優等生と劣等生

和希

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5thSEASON

恋とはどんなものかしら

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(1)

「冬夜君おかわりあるよ~」
「じゃあ、おかわり~」

愛莉の機嫌は至っていい。
亜依さんとカンナ、恵美さんに奈留の機嫌も悪くは無い。
しかしその他女性陣と男性陣に漂う気まずさ。
このままではまずいんじゃないのか?
それは渡辺君も気づいていたようで。

「皆おはよう。ちょっと話を聞いてくれないか。今後の予定なんだが……」

渡辺君の話が止まったのはきっと女性陣の視線が突き刺さっているから。

「今後の予定なんだが片づけをした後解散希望者だけ残って湯布院に行こうと思うんだが……」
「その前に片づけておくことあるんじゃない?」

僕が切り出した。

「そうだな、昨夜の件についてちゃんと話しておくべきだな」

渡辺君が言う。

「もういいです。この人たちにどれだけ訴えても理解してもらえないことは分かりました」

一ノ瀬さんが言う。

「穂乃果、落ち着こう。そんな態度だと中島君も話しづらいよ」

愛莉が宥める。

「愛莉はいいね。物分かりのいい彼氏さんで」
「冬夜君も分かってもらえない時あるよ?」
「でも車はやめてもらえたじゃないですか」
「そのうち分かってもらえるよ」
「怪我してからじゃ遅いんだよ!」

一ノ瀬さんが叫ぶ。
男性陣からは何も言わない。
ここで「事故っちまうやつは不運と踊ってしまったんだよ」って言える奴がいたらある意味褒めたい。

「一ノ瀬さん、なんでもかんでも頭ごなしに否定するのは良くない」

僕がそう言った。

「私だって彼の趣味に口出ししたくありません。怪我するかもしれないのに心配するなって方が無理じゃないですか?」

一ノ瀬さんが言う。

「命のやり取りはもう懲り懲りだと思ってたんですけどね」

酒井君が言う。

「そうですね、あんな危険はもうたくさんだ」

石原君も言う。
ただ問題は中島君はその死線をくぐってない事。
誠も桐谷君も同じだろう。まだ本当の危機を感じてないから出来るんだろう?
そんなの本当は知らない方が良いかもしれないのだけど。

「一ノ瀬さんはどうしたらいいと思う?運転を止めろってのは無理だよ?」

都会ならともかくこんな地方で車無しの生活なんて不可能に近い。

「無茶な運転は止めてってだけです」
「って一ノ瀬さんは言ってるけど中島君はどうする?」
「どうするって止めるしかないでしょ」
「じゃあ、どうしてまた始めたの?」
「それはせっかく買った車の限界を試したいから……」
「限界を見たらやめられる?自分で体験したいとか思わない」
「そりゃ思うでしょうね」
「そしたらやっぱりサーキットに行くしかないよ。サーキットなら安全だ」
「でもジムカーナ走るのだってライセンスが必要なんじゃ……」
「ジムカーナ走る程度のライセンスも取れないで車の限界を見たいとか土台無理だよ」

それにサーキットも走れないで峠道を高速で駆け抜けようなんて無謀に等しい。

「俺も冬夜に賛成だな。飛ばしたいならサーキットに行くと良い。ドリフト練習会なんてのもあるらしいぞ」

渡辺君が言う。
だけど僕は違う。

「でも一ノ瀬さんの本音を言えばサーキットで走るのだって認めたくないはずだよ」
「車で走るのを諦めろってことですか?」
「無謀な運転をしなきゃいいだけだよ。ただ山にピクニックに行くくらいで目くじらたてたりしないさ。ねえ一ノ瀬さん」
「私も隆司君の運転技術を否定してるわけじゃない。でも僅かでも危険があるなら止めたい。それだけです」

一ノ瀬さんが言うと中島君がだまってしまった。

「昨日さ、誠達が男のロマンって言ってたけど、じゃあ女のロマンってやつを聞いてやったことあるの?」

僕は皆に問いかけていた。

「一方的に自分の主義を通すんじゃなくて相手の主張も受け入れてあげなきゃ」
「具体的にはどうすればいいんだ?」

中島君が聞く。

「別に飛ばさなくても峠は峠だろ?」

危険を冒すような運転をするべきじゃない。ただそれだけの話。

「……わかりました」
「だ、そうだけどどうかな?一ノ瀬さん」
「普通にドライブに連れて行ってくれる分には構いません」
「そうだよね。彼女を怖がらせるような運転は止めるべきだよね」
「でも本当に分かってもらえたんでしょうか?」

