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5thSEASON
認め合う事が出来るから
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(1)
「おはよう冬夜君。朝だよ。起きて」
むくりと起き上がる僕。
「わ~い起きてくれた~。じゃあ顔洗ってきてお着換えしようね♪」
愛莉の言われるままに顔を洗ってきて着替える。
愛莉の着替えも終わっていた。
「じゃ、日課さっさとすませちゃおう」
愛莉の言う通りに日課をすませるとシャワーを浴びる。
そして朝食をとる時に「いつもありがとうね」と一言いう。
これで今日一日愛莉の機嫌はいいだろう。
「あんたもやればできるんだからちゃんとやりなさい」
母さんの言葉を背にコーヒーを入れて部屋に行く。
部屋に戻るとデスクトップを起動させる。
ネットとかを見てる。
とくに目新しい事件は無いな。
会いたくて震える人が交際を始めたとかなんとか。
相手はマネージャーだとか?
あんまり興味ないからいいや。
女性の歌って大体自分勝手なラブソング多いよね。
あなたとは友達でいようとか
あなたには会いたいとか。
別れ話の歌も相手が悪いみたいな言い方してみたり。
エルトの歌もそうだけど。
俯瞰で観た歌ってないのかな?
やっぱり男性目線、女性目線てなっちゃうんだろうな。
まあ、僕の場合は男性目線から見ても男が悪い立場に立たされたけど……誠と瑛大のせいで。
僕だけじゃない。
渡辺班が崩壊の危機に陥った。
実際愛莉も機嫌が悪かった。
今の機嫌になるためにどれだけの犠牲を払ったことか。
日曜日に買い物に行っただけだけど。
愛莉の水着選び。今週末には海開きがある。
その日に着る水着を買いに行っていた。
ついでに雑貨屋さんとかよって。ご飯も奮発して。
愛莉の機嫌を取ることに全力を注いだ。
その甲斐あって今の愛莉がいる。
皆も苦労してるんだろうなってことはメッセージで伝わってきた。
公生は丸一日口をきいてくれなかったらしい。
最大の犠牲者は公生だよな。
デスクトップをシャットダウンしてスマホを見ていると愛莉が戻ってきた。
愛莉は髪を乾かし始める。
そして隣に座ってカフェオレを飲み始める。
念のためもうひと押ししておくか。
愛莉の腰に手を回す。
愛莉の反応は早かった。
「だめだよ~夜のお楽しみ」
愛莉の機嫌がいいらしい。
愛莉がカフェオレを飲み終えると僕がマグカップをキッチンに持って行く。
「その間にゆっくり化粧しといて」
「は~い」
マグカップを洗って水屋に直し部屋に戻るとまだ化粧が済んでない。
「愛莉」
「ほえ?」
「愛莉は化粧動画とか興味ないの?」
「……私の化粧上手じゃないから」
あ、触れたらいけない話題だったか。
「ごめん、愛莉の化粧した顔好きだから。きっと再生数伸びると思って」
「嬉しいけどその発言はブーッですね~」
「なんで?」
「化粧してるところなんて彼氏とか旦那様とか特別な人以外には見せたくない」
なるほどね。
「化粧終わったよ~」
「じゃ、行こっか?」
「うん」
それから学校に行って体育館に行く。
愛莉は2階から僕の練習風景を眺めてる。
「佐(たすく)!またシュートフォーム乱れてる!」
「あ、ああ……」
僕は佐に近づく。
「まだ、ご機嫌斜めか?」
「ああ、お前はどうだ?」
「なんとか、昨日全力でご機嫌とった」
「そうしとくべきだったか。時間が解決すると思ったよ」
それ一番駄目なパターンだよ。佐。
「そこ2人無駄話しない!」
僕にまで飛び火してきた。
ごめん、今佐倉さんに色々言ったら上から文句が飛んでくるから。
佐頑張れ。
そう思って反対側のゴールで練習を始めた。
高槻君達が来た。
ちぃちゃんもあまり機嫌が良くないみたいだ。
と、いうか渡辺班の女性陣は愛莉と北村さんと朝倉さんを除いて皆機嫌が悪い。
皆ご機嫌取りに失敗したらしい。
渡辺君に至っては朝食すら作ってもらえなかったらしい。
そんな男性陣が考えついたのが今週末の海開き。
ちょうど3連休だしいいだろ?と渡辺君が提案した。
それまでに少しでも機嫌をとっておきたいところだが皆苦戦してるみたいだ。
時間になって皆着替えると体育館を出る。
愛莉が待っていてくれていた。
「冬夜君お疲れ様~」
愛莉が出迎えてくれる
「片桐先輩一言忠告が」
佐倉さんが言う。
「なんだい?」
「他の男性に余計な入れ知恵しないでください。自分たちで反省の色を見せるまで許さないって決めてるから」
「皆もう反省してるよ」
第一あれは誠と瑛大の暴走した事故だろ?
