聞こえた。
ジリリリリ……。
火災報知器が鳴る。
私はすぐに非難した。
火災は1時間ほどで消し止められたが、そこの部屋は空き部屋になっていたらしい。
誰が火をつけたのかも分からない。
爆発音がしたことを消防士に知らせる。
「真由美!!」
主人だ!
私は主人に抱きつく。
「あなた、光莉と朱莉は!?」
「まだ、なんの要求も来ていない!それよりこの火災は!?」
「わからない、突然爆発音がして」
「すいません、ちょっと通して」
主人が現場に向かう。
30分くらいして主人が戻ってきた。
主人の険しい表情を見て婦警だったころの勘がよみがえる。
「またユニティ?」
「ああ、完全にやられた」
「あなた、犯人像が絞れたと言ってたわね。何かユニティの関係があるの……」
「ああ……。多分敵対組織の仕業だ」
「敵対組織?」
エゴイストもアーバニティも潰れたと報じられていた。
まだ敵対組織がいるの?
主人に聞きたかったが主人は上司と電話中だ。
「今現場見てきました。壁に大きく描かれてありました『俺達に手を出すとこうなる unity』と……」
全く同じ犯行声明だ。
「警視正の方はどうですか?同じですか……」
同じ……?同じ事件が同時に発生してるの?
電話を終えた主人に聞いてみた。
「ああ、全部で20ヵ所近く同様の爆発があった。何処にも書かれてあったよ。同じメッセージが」
全部同じようなマンションの空き部屋を狙っていたらしい。
時限爆弾によるものらしい。
どうやって侵入したのかは察しがつく。
オートロックを解除して部屋に侵入し爆弾を置いてメッセージを残し逃走したのだろう。
オートロックの解除をするくらいだ。ドア錠なんてないも同然だろう。
時限爆弾の設置だからアリバイなんてあってないようなものだ。
発動の時間しかわからないのだから。
あとは地道に防犯カメラに不審人物が映ってないかを見るしかない。
そんな地道な捜査をすぐにやってのけるのがユニティというグループだそうだった。
(6)
「だから俺達のせいじゃないって!」
「じゃあ、誰のせいだっていうんだ!?」
「それを調べるのが警察の仕事だろうが!」
「嘘の証言は後で不利になるぞ!?」
「まずは俺達がやったって立証するのが先じゃないのか?まさかメッセージ一つで俺達を疑ってるんじゃないだろうな?」
「手がかりが他にない以上君達を疑うしかないんだよ」
「てがかりならいくらでもあるだろう」
俺は不毛なやりとりをこの刑事二人とやっていた。
1時間半も同じやり取りをしていたら苛立ちも来る。
我慢の限界に達しようとしていた時遠坂警視正と渡瀬警部補がやってきた。
「その子を釈放するんだ今すぐに」
「ここは南署の管轄です。勝手な真似をされたら困りますな」
「その子の胸のバッヂを見てから言うんだな」
俺の胸にはいつもつけて行動するようにと言われていたバッヂが着けられてあった。
桜の代紋にJSSと刻まれたバッヂを見て刑事二人は俺をすぐに釈放した。
「いつもすまんな……」
「俺達を名乗ったそうですね……」
「ああ、ご丁寧に犯行声明を残してある」
「正志!!」
玄関で待っていた美嘉が駆け寄ってきた。
「随分長かったな」
「話の通らないおっさんでな」
「サツなんてみんなそんなもんだろ?」
警察官二人の前で話す話題じゃないな。
「……それで君達はこれからどうするつもりだね」
遠坂警視正が話を振ってくれた。
「帰って冬夜達と相談です」
とはいえ、人質の救出が最優先だろうな。
幼子にまで手を出すとは放っておくわけには行かない。
ましてや俺達の名前を騙るとは俺達に喧嘩を売ってるのも同然の行為だ。
「……むちゃはしないでくれ。君達の『捜査』を邪魔しないように便宜は図っておく」
「ありがとうございます」
「……本来なら私達が動かなきゃならないんだが」
「上からの圧力ですか?」
「署長が自ら陣頭指揮を執るといいだしてね。怪しいと思わないか?」
渡瀬警部補が言う。
真っ黒だな。
「渡辺君、実は今回の事件、娘二人が巻き込まれてるんだ。頼む。助けてやってくれ」
「任せてください」
「任せとけ!そういうのならこっちも遠慮はいらねえ!」
その後美嘉と家に帰る。
帰る途中つけられていることに美嘉も気づいたようだ。
「正志……」
「分かってる」
俺達はそのまま家に帰ると駐車場に車を止める。
車を降りるとバイク2台と車1台から男が出てきた。
見た感じ石原君から聞いた感じの男はいない。
俺たち相手にプロはいらないといったところか。
「……舐められたものだな」
「てめーら五体満足で帰れると思うなよ」
美嘉がぽきぽきと指を鳴らす。
相手の持ってる得物は刃物に鈍器にスタンガン。
全員で6人。
「美嘉を抑えるのが俺の役割なんだが生憎俺の虫の居所も悪くてな。悪く思うなよ」
男が無言で手を振ると6人で同時に襲い掛かる。
