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5thSEASON
しるし
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(1)
寒い。
冬夜君は寝るまでのタイマーで冷房を効かせる。
それはいい。寝苦しい夜もあるだろう。
問題はタイマーの長さだ。
冬夜君は平気で8時間とかつけっぱなしにする。
そのくせ寒がってタオルケットを奪い私が奪い返すと私に抱きついてくる。
それはいいんだけど。えへへ~。
時間になって冷房が切れると冬夜君は起きる。
起きてまた冷房をつけて寝る。
私は寒い。
言った方がいいのかな?
麻耶さんと相談かな?
そう言えば最近変わったことがある。
その前に出来れば起こしたい。私が出来ないお嫁さんだと思われたくない。
「冬夜君起きて!朝だよ!」
冬夜君の体を揺すって起こそうとする。
すると……
「愛莉の体あったかいね、気持ちいいよ」
「そういうことはやることやってからって言ってるじゃない!それにもたもたしてるとまた……」
コンコン。
麻耶さんだ。
「冬夜君起きないとまずいって!」
ていうか離してくれないと困るよ。
「愛莉ちゃん今入ってもいい?」
しょうがない。今日もお願いするか。
「麻耶さ~ん」
私が麻耶さんの名前を呼ぶとびくっと冬夜君の体が動く。
でももう遅い。
「冬夜、毎朝毎朝いい加減にしなさい!さっさと顔洗って着替えなさい!」
「いきなり踏み込んでくることないだろ?」
「朝から踏み込まれたらまずい事する気なのかいあんたは!自分の立場を考えなさい。愛莉ちゃんは冬夜の為を想って起こしてくれてるのにあんたときたらいつもいつも……」
最近恒例の麻耶さんのお説教。
でも時間がない。
「冬夜君、そろそろ出ないと朝食遅れちゃうよ!」
「愛莉ちゃんこういう時は朝食抜きでもいいのよ!そのくらい言わないとこの子は駄目」
冬夜君は嘘のように機敏に部屋を駆け出した。
「ほらね?」
そう言って麻耶さんは微笑む。
母親ってすごいんだな。
前にりえちゃんに叱られた時もそうだったけど。
冬夜君の日課を済ませて冬夜君がシャワーを浴びてる間に朝食を作る。
そして朝食を食べるのだけど……。
「いきなりがっつくまえに愛莉ちゃんに一言あってもいいんじゃないのかい?冬夜がシャワーを浴びてる間汗だくでご飯作ってたのよ!言う事あるでしょう!?」
「麻耶さん、これが私の勤めだから……」
「愛莉ちゃん甘やかしたら駄目!まだ未婚なのに甘やかしてたら結婚した後もっと苦労するわよ」
「う、うぅ……」
「愛莉、毎朝ありがとうね」
「うん」
「お父さんもよ!人様の娘さんにご飯作らせておいて何も言わないなんておかしいでしょ!」
「愛莉ちゃんいつもありがとうね。美味しいよ」
「はい」
冬夜君私と結婚したら変わっちゃうのかな?
「じゃ、じゃあ私シャワー浴びてきますね」
そう言って席を立つ。
「ごゆっくり~」
「じゃ、僕も部屋で準備するかな……」
「俺もそろそろ出勤かな」
逃げ出そうとする二人を逃がさない麻耶さん。
「片づけくらいしてから行きなさい!特に冬夜!あんたは遊んでるだけでしょう!?」
「わ、わかったよ」
「朝から怒鳴るな麻耶。しわがまた増えるぞ……」
「なんですって!?」
「ひっ、やりますやります。ほら冬夜手伝え」
「う、うん」
そしてシャワーを浴びて出ると冬夜君はまだお叱りを受けてる。
「大体あんたは愛莉ちゃんを嫁にとらないでいながら嫁扱いしてるのがだめなの!まだ遠坂家の大事な娘さんなのよ!」
「愛莉に聞こえるとまずいからそういう話は止めろって……」
「まずい事いってないでしょ!もう少し愛莉ちゃんを労わってやりなさいってだけでしょ!?大体結婚しないってのはあんたの我儘ってこと理解してるの!?」
「麻耶さんその話は私が良いって言ったから大丈夫だよ」
私が仲裁に入った。
「愛莉ちゃんを叱ってるわけじゃないの。数年この子を見てきてあまりにも愛莉ちゃんに甘えてるから叱ってるだけ。愛莉ちゃんが悪いわけじゃないのよ」
「そ、それはわかってるんだけど……」
そんなに叱ったら可哀そうだよ。
私の我儘で家に来てるのに。
「冬夜言ったわよね。あんたと愛莉ちゃんは結婚したものとしてみなしてるってその結果がこの体たらくなら母さんゆるしませんからね!」
「わ、わかったよ。愛莉戻ってきたから行くね。ほら愛莉部屋に行こ?」
「う、うん」
「肩を揉んであげると少しでも労わってあげなさいよ。あんたは父さんに似たわね。父さんも聞こえてない振りしてたってわかってるんですからね!」
「お、俺は無罪だろ!」
「愛莉ちゃんをこき使ってるのは同じでしょ!」
私達はこの隙に部屋に逃げ込んだ。
冬夜君は手にマグカップを持ってる。
部屋に入るとそれをテーブルの上に置く。
髪を乾かしながら冬夜君に謝る。
「ごめんね冬夜君私のせいで……」
すると冬夜君は背後から私に抱きついてくる。
「僕が気が利かなかったのは事実なんだから気にしないでいいよ。いつもありがとうね、愛莉」
「うん……」
コーヒーを飲んでからマグカップを持って行こうとすると冬夜君がそれを取る。
「僕が片付けるよ。愛莉はその間に化粧していて」
「でも……」
「今、ピリピリしてるからさ」
「うん……」
中々戻ってこない。
そうッと部屋から出て様子を伺う。
コップの洗い方で注意を受けてるようだ。
うぅ……私が行った方がいいのかな。
化粧を終えると女子会の方にメッセージを送ってみた。
結婚すると旦那様って変わるものなの?
大体の人が変わると言った。
手伝ってた家事も全くしなくなる。何もしないだけならまだいい!余計な仕事を増やす!等々。
「トーヤの奴なんかやらかしたのか?」
神奈が聞いてきた。
朝のいきさつをメッセージで流す。
「それはおばさんの言う通りだな」と神奈。
「前にも言ったと思うけど結婚までの躾って大事よ?」と恵美。
冬夜君が戻ってきた。
「冬夜君戻ってきたからまた後でね」
そう伝えてスマホを仕舞う。
「参った参った。ちょっと洗剤つけすぎたくらいであんなにガミガミ言われるとは思わなかったよ」
冬夜君は洗剤をいっぱいつけてキッチンを泡だらけにするのが好きだ。
多分それで怒られたんだろう。
「化粧終わったよ」
「じゃ、行こうか」
二人で家を出て学校に向かった。
学校に向かうと2階から練習を見てる。
全体練習をしてる中一人個人練習をする冬夜君を眺めてる。
冬夜君が変わる?