「でも、隠れて男子会開いた事実は覆りませんよ」
「確かに……」
「皆が遠坂先輩みたいに優しいと思ったら大間違いですから!」
その後授業まで図書館で勉強して授業を受けて昼休みになった。
昼休みになると学食に集まってくる。
女性陣の機嫌が明らかに悪い。
「み、皆は水着準備してるのかな?」
「わ、私は翔ちゃんが買ってくれました」
「私は水着来ません。ボディライン出るの嫌いなんです」
「上からパーカーとか着ればいいじゃん」
「どうせ海に入るつもりないしいつも通りの恰好でいいです」
「うぅ……千歳さんは?」
「私も買ってもらえました。恥ずかしそうに買ってたけど」
そりゃそうだろうな。
「わかってないね。ああいうのはこそこそ買ってる方が余計怪しいのに」
かといってニヤニヤして買ってるのもどうかと思うぞ愛莉。
「遠坂さんも買ってもらったんですか?」
ちぃちゃんが愛莉に聞いていた。
「うん、買ってくれたよ。今年の新作なんだって~。冬夜君の好みが入ってるけど」
「そういうのって男性の願望も入ってるんでしょうか?」
「多少は入ってるんじゃないかな~?」
「だとすると妙ですね」
「ほえ?」
「以前兄が言ってました『お前はまだビキニとかは早い。スクール水着で十分』だと。私魅力ないんでしょうか?」
和もうとしていた場の空気が一気に冷え込んだ。
やっぱり誠が事件を起こす……。
「あのド変態はそんな事をちぃちゃんに要求してたのか?」
「ええ、やっぱり変なのでしょうか?」
「ちぃちゃんは気にしなくていい」
カンナとちぃちゃんが話をしている。
渡辺君達もこれはまずいと思ったのだろうか?その場を立ち去ろうとしている。
「渡辺君、待ちなさい。この際男共全員教育する必要があるようね……」
誠……恨むぞ。
「と、冬夜君はそんなことないよ。普通に水着選んでくれたよ」
「しょ、翔ちゃんも選んでくれたかな?普通のビキニの奴」
「渡辺君今夜全集かけなさい。まだ分かってないみたいだわ」
「冬夜君の件は良いとして他の男は問題だね」
愛莉と朝倉さんが言うも恵美さんと咲さんは何かしら感じたようだ。
「それは私立大のメンバーだけ呼べばいいんじゃないのか?地元大のメンバーは今聞けばいいだろう」
渡辺君の言う事もごもっともだ。事件は大体誠と桐谷君が作ってる。恐らく如月君も巻き込んでるだろう。
「主人も普通の選んでくれました。許しては無いけど」
「悠馬は選びもしなかったわ。興味ないみたい」
「そうじゃなくてああいうコーナーに入るのが抵抗あっただけだよ」
花菜さんと咲さんが言うと竹本君が抗議する。
「……やっぱり、全集よ。渡辺君」
恵美さんは冷淡に言う。
渡辺君はやれやれと全集をかける。
「場所はファミレスで良いか?」
「ええ?」
「冬夜君は堂々としてて良いからね。私が冬夜君を守るから」
愛莉が耳打ちする。
「ありがとう」
僕が返事をすると「えへへ~」と笑っていた。
しかし災難って続くな……。
(2)
その晩渡辺班は全集がかかった。
ファミレスに集まる渡辺班のメンバー。
注文をするや否や早速飛び交う女性陣の怒号。
男性陣は皆瑛大と誠を恨んでいた。
必死に宥める男性陣。
「ちぃちゃんになんてことを吹き込んでるんだこのド変態!」
「大体男子会とやらの内容が気になるわ!いったい何を話していたの!?」
カンナと亜依さんがまくし立てる。
「それは女子会も一緒だろ?お互い話せない事を話したんじゃないのか?」
「じゃあ、女子会の内容を話したら男子会の話もきかせられるよね?」
渡辺君が言うと亜依さんが切り返した。
「ま、まあそうだな」
あの内容はさすがに言えないだろうな……。大体の原因は誠と瑛大だけど。
「女子会はね~。最初は冬夜君の批判が多かったんだけど聡美さんと深雪さんが庇ってくれてそのあと千歳さんと伊織と美里の話だったよ。結婚のすばらしさを教えてもらったの」
愛莉があっさりと喋る。確かに普通の話題だ。普通の話題だけに男性陣はなおさら気まずくなる。
「さて、次は男性陣の番よ。片桐君話しなさい」
女性陣が愛莉だったから男性陣は僕が話せというのか?