去年末に倣った武術・夢幻流は不殺を誓いかつ一撃で戦闘不能にさせる武術。
ナイフを突き出してくるとその手を掴みのびきった腕の肘に目掛けて手刀を叩きこむ。
人間打ちどころを見極めると腕の骨を折ることなど造作でもない。
次に鈍器を振り下ろすのを最小の動きで躱し相手の頭を掴み顎を自分の膝にぶつける。
顎を砕かれ血を垂らしながらのたうち回る男。
スタンガンを持ってる男は既に怯えて逃走を図ろうとしてる。
いつもなら逃がしてやっても良かったんだが今日は生憎と機嫌が悪くてな。
襟をつかむとそのまま投げ飛ばす。
自分たちが乗ってきた単車にぶつかり、単車が倒れてくる。
身動きが取れずジタバタする男に俺は近づく……。
「た、助けてくれ、何でも喋るから」
「お前たちはスティンガーの連中だな?」
「そうだ」
「警察署から出たところを狙おうとして追尾した」
「その通りだ」
「九尾の狐は別行動をとってるから動けない」
「あんたの言う通りだ」
「お前たちの頭は須藤グループ」
「間違いない」
「そうか……」
俺は片足を上げると男の肩にめがけて踏みつける。
「は、話が違う」
「助けるとは言ってない。俺の機嫌は悪いと警告した」
俺が肩を踏みつけると軽い音と同時に男の悲鳴が聞こえる。
俺が3人片付ける頃残りの3人を一人で袋にする美嘉を止める。
既に3人とも意識が無かった。
警察に通報する。
パトカーが駆け付けて俺達も捕まえられようとするが、遠坂警視正の言っていたことは本当だったようだ。
胸につけていたバッヂをみせるとお咎めなしでパトカーは走り去っていった。
これからは全員バッヂをつけて行動するように。
そう皆に徹底した。
(7)
その晩遠坂家に食事に呼ばれた。
父さん達も一緒だった。
まさかまた、婚姻届をもちだすんじゃ……。
「冬夜君、今日の事件の事は知ってるね?」
誘拐事件と同時爆破事件。
両方にユニティがやったと仄めかすメッセージが残されている。
その話か。
ちょうど僕も聞きたかったことがあったんだ。
「知ってます。渡瀬警部補のお子さんも誘拐されたそうで」
「中央署の署長が陣頭指揮を取り出してね……あからさまに怪しくないか?」
「怪しいですね」
太陽の騎士団が絡んでる。多分間違いない。
「警察の捜査は身動き取れない。そこで君たちに依頼したい」
「どのみち喧嘩を売られたんです。放っておく手は無いでしょう」
「……そう言ってくれると助かる」
「冬夜君~渡瀬さんはパパさんお気に入りの新米刑事なの~おばさんからもお願いするわ~」
「わかりました」
僕達も世話になったしね。
「バッヂをつけている間は君達は自由に動ける。警察も止めることは出来ない。好きに行動してくれ……といいたいんだが」
「愛莉に無茶はさせません」
「愛莉だけじゃない、君もだ……話は聞いてる。九尾の狐とやりあったそうだね」
「はい……完全にやられました」
「怪我が無かっただけでもよしとしなさい。気を付けてくれ。娘を未亡人にはしないでくれ」
「わかりました」
その後食事をして、家に帰ると風呂に入って愛莉が風呂に入ってる間にスマホを見る。
渡辺君がさっそく襲われたらしい。九尾の狐は別行動中。多分誘拐事件に関わっているのだろう?
さてここからどうするかだ。
人質の救出は優先しなければならない。
しかし何の要求どころかコンタクトが無い。
人質の場所特定は警察と誠と公生がやっきになっているだろう。
同時爆破の理由がよくわからない。
共通してるのは爆破されたのはオートロック式の高層マンション。そして壁にユニティを名乗るメッセージ。
爆破に使用されたのは青い鳥に持ち込まれた時限爆弾と同じ作りの物。
直感で紅会の仕業だと思った。
九尾の狐の犯行だとしたらあまりにもお粗末すぎる。
誠からメッセージが。
「冬夜の言う通り紅会の連中で間違いない」
決め手となったのは全員共通して黒いスーツを着ていて黒いスーツケースを持ち運んでいた事。
あとは誘拐犯の居場所特定か。
ユニティに変わったことがある。
それは
「俺……友人にあたってみます。スティンガーに関係ある人間がいないか」
「僕も聞いてみます。バイト仲間とかに」
「片桐君、マンションの名前教えてくれない?オーナーを洗ってみるわ」
皆が協力的になった事。
でも僕は言う。
「一人で無茶しないで。今はまだ狐は寝てるけどいつ暴れだすか分からないから」
「わかった」
「わかりました」
皆の行動は好意だけ受け取っておこう。
「冬夜君、おまたせ~持ってきたよ~」
愛莉は酎ハイを持ってきた。
「何かいい案は浮かびそうですか?指揮官様」
「まだ何も。手がかりが無さすぎる」
「そうだねぇ~」
愛莉も一緒に悩んでる。
悩んでる時間は無い。人質を取られている。
しかも要求も何もない。
「恵美さんUAVなんて持ってないよね?」
さすがにあるわけないか?