想像つかないよ。
スマホが鳴る。
メッセージのようだ。
女子会のグループだ。
今週末緊急女子会やるよ!
亜依の提案だった。
「どうしたの?」
「愛莉の相談に皆で乗ってやろうと思ってさ」
「そうそう、トーヤの馬鹿。結婚前からそんなんじゃ結婚後絶対苦労するぞ!いや!同棲始めてから苦労する!」
「神奈の言う通りだ間違いない!」
経験者が言うから間違いないんだろうけど。冬夜君を見る……。
やっぱり想像つかないよ。朝のやり取りだってスキンシップを楽しんでるって言ったらそれはそれで嬉しいし。
時間になって練習が終わった。
私は下に降りて冬夜君を待ちながら、千歳ちゃんと佐倉さんに聞いてみた。
「そう言われると佐は家事は何やらせても駄目ですね。精々自分の部屋を片付けるくらいかな」
部屋をかたづけるだけまだいい。冬夜君は脱ぎ散らかす、出したものを元の位置にしまわない。ベッドもぐちゃぐちゃのままだ。
「兄はまったくしませんね。実家にいる時からそうでした。ママからずっと怒られてた。きっと今でも神奈さんに任せっきりなんでしょうね」
誠君の家事は酷いとは神奈から聞いてる。手伝うどころか邪魔になるって言ってた。
「片桐先輩はどうなんですか?家事やってくれるんですか?」
「うぅ……」
言えばやってくれるんだけどな~。やっぱりお嫁さんの仕事じゃないのかな?って気がして……。
「お待たせ、あれ?どうしたの3人とも?」
冬夜君が私達を見て言った。
「ど、どうもしないよ?ねえ、佐倉さん」
「そうですね……」
佐倉さんの冬夜君を見る目が冷たい。
冬夜君にはすぐ気づかれた様だ。
「朝の事まだ気にしてるの?気にしなくていいから……愛莉は負担になってなんかないよ」
「うん……」
「気にするのは片桐先輩じゃないですか?行こ、佐」
「あ、ああ。冬夜お前何かやらかしたのか?」
「佐!」
「ああ、わかったよ」
冬夜君は困惑していた。
(2)
「おい、トーヤ週末愛莉借りるからな?」
「別にいいけどどうかしたのか?」
カンナの機嫌が悪い様だ。何かあったのか?
「『どうかしたのか?』じゃないだろこの馬鹿!」
「おいおいどうした?昼間っから何を騒いでるんだ?」
渡辺君が来た。
「片桐君の愛莉ちゃんに対する扱いについてちょっと問題があるみたいなのよ」
恵美さんも来た。
その隣にいる石原君は気まずそうな顔をしている。
ひょっとして朝の事か?
「朝の事ならちゃんと謝ったよ?」
「で、これからどうしようって思ったわけ?」
恵美さんが聞いてくる。
どうって言われても愛莉は僕が家事をすると嫌がる、精々年末の大掃除に駆り出されるくらいだ。あとは休日に家から出して家事をさせないように労わってやるだけ。最近はバスケがあってなかなか構ってやれないから夜構ってやろうかとは思っていたけど。
その事を女性陣に話した。
「この馬鹿!本当に将来の事考えてるのか?」
カンナが言う。将来!?
「予言してやるよ今からそんなんじゃ仕事始めたら夜は仕事でくたびれたから早く寝させてか会社の飲み会あるから遅くなるかのどっちかだ!?そうだな?花菜」
カンナが花菜さんに聞くと花菜さんは僕を睨みつけたまま頷いた。
「間違いありません!そして休日は社会人バスケがあるからって出かけるんです!私の主人がそうだから」
話が読めてきた……佐を見る。佐も佐倉さんに睨まれている。
「佐は家事とかどうしてるんだ?」
話題をそらしてみた。
「佐の家のキッチンは何度片付けてあげても遊びに行くたびに腐海になってます!洗濯も着替えが無くなるまでしないし」
佐は頭を抱えている。
「それで冬夜はどうなんだ?」
「冬夜君は全くしないわけじゃないんだよ?」
渡辺君が聞くと愛莉が答えた。
「前に私が風邪で寝込んだ時に料理まで作ってくれたの~」
「それ完全に愛莉ちゃん洗脳されてるわよ。逆を言えば出来るのに奥さんが倒れるまで何もしないってことじゃない!」
「うぅ……」
恵美さんに論破される愛莉。
「だから週末緊急で女子会開くわ。愛莉ちゃんの洗脳を解いてあげないと」
そう言う話の流れだったか。愛莉を見る。申し訳なさそうに僕を見てる。……いい機会かもしれない。
「わかったよ、そういう事なら愛莉の不満聞いてやって」
「冬夜君?」
「不満の原因作ったお前が言える立場か!トーヤ!」
「その話なら美嘉から聞いてる。うん、女子会いいんじゃないか?」
「渡辺も分かってるのか!?こうでもしないと駄目なくらい愛莉の不満溜まってるんだぞ!」
「そのガス抜きを神奈さん達がしてくれるんだろ?たまには女子だけで集まってわいわいやるのもいい」
渡辺君が言う。
女性陣はまだ何か言いたげだったが、取りあえずこの場は収まった。
しかし僕達だけだと思った被害は思わぬところにまで影響が出ていた。
(3)
喫茶青い鳥。
今日は朝から晶ちゃんの機嫌が悪い。原因はのほほんとナポリタンを食べてる片桐君にあるんだけどね。そんなのんびり食べてる場合かい?