「冬夜ご愁傷様」
そんな心の声が聞こえてくる。
僕はため息をついて話した。
桐谷君と誠は頭を抱えている。それはそうだろう。大体の話のきっかけは誠と桐谷君だから。それをみんなで窘める光景。そこまで言えば想像つくだろ?
あくまでも自分の無罪を主張する男性陣。僕は止めた。俺は宥めた。そう口々に言う。
公生も頭を抱えていた。奈留の視線が冷たいからだろう。また口をきいてくれなくなるんじゃないか?そう思ったんだろう。
「下らない」
奈留はそう一蹴した。
「何が男のロマンだ。ただの欲望じゃないか!まだそんなくだらないことを考えていたのかお前らは!」
カンナが叫ぶ。違うぞ、ただの誠のロマンだ。語弊があるから修正するぞ。
「下らねーな。こんな話して何になるってんだ?こっちは仕事で疲れてるんだぞ」
檜山先輩が言う。
「檜山君の言う事も最もだな。ただの男性陣の憂さ晴らしだよ」
木元先輩のその一言が余計だった。
「憂さ晴らし?私達に不満があるってことですか?」
花菜さんが食いついてきた。
「いいじゃん、聞いてやろうじゃない。私達に言えない不満があるっていうの?」
亜依さんが言う。
「落ち着け亜依さん。そんなんじゃ話し合いにならない」
「落ち着けない原因を作ってるのは男性陣でしょ!」
渡辺君が言うと亜依さんが激高する。
「男ってそういう生き物だって認めていると思ったけど?」
深雪さんが言う。
「そういう不満を抱えさせたのは皆がそうやって頭ごなしに怒鳴りつけるからじゃないの?現に片桐君や如月君からはそういう不満出てないでしょ?」
聡美さんが言う。
「でも、男性陣も悪いのよ?隠れてこそこそやるから女性陣がいらいらするの。言いたい事があるなら面と向かって言えば良い。自分の奥さんを信用してない証拠じゃなくて?」
聡美さんが言うと男性陣は黙った。
「聡美さんの言う事も最もだ。俺達も悪い所があった。それは反省してる。なあ皆?」
渡辺君が言うと皆謝る。それぞれのパートナーに。
もっとも愛莉は何とも思ってないようだが。
「冬夜君はいいの。だって私以外に興味全く示さないし」
愛莉は笑って言う。
「まあ、ここら辺で仲直りしようや。折角の週末の海行くのが台無しになる」
渡辺君が言う。
「渡辺君の言うとおりね。折角だから皆で楽しみましょう?」
聡美さんが言う。
「待て、他の男性はいい。問題は瑛大と誠だ!」
カンナが言う。
「そうね、二人には罰を与える必要があるわね……」
恵美さんが2人を睨みつけて言う。
「それならいい案あるけど~」
愛莉が言う。
「なに、愛莉ちゃん?」
「今度海行くとき二人はずっと亜依と神奈につきっきりでいる事ってのはどう?隠れてこそこそするから悪さするんでしょ?」
「そう言われるとそうね」
「確かに愛莉の言う通りだ」
「それともう一つ、水着買いに行くのに付き合え、妙なもの選んだら海で説教だからな!」
愛莉が提案すると恵美さんとカンナと亜依さんが承諾する。
「じゃあ、私も晴斗に罰ゲームしようかな?」
白鳥さんが言う。
「な、何をやればいいっすか?」
「二つ要求があるんだけど」
「いくらでも」
「一つは前日の晩私の家に泊まって。バイトの後でもいいから」
「了解っす。もう一つは?」