「必要なら出すわよ?プレデターでいい?」
そういやあったね
「多分場所は限られていると思う。地元の全園児送迎バスを置ける場所なんて」
「それを探せばいいのね」
「うん」
「すぐに仕度するわ」
「よろしく」
「何か案思いついたの?」
愛莉が聞いてくる。
「まあね」
「どんな案?」
「相手がカードを切らないなら強引に見る手段」
「急かすの?『早く切ってよ~』って……」
「……それいいかもね!」
メッセージを送る。
「……本気でやるの!?」
「やってみる価値はある」
「わかったわ……、すぐに手配する」
愛莉の頭を撫でてやる
「さすが愛莉だね」
「えへへ~」
「じゃ、今日はもう寝ようか?」
「もう寝ちゃうの?」
「寝れるときに寝よう?」
「は~い」
やや不満気味だったが愛莉は大人しくベッドに入るとすやすやと眠りについた。
僕も眠りにつく。
どんな危機も愛莉となら切り開いていける。
そんな気がした。
この事件がユニティ反撃の手がかりにきっとなる。
「すまんかった!俺達も反省している」
渡辺君が立ち上がって頭を下げる。
僕はそんな渡辺君を見ながら食事をしている。
「事情は深雪先輩から聞きました。仕方ないです。俺達も理解はしてます」
真鍋君が言う。
「冬夜君も一言あってもいいんじゃない?」
愛莉が言う。
「別グループを作ったのは俺だ。俺にも責任がある」
誠が謝る。
「まあ、そう仕向けたのは僕だけどね」」
僕が言う。
「片桐先輩から謝罪は無いんですか?」
咲さんが言う。
「とっさの判断だったし説明する暇も余裕もなかった、言い訳にしか過ぎないけど悪いと思ってる」
ただ、そうしないと晶さんの奪還は不可能だった。何もしてないアピールは必要だった。そう説明する。
結果論的には何もできなかったんだけど。
「ユニティのリーダーは俺だ。すべての判断は俺が責任を取る。そうしないと冬夜が自由に動けない」
渡辺君が言う。
「俺達……これからどうなるんですか?やっぱり狙われるんですか?ユニティにいる限り」
「だからSPつけてるじゃない」
「しかしそのSPですら刃が立たない相手じゃないですか?」
真鍋君と恵美さんが口論になった時だった。
テーブルをバン!と叩く咲良さんがいた。
「ちょっと真鍋君達なんでも人に頼ろうとするのはおかしいですよ~。晴斗ですらバイトを休んで訓練を受けたんですよ~当事者と認識してるならどうして受けなかったんですか~?」
「俺達だって仕事があって……」
「渡辺先輩や晴斗はバイト休んで受けたんですよ~。……守られてるだけって気楽でいいですね」
咲良さんが言う。
真鍋君は何も言えなくなってしまった。
「これからも戦いは続く!ブルっちまった奴は今すぐ抜けてしまえ!」
美嘉さんが事態をややこしくする。
ちなみにここは居酒屋。
週末にこれだけ大多数の人が集まれる場所なんて限られてる。
ジャッカルたちの襲撃があってから一週間。
未だに彼らのジャブは続く。
それぞれの家に手紙が入れられてたりあからさまに尾行をされていたり。
しかし手出しはしてこない。
彼等の狙いはユニティのメンバーの不安を煽りたて勢力を削ぐことなのは明白だった。
実際こうして皆は揺れ動いている。
何か対策を講じなければ。
その為に今日皆で集まった。
しかしやはり戦闘派と非戦闘派で分裂してしまっている。
そんなやりとりを聞きながらだし巻き卵を食べていた。
「美嘉の言う事は暴論だ。俺達は暴力団とかそういう類じゃない。真鍋君の意見が本来は正しいんだ」
「でも為すがままにされるってんも面白くないよね?」
渡辺君と公生が言う。
「公生みたいな中坊でも戦う意思をみせてるんだぞ!情けないと思わないのか!?」
カンナが言う。
「問題を履き違えないでください。私達だって戦う意思はある。今回は私達に隠し事してたことが問題です」
咲さんが言う。
最近ビールとから揚げの組み合わせも興味を示した。結構いけるなこれ。
ご待望の水炊きが来た。これがまた美味いんだよね。
寒い時期にぴったりのメニューだ。
「だからそれは悪かったと思ってる。だけどああするしかなかった。それは理解して欲しい」
「私がスマホを奪われたから仕方ないと思ってる。全員で別グル行ったら怪しまれるでしょ?敵を欺くにはまず味方から。片桐君のとった行動はそう言う事なの」
渡辺君と晶さんが弁明する。
それを聞いて黙ってるような人達じゃないと思うけど。
愛莉が鍋の具材を取ってくれる。
それを食べる僕。しめはチャンポンで決まりだね。
「片桐先輩食べてばっかりじゃなくて何か言ってください」
「冬夜、お前から何も無いのはおかしいだろ。もとはお前の判断なんだろ?」
僕は焼き鳥を食べながら答えた。
「運命は残酷だ。されど彼女を怖れるな女神が戦わぬ者に。微笑むことなど決してないのだから」
僕達はもう途中下車は許されない列車に乗ってしまている。
「皆何時までも無力じゃない戦おう。気紛れな運命と未来を取り戻す為」
戦い方はそれぞれある。でも無抵抗ってわけには行かない。戦わなきゃ、諦めたら駄目だ。
「すまんが、みんなの命をくれ」
ぽかっ。
「だからアニメの台詞真似るのは止めなさいって言ってるでしょ!皆大真面目に話してるんだよ!」
愛莉に叱られた。
「俺は平気っすよ!冬夜先輩に命預けるっす!」
「俺達も何度も言ってきた。ユニティに……片桐先輩に未来は託すと」
「俺達も同じです。片桐君に命を救われたも同然。片桐君に命預けます」
ハルトと、西松君と、亀梨君達4人が言う。
他の皆も同じ様だ。
「心配しなくていいよ、本当に死なせるつもりは無いから」
僕は笑って言う。
「お客様……これ、他のお客様からの注文なんですけど……」
店員がもってきたのは鴨吸いだった。
「他のお客さまって?」
僕が聞く。
「それがもう、会計済ませて帰ってしまわれたんですよ」
ジャッカルだ。こういう真似をするのはジャッカル以外に考えられない。
ならば、毒を盛るなんて姑息な手は使わないだろう。
「ありがとうございます」
店員にそう言うと店員が「そろそろドリンクのラストオーダーの時間になりますが」という。