一ノ瀬さんが聞いていた。

「それはお互いの信用じゃないかな?」
「その信用していいかどうかが問題なんですけど」

中島君は二度目だと主張する。

「それうちの瑛大にも言えるわ。二度としないって保証が欲しい」
「誠もそうだな」
「しょ、翔ちゃんも……」
「高槻さんも」

皆が保証が欲しいらしい。
愛莉も悩んでいるらしい。

「冬夜はどうするべきだと思ってるんだ?お前の中では決まってるんだろ?」

佐(たすく)が言った。

「そんなの女性陣の中では決まってるんじゃない?」
「え?」

女性陣がざわつく。

「諦める、別れる、離婚する。最終的に行きつくところはそこでしょ?」

それができないなら、何度でも何度でも繰り返して注意するしかない。
いつかきっと分かってくれることを信じて。

「随分と男寄りの意見ね、片桐君」

恵美さんが言う。

「それだと男を信用して信じられなくなったら諦めろ。泣くのは女性だけじゃない」
「それも仕方ないんじゃない?」

公生が言う。

「そんな約束も守れない男について行くなら仕方ないと思うけど?」
「公生は車に乗ったことがないからわかんないんだよ」

中島君が反論する。

「ってことは中島君は守る気がないってこと?」

僕が中島君に聞いた。

「守りたいけど守る誓約みたいなのが欲しいんだよ」
「それが一ノ瀬さんなんじゃない?」
「あっ!」

中島君は気づいたようだ。
誠達も気づいたと思う。

「僕は車と愛莉どっちを選ぶと聞かれたら迷わず愛莉を選ぶ。みんなはどうなの?」

反論する者はいなくなった。

「話はこれでお終いにしていいかな?」
「本当に信じて良いんですか?」

一ノ瀬さんが聞いた。

「それは僕に聞くより中島君に聞いた方がいいんじゃない?」
「隆司君、今度こそ信じていいんだよね?」
「今度こそ守るよ、信じてくれ」
「話は終わったようだしそろそろ準備しようか?」

渡辺君が言うと皆が片づけを始めた。

「冬夜お疲れ。すまんかったな。本来は俺の役割だったんだろうが……」
「同じ世界を体感した人しか分かんないこともあるだろうし平気だよ」

僕が渡辺君に言った。
結局皆湯布院に行くことになった。
その際誰も無謀な運転をしなかったのは言うまでもない。

(2)

「猫さん見に行こう~」
「そんなに引っ張らなって」
「神奈はどっちがいいんだ?」
「どっちでもいい」
「亜依は?」
「私もどっちでもいいかな?」

僕と愛莉、多田夫妻、桐谷夫妻は一緒に行動していた。
昼食を食べた後通りを見て回っていたのだが、愛莉は必ず猫を見たがる。
ゲージに入れられた猫をじっと見ている愛莉。
本当に猫好きなんだな?
ショッピングモールに行った時にも必ず愛莉は猫とか動物を見たがる。
女性は動物が好きなんだろうか?
亜依さんやカンナもあんまり興味が無さそうにしてた割には猫に見とれている。
猫は眠いのかわからないけどじーっとしているのをただじっと見つめている。

「もういいだろ?次行こうぜ!」

桐谷君は退屈したらしい。

「もうちょっとだけ、愛莉あの猫可愛くない?」
「私あっちの方が好きだな~神奈は?」
「わたしはあれかな~」

それぞれ好みの猫を見つけてじっと見ている。
誠はグッズを見て回ってる。桐谷君は欠伸をして亜依さんが飽きるのを待っている。
僕は愛莉と一緒に猫を見ている。

「冬夜君も猫好きなの?」

「そうだね」とか「興味ない」とかは禁句。
「愛莉の次に好きだよ」とかも禁句。見え透いたお世辞は不快にさせる。

「好きだよ、愛莉も好きならうちで猫飼う?」
「うぅ……冬夜君のお世話で精いっぱいだから見てるだけでいい~」
「そっか、残念」

その後に猫について語るといい。
「肉球がいいよね」とか「あの猫毛がふさふさしてるね」とかでいい。専門的知識はいらない。話を合わせる程度でいい。
後は愛莉が満足するまで付き合ってやる。
それだけで愛莉の機嫌は良くなる。