「一回やってもらいたいたかったことがあるの。私も水着で行くから日焼け止めぬって欲しい」
「お安い御用っす」
そう言って各自それぞれ罰ゲームも課せられる男性陣だった。
僕は何も無かったよ。
ちゃんと愛莉の機嫌とっていたから。
(3)
「それじゃ、正式に未来さんの入社が決まったことだし乾杯」
今日は私の本採用が決まったお祝い。
私のテーブルには聡美さんと真鍋君。倭(やまと)さんに友坂主任、近藤さんがいた。
近所のお好み焼き屋で開かれていた。
「しかし、本当に新戦力ですね。助かっていますよ」
「そうね。助かってるわ」
友坂主任と聡美さんに言われた。
「まだまだですよ、これからビシビシ鍛えていくんで」
倭さんが言う。
「あまり厳しくしないでよ。辞められたら困るんだから」
友坂主任が言う。
「そのくらい分かってますよ。ちゃんと家でケアしてる」
「へえ、どうやって?」
「愚痴を聞いてやったり不満をきいてやったり」
「その割にはこの前の女子会では随分不満を言ってたわよ彼女」
聡美さんが言う。
「それは聞き捨てならないですね。どんな不満ですか?」
「それは女性同士の秘密よ。しいて言うならもう少し気づかいが欲しい所じゃない?」
「と、いうと……」
「あなた達は渡辺班でも両方とも社会人。そうね、そろそろ子どもの事も考えてあげた方がいいんじゃない?」
聡美さんが言うと私はむせた。
「それって会社的にはダメージですよ?」
友坂主任が言う。
「仕事にかまけているとタイミング逃すわよ」
「……善処します」
「そうしてあげてちょうだい、彼女寂しがっていたから。不満はないけど良い事もない。そんな感じだった」
「なるほどね」
倭さんはにやりと笑う。
「と、ところで男子会では本当に倭さん何もなかったんですか?」
私は話題を変えていた
「若いうちに結婚してしまうと苦労するんだなって思ったくらいだよ。真鍋君もそうだけど」
「何でおれに振るんですか!」
真鍋君が抗議する。
「私も驚いたわ。まさかそういう店に興味があったなんてね」
「社長!それは誤解だ!あの晩説明しただろ!」
「私は別にいいのよ。まったく無欲な男性なんているわけないんだから」
「その話やめにしませんか……男性陣でも困り果ててるんですよ」
「困るようなことをするからそうなるんじゃない?」
そう言って聡美さんは笑う。
こういう奥さんになりたい。
少々の事では揺るがない。
そんな奥さんになりたい。
そう思った。
どうしてそんなに強いのか聞いてみた。
「覚悟ね」
覚悟?
「この人に嫁ぐって決めた時から覚悟はしてた。何があってもこの人について行くって」
私に足りないのは覚悟なのだろうか?
「年の功もあるかもね」
聡美さんはそう言って笑う。
そんなに歳変わらないのに。
やっぱり聡美さんは強くてカッコいいな。
(4)
その日は海で遊んだ。一泊二日の毎年恒例の行事。
それぞれの男性が罰ゲームと称したサービスを行っていた。
僕は何も無かったよ。
だからこうやって作ったハンモックでゲームしながら寝てる。
ぽかっ
「ど、どうしたの愛莉」
「お嫁さんが水着きて遊びに来てるんだよ。ちょっとは構ってよ!」
それが僕の罰ゲームなのだろうか?