しかし気になる、遠坂さんの機嫌がそんなに悪くない事、むしろ片桐君に申し訳なさそうにしてる点。
それは僕や晶ちゃんだけが気になってたわけじゃなさそうだ。
一ノ瀬さんが声をかける。
「遠坂さん、そんな態度だから片桐君が頭に乗るんですよ」
「あ、いや冬夜君は悪くないんだよ。ちょっと朝素直に起きてくれないくらいで……」
本当は嬉しいんだけどバスケの練習も大事だからと遠坂さんは言う。
「そうやって甘やかすといつか悲惨なことになりますよ!こんなはずじゃなかったって思ってからでは遅いんです」
「片桐君は体調管理までしてくれる婚約者で羨ましいな」
「隆司君は黙ってて!」
「……はい」
「部活が大事、バイトが大事、仕事が大事、そう言って皆面倒事を押し付けるのが男なんです!」
「私も穂乃果の言う事が正しいと思うわよ。愛莉は花嫁修業のつもりで片桐君の家に同居してるんだろうけどこの際片桐君を鍛えなおした方がいいんじゃない?」
片桐君ごめん、僕この人に逆らえないから。
「食べたお皿お下げしますね」
マイペースの北村さん。
「美里!あなたも今のうちよ。男を自由にさせておくとどういうことになるか今きっちり見ておきなさい!」
「純一さんに限ってそれはないですから」
そんな面倒事に付き合ってられないと言わんばかりに厨房に入っていく北村さん。
カランカラン。
咲さんが入ってきた。
「あら?咲珍しいわね」
「まあね、今日はバイト無いから……それより……」
咲さんも片桐君を睨みつける。
「よくまあのほほんと食べていられますね。自分の立場考えたことありますか?」
「わ、私が悪いの。冬夜君をせめないで」
遠坂さんが片桐君をかばう。
「こんな献身的な遠坂さんを見て何とも思わないんですか?私旦那が悠馬で良かった!」
女性陣の辛辣な口撃を飄々と受け流す片桐君。ある意味タフだね。
「この際だからはっきり言わせてもらうわ。この期に及んで男性陣から片桐君を責める声が聞こえないのは何故なのかしら」
晶ちゃんが言う。
我関せずを決め込んでいた男性陣がびくっとする。
「晶さん男って大体そうなの!肝心な時に全然役に立たない!普段は偉そうにしてるくせに」
花菜さんが言う。
「冬夜君そ、そろそろバスケの時間だよ?行こう?」
「そうだね。マスターご馳走様」
片桐君は気にも止めてないようだ。ある意味尊敬するよ。
片桐君は会計を済ませると出ていった。
その後は残った男性陣に矛先が向かう。
恨むよ片桐君。
(4)
「ふふっ」
「ははっ」
私と聡美さんはメッセージを見て笑っていた。
「何か面白い事があったのかい?」
倭(やまと)さんが聞いてくる。
メッセージであったことを伝える。
「なるほどね~」
倭さんも笑っている。
「未来さんあなたも行く?」
聡美さんが聞いてくる。
「行きますよ。社長もでしょ?」
「そうね、この子たちだけだと不安だし」
「そんなに怒ってるのか?女性陣……」
真鍋君が聡美さんに聞いていた。
「そうね、かなり頭にきてるみたい。自分たちの不満も抱えてるんでしょうね」
聡美さんが笑いながら答える。
「仕事中にスマホはどうかと思いますよ?お二人共」
友坂主任が来た。
「ごめんなさい、つい気になってね」
聡美さんが謝る。
「申し訳ありません」
「あ、今週末が無理なら来週末でも開けておいてください」
友坂主任が言う。
「どうしたの?」
「未来さん研修期間終わったでしょ。歓迎会してあげられてなかったからしてあげようと思って」
「そういわれてみればそうね。いい機会だしやりましょうか?」
聡美さんと友坂主任が話をしてる。
「じゃ、それまでにさっさと今の案件キリをつけましょう」
聡美さんが言うと作業に戻った。
(5)
「じゃあ、今日のお題は言うまでもなく片桐君の態度についてよ!徹底的に対策を練りましょう」
亜依言うと宴の始まり。
亜依が一から説明を始める。
すると恵美が言う。
「やっぱり愛莉ちゃんが甘やかし過ぎね」
うぅ……。
「駄目よ恵美。それじゃ愛莉が悪いみたい。あくまでも悪いのは片桐君なんだから」
晶が言う。
「何度も言うけど冬夜君はお願いしたら何でもしてくれるよ。私の我儘もちゃんと聞いてくれる。朝だってちょっと甘えん坊なところがあるけどそれは嬉しいし」
「……てなわけ、まずは愛莉の洗脳を解かないと駄目みたい」
亜依が言う。洗脳って言い方は無いと思うんだけど……。
「愛莉、結婚してからじゃ遅いんだぞ。伊織にも言える事だけどダメなところは結婚する前に矯正しないと駄目だ!」
「神奈の言う通りだ、やっぱり二人共甘やかしすぎだ!」
神奈と美嘉さんが言う。
でもそれまで静かに飲んでいた深雪さんが言う。
「私は遠坂さんや朝倉さんが羨ましいと思うけど」
「どうしてそうなるんだ?」
神奈が聞いてた。
「だって二人共彼を溺愛してるじゃない。出来てるじゃない。それだけ相手に強く惹かれてる証拠よ?」
「それってダメ男を好きになる典型的なパターンじゃないですか!」
咲が反論する。
「そもそも片桐君は本当にダメ男なの?言われたら家事をこなす。自分の彼女が倒れたら一生懸命に介護する。それがダメ男のやる事?」
「そこまでこき使ってたのは事実でしょ?」
「そうやって倒れたり喧嘩したりする度に2人で解決法を見出す事が出来る遠坂さんを羨ましく思えるけど。朝倉さんだってそう。如月君合宿前と後じゃ全然違うでしょ」
深雪さんが言うと誰も反論しなくなった。
「私もそうだったわ。結婚してすぐ喧嘩してそれですぐ彼が改善してくれた。そうやって結ばれていくんじゃないの?」
「私も西松さんに同感ね……。前にも言ったけど、じゃあ他の誰かに替える?そんなことできないでしょう?」
聡美さんが言う。
「片桐君も遠坂さんに無理をさせてる事は重々承知してるはずよ?だから休みの日は遊びに行こうって約束作ったんでしょ?一緒にいる時は二人でのんびり過ごそうって決めたんでしょ?二人ならきっと片桐君が社会人になっても上手くやっていけるわ」
「冬夜君は本当に優しいんだよ。遠征で離れてる時も毎日電話してくれるし。家事はほどほどになって言ってくれるし。私ただの居候なのに」
私は必死に訴えた。冬夜君はダメ男なんかじゃないって。
だからみんなに聞きたかった。「結婚するとそんなに変わる物なの?」って。
「いろんな顔を持つ旦那を知ってるのはあなた達だけじゃないの?カレンダーに記入したいくつもの記念日よりいくつも色んな思い出残してるんじゃないの?」
いろんな角度から見てきた冬夜君。例え共に生きれない日が来たってどうせ冬夜君を好きになってしまう。
狂おしく鮮明に冬夜君の記憶で埋め尽くされていく。
皆だってそうじゃないの?
聡美さんが言う。
「結局とーやはどうしたらいいんだ?」
美嘉さんが聞く。
「今のままでいいじゃない?彼は彼なりに遠坂さんの事を思ってる。遠坂さんと向き合っている。心の声もちゃんと聞いている」
聡美さんがそう答えた。
泣いたり笑ったり不安定な想いだけどそれが私と冬夜君のしるし。
「皆だって同じことが言えるのよ?」
深雪さんが言う。
皆いろんな角度で自分の相手を見ている。そのどれもがフィルターを通してみれば素晴らしいものに変わっていて愛を思い知る。
「結局愛莉ののろけ話かよ」
神奈が言う。
「それだけじゃ面白くないわね。そうね。伊織と千歳と美里!あんた達はどうなの?」
亜依が言う。
突然話を振られて戸惑う3人。
話題は明るい方に向かって行った。
「あの……」
奈留が言う。
「どうして私が呼ばれたのか分からないんですけど……?私はまだ家事も出来ないし独り立ちもしていない」
「奈留それは……」
亜依が何かを言おうとした時だった。
「皆が教えてくれたんだよ。結婚することの素晴らしさを。こんなに幸せなんだって。公生と結婚するんでしょ?」
「そうだな、奈留にも仕込んでおかないといけないな」
私が言うと神奈が言った。
「そうなんですか?じゃあ公生もそうなのかな?」
ほえ?