「そろそろ行こっか?時間もあまりないし」
「まだ行きたいところあるの?」
「オルゴール!」
「私アニメのお店行きたい」
「トリックアート見たい」

誠は何も言わない。
桐谷君は「前も行ったろ」と言ってる。

「近いのはオルゴールだね。順番にまわろうか?」
「そうだね」
「いこいこ」
「ほら、お前らもついてこいよ」

オルゴールの店で愛莉に付き合う。
愛莉が好きそうなのを選んで「これなんてどう?」と見せてやる。

「あ、これ可愛い。これにする。曲どんなのがあるかな~」

後は愛莉が気が済むまで選曲させてやればいい。

「冬夜君どっちがいいと思う?」

両方聞きながら愛莉の顔を見る。
だいたいどっちかで少し口角が上がる。
そしたらそっちを選んでやればいい。

「冬夜君と本当に好みが合うよね」

愛莉は喜んでいる。

「瑛大少しは付き合え!」
「前にも買ったろ!」

桐谷君と亜依さんは喧嘩している。

「誠どっちがいいと思う?」
「神奈このアーティスト好きだったよな。こっちにしたら?」

誠達は上手くやっているらしい。
次はアニメの店か。
アニメといっても有名アニメ製作会社の専門店みたいなところ。
愛莉と二人でCDを見る。

「冬夜君レゲエのバージョンは持ってたよね?」
「車に積んでるよ」
「このボサノバ調ってのもいいんじゃない?」
「じゃ、買おうか?」
「うん!」

あまり興味のない誠とカンナは外で待っていた。

「悪いね。付き合わせて」
「ああ、気にするな」

カンナが答える。

「それにしてもお前遠坂さんの扱い慣れてるな」

誠が言う。

「誠だって神奈の扱い方くらい分かってるんじゃないのか?」

その時店の中から叫び声が聞こえる。

「こんなにでかいぬいぐるみ買ったって邪魔になるだけだろ!」
「お前のしょうもない玩具も並べてるんだから少しくらい私の買い物にも付き合え!」
「……まあ、あれよりはな」
「そうだな」

誠とカンナが言う。

「冬夜君買ってきたよ~」
「ちょっと桐谷君達待ってようか?」
「うん、神奈達は何も見ないの?」
「私アニメとかあまり興味ないんだ」
「うぅ……悪いことしたね?」
「気にするな、次は私の行きたいところなんだし」

桐谷夫妻が出て来ると次の目的地トリックアートに向かう。

「トーヤ悪い写真撮ってくれないか?」
「ああいいよ、じゃあ撮るぞ」
「冬夜君私達もとってもらおう?」
「そうだな、カンナ頼めるか?」
「ああ、いいぜ」

出口でつまらなさそうに待っている桐谷君と不機嫌な亜依さん。
よくこの二人今まで続いたな……。

「そろそろ時間だし戻るか?」
「そうだな」
「冬夜君、麻耶さんやりえちゃんにお土産買って帰りたい」
「それなら洋菓子屋で何か買ってこうか?」
「うん!」

洋菓子屋でチーズケーキを買って帰る。
ついでにソフトクリームとかも食べる。
今日は許してくれた。
愛莉は上機嫌だ。
そうして僕達は集合場所に戻った。
戻るとまだ時間がある。
例の喫茶店で時間を潰す。

「神奈と愛莉が羨ましいよ」

亜依さんが不満を漏らす。
桐谷君の態度がまずかったね、完全に。

「2人は湯布院来たことあるの?」
「まあ、毎年来てるかな」
「そうなんだ、じゃあしょうがないのかな~」

そういう問題じゃないと思う。

時間を潰すと駐車場に戻る。
まだ誰も集まってなかった。
僕達は待つことにした。

(3)

「どれにするの~」
「え~と……」

お土産屋さんで私は何を買おうか悩んでいた。
その待ち時間にイライラしていたらしい。
急いで選ばなきゃ。

「翔ちゃんどっちがいいかな?」
「どっちでもいいよ、好きなの選びなよ」
「う~ん」

そうはいっても悩む。
しびれを切らした翔ちゃんが両方奪うとレジに持って行った。

「両方選べば済む話だろ?」

そういう問題じゃない気がするんだけど。

「早く次行こう?」

翔ちゃんが選んだのは小さな動物園。色々な動物と触れ合う事が出来る。
翔ちゃんは入っては見たもののどの動物にも触れ合うことがなかった。
気味が悪い、おっかない。引っかかれそう。
じゃあ、最初から入る必要なんてなかったんじゃ。