「わかったよ、何をして遊ぶ?」
「んとねー、皆でビーチバレーしてるんだけど。冬夜君もやろう?」
「わかったよ」
浜辺に出ると皆がビーチバレーして遊んでた。
「佐!あと50回!!」
「ちょ、ちょっとは休憩させろよ」
「駄目です、徹底的に足腰鍛えてもらいます!」
佐はご愁傷様。
僕達はみんなでビーチバレーをしていた。
晴斗はサーフボードに乗って遊んでる。
白鳥さんは日焼け止めを塗ってもらって木陰で本を読んでる。
大人組はビールを飲んで寛いでいる。
海未ちゃんは巨大なサンドアートを作って遊んでいる。
日が暮れだすと僕達男性陣は火の準備を始めた。
ご飯も研いで炊き出す。
慣れてない桐谷君や如月君に教えながら。
そう、今夜のごはんは男性陣で作る。
その間女性陣だけで遊んでもらおう。
そう決めていた。
だけど女性陣はやっぱり気にするらしい。
「ご飯と肉だけってお前らそれで料理したつもりか!」
美嘉さんが言う。
「まあ、いいじゃない。男性陣だけでやるって言ってるんだから」
愛莉が美嘉さんを宥める。
「冬夜君途中で蓋開けたら駄目!」
愛莉も気になるらしい。
肉を食べながら酒を飲んで楽しむ。
夜の海岸で花火を楽しむ。
相変わらずロケット花火や打ち上げ花火の打ち合いをして女性陣の顰蹙を買うわけだけど。
僕は愛莉と花火を二人で楽しむ。
「綺麗だね~」
「もっと派手な奴もあるぞ?」
「爆竹とかは駄目だよ?」
「ただの打ち上げ花火だよ」
「打ち合いとかしたら怒るからね?」
「愛莉相手にそれはないよ」
「じゃあ、いいよ」
花火を楽しむと鍋にお湯を沸かしてインスタントラーメンを食べる。
懲りないのは誠と瑛大。
男性陣が集まって誠達の動画を見ていると一人また一人と逃げていく。
僕はラーメン食べてたから今回は被害は無かったよ。
大人組も飲んでいたから難を逃れた。
渡辺君石原君酒井君も気配を感じて逃げた。
公生も危機を察したのかさっさと奈留とテントに入っていた。
捕まったのは誠、桐谷君、中島君、如月君、高槻君。
「誠楽しんでみたいだな……ちょっと見せて見ろ」
「い、いや。男のロマンで……」
「お嫁さんが少しでも旦那の趣味を理解してやろうと言ってるんだ。見せろ」
「いや、別に理解してもらわなくてもいいから……」
「つべこべ言わずに出せ!」
「瑛大!お前もだ!何見てた!?」
「普通のアニメだろ」
「じゃあ、今すぐ見せて見ろ!」
「いや、亜依には刺激が強いかなって……」
「全然普通じゃないじゃないか!この馬鹿!」
「あの……翔ちゃんに変な事吹き込まないで」
「兄……翔をまきこまないで」
「伊織、誤解だよ!たまたまみんな集まってたから……って誰もいない!?」
「千歳、話せばわかる。落ち着こう」
如月君と翔は逃げ遅れたようだ。
「翔は信じてる。全部兄の仕業でしょ?」
「ちぃ、そんな事言われる兄は傷つくぞ」
「傷つくなら最初からやるなボケ!」
そしてそれぞれのテントに入って一夜を明かす。
朝になると皆散歩したり浜辺で話していたり、それぞれの朝を過ごす。
そして朝食は女性陣が担当。
さすが女性陣、ボリュームもあり上手い。
いう事無い!
朝食を食べ終わると撤収に入る。女性陣が洗い物をしてる間にテントを片付ける。
そしてそれぞれの車に荷物を積む。
そして別府の銭湯に皆寄る。
「誠先輩昨日は災難だったっすね!」
「その事は触れてくれるな……晴斗」
「てかさ、なんでみんな教えてくれないわけ!自分だけ逃げだすなんて卑怯じゃないか!」
晴斗が言うと誠は沈んでいて桐谷君は逆切れしている。
「瑛大!聞こえてるぞ!人のせいにするなボケ!」
「……また一週間は機嫌が悪いぜ亜依の奴」
桐谷君そういうことは思っていても大きな声で言わない方が良い。
「一週間で済むと思ってるのかお前は!」
ほらね……。
それに忠告はみんなしてたはずだよ。
「その辺にしとけ」って。
「誠……お前どうして気づかないんだ?ピッチにいる時は選手の位置関係把握してるって言ったじゃないか?」
前から思っていた疑問。
「のめり込むと周りが分からなくなるんだよ」
「それ直した方がいいぞ。プレイにも影響する。誠の視野は狭すぎだ」
「そうだな……」
「しかしお前たちはやっと一つの事件を解決したと思ったら次の事件を作り出すな」
渡辺君がそう言ってあきれている。
「そんな事言ったってこれは男のロマンて奴ですよ。渡辺君」
「そうだ、男のロマンだ!女性には一生理解できない!」
だから声がでかいって桐谷君。
「瑛大!お前絶対反省してないだろ!あとでみっちり説教してやる!」
言ったろ?