「公生ってことは男性陣か!?どこに行くって言ってた?」
神奈が何かを察したようだ。
「それが男だけの秘密だからって教えてくれなくて」
……冬夜君。
私は無言でスマホでメッセージを送る。
皆がそれを見ている。
「冬夜君今どこにいるの?」
「そっち終わったの?ごめん男性陣で飲んでるから」
「どこにいるの?」
「迎えには行けないからタクシーで帰って。僕も代行で帰るから」
「一緒に帰った方が安く済むよ?どこにいるの?」
「ああ、でもこっちまで来させるの悪いし愛莉たちも2次会あるんだろ?こっちも2次会あるから……」
「どこにいるのかいいなさい!」
「……駅前の焼き鳥屋」
皆を振り返る。
「2次会は無しだな」と神奈
「そうね……あいつらまたろくでもない事企んでる。多分多田君と瑛大が首謀者だろうけど」と亜依
「主人も怪しいです。最近また帰り遅くなってて……」と花菜。
「みんなでお迎えにあがりましょうか?」と聡美さんが微笑む。
私達はうなずいた。
(6)
「しかし冬夜も災難だったな!」
誠が言う。
「まあね、でも愛莉たちもいいガス抜きになるならいいよ」
皆の所も大方そうだったんだろ?
「しかし、女性陣だけガス抜き何て話はねーよな」と誠が言う。
「じゃあ、2次会はあの店行くか!」と瑛大が張り切る。
「安いし若くてきれいな子いるんだぜ」と瑛大が語る。
その時愛莉からメッセージが届いた。
……内緒にしてたのになんで外に出かけている事がバレているんだ?
隠し通せるものでもないな。
愛莉たちの店から離れてるし。言っても問題ないだろ?
出る時間早めにすれば問題ない。
そう思ってた。
僕達は時間いっぱいまで飲んで騒いで盛り上がる。
そして時間が来て2次会の会場に移動しようとした時だった。
「さてと、じゃここからがお楽しみですな。瑛大」
「楽しみはこれからだぜ誠」
この二人の楽しみは大抵ろくな事じゃない。
移動するなら早い方が良い。
そう思った時だった。流石に20人程の集団がいたら気づくだろう。
僕達は悪寒を感じた。
誠と瑛大から距離を置く。
「で、どんな店なんだ?瑛大」
「そりゃもう色んなサービスしてくれる店だよ。誠」
二人は大分飲んでる。当然注意力も散漫になる。
こういう時いち早く逃げ出せるのが僕なんだが生憎と遅かった。
振り返ると愛莉が僕の腕を掴んでにっこり笑っている。
見渡すと皆それぞれのパートナーに掴まれていた。
店の入り口は結構奥まったところにあって明りがあまりない。
だから二人は気づかなかったんだろう。
皆を包む巨大な殺気に。
「ぼ、僕は帰るから!まだ子供だし!行こうか奈留」
「まあ、公生はしょうがねーな!せめてあと1年待ってからだな」
「僕も折角愛莉が待ってるし先に帰るよ」
「連れねーこと言うなよ冬夜偶には付き合え」
「付き合いって大事だぞ。嫁の顔色生きてるだけが人生じゃねーって言ってるだろ」
「え、瑛大そのくらいにしといたほうがいいんじゃないのか?大分飲んでるし」
檜山先輩も不味いと感じてるらしい、すでに手遅れだけど。咲良さんが隣にいる。
誠、お前フィールドに立つと選手の位置関係とか把握できるんじゃなかったのか?今その能力を発揮するときだぞ。
しかし二人は全く気付かない。
「何ぼさっとしてるんだよさっさと行こうぜ!」
「そうだ!こんな日くらい思いっきり羽伸ばそうぜ!ガミガミ五月蠅い奴もいないし!」
「瑛大、その店大丈夫なんだろうな?ぼったくりなんかじゃないよな?」
「ネットの口コミもいいし僕も何回か言ったことあるから大丈夫」
「なら行こうか?今日は無礼講だ自由にいこう!」
「そうだ誠、今日の俺達を阻むものはない!」
そう言って行こうとしたとき二人の手を二人が掴んだ。
「なんだよ、男同士で手をつなぐなんて気持ち悪いぞ瑛大」
「誠こそなんだよ気持ち悪いな」
誠と桐谷君の手を組んでるわけじゃない。
じゃあ誰?
誠と桐谷君は互いの顔を見てそして隣にいる者の存在に気が付く。
「ほう?楽しい所でサービスもいいのか?じゃあ私達も一緒に行くかな?亜依」
「ガミガミ五月蠅い奴って誰の事をいってるのかな?瑛大」
「か、神奈?」
「あ、亜依?」
二人はやっと気づいた。
そして女性陣の怒りが爆発する。
「どうした?楽しい所なんだろ?早く案内しろよ?」
「何度も言ったことがあるんだろ?今さら迷う事もないだろ?」
「お前たちは自由なんだろ?」
「阻むものはないんだろ?連れて行ってもらおうか?」
神奈と亜依さんは笑っている。笑っているだけに怖い。
「い、いや。奇遇だな。神奈達も近くの店だったのか?」
「亜依もいるならいるって言ってくれれば……」
誠と桐谷君は笑って誤魔化そうとする。
「2人とも冬夜君に変な情報流すのは止めて!」
「公生も!」
「僕は行くって言ってないだろ!」
「僕も言ってない」
僕と公生は弁明するが聞いてくれるわけもなく……。
「正志!お前は……」
「ははは、参ったな」
笑って誤魔化す渡辺君。
「あ、僕迎えが来たから帰るよ。じゃあお先に。行くよ奈留」
「公生!話はまだ済んでない!」
公生は無事に逃げおおせたらしいがしばらく奈留は口をきいてくれなかったらしい。
問題は僕達だ。
「冬夜君、今日飲みに行くなんて一言も言ってなかったでしょ!」
「ほ、ほら女子会の日くらい男子だけで集まろうって話が急に持ち上がってさ~……」
「言い訳になってないもん!」
「望も同罪よ……きっちり説明してもらおうかしら?」
「に、二次会の場所まで聞いてないよ!さっき聞いたんだ!」
「善君。私には興味持たないのにそういう店には興味持つのね?」
「そ、それは誤解だ。僕は行くなんて一言も言ってない」
石原君も酒井君も慌てて弁解してる。
「かずさん!あなたって人は!」
「花菜!待てこれは事故だ!!」
「佐!!」
「お、俺達は本当に何も聞かされてない」
だよな。皆それぞれ逃げ出す機会をうかがっている。
こういう時は僕の研ぎ澄まされた感覚が発揮される時。
「愛莉行くよ!」
「え?あ、うん……」
がしっ
「トーヤ。いつも逃げられると思うなよ……」
「とーや。今日は逃がさねーぞ。2次会?上等じゃねーか?どこか良い店無いか?」
「それはもういつものカラオケしかないでしょ。朝まで徹底的に話聞いてやろうじゃない?」
「そうだな!朝まで徹底的にだな!」
カンナと美嘉さんと亜依さんに行く手を阻まれた。
「冬夜君ごめんね……って言うと思ったら大間違いですからね!」
愛莉にも見捨てられた。
こうして僕達はカラオケ店で朝までみっちりとお説教されるのだった。
寒い。
冬夜君は寝るまでのタイマーで冷房を効かせる。
それはいい。寝苦しい夜もあるだろう。
問題はタイマーの長さだ。
冬夜君は平気で8時間とかつけっぱなしにする。
そのくせ寒がってタオルケットを奪い私が奪い返すと私に抱きついてくる。
それはいいんだけど。えへへ~。
時間になって冷房が切れると冬夜君は起きる。
起きてまた冷房をつけて寝る。
私は寒い。
言った方がいいのかな?