「女性って動物好きなんだろ?だったら入っておこうと思っただけだよ」

その言葉でどれだけ癒される事か。

「じゃあ、犬見に行ってもいいかな?」
「本当に動物好きなんだね。いいよ」

ゲージの中に犬がいる。
あまり動かないけど犬を見てる。
5分も経てば翔ちゃんが飽きる。

「もういいだろ。行こ?」
「もうちょっとだけ?」
「僕お腹空いたよ。何か食べたい」

そう言えば昼ご飯食べてなかった。

「ご、ごめんなさい」

何処かいい店ないかな?
お蕎麦屋さんがあった。

「翔ちゃんここ行こう?」

翔ちゃんとおそばを食べると通りを一通り歩いてみて回って引き返す。
翔ちゃんが変わった事。
人混みの中ではぐれないように手を繋いでくれてる事。
それだけで私は幸せだった。
そうして翔ちゃんと初めてのショッピングは終わった。

「また来ようね?」
「買い物なら街中でもいいだろ?」
「それでもいいよ」

翔ちゃんと来れるなら。

「そ、そうか」

戸惑ってる翔ちゃんと集合場所に向かった。

(4)

俺達は昼ご飯を食べると美術館を見て回った。
真鍋夫妻、椎名夫妻、そして俺と海未の6人。
海未の作品の参考になればと誘ってみた。
海未は作品に食い入るように魅入ってる。
真鍋夫妻と椎名夫妻も満足してるようだ
タイムカプセルのような手紙のサービスがあるらしい。
皆それぞれ書き込んでいく。
3ヶ月後~5年後に届くという。
それを楽しみに待っていた。

「椎名君。事務所の皆にお土産買わないと」
「それならいい店知ってます」

椎名君の勧める店に入ってお土産を買う。
某有名作家の画展があった。
そこにも入る。海未はやはり魅入っている。
自動車博物館なる物もあった。
中を見て回る。
懐かしい自動車が展示されてあった。
真鍋にはそそるものがあったらしい。

「竹本が見たらきっと喜ぶでしょうね」
「竹本は何してるんだ?」
「咲さんと行動してるって聞いたけど」
「ま、集合場所に行けばいるでしょ?」
「もうそんな時間か?」
「慌てることないわ。ここからそう離れてないから」

真鍋はぬれ煎餅や金賞コロッケを食べて満喫したようだ、
俺達は集合場所に戻った。

集合場所には片桐君、遠坂さん、多田夫妻、桐谷夫妻、朝倉さん、如月君、渡辺夫妻が待っていた。

「時間適当な奴等ですから」

渡辺君が言う。
しょうがないから待つことにした。

(5)

ソフトクリームを食べながらはちみつを見てる。
買うのかどうかは知らないけど。
僕達は外でジュースを飲みながら道行く人々を見ていた。

「結構人がおおいですね」

石原君が言う。

「まあ、行楽シーズンだから仕方ないと言えば仕方ないんでしょうけど……」

亀梨君達が言う。

「おまたせ~」

女性陣が出てきた。
奈留はジュースを片手にしている。

「公生次猫見に行きたい」
「わかったよ」

基本奈留が主導権を握っていた。
奈留は女性陣とわいわいやってる。
猫を見た後もオルゴールやらお菓子屋さんやらいろいろ見て回る。
男性陣たちはいい加減疲れてくる。
しかし女性陣達は容赦ない。

「ちょっと興毅たちも一緒に選んでよ!」

森園さんが言う。
やれやれと亀梨君と三沢君が動く。
そんな彼等の警護に回る石原君。
もちろん、一緒に動いている恵美さんを守りながら。
もう平和なのに……。

「公生もこっち来て選んでよ!」

麗しの君に呼ばれた。
こうして4時間ほど色々店を見て回る。
集合場所にもどって座ってる僕に石原君がジュースを差し出してくれた。

「お疲れ様」
「ありがとう」
「でも疲れてるって態度あまり出さない方が良いですよ。奈留の不評買います」

石原君が言う。
とはいえ4時間も歩き回っていたら疲れるわけで。
奈留はというと集合場所付近にある民芸館を覗いている。

「公生来て、すごいよ~」
「……頑張って」

石原君に言われて僕は奈留の元へ行く。

「ねえ、これなんかすごくない?」
「すごいね」
「……公生は私といて疲れる?」
「そんなことないよ」

僕は慌てて否定する。

「嘘、なんか一緒にいてつまらなさそうだった」
「そんなことないよ、ただ奈留と二人でゆっくり回りたかったなって」
「大きくなったら二人で来ようね」
「そうだね」
「奈留ちゃん。皆集まってきたよ」