「僕ハイボール」と注文すると皆各々ドリンクを注文する。
そして鴨吸いを食べる。
締めはやはりチャンポンが良いらしい。
皆心配そうに見てる。
「毒は無いみたいだよ」と笑って答える。
「何でお前は食い物と見ると何でも食いつくんだ!?」
カンナに怒られる
「ジャッカルはそんな姑息な手は使わないよ」
「ジャッカル!?」
晶さんが聞き返す。
「多分僕たちを絶えず見張ってるって脅しなんだろうさ」
鴨を送ってきた事にも意味があるんだろうと説明する。
「どうする?また罠に嵌めるか?」
渡辺君が聞いてくる。
「いや、今夜は皆で騒ごう。折角皆集まったんだし」
明日も休みだしね。
その後2次会はカラオケで楽しんだ。
真鍋君達は相変わらず緊張している。
自分たちが狙われるんじゃないのか?と
まあ、無理もないね。
亜依さん達が歌ってる中、真鍋君達に酒を勧めた。
「こんなことしてる場合なんですか?」
真鍋君が言う。
「こんな状況だからこそ騒ぐのさ。気分が暗くなってたって何も始まらない。相手の思うつぼだ。だから泣いてやらない。笑ってやるんだ」
「片桐先輩は強いです……」
「そんなことないよ……弱いさ。だから足掻くんだ。思い通りになるのは癪だからね」
「俺達にできることありますか?」
「今は騒ごう。とことん騒ごう。光が射すまで騒ぐんだ。そしたら気分も晴れるよ」
そう言って真鍋君に酒を勧める。
真鍋君は一気にのみほす。
「言っとくけど俺ザルですからね?」
「そうこなきゃね?」
僕が言うと真鍋君は笑っていた。
「なんだ!?飲み比べか!?じゃあ、私達もまざるぞ!」
カンナと美嘉さんが混ざる。
こんな時だからこそ騒ごう。
空元気だっていい。
いつか本当に笑える時がくるから。
(2)
「お帰りなさい、アレン」
「ただいま、皆」
アレンは皆と抱擁していた。
そして祝杯を挙げる。
アレンが戻ってきた。
それは九尾の狐の完全再生を意味する。
俺も祝杯を飲む。
「それで現状は?」
「変わっていない。申し訳ないが……」
「そう焦ることは無い。焦ったらまた失敗してしまう」
アレンはがそう言うとヴァイパーはほっとする。
「これからどうするんだい?アレンさん?」
俺はアレンに聞いてみた。
「君がジャッカルか……なかなか有能な戦士のようだな」
アレンは俺を見て言う。
「ヴァイパーほどじゃないさ」
「謙遜することは無い。君とエックスの活躍は聞いた」
「で、俺達はこれからどうするんだ?」
「しばらくは須藤グループのお遊びの手伝いをしてやろう。月からの指示もないしな」
月?
「月ってのはなんだ?」
「闇夜を照らす影の支配者」
「言ってる意味がよくわからないがそれは太陽の騎士団より格上なのか?」
「君がそれを知る必要は無いよ」
ここは素直に従っておいた方がいいさ。
「分かった。あんたの言う通りにしよう。俺にも遊び道具が出来たしな」
「物分かりが良い奴で助かる」
「ジャッカル、そろそろ時間だ。彼等が動く」
「と、いうわけだ。アレン。俺はそろそろ動かなくちゃならない」
「火遊びには気をつけろよ」
「わかってる」
そう言ってエックスとビルを出る。
「あの男信用してもいいのか?」
エックスが聞く。
「一応月ってのは調べておいた方が良さそうだ」
「わかった」
そして次の標的のもとへ向かう。
次の標的は……。
(3)
車の修理が済んで今日納車だ。
それまでは代車で学校に通っていた。
修理代は高額だったけど任務中の事故というわけで恵美の会社が払ってくれた。
「いっそのこと車を買い替えたらいいのに、もっといいのに乗りたいでしょ?」
恵美が言う。
「初めて買った車なんだ。それなりに愛着があるよ」
「そんなものなのね」
恵美には興味なさそうだ。
「で、今日はどうするの?」
恵美が聞いてきた。
今日は皆おやすみの日。
用事も特にない。
こんな時にしてやれる事なんてそんなにない。
「試運転もかねてドライブに行こうかと思ったんだけど」
「じゃあ、着替えてくるわね」
そう言って寝室に行く恵美。
恵美が準備してる間に拳銃の手入れをしていた。
あの夜の事を思いだす。
僕と片桐君二人がかりでも捕らえられなかった相手。
片桐君から話は聞いていた。
あの晩挑発があったことを。
銃を組み立てながら考える。
どうすればあいつらに勝てる?
もっと力をつけないと。
春休みにでも特訓を受けるか?
でもそろそろ就活しないといけないな。
ああ、恵美の会社に就職が決まってるんだった。
恵美に感謝しないとな。
その分恵美をしっかり守らないと。
恵美のお出かけの準備が済んだ。
僕達は家を出る。
「山と海どっちがいい?」
「運転手に任せるわ」
「じゃあ、どっちも行くね」
そう言って車を出す。
「実家に寄ってもいいかしら?」
「どうしたの?」
「公生と奈留も誘ってやろうと思って」
「なるほどね」
恵美の実家に寄って、公生と奈留を拾う。
「ごめんね。折角のデートだったろうに」
「私が誘ったんだから気にしないで」
公生と恵美が話をしてる。
「不気味ですね、不気味すぎるほど平和……」
奈留がそう呟く。
「平和でいいじゃないですか。物騒な日よりはよっぽどいい」
「そうですけど……嵐の前の静けさっていうか……」
奈留はそう言うと黙ってしまった。
僕達は山をいって海を見に行った。
帰りに青い鳥に寄る。
青い鳥には酒井君と一ノ瀬さん、中島君に晶さんがいた。
「今日もバイトなの?大変ね」
「そうなのよ、まあバイトできる時間も平和でいいけどね」
晶さんが言う。
「この平和が続くと良いんですけどね」
一ノ瀬さんがそう言った時だた。
カランカラン。
知らない男が店に入ってきた。
「ブレンドコーヒーを一つ」
男はコーヒーを注文する。
酒井君がコーヒーを運ぶ。
堂々とゆっくりとコーヒーを味わっていた。
「この店は煙草はすってもいいのかな?」
「あ、どうぞ。今灰皿お持ちします」
一ノ瀬さんが灰皿を持ってきた。
酒井君も何かを感じ取ってるのか警戒している。
僕も彼から目を離すことができなかった。
この人どこかで見たことがある……。
どこだ?