麻耶さんと相談かな?
そう言えば最近変わったことがある。
その前に出来れば起こしたい。私が出来ないお嫁さんだと思われたくない。
「冬夜君起きて!朝だよ!」
冬夜君の体を揺すって起こそうとする。
すると……
「愛莉の体あったかいね、気持ちいいよ」
「そういうことはやることやってからって言ってるじゃない!それにもたもたしてるとまた……」
コンコン。
麻耶さんだ。
「冬夜君起きないとまずいって!」
ていうか離してくれないと困るよ。
「愛莉ちゃん今入ってもいい?」
しょうがない。今日もお願いするか。
「麻耶さ~ん」
私が麻耶さんの名前を呼ぶとびくっと冬夜君の体が動く。
でももう遅い。
「冬夜、毎朝毎朝いい加減にしなさい!さっさと顔洗って着替えなさい!」
「いきなり踏み込んでくることないだろ?」
「朝から踏み込まれたらまずい事する気なのかいあんたは!自分の立場を考えなさい。愛莉ちゃんは冬夜の為を想って起こしてくれてるのにあんたときたらいつもいつも……」
最近恒例の麻耶さんのお説教。
でも時間がない。
「冬夜君、そろそろ出ないと朝食遅れちゃうよ!」
「愛莉ちゃんこういう時は朝食抜きでもいいのよ!そのくらい言わないとこの子は駄目」
冬夜君は嘘のように機敏に部屋を駆け出した。
「ほらね?」
そう言って麻耶さんは微笑む。
母親ってすごいんだな。
前にりえちゃんに叱られた時もそうだったけど。
冬夜君の日課を済ませて冬夜君がシャワーを浴びてる間に朝食を作る。
そして朝食を食べるのだけど……。
「いきなりがっつくまえに愛莉ちゃんに一言あってもいいんじゃないのかい?冬夜がシャワーを浴びてる間汗だくでご飯作ってたのよ!言う事あるでしょう!?」
「麻耶さん、これが私の勤めだから……」
「愛莉ちゃん甘やかしたら駄目!まだ未婚なのに甘やかしてたら結婚した後もっと苦労するわよ」
「う、うぅ……」
「愛莉、毎朝ありがとうね」
「うん」
「お父さんもよ!人様の娘さんにご飯作らせておいて何も言わないなんておかしいでしょ!」
「愛莉ちゃんいつもありがとうね。美味しいよ」
「はい」
冬夜君私と結婚したら変わっちゃうのかな?
「じゃ、じゃあ私シャワー浴びてきますね」
そう言って席を立つ。
「ごゆっくり~」
「じゃ、僕も部屋で準備するかな……」
「俺もそろそろ出勤かな」
逃げ出そうとする二人を逃がさない麻耶さん。
「片づけくらいしてから行きなさい!特に冬夜!あんたは遊んでるだけでしょう!?」
「わ、わかったよ」
「朝から怒鳴るな麻耶。しわがまた増えるぞ……」
「なんですって!?」
「ひっ、やりますやります。ほら冬夜手伝え」
「う、うん」
そしてシャワーを浴びて出ると冬夜君はまだお叱りを受けてる。
「大体あんたは愛莉ちゃんを嫁にとらないでいながら嫁扱いしてるのがだめなの!まだ遠坂家の大事な娘さんなのよ!」
「愛莉に聞こえるとまずいからそういう話は止めろって……」
「まずい事いってないでしょ!もう少し愛莉ちゃんを労わってやりなさいってだけでしょ!?大体結婚しないってのはあんたの我儘ってこと理解してるの!?」
「麻耶さんその話は私が良いって言ったから大丈夫だよ」
私が仲裁に入った。
「愛莉ちゃんを叱ってるわけじゃないの。数年この子を見てきてあまりにも愛莉ちゃんに甘えてるから叱ってるだけ。愛莉ちゃんが悪いわけじゃないのよ」
「そ、それはわかってるんだけど……」
そんなに叱ったら可哀そうだよ。
私の我儘で家に来てるのに。
「冬夜言ったわよね。あんたと愛莉ちゃんは結婚したものとしてみなしてるってその結果がこの体たらくなら母さんゆるしませんからね!」
「わ、わかったよ。愛莉戻ってきたから行くね。ほら愛莉部屋に行こ?」
「う、うん」
「肩を揉んであげると少しでも労わってあげなさいよ。あんたは父さんに似たわね。父さんも聞こえてない振りしてたってわかってるんですからね!」
「お、俺は無罪だろ!」
「愛莉ちゃんをこき使ってるのは同じでしょ!」
私達はこの隙に部屋に逃げ込んだ。
冬夜君は手にマグカップを持ってる。
部屋に入るとそれをテーブルの上に置く。
髪を乾かしながら冬夜君に謝る。
「ごめんね冬夜君私のせいで……」
すると冬夜君は背後から私に抱きついてくる。
「僕が気が利かなかったのは事実なんだから気にしないでいいよ。いつもありがとうね、愛莉」
「うん……」
コーヒーを飲んでからマグカップを持って行こうとすると冬夜君がそれを取る。
「僕が片付けるよ。愛莉はその間に化粧していて」
「でも……」
「今、ピリピリしてるからさ」
「うん……」
中々戻ってこない。
そうッと部屋から出て様子を伺う。
コップの洗い方で注意を受けてるようだ。
うぅ……私が行った方がいいのかな。
化粧を終えると女子会の方にメッセージを送ってみた。
結婚すると旦那様って変わるものなの?
大体の人が変わると言った。
手伝ってた家事も全くしなくなる。何もしないだけならまだいい!余計な仕事を増やす!等々。
「トーヤの奴なんかやらかしたのか?」
神奈が聞いてきた。
朝のいきさつをメッセージで流す。
「それはおばさんの言う通りだな」と神奈。
「前にも言ったと思うけど結婚までの躾って大事よ?」と恵美。
冬夜君が戻ってきた。
「冬夜君戻ってきたからまた後でね」
そう伝えてスマホを仕舞う。
「参った参った。ちょっと洗剤つけすぎたくらいであんなにガミガミ言われるとは思わなかったよ」
冬夜君は洗剤をいっぱいつけてキッチンを泡だらけにするのが好きだ。
多分それで怒られたんだろう。
「化粧終わったよ」
「じゃ、行こうか」
二人で家を出て学校に向かった。
学校に向かうと2階から練習を見てる。
全体練習をしてる中一人個人練習をする冬夜君を眺めてる。
冬夜君が変わる?