桐谷君は頭を抱えている。
「まあ、若いうちはそれが普通なんだろうな?」
「そうそう、若者の特権だ」
大人組が言う。
銭湯を出るとファミレスで昼食を食べて解散。
皆それぞれ家に帰る。
「どうして女性の気持ちを分かってもらえないのかな~」
愛莉が悩んでる。
「多分一生分かんないと思うよ。価値観も理念も」
「うぅ……冬夜君もわかってもらえないの?」
「愛莉の全てを理解しろってのは無理だね」
「うぅ……それはもんだいですね」
「いいじゃないか?」
「ほえ?」
「一つになる必要なんてないよ」
認め合う事ができるから。投げやりじゃなくて認め合う事が出来るから。
そうやってまた愛を求めるんだろ?
一つにならなくてもいいよ。認め合えばそれでいいよ。それだけが僕らの前の暗闇を優しく散らして、光を降らして与えてくれる。
「う~ん、認め合うか……」
「愛莉は僕を認めてくれてるんだろ?」
「うん、冬夜君は?」
「認めてるさ」
「じゃあ問題ないね」
愛莉は笑っている。
愛莉は愛莉で僕は僕そんな当たり前の事何でこんなにも見失ってしまえるんだろう?
夢見てるから儚くて、探すから見つからないし、欲しがるから手に入れられなくて途方に暮れる。
どこで間違えたのかも考える暇が無いけど答えがないと不安になる。
解り合えた振りしたって僕らは違った個体だ。
だけど一つになりたくて暗闇でもがいてる。
でも一つにならなくてもいい、認め合えればそれでいい。それだけが光をもたらしてくれる。
「おはよう冬夜君。朝だよ。起きて」
むくりと起き上がる僕。
「わ~い起きてくれた~。じゃあ顔洗ってきてお着換えしようね♪」
愛莉の言われるままに顔を洗ってきて着替える。
愛莉の着替えも終わっていた。
「じゃ、日課さっさとすませちゃおう」
愛莉の言う通りに日課をすませるとシャワーを浴びる。
そして朝食をとる時に「いつもありがとうね」と一言いう。
これで今日一日愛莉の機嫌はいいだろう。
「あんたもやればできるんだからちゃんとやりなさい」
母さんの言葉を背にコーヒーを入れて部屋に行く。
部屋に戻るとデスクトップを起動させる。
ネットとかを見てる。
とくに目新しい事件は無いな。
会いたくて震える人が交際を始めたとかなんとか。
相手はマネージャーだとか?
あんまり興味ないからいいや。
女性の歌って大体自分勝手なラブソング多いよね。
あなたとは友達でいようとか
あなたには会いたいとか。
別れ話の歌も相手が悪いみたいな言い方してみたり。
エルトの歌もそうだけど。
俯瞰で観た歌ってないのかな?