思い出した時僕は咄嗟に懐に手を入れる。
すると男はこちらを見ることなく言った。
「今日はコーヒーを味わいに来ただけだ。それを出されたらおじさんも本気にならざるを得ない。しまっておけ」
事態が呑み込めない皆。
「皆さんこいつがヴァイパーです!」
僕が叫ぶと皆その男を見た。
「見事な観察力だ。さすがだな。ヘッジホッグ……それに死神。だが君達は警戒心を出し過ぎだ。それだと気配を読まれるぞ」
皆の動きが止まる。
「で、そのヴァイパーが何の用なの?」
晶さんが言う。
「そうだな、こちらも見破られた事だしちょっと友達を呼ぶとしよう」
そう言って男は電話をする。
カランカラン。
入ってきたのは3人の男。
ジャッカルとノートPCを持った男。……あと一人は?
「この人はアレン・スミルコフ。九尾の狐の創設者だ」
ヴァイパーが紹介するとノートPCを持った男も自己紹介した
「僕の名前はエックスと呼んでもらおうかな」
恵美は紅茶を飲みながらこっちを見ることなく皆に連絡している。
「大物が首を連ねて乗り込んできてどういうつもり?」
晶さんが聞く。
「コーヒーを楽しみにきたじゃいけなかい?」
「そんなに美味いのか?じゃあ俺達にも一杯もらおうかな」
ジャッカルが言う。
酒井君はコーヒーを三つ用意した。
「ほう、確かにこれは上手い」
ジャッカルがコーヒーの味を堪能している。
アレンもエックスも同様だった。
「で、コーヒーを飲んだらドンパチするわけ?」
晶さんが聞くとヴァイパーは笑った。
「そんなつもりはない、ただどんな相手なのか観察したくてね。俺の顔を覚えてる者が来るとは思ってなかった」
「コーヒーを堪能してただお終いってわけじゃないわよね?」
恵美が言う。
「ここは良い店だ、雰囲気をぶちこすような真似はしねーよ」
ジャッカルが笑いながら言う。
「すぐに帰るつもりだ。心配するな」
ヴァイパーが言う。
「しかし次に会う時はお互い敵同士。遠慮なくやらせてもらうよ」
「戦いましょうって挨拶に来ただけ?大した自信ね」
恵美が言う。
「出来れば会いたくないけどね。どうしてもクライアントの邪魔をするなら相手をせざるを得ない」
「クライアントは誰?須藤グループ?」
「察しがいいね」
「何が目的?」
「残念だが我々にも守秘義務がある。その質問には答えられない」
「正体を明かしてただで帰すと思った?」
「ここで戦闘はしたくない、折角の店の雰囲気を台無しにする」
「我々はプロだ。仕事以外での戦闘はしない。今日は楽しみに来ただけだよ」
アレンが言った。この人もプロだろう。
敵は少なくとも三人はプロ。残りエックスの戦闘力がわからないけど現状でも数的不利を生み出している。
恵美と晶さんは変身できるけど中島君達が無防備だ。
例えば中島君たちに拳銃を突きつけられたらそこで終わる。
この人たちは躊躇いなく撃つだろう。
「そろそろ出ようかヴァイパー」
コーヒーを飲み終えたアレンが席を立つと4人とも立つ。
会計を払うと店を出る。
「じゃあ、次合う時を楽しみにしてるよ。ヘッジホッグ」
ヴァイパーはそう言い残して店を出た。
僕達も席に戻る。
「どうして手を出さなかったの?」
「手を出さなかったんじゃない出せなかった……そうだね。石原君」
恵美が言うと酒井君が答えた。
酒井君の言う通りだ。手を出せなかった。
殺気は感じなかったけど隙も見せなかった。
店を壊したくないというのは本気のようだ。
恵美が着信を受けて電話をしている。
電話を終えると舌打ちをしている。
「どうしたの?」
「尾行をつけたけど上手い事撒かれたわ」
「そうだろうね……」
ジャッカルと言う人の運転技術は片桐君並だから。
加えてあの戦闘力。厄介な相手だ。
九尾の狐というのはああいう相手ばかりなのか?
「これからどうなるんですか……私達?」
穂乃果さんは怯えている。
今は中島君が落ち着かせているけど。
これからどうなる?
それは僕達にもわからなかった。
唯一の手掛かりは、戦いに仕事以外の戦闘はしない。クライアントは須藤グループという事だけ。
わざわざそれを伝えに来た?
何もするな?そうした何もしない。
そう言いたいのか?
「やっぱり手を引いた方がいいんじゃ……」
穂乃果さんは言う。
でも片桐君達は戦うだろう。
ユニティに手を出したら割に合わない。
それを思い知らせるために。
その方法を模索してるのだろう。
戦いに私情を挟むな。常に冷静であれ!
師から言われた言葉。
迷いを捨てろ、情に流されるな、そして恐怖を断ち切れ。
そう教え込まれてきた。
「無言の圧力でしょうね。須藤グループから手を引けという……」
「須藤グループ=九尾の狐ということね?」
「間違ってないと思います」
僕は晶さんに答える。
今までのプレッシャーもそう言う事だろう。
須藤グループは何かを企んでる。
今のスティンガーの運営を円滑にするための圧力?