想像つかないよ。
スマホが鳴る。
メッセージのようだ。
女子会のグループだ。
今週末緊急女子会やるよ!
亜依の提案だった。
「どうしたの?」
「愛莉の相談に皆で乗ってやろうと思ってさ」
「そうそう、トーヤの馬鹿。結婚前からそんなんじゃ結婚後絶対苦労するぞ!いや!同棲始めてから苦労する!」
「神奈の言う通りだ間違いない!」
経験者が言うから間違いないんだろうけど。冬夜君を見る……。
やっぱり想像つかないよ。朝のやり取りだってスキンシップを楽しんでるって言ったらそれはそれで嬉しいし。
時間になって練習が終わった。
私は下に降りて冬夜君を待ちながら、千歳ちゃんと佐倉さんに聞いてみた。
「そう言われると佐は家事は何やらせても駄目ですね。精々自分の部屋を片付けるくらいかな」
部屋をかたづけるだけまだいい。冬夜君は脱ぎ散らかす、出したものを元の位置にしまわない。ベッドもぐちゃぐちゃのままだ。
「兄はまったくしませんね。実家にいる時からそうでした。ママからずっと怒られてた。きっと今でも神奈さんに任せっきりなんでしょうね」
誠君の家事は酷いとは神奈から聞いてる。手伝うどころか邪魔になるって言ってた。
「片桐先輩はどうなんですか?家事やってくれるんですか?」
「うぅ……」
言えばやってくれるんだけどな~。やっぱりお嫁さんの仕事じゃないのかな?って気がして……。
「お待たせ、あれ?どうしたの3人とも?」
冬夜君が私達を見て言った。
「ど、どうもしないよ?ねえ、佐倉さん」
「そうですね……」
佐倉さんの冬夜君を見る目が冷たい。
冬夜君にはすぐ気づかれた様だ。
「朝の事まだ気にしてるの?気にしなくていいから……愛莉は負担になってなんかないよ」
「うん……」
「気にするのは片桐先輩じゃないですか?行こ、佐」
「あ、ああ。冬夜お前何かやらかしたのか?」
「佐!」
「ああ、わかったよ」
冬夜君は困惑していた。
(2)
「おい、トーヤ週末愛莉借りるからな?」
「別にいいけどどうかしたのか?」
カンナの機嫌が悪い様だ。何かあったのか?
「『どうかしたのか?』じゃないだろこの馬鹿!」
「おいおいどうした?昼間っから何を騒いでるんだ?」
渡辺君が来た。
「片桐君の愛莉ちゃんに対する扱いについてちょっと問題があるみたいなのよ」
恵美さんも来た。
その隣にいる石原君は気まずそうな顔をしている。
ひょっとして朝の事か?
「朝の事ならちゃんと謝ったよ?」
「で、これからどうしようって思ったわけ?」
恵美さんが聞いてくる。
どうって言われても愛莉は僕が家事をすると嫌がる、精々年末の大掃除に駆り出されるくらいだ。あとは休日に家から出して家事をさせないように労わってやるだけ。最近はバスケがあってなかなか構ってやれないから夜構ってやろうかとは思っていたけど。
その事を女性陣に話した。
「この馬鹿!本当に将来の事考えてるのか?」
カンナが言う。将来!?
「予言してやるよ今からそんなんじゃ仕事始めたら夜は仕事でくたびれたから早く寝させてか会社の飲み会あるから遅くなるかのどっちかだ!?そうだな?花菜」
カンナが花菜さんに聞くと花菜さんは僕を睨みつけたまま頷いた。
「間違いありません!そして休日は社会人バスケがあるからって出かけるんです!私の主人がそうだから」
話が読めてきた……佐を見る。佐も佐倉さんに睨まれている。
「佐は家事とかどうしてるんだ?」
話題をそらしてみた。
「佐の家のキッチンは何度片付けてあげても遊びに行くたびに腐海になってます!洗濯も着替えが無くなるまでしないし」
佐は頭を抱えている。
「それで冬夜はどうなんだ?」
「冬夜君は全くしないわけじゃないんだよ?」
渡辺君が聞くと愛莉が答えた。
「前に私が風邪で寝込んだ時に料理まで作ってくれたの~」
「それ完全に愛莉ちゃん洗脳されてるわよ。逆を言えば出来るのに奥さんが倒れるまで何もしないってことじゃない!」
「うぅ……」
恵美さんに論破される愛莉。
「だから週末緊急で女子会開くわ。愛莉ちゃんの洗脳を解いてあげないと」
そう言う話の流れだったか。愛莉を見る。申し訳なさそうに僕を見てる。……いい機会かもしれない。
「わかったよ、そういう事なら愛莉の不満聞いてやって」
「冬夜君?」
「不満の原因作ったお前が言える立場か!トーヤ!」
「その話なら美嘉から聞いてる。うん、女子会いいんじゃないか?」
「渡辺も分かってるのか!?こうでもしないと駄目なくらい愛莉の不満溜まってるんだぞ!」
「そのガス抜きを神奈さん達がしてくれるんだろ?たまには女子だけで集まってわいわいやるのもいい」
渡辺君が言う。
女性陣はまだ何か言いたげだったが、取りあえずこの場は収まった。
しかし僕達だけだと思った被害は思わぬところにまで影響が出ていた。
(3)
喫茶青い鳥。
今日は朝から晶ちゃんの機嫌が悪い。原因はのほほんとナポリタンを食べてる片桐君にあるんだけどね。そんなのんびり食べてる場合かい?