恵美さんが呼んでる。

「は~い、戻ろ?公生」
「そうだね。戻ろう」
「また来ようね」
「そうだね」

笑う事しかできずにいた。

(6)

買い物を一通り済ませるとカフェで一休みしていた。
咲は沢山買い物をしている。

「咲は湯布院来るの初めて?」

僕は咲に聞いていた。

「あんたとくるのは初めてね」
「て、事は他の人とはきたんだ?」
「まあね……地元のデートスポットなんて限られてるでしょ?」

確かに。

「大体のところは連れて行かされたわ。何度も」
「そんなにデートに誘われたんだね?」
「まあね……」

触れてはいけない過去だったかな?

「でも悠馬と来ると全然世界が変わる。初めて来たときのようにはしゃいでしまった。初めて来たときも愛想ふりまいてただけかもしれない。くたびれてたかな」
「そうなんだ?」
「あんたは湯布院来たことあるの?」
「……彼女とくるのは初めてだよ」
「彼女じゃない、嫁さんとでしょ」

似たようなもんじゃないか?

「あれ?竹本君達じゃない?」

木元夫妻と中島先輩と一ノ瀬先輩、それに高槻君と千歳さん、水島君と佐倉さんさんがいた。

「君達も休憩?」

木元先輩が聞いてきた。

「ええまあ」
「一緒の席いいかな?」
「どうぞ」

咲が言った。

「伊織さんはどう?初めてのデート」
「楽しかったです」

彼女は嬉しそうだ。喜んでいるのだろう。
彼女は自分が行ったところを紹介し始めた。
結構動いたんだな。
高槻君に疲労の色がうかがえる。
ご愁傷様。
片桐君ほどじゃないけど僕にもわかることがある。
彼女を喜ばせることが出来るのはきっと君だけだと思うよ。
中島先輩と一ノ瀬先輩も仲直りできたようだ。
しばらく談笑すると咲が金鱗湖を見たいという。
僕達は店を出た。
餌を買ってやる。
咲は楽しそうにえさをやっている。
そろそろ時間だ。
咲に伝える。

「もう少し餌残ってるから」

そう言って餌やりに夢中だ。

「お~い。竹本君~」

咲良さん達が呼んでいる。

「お前らも湖見にきてたのか?」
「そうです」
「もう時間過ぎてるぞ?」
「本当だ」

時計を見る。

「悠馬終わったよ」
「咲急ごう。皆待たせてる」
「ちょっとくらい待たせても平気だよ」
「そういうわけには行かないよ」

咲の腕を引っ張って先を急ぐ。

「分かったからそんなに急かさないで!」

咲が抗議する。

「おせーぞ竹本!」

美嘉さんから怒られた。

「すいません」
「まあ、浮かれるのもわかるけど。時間は守らないとだな」

渡辺君が言う。

「僕達が最後ですか?」
「いや、まだ西松君がきてない」

僕達は西松君を待っていた。

(7)

深雪とは何度も来たことがある湯布院。
それでも深雪はやりたい事があったらしい。
人力車に乗る。
湯布院の街中を見て回る。
そのあと遅めの昼食を食べて店を回っていると晴斗たちに会った。

「あれ?西松先輩じゃないですか?」

金鱗湖周辺のカフェで話をする。

「彼女と来てみたかった場所」だったらしい。

二人で来たかったけどそんな時間が無かった。
余裕すらない一年だったからな。
この一年で行きたいところを網羅するつもりらしい。

「まあ、バイトがあるから全部は無理っすけどね」
「バイトにかまけて白鳥さんを蔑ろにしたらだめよ」

深雪が釘をさす。

「わかってるっす。西松先輩は湯布院は何度も来たんすか?」
「まあね……」
「地元の観光場所なんて限られてるから」

深雪も言う。
ただ深雪と来たことはそんなにない。
空白の時間を取り戻すようにいろんな場所に行ってるが、深雪も働きだしてからなかなか時間が合わない。

「晴斗、そろそろ時間」
「あ、やばっ!西松先輩も急いだほうがいいっすよ!」
「そうだな」

店を出て、集合場所に向かうとみんな揃っていた。

「これで全員かな?」

渡辺先輩が言う。

「じゃあ、皆お疲れ様。ここで解散だ。地元組で暇がある奴はファミレスで飯食って帰ろう」
「俺達は別府で食って帰るっす。春奈送らないと駄目だし」
「そうか、じゃあ。他の奴等で来れる奴いたら来てくれ」