片桐君からメッセージが。
グループチャットだ。
「気にすることないよ、今まで通りで問題ない」
「呑気なものですね。自分が同じ目に遭ったら冷静でいられるんですかね!?」
穂乃果さんが憤慨している。でも……。
「彼は同じ目に遭ってきた。この前の晩も一歩間違えたら死ぬ寸前のところを渡ってきた。自分の肉親だって攫われてる」
恵美が言う。
穂乃果さんは黙ってしまった。
どう穂乃果さんに声をかけて良いのか分からなかった。
穂乃果さんも被害者の一人なのだから。
「穂乃果!」
そう声をかけたのは中島君だった。
「穂乃果は攫われたり親を傷つけられたり酷い目に遭ってるのはわかる。でもそれをユニティのせいにするのは間違ってる。現実を受け入れなきゃ。もう逃げられない。駆け抜けるしかないんだ」
「中島君は他人事だからそう言えるのよ!」
「他人事じゃない!穂乃果って大切な人を傷つけられた一人の被害者だ。それだけじゃない、皆仲間を傷つけられてるんだ。他人事で済ませるような薄情な奴はユニティにはいないよ」
「なおさら手を引くわけにいかなくなったみたいね」
恵美が言う。
「そうね、ここで尻尾撒いて逃げたら皆に迷惑かける。何より私達が平穏を取り戻す事が出来ない」
晶さんが言う。
「まだ続ける気なんですか?」
穂乃果さんが言う。
「当然!」
恵美と晶さんが言う。
「……まずは須藤グループ、紅会のしっぽを見つけないとですね」
僕が言うと3人が頷いた。
須藤グループ・紅会の目的を掴むこと。それは僕の仕事じゃない。誠君達の仕事だ。
僕は言われた事を忠実に果たすのみ。
だけどその尻尾は依然として見つからないでいた。
(4)
信じられない!
バイトが終わって家に帰ると休まる時間が無い。
廊下のきしむ音が鳴るたびにびくっとなる。
そして隣の部屋のドアが開く音を聞いて胸をなでおろす。
何をしていても落ち着かない。
テレビを見ていても気がまぎれない。
仕方ないからユニティの皆とチャットをする。
「みんな無事?」
「今のところはね」
「大丈夫だよ」
「穂乃果は平気?」
平気なわけないけど
「うん、平気」
すると遠坂さんから個人チャットが届く。
「今日は大変だったね」
「はい……」
「怖いんでしょ?恐ろしいんでしょ?」
「遠坂さんはいいですね、片桐君がそばにいてくれるから」
「私も怖いよ」
え?
「私のせいで冬夜君が傷ついたら、もしものことがあったらどうしようって思うと怖い」
そうか……私のせいで隆司君が傷ついたらと思うと怖い。
私の電話に着信が入った。
遠坂さんからだ。
「もしもし?」
「多分一人で怯えてるだろうからって冬夜君が言うから電話してみた~。大丈夫?」
私は今思ってる事を全部遠坂さんにぶつけた。
ユニティへの不満も込めて。
「多分そうだろうと思った」
遠坂さんには隠し事は通用しないのだろうか?
「女性陣はみんな同じだよ。ただ考え方が違うだけ。穂乃果は真鍋君と考え方が同じなんだね?」
真鍋君と?
「大切なものを失いたくないから、失う事を恐れているから。だから迷っている」
「遠坂さんは違うんですか?」
「私は冬夜君に背中を預けてるから、冬夜君に隠れてるから。その代わり冬夜君の背中を支えてる。飛び出すタイミングにちゃんと飛び出せるように、私は大丈夫だよって足に力を込めて震えを止めている」
「遠坂さんは強いんですね」
「強い弱いの問題じゃない気の持ちようだよ」
「どういう意味ですか?」
「私のせいで冬夜君がタイミング間違えてミスったらいやだ。だから後ろで支えてるの。今だよって送り出してあげるの」
「足を引っ張るなって事ですか?」
「中島君は前に飛び出す役割じゃない。真鍋君と同じ。ユニティを維持する係。穂乃果も一緒だよ。二人でユニティを支えてればいい」
片桐君が最も怖いのは自分が傷つく事じゃない、他の人を巻き込んで怪我させてユニティを空中分解させることだと遠坂さんは言う。
「多分今はまだ序の口。これからもっと激しくなると思う。その時に私達が笑っていられればユニティの力になる」
私達の役割は見知らぬ恐怖におびえる事じゃない、見知らぬ明日に希望をもって笑っている事だという。最後に勝つのはユニティだと信じて。
私や真鍋君でも力になれる?
「冬夜君は言っていた。『皆で勝とう』って」
「うん……勝とうね」
「もう大丈夫かな?」
「ありがとう……」
「また何かあったら電話ちょうだい。いつでも相談に乗るから。うちの指揮官様は大変なんだよ。皆の事をずっと考えてる」
「遠坂さんも大変だね」
「えへへ~。じゃあまた」
「また、今度ナポリタン奢りますって伝えてください」
「冬夜君喜ぶよ。また」
電話は終わった。
その時呼び鈴が鳴っている。
誰だろう?
ドアを開けると隆司君が立っていた。
荷物が多い。
「しばらくここに泊めてもらうよ」
「え?」
「今穂乃果を一人になんてさせられない。事件が片付くまでここにいさせて」
隆司君も私の事気にとめてくれてるんだ。
私も背中を隆司君に委ねよう。
二人でユニティを守ろう。
それが私達に出来る最大限の戦い。
(5)
私は外で子供の帰りを待っていた。
そろそろ送迎バスがつく頃だ。
なのにまだくる気配が無い。
いやな予感がする。
電話をかけるがなかなかつながらない。
やっとつながった
「うちの光莉と朱莉が帰ってこないんですけど」
「それが……」
教諭が言う。
バスはとっくに出たのに皆帰ってないという。
いやな予感が現実化した。
でも私が家を空けている間に子供たちが帰ってこないというケースもある。
身動きできずにいると、主人から電話があった。
「光莉と朱莉帰ってないか!?」
「帰ってないけどどうしたの?」
「やっぱり!」
「ねえ、何がやっぱりなの?」
主人は言う。
組織的な犯行。
地元内の幼稚園殆どで誘拐事件が起きてるという。
私はその場に崩れ落ちる。
「おい真由美!大丈夫か!?」
「子供たちはどうなるの……?」
「相手の要求待ちだ。何を企んでるのか分からない」
何て理不尽な犯行なんだろう?