やっぱり男性目線、女性目線てなっちゃうんだろうな。
まあ、僕の場合は男性目線から見ても男が悪い立場に立たされたけど……誠と瑛大のせいで。
僕だけじゃない。
渡辺班が崩壊の危機に陥った。
実際愛莉も機嫌が悪かった。
今の機嫌になるためにどれだけの犠牲を払ったことか。
日曜日に買い物に行っただけだけど。
愛莉の水着選び。今週末には海開きがある。
その日に着る水着を買いに行っていた。
ついでに雑貨屋さんとかよって。ご飯も奮発して。
愛莉の機嫌を取ることに全力を注いだ。
その甲斐あって今の愛莉がいる。
皆も苦労してるんだろうなってことはメッセージで伝わってきた。
公生は丸一日口をきいてくれなかったらしい。
最大の犠牲者は公生だよな。
デスクトップをシャットダウンしてスマホを見ていると愛莉が戻ってきた。
愛莉は髪を乾かし始める。
そして隣に座ってカフェオレを飲み始める。
念のためもうひと押ししておくか。
愛莉の腰に手を回す。
愛莉の反応は早かった。
「だめだよ~夜のお楽しみ」
愛莉の機嫌がいいらしい。
愛莉がカフェオレを飲み終えると僕がマグカップをキッチンに持って行く。
「その間にゆっくり化粧しといて」
「は~い」
マグカップを洗って水屋に直し部屋に戻るとまだ化粧が済んでない。
「愛莉」
「ほえ?」
「愛莉は化粧動画とか興味ないの?」
「……私の化粧上手じゃないから」
あ、触れたらいけない話題だったか。
「ごめん、愛莉の化粧した顔好きだから。きっと再生数伸びると思って」
「嬉しいけどその発言はブーッですね~」
「なんで?」
「化粧してるところなんて彼氏とか旦那様とか特別な人以外には見せたくない」
なるほどね。
「化粧終わったよ~」
「じゃ、行こっか?」
「うん」
それから学校に行って体育館に行く。
愛莉は2階から僕の練習風景を眺めてる。
「佐(たすく)!またシュートフォーム乱れてる!」
「あ、ああ……」
僕は佐に近づく。
「まだ、ご機嫌斜めか?」
「ああ、お前はどうだ?」
「なんとか、昨日全力でご機嫌とった」
「そうしとくべきだったか。時間が解決すると思ったよ」
それ一番駄目なパターンだよ。佐。
「そこ2人無駄話しない!」
僕にまで飛び火してきた。
ごめん、今佐倉さんに色々言ったら上から文句が飛んでくるから。
佐頑張れ。
そう思って反対側のゴールで練習を始めた。
高槻君達が来た。
ちぃちゃんもあまり機嫌が良くないみたいだ。
と、いうか渡辺班の女性陣は愛莉と北村さんと朝倉さんを除いて皆機嫌が悪い。
皆ご機嫌取りに失敗したらしい。
渡辺君に至っては朝食すら作ってもらえなかったらしい。
そんな男性陣が考えついたのが今週末の海開き。
ちょうど3連休だしいいだろ?と渡辺君が提案した。
それまでに少しでも機嫌をとっておきたいところだが皆苦戦してるみたいだ。
時間になって皆着替えると体育館を出る。
愛莉が待っていてくれていた。
「冬夜君お疲れ様~」
愛莉が出迎えてくれる
「片桐先輩一言忠告が」
佐倉さんが言う。
「なんだい?」
「他の男性に余計な入れ知恵しないでください。自分たちで反省の色を見せるまで許さないって決めてるから」
「皆もう反省してるよ」
第一あれは誠と瑛大の暴走した事故だろ?
「でも、隠れて男子会開いた事実は覆りませんよ」
「確かに……」
「皆が遠坂先輩みたいに優しいと思ったら大間違いですから!」
その後授業まで図書館で勉強して授業を受けて昼休みになった。
昼休みになると学食に集まってくる。
女性陣の機嫌が明らかに悪い。
「み、皆は水着準備してるのかな?」
「わ、私は翔ちゃんが買ってくれました」
「私は水着来ません。ボディライン出るの嫌いなんです」
「上からパーカーとか着ればいいじゃん」
「どうせ海に入るつもりないしいつも通りの恰好でいいです」
「うぅ……千歳さんは?」
「私も買ってもらえました。恥ずかしそうに買ってたけど」
そりゃそうだろうな。
「わかってないね。ああいうのはこそこそ買ってる方が余計怪しいのに」
かといってニヤニヤして買ってるのもどうかと思うぞ愛莉。
「遠坂さんも買ってもらったんですか?」
ちぃちゃんが愛莉に聞いていた。