渡辺先輩が言うと皆車に乗る。

「私達はどうする?」

深雪が聞いてくる。

「行きたいんだろ?」
「そうね」

聞くまでもなかった。
俺達は渡辺先輩の車を追って地元のファミレスに向かった。

(8)

僕達は地元のファミレスに来ていた。
さすがに40人近くは一緒に座れないので席を別れた。
僕達のテーブルには多田夫妻、桐谷夫妻、渡辺夫妻、ちぃちゃん、高槻君がいる。

「ちぃはどうだった?湯布院デート」
「楽しかったよ。色々みてまわったし」

誠がちぃちゃんに話している。

「渡辺君は何してたの?」
「俺か?俺は飯食って食べ歩きしてたよ」

それは羨ましい。
美嘉さん達が色々話をしている。
僕はちぃちゃんの顔を見ていた。
ちぃちゃんは浮かれてるだけかもしれないけど、合宿前よりは少しだけ恋愛に関心を抱いているようだ。
まあ、いろいろあったしね。
ここから先は高槻君次第。

「これから先も色々イベントあるからな?ちぃ楽しみにしとけよ」

誠が言う。
ちぃちゃんはうなずいていた。
やはり少し見方が変わったようだ。

「冬夜の応援もしてやらないとだし、今年も大変だな」

渡辺君が言う。
いよいよ時期が迫ってきた。
その前の試合もあるけど。
調整はうまくやってる。
大丈夫なはず。

「今年の合宿もいろいろあったな」

渡辺君が言う。

「大体瑛大と多田君が原因だけどね」

亜依さんが言う。

「もういい加減許してやれ。二人も十分反省してるさ」

渡辺君がそう言って笑う。

「だといいんだがな……」

カンナが溜息をついている。
食事を終えて談笑すると店を出て解散した。



「ねえ?冬夜君?」
「どうした愛莉?」

僕達は家に帰って風呂に入ると部屋で酎ハイ飲んで寛いでいた。

「冬夜君はもう車さんに無茶させないって決めた理由ってなに?」
「あの勝負じゃない?あんな屈辱を味わうくらいなら綺麗にやめた方が良い。そう思っただけだよ」
「勝負を止めた理由は?冬夜君すっごい怒ってた」
「愛莉と喧嘩してまでやる理由がなかったからかな」
「冬夜君の判断基準はいつも私なんだね」

愛莉の気分は沈んでるようだ。
どうせしょうもない事考えてるんだろう。
愛莉の頭を撫でてやる。

「そういう話はもう無しにしようって話したろ?」
「うぅ……」
「愛莉だって僕を基準に動いてるんだ。僕だって愛莉を基準に動いて良いだろ?」
「うん……」

何か楽しい話題考えてやらないとだな?

「後半の夢のリゾート楽しみだな」
「うん!いっぱい乗り物乗るんだ~」

愛莉は喜んでいる。
愛莉を喜ばせる為だったらどんな努力も惜しまない。
その笑顔を見ているだけで幸せなんだから。

「ところで冬夜君」
「どうしたの?」
「冬夜君珍しく食べ物につられなかったね?」
「愛莉のご機嫌とることに必死だったからね」
「うぅ……私のせいなんだ」
「折角のデートなんから当然だろ?」
「そっかぁ~」
「さてと、そろそろ疲れたし寝るか?」

ぽかっ

「冬夜君昨日の約束忘れたの!?」

忘れてた。

「馬鹿だな、一緒に寝るって意味だよ」
「怪しい」
「……おいで」
「うん!」

ちぃちゃんも少しずつ恋というものに興味を持ち始めている。
怖がらずにもっと入ってきてごらん。
徐々にでいいから。
きっと滑り出したら気持ちのいい物になるから。
そんな事を考えながら僕は愛莉との一晩を過ごしていた。
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