しかし気になる、遠坂さんの機嫌がそんなに悪くない事、むしろ片桐君に申し訳なさそうにしてる点。
それは僕や晶ちゃんだけが気になってたわけじゃなさそうだ。
一ノ瀬さんが声をかける。
「遠坂さん、そんな態度だから片桐君が頭に乗るんですよ」
「あ、いや冬夜君は悪くないんだよ。ちょっと朝素直に起きてくれないくらいで……」
本当は嬉しいんだけどバスケの練習も大事だからと遠坂さんは言う。
「そうやって甘やかすといつか悲惨なことになりますよ!こんなはずじゃなかったって思ってからでは遅いんです」
「片桐君は体調管理までしてくれる婚約者で羨ましいな」
「隆司君は黙ってて!」
「……はい」
「部活が大事、バイトが大事、仕事が大事、そう言って皆面倒事を押し付けるのが男なんです!」
「私も穂乃果の言う事が正しいと思うわよ。愛莉は花嫁修業のつもりで片桐君の家に同居してるんだろうけどこの際片桐君を鍛えなおした方がいいんじゃない?」
片桐君ごめん、僕この人に逆らえないから。
「食べたお皿お下げしますね」
マイペースの北村さん。
「美里!あなたも今のうちよ。男を自由にさせておくとどういうことになるか今きっちり見ておきなさい!」
「純一さんに限ってそれはないですから」
そんな面倒事に付き合ってられないと言わんばかりに厨房に入っていく北村さん。
カランカラン。
咲さんが入ってきた。
「あら?咲珍しいわね」
「まあね、今日はバイト無いから……それより……」
咲さんも片桐君を睨みつける。
「よくまあのほほんと食べていられますね。自分の立場考えたことありますか?」
「わ、私が悪いの。冬夜君をせめないで」
遠坂さんが片桐君をかばう。
「こんな献身的な遠坂さんを見て何とも思わないんですか?私旦那が悠馬で良かった!」
女性陣の辛辣な口撃を飄々と受け流す片桐君。ある意味タフだね。
「この際だからはっきり言わせてもらうわ。この期に及んで男性陣から片桐君を責める声が聞こえないのは何故なのかしら」
晶ちゃんが言う。
我関せずを決め込んでいた男性陣がびくっとする。
「晶さん男って大体そうなの!肝心な時に全然役に立たない!普段は偉そうにしてるくせに」
花菜さんが言う。
「冬夜君そ、そろそろバスケの時間だよ?行こう?」
「そうだね。マスターご馳走様」
片桐君は気にも止めてないようだ。ある意味尊敬するよ。
片桐君は会計を済ませると出ていった。
その後は残った男性陣に矛先が向かう。
恨むよ片桐君。
(4)
「ふふっ」
「ははっ」
私と聡美さんはメッセージを見て笑っていた。
「何か面白い事があったのかい?」
倭(やまと)さんが聞いてくる。
メッセージであったことを伝える。
「なるほどね~」
倭さんも笑っている。
「未来さんあなたも行く?」
聡美さんが聞いてくる。
「行きますよ。社長もでしょ?」
「そうね、この子たちだけだと不安だし」
「そんなに怒ってるのか?女性陣……」
真鍋君が聡美さんに聞いていた。
「そうね、かなり頭にきてるみたい。自分たちの不満も抱えてるんでしょうね」
聡美さんが笑いながら答える。
「仕事中にスマホはどうかと思いますよ?お二人共」
友坂主任が来た。
「ごめんなさい、つい気になってね」
聡美さんが謝る。
「申し訳ありません」
「あ、今週末が無理なら来週末でも開けておいてください」
友坂主任が言う。
「どうしたの?」
「未来さん研修期間終わったでしょ。歓迎会してあげられてなかったからしてあげようと思って」
「そういわれてみればそうね。いい機会だしやりましょうか?」
聡美さんと友坂主任が話をしてる。
「じゃ、それまでにさっさと今の案件キリをつけましょう」
聡美さんが言うと作業に戻った。
(5)
「じゃあ、今日のお題は言うまでもなく片桐君の態度についてよ!徹底的に対策を練りましょう」
亜依言うと宴の始まり。
亜依が一から説明を始める。
すると恵美が言う。
「やっぱり愛莉ちゃんが甘やかし過ぎね」
うぅ……。
「駄目よ恵美。それじゃ愛莉が悪いみたい。あくまでも悪いのは片桐君なんだから」
晶が言う。
「何度も言うけど冬夜君はお願いしたら何でもしてくれるよ。私の我儘もちゃんと聞いてくれる。朝だってちょっと甘えん坊なところがあるけどそれは嬉しいし」
「……てなわけ、まずは愛莉の洗脳を解かないと駄目みたい」
亜依が言う。洗脳って言い方は無いと思うんだけど……。
「愛莉、結婚してからじゃ遅いんだぞ。伊織にも言える事だけどダメなところは結婚する前に矯正しないと駄目だ!」
「神奈の言う通りだ、やっぱり二人共甘やかしすぎだ!」
神奈と美嘉さんが言う。
でもそれまで静かに飲んでいた深雪さんが言う。
「私は遠坂さんや朝倉さんが羨ましいと思うけど」
「どうしてそうなるんだ?」
神奈が聞いてた。
「だって二人共彼を溺愛してるじゃない。出来てるじゃない。それだけ相手に強く惹かれてる証拠よ?」
「それってダメ男を好きになる典型的なパターンじゃないですか!」
咲が反論する。
「そもそも片桐君は本当にダメ男なの?言われたら家事をこなす。自分の彼女が倒れたら一生懸命に介護する。それがダメ男のやる事?」
「そこまでこき使ってたのは事実でしょ?」
「そうやって倒れたり喧嘩したりする度に2人で解決法を見出す事が出来る遠坂さんを羨ましく思えるけど。朝倉さんだってそう。如月君合宿前と後じゃ全然違うでしょ」
深雪さんが言うと誰も反論しなくなった。
「私もそうだったわ。結婚してすぐ喧嘩してそれですぐ彼が改善してくれた。そうやって結ばれていくんじゃないの?」
「私も西松さんに同感ね……。前にも言ったけど、じゃあ他の誰かに替える?そんなことできないでしょう?」
聡美さんが言う。
「片桐君も遠坂さんに無理をさせてる事は重々承知してるはずよ?だから休みの日は遊びに行こうって約束作ったんでしょ?一緒にいる時は二人でのんびり過ごそうって決めたんでしょ?二人ならきっと片桐君が社会人になっても上手くやっていけるわ」
「冬夜君は本当に優しいんだよ。遠征で離れてる時も毎日電話してくれるし。家事はほどほどになって言ってくれるし。私ただの居候なのに」
私は必死に訴えた。冬夜君はダメ男なんかじゃないって。
だからみんなに聞きたかった。「結婚するとそんなに変わる物なの?」って。
「いろんな顔を持つ旦那を知ってるのはあなた達だけじゃないの?カレンダーに記入したいくつもの記念日よりいくつも色んな思い出残してるんじゃないの?」
いろんな角度から見てきた冬夜君。例え共に生きれない日が来たってどうせ冬夜君を好きになってしまう。
狂おしく鮮明に冬夜君の記憶で埋め尽くされていく。
皆だってそうじゃないの?
聡美さんが言う。
「結局とーやはどうしたらいいんだ?」
美嘉さんが聞く。
「今のままでいいじゃない?彼は彼なりに遠坂さんの事を思ってる。遠坂さんと向き合っている。心の声もちゃんと聞いている」
聡美さんがそう答えた。
泣いたり笑ったり不安定な想いだけどそれが私と冬夜君のしるし。
「皆だって同じことが言えるのよ?」
深雪さんが言う。
皆いろんな角度で自分の相手を見ている。そのどれもがフィルターを通してみれば素晴らしいものに変わっていて愛を思い知る。
「結局愛莉ののろけ話かよ」
神奈が言う。
「それだけじゃ面白くないわね。そうね。伊織と千歳と美里!あんた達はどうなの?」
亜依が言う。
突然話を振られて戸惑う3人。
話題は明るい方に向かって行った。
「あの……」
奈留が言う。
「どうして私が呼ばれたのか分からないんですけど……?私はまだ家事も出来ないし独り立ちもしていない」
「奈留それは……」
亜依が何かを言おうとした時だった。
「皆が教えてくれたんだよ。結婚することの素晴らしさを。こんなに幸せなんだって。公生と結婚するんでしょ?」
「そうだな、奈留にも仕込んでおかないといけないな」
私が言うと神奈が言った。
「そうなんですか?じゃあ公生もそうなのかな?」
ほえ?