「うん、買ってくれたよ。今年の新作なんだって~。冬夜君の好みが入ってるけど」
「そういうのって男性の願望も入ってるんでしょうか?」
「多少は入ってるんじゃないかな~?」
「だとすると妙ですね」
「ほえ?」
「以前兄が言ってました『お前はまだビキニとかは早い。スクール水着で十分』だと。私魅力ないんでしょうか?」
和もうとしていた場の空気が一気に冷え込んだ。
やっぱり誠が事件を起こす……。
「あのド変態はそんな事をちぃちゃんに要求してたのか?」
「ええ、やっぱり変なのでしょうか?」
「ちぃちゃんは気にしなくていい」
カンナとちぃちゃんが話をしている。
渡辺君達もこれはまずいと思ったのだろうか?その場を立ち去ろうとしている。
「渡辺君、待ちなさい。この際男共全員教育する必要があるようね……」
誠……恨むぞ。
「と、冬夜君はそんなことないよ。普通に水着選んでくれたよ」
「しょ、翔ちゃんも選んでくれたかな?普通のビキニの奴」
「渡辺君今夜全集かけなさい。まだ分かってないみたいだわ」
「冬夜君の件は良いとして他の男は問題だね」
愛莉と朝倉さんが言うも恵美さんと咲さんは何かしら感じたようだ。
「それは私立大のメンバーだけ呼べばいいんじゃないのか?地元大のメンバーは今聞けばいいだろう」
渡辺君の言う事もごもっともだ。事件は大体誠と桐谷君が作ってる。恐らく如月君も巻き込んでるだろう。
「主人も普通の選んでくれました。許しては無いけど」
「悠馬は選びもしなかったわ。興味ないみたい」
「そうじゃなくてああいうコーナーに入るのが抵抗あっただけだよ」
花菜さんと咲さんが言うと竹本君が抗議する。
「……やっぱり、全集よ。渡辺君」
恵美さんは冷淡に言う。
渡辺君はやれやれと全集をかける。
「場所はファミレスで良いか?」
「ええ?」
「冬夜君は堂々としてて良いからね。私が冬夜君を守るから」
愛莉が耳打ちする。
「ありがとう」
僕が返事をすると「えへへ~」と笑っていた。
しかし災難って続くな……。
(2)
その晩渡辺班は全集がかかった。
ファミレスに集まる渡辺班のメンバー。
注文をするや否や早速飛び交う女性陣の怒号。
男性陣は皆瑛大と誠を恨んでいた。
必死に宥める男性陣。
「ちぃちゃんになんてことを吹き込んでるんだこのド変態!」
「大体男子会とやらの内容が気になるわ!いったい何を話していたの!?」
カンナと亜依さんがまくし立てる。
「それは女子会も一緒だろ?お互い話せない事を話したんじゃないのか?」
「じゃあ、女子会の内容を話したら男子会の話もきかせられるよね?」
渡辺君が言うと亜依さんが切り返した。
「ま、まあそうだな」
あの内容はさすがに言えないだろうな……。大体の原因は誠と瑛大だけど。
「女子会はね~。最初は冬夜君の批判が多かったんだけど聡美さんと深雪さんが庇ってくれてそのあと千歳さんと伊織と美里の話だったよ。結婚のすばらしさを教えてもらったの」
愛莉があっさりと喋る。確かに普通の話題だ。普通の話題だけに男性陣はなおさら気まずくなる。
「さて、次は男性陣の番よ。片桐君話しなさい」
女性陣が愛莉だったから男性陣は僕が話せというのか?
「冬夜ご愁傷様」
そんな心の声が聞こえてくる。
僕はため息をついて話した。
桐谷君と誠は頭を抱えている。それはそうだろう。大体の話のきっかけは誠と桐谷君だから。それをみんなで窘める光景。そこまで言えば想像つくだろ?
あくまでも自分の無罪を主張する男性陣。僕は止めた。俺は宥めた。そう口々に言う。
公生も頭を抱えていた。奈留の視線が冷たいからだろう。また口をきいてくれなくなるんじゃないか?そう思ったんだろう。
「下らない」
奈留はそう一蹴した。
「何が男のロマンだ。ただの欲望じゃないか!まだそんなくだらないことを考えていたのかお前らは!」
カンナが叫ぶ。違うぞ、ただの誠のロマンだ。語弊があるから修正するぞ。
「下らねーな。こんな話して何になるってんだ?こっちは仕事で疲れてるんだぞ」
檜山先輩が言う。
「檜山君の言う事も最もだな。ただの男性陣の憂さ晴らしだよ」
木元先輩のその一言が余計だった。
「憂さ晴らし