恐怖と怒りで頭が混乱する。
「送迎バス付の幼稚園だけの犯行だ、目的はまだ分からない」
その時FAXが届く。
俺達に手を出すとこうなる unity。
ユニティ、最近世間を騒がせているグループ。
ただの身内グループだとテレビではやっていたが。
そのことを主人に知らせる。
「それは多分はったりだ!ユニティはそんなグループじゃない!」
主人はユニティの事を知っているようだった。
「でも犯人の像は絞り込めた。ありがとう真由美。また捜査が進んだら知らせる」
そう言って主人は電話を切った。
私は泣き叫んだ。
床を叩いた時だった。
上の階で爆発音が聞こえた。
ジリリリリ……。
火災報知器が鳴る。
私はすぐに非難した。
火災は1時間ほどで消し止められたが、そこの部屋は空き部屋になっていたらしい。
誰が火をつけたのかも分からない。
爆発音がしたことを消防士に知らせる。
「真由美!!」
主人だ!
私は主人に抱きつく。
「あなた、光莉と朱莉は!?」
「まだ、なんの要求も来ていない!それよりこの火災は!?」
「わからない、突然爆発音がして」
「すいません、ちょっと通して」
主人が現場に向かう。
30分くらいして主人が戻ってきた。
主人の険しい表情を見て婦警だったころの勘がよみがえる。
「またユニティ?」
「ああ、完全にやられた」
「あなた、犯人像が絞れたと言ってたわね。何かユニティの関係があるの……」
「ああ……。多分敵対組織の仕業だ」
「敵対組織?」
エゴイストもアーバニティも潰れたと報じられていた。
まだ敵対組織がいるの?
主人に聞きたかったが主人は上司と電話中だ。
「今現場見てきました。壁に大きく描かれてありました『俺達に手を出すとこうなる unity』と……」
全く同じ犯行声明だ。
「警視正の方はどうですか?同じですか……」
同じ……?同じ事件が同時に発生してるの?
電話を終えた主人に聞いてみた。
「ああ、全部で20ヵ所近く同様の爆発があった。何処にも書かれてあったよ。同じメッセージが」
全部同じようなマンションの空き部屋を狙っていたらしい。
時限爆弾によるものらしい。
どうやって侵入したのかは察しがつく。
オートロックを解除して部屋に侵入し爆弾を置いてメッセージを残し逃走したのだろう。
オートロックの解除をするくらいだ。ドア錠なんてないも同然だろう。
時限爆弾の設置だからアリバイなんてあってないようなものだ。
発動の時間しかわからないのだから。
あとは地道に防犯カメラに不審人物が映ってないかを見るしかない。
そんな地道な捜査をすぐにやってのけるのがユニティというグループだそうだった。
(6)
「だから俺達のせいじゃないって!」
「じゃあ、誰のせいだっていうんだ!?」
「それを調べるのが警察の仕事だろうが!」
「嘘の証言は後で不利になるぞ!?」
「まずは俺達がやったって立証するのが先じゃないのか?まさかメッセージ一つで俺達を疑ってるんじゃないだろうな?」
「手がかりが他にない以上君達を疑うしかないんだよ」
「てがかりならいくらでもあるだろう」
俺は不毛なやりとりをこの刑事二人とやっていた。
1時間半も同じやり取りをしていたら苛立ちも来る。
我慢の限界に達しようとしていた時遠坂警視正と渡瀬警部補がやってきた。
「その子を釈放するんだ今すぐに」
「ここは南署の管轄です。勝手な真似をされたら困りますな」
「その子の胸のバッヂを見てから言うんだな」
俺の胸にはいつもつけて行動するようにと言われていたバッヂが着けられてあった。
桜の代紋にJSSと刻まれたバッヂを見て刑事二人は俺をすぐに釈放した。
「いつもすまんな……」
「俺達を名乗ったそうですね……」
「ああ、ご丁寧に犯行声明を残してある」
「正志!!」
玄関で待っていた美嘉が駆け寄ってきた。
「随分長かったな」
「話の通らないおっさんでな」
「サツなんてみんなそんなもんだろ?」
警察官二人の前で話す話題じゃないな。
「……それで君達はこれからどうするつもりだね」
遠坂警視正が話を振ってくれた。
「帰って冬夜達と相談です」
とはいえ、人質の救出が最優先だろうな。
幼子にまで手を出すとは放っておくわけには行かない。
ましてや俺達の名前を騙るとは俺達に喧嘩を売ってるのも同然の行為だ。
「……むちゃはしないでくれ。君達の『捜査』を邪魔しないように便宜は図っておく」
「ありがとうございます」
「……本来なら私達が動かなきゃならないんだが」
「上からの圧力ですか?」
「署長が自ら陣頭指揮を執るといいだしてね。怪しいと思わないか?」
渡瀬警部補が言う。
真っ黒だな。
「渡辺君、実は今回の事件、娘二人が巻き込まれてるんだ。頼む。助けてやってくれ」
「任せてください」
「任せとけ!そういうのならこっちも遠慮はいらねえ!」
その後美嘉と家に帰る。
帰る途中つけられていることに美嘉も気づいたようだ。
「正志……」
「分かってる」
俺達はそのまま家に帰ると駐車場に車を止める。
車を降りるとバイク2台と車1台から男が出てきた。
見た感じ石原君から聞いた感じの男はいない。
俺たち相手にプロはいらないといったところか。
「……舐められたものだな」
「てめーら五体満足で帰れると思うなよ」
美嘉がぽきぽきと指を鳴らす。
相手の持ってる得物は刃物に鈍器にスタンガン。
全員で6人。
「美嘉を抑えるのが俺の役割なんだが生憎俺の虫の居所も悪くてな。悪く思うなよ」
男が無言で手を振ると6人で同時に襲い掛かる。
去年末に倣った武術・夢幻流は不殺を誓いかつ一撃で戦闘不能にさせる武術。
ナイフを突き出してくるとその手を掴みのびきった腕の肘に目掛けて手刀を叩きこむ。
人間打ちどころを見極めると腕の骨を折ることなど造作でもない。