「公生ってことは男性陣か!?どこに行くって言ってた?」
神奈が何かを察したようだ。
「それが男だけの秘密だからって教えてくれなくて」
……冬夜君。
私は無言でスマホでメッセージを送る。
皆がそれを見ている。
「冬夜君今どこにいるの?」
「そっち終わったの?ごめん男性陣で飲んでるから」
「どこにいるの?」
「迎えには行けないからタクシーで帰って。僕も代行で帰るから」
「一緒に帰った方が安く済むよ?どこにいるの?」
「ああ、でもこっちまで来させるの悪いし愛莉たちも2次会あるんだろ?こっちも2次会あるから……」
「どこにいるのかいいなさい!」
「……駅前の焼き鳥屋」
皆を振り返る。
「2次会は無しだな」と神奈
「そうね……あいつらまたろくでもない事企んでる。多分多田君と瑛大が首謀者だろうけど」と亜依
「主人も怪しいです。最近また帰り遅くなってて……」と花菜。
「みんなでお迎えにあがりましょうか?」と聡美さんが微笑む。
私達はうなずいた。
(6)
「しかし冬夜も災難だったな!」
誠が言う。
「まあね、でも愛莉たちもいいガス抜きになるならいいよ」
皆の所も大方そうだったんだろ?
「しかし、女性陣だけガス抜き何て話はねーよな」と誠が言う。
「じゃあ、2次会はあの店行くか!」と瑛大が張り切る。
「安いし若くてきれいな子いるんだぜ」と瑛大が語る。
その時愛莉からメッセージが届いた。
……内緒にしてたのになんで外に出かけている事がバレているんだ?
隠し通せるものでもないな。
愛莉たちの店から離れてるし。言っても問題ないだろ?
出る時間早めにすれば問題ない。
そう思ってた。
僕達は時間いっぱいまで飲んで騒いで盛り上がる。
そして時間が来て2次会の会場に移動しようとした時だった。
「さてと、じゃここからがお楽しみですな。瑛大」
「楽しみはこれからだぜ誠」
この二人の楽しみは大抵ろくな事じゃない。
移動するなら早い方が良い。
そう思った時だった。流石に20人程の集団がいたら気づくだろう。
僕達は悪寒を感じた。
誠と瑛大から距離を置く。
「で、どんな店なんだ?瑛大」
「そりゃもう色んなサービスしてくれる店だよ。誠」
二人は大分飲んでる。当然注意力も散漫になる。
こういう時いち早く逃げ出せるのが僕なんだが生憎と遅かった。
振り返ると愛莉が僕の腕を掴んでにっこり笑っている。
見渡すと皆それぞれのパートナーに掴まれていた。
店の入り口は結構奥まったところにあって明りがあまりない。
だから二人は気づかなかったんだろう。
皆を包む巨大な殺気に。
「ぼ、僕は帰るから!まだ子供だし!行こうか奈留」
「まあ、公生はしょうがねーな!せめてあと1年待ってからだな」
「僕も折角愛莉が待ってるし先に帰るよ」
「連れねーこと言うなよ冬夜偶には付き合え」
「付き合いって大事だぞ。嫁の顔色生きてるだけが人生じゃねーって言ってるだろ」
「え、瑛大そのくらいにしといたほうがいいんじゃないのか?大分飲んでるし」
檜山先輩も不味いと感じてるらしい、すでに手遅れだけど。咲良さんが隣にいる。
誠、お前フィールドに立つと選手の位置関係とか把握できるんじゃなかったのか?今その能力を発揮するときだぞ。
しかし二人は全く気付かない。
「何ぼさっとしてるんだよさっさと行こうぜ!」
「そうだ!こんな日くらい思いっきり羽伸ばそうぜ!ガミガミ五月蠅い奴もいないし!」
「瑛大、その店大丈夫なんだろうな?ぼったくりなんかじゃないよな?」
「ネットの口コミもいいし僕も何回か言ったことあるから大丈夫」
「なら行こうか?今日は無礼講だ自由にいこう!」
「そうだ誠、今日の俺達を阻むものはない!」
そう言って行こうとしたとき二人の手を二人が掴んだ。
「なんだよ、男同士で手をつなぐなんて気持ち悪いぞ瑛大」
「誠こそなんだよ気持ち悪いな」
誠と桐谷君の手を組んでるわけじゃない。
じゃあ誰?
誠と桐谷君は互いの顔を見てそして隣にいる者の存在に気が付く。
「ほう?楽しい所でサービスもいいのか?じゃあ私達も一緒に行くかな?亜依」
「ガミガミ五月蠅い奴って誰の事をいってるのかな?瑛大」
「か、神奈?」
「あ、亜依?」
二人はやっと気づいた。
そして女性陣の怒りが爆発する。
「どうした?楽しい所なんだろ?早く案内しろよ?」
「何度も言ったことがあるんだろ?今さら迷う事もないだろ?」
「お前たちは自由なんだろ?」
「阻むものはないんだろ?連れて行ってもらおうか?」
神奈と亜依さんは笑っている。笑っているだけに怖い。
「い、いや。奇遇だな。神奈達も近くの店だったのか?」
「亜依もいるならいるって言ってくれれば……」
誠と桐谷君は笑って誤魔化そうとする。
「2人とも冬夜君に変な情報流すのは止めて!」
「公生も!」
「僕は行くって言ってないだろ!」
「僕も言ってない」
僕と公生は弁明するが聞いてくれるわけもなく……。
「正志!お前は……」
「ははは、参ったな」
笑って誤魔化す渡辺君。
「あ、僕迎えが来たから帰るよ。じゃあお先に。行くよ奈留」
「公生!話はまだ済んでない!」
公生は無事に逃げおおせたらしいがしばらく奈留は口をきいてくれなかったらしい。
問題は僕達だ。
「冬夜君、今日飲みに行くなんて一言も言ってなかったでしょ!」
「ほ、ほら女子会の日くらい男子だけで集まろうって話が急に持ち上がってさ~……」
「言い訳になってないもん!」
「望も同罪よ……きっちり説明してもらおうかしら?」
「に、二次会の場所まで聞いてないよ!さっき聞いたんだ!」
「善君。私には興味持たないのにそういう店には興味持つのね?」
「そ、それは誤解だ。僕は行くなんて一言も言ってない」
石原君も酒井君も慌てて弁解してる。
「かずさん!あなたって人は!」
「花菜!待てこれは事故だ!!」
「佐!!」
「お、俺達は本当に何も聞かされてない」
だよな。皆それぞれ逃げ出す機会をうかがっている。
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がしっ
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「とーや。今日は逃がさねーぞ。2次会?上等じゃねーか?どこか良い店無いか?」
「それはもういつものカラオケしかないでしょ。朝まで徹底的に話聞いてやろうじゃない?」
「そうだな!朝まで徹底的にだな!」
カンナと美嘉さんと亜依さんに行く手を阻まれた。
「冬夜君ごめんね……って言うと思ったら大間違いですからね!」
愛莉にも見捨てられた。
こうして僕達はカラオケ店で朝までみっちりとお説教されるのだった。
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