次に鈍器を振り下ろすのを最小の動きで躱し相手の頭を掴み顎を自分の膝にぶつける。
顎を砕かれ血を垂らしながらのたうち回る男。
スタンガンを持ってる男は既に怯えて逃走を図ろうとしてる。
いつもなら逃がしてやっても良かったんだが今日は生憎と機嫌が悪くてな。
襟をつかむとそのまま投げ飛ばす。
自分たちが乗ってきた単車にぶつかり、単車が倒れてくる。
身動きが取れずジタバタする男に俺は近づく……。
「た、助けてくれ、何でも喋るから」
「お前たちはスティンガーの連中だな?」
「そうだ」
「警察署から出たところを狙おうとして追尾した」
「その通りだ」
「九尾の狐は別行動をとってるから動けない」
「あんたの言う通りだ」
「お前たちの頭は須藤グループ」
「間違いない」
「そうか……」
俺は片足を上げると男の肩にめがけて踏みつける。
「は、話が違う」
「助けるとは言ってない。俺の機嫌は悪いと警告した」
俺が肩を踏みつけると軽い音と同時に男の悲鳴が聞こえる。
俺が3人片付ける頃残りの3人を一人で袋にする美嘉を止める。
既に3人とも意識が無かった。
警察に通報する。
パトカーが駆け付けて俺達も捕まえられようとするが、遠坂警視正の言っていたことは本当だったようだ。
胸につけていたバッヂをみせるとお咎めなしでパトカーは走り去っていった。
これからは全員バッヂをつけて行動するように。
そう皆に徹底した。
(7)
その晩遠坂家に食事に呼ばれた。
父さん達も一緒だった。
まさかまた、婚姻届をもちだすんじゃ……。
「冬夜君、今日の事件の事は知ってるね?」
誘拐事件と同時爆破事件。
両方にユニティがやったと仄めかすメッセージが残されている。
その話か。
ちょうど僕も聞きたかったことがあったんだ。
「知ってます。渡瀬警部補のお子さんも誘拐されたそうで」
「中央署の署長が陣頭指揮を取り出してね……あからさまに怪しくないか?」
「怪しいですね」
太陽の騎士団が絡んでる。多分間違いない。
「警察の捜査は身動き取れない。そこで君たちに依頼したい」
「どのみち喧嘩を売られたんです。放っておく手は無いでしょう」
「……そう言ってくれると助かる」
「冬夜君~渡瀬さんはパパさんお気に入りの新米刑事なの~おばさんからもお願いするわ~」
「わかりました」
僕達も世話になったしね。
「バッヂをつけている間は君達は自由に動ける。警察も止めることは出来ない。好きに行動してくれ……といいたいんだが」
「愛莉に無茶はさせません」
「愛莉だけじゃない、君もだ……話は聞いてる。九尾の狐とやりあったそうだね」
「はい……完全にやられました」
「怪我が無かっただけでもよしとしなさい。気を付けてくれ。娘を未亡人にはしないでくれ」
「わかりました」
その後食事をして、家に帰ると風呂に入って愛莉が風呂に入ってる間にスマホを見る。
渡辺君がさっそく襲われたらしい。九尾の狐は別行動中。多分誘拐事件に関わっているのだろう?
さてここからどうするかだ。
人質の救出は優先しなければならない。
しかし何の要求どころかコンタクトが無い。
人質の場所特定は警察と誠と公生がやっきになっているだろう。
同時爆破の理由がよくわからない。
共通してるのは爆破されたのはオートロック式の高層マンション。そして壁にユニティを名乗るメッセージ。
爆破に使用されたのは青い鳥に持ち込まれた時限爆弾と同じ作りの物。
直感で紅会の仕業だと思った。
九尾の狐の犯行だとしたらあまりにもお粗末すぎる。
誠からメッセージが。
「冬夜の言う通り紅会の連中で間違いない」
決め手となったのは全員共通して黒いスーツを着ていて黒いスーツケースを持ち運んでいた事。
あとは誘拐犯の居場所特定か。
ユニティに変わったことがある。
それは
「俺……友人にあたってみます。スティンガーに関係ある人間がいないか」
「僕も聞いてみます。バイト仲間とかに」
「片桐君、マンションの名前教えてくれない?オーナーを洗ってみるわ」
皆が協力的になった事。
でも僕は言う。
「一人で無茶しないで。今はまだ狐は寝てるけどいつ暴れだすか分からないから」
「わかった」
「わかりました」
皆の行動は好意だけ受け取っておこう。
「冬夜君、おまたせ~持ってきたよ~」
愛莉は酎ハイを持ってきた。
「何かいい案は浮かびそうですか?指揮官様」
「まだ何も。手がかりが無さすぎる」
「そうだねぇ~」
愛莉も一緒に悩んでる。
悩んでる時間は無い。人質を取られている。
しかも要求も何もない。
「恵美さんUAVなんて持ってないよね?」
さすがにあるわけないか?
「必要なら出すわよ?プレデターでいい?」
そういやあったね
「多分場所は限られていると思う。地元の全園児送迎バスを置ける場所なんて」
「それを探せばいいのね」
「うん」
「すぐに仕度するわ」
「よろしく」
「何か案思いついたの?」
愛莉が聞いてくる。
「まあね」
「どんな案?」
「相手がカードを切らないなら強引に見る手段」
「急かすの?『早く切ってよ~』って……」
「……それいいかもね!」
メッセージを送る。
「……本気でやるの!?」
「やってみる価値はある」
「わかったわ……、すぐに手配する」
愛莉の頭を撫でてやる
「さすが愛莉だね」
「えへへ~」
「じゃ、今日はもう寝ようか?」
「もう寝ちゃうの?」
「寝れるときに寝よう?」
「は~い」
やや不満気味だったが愛莉は大人しくベッドに入るとすやすやと眠りについた。
僕も眠りにつく。
どんな危機も愛莉となら切り開いていける。
そんな気がした。
この事件がユニティ反撃の手がかりにきっとなる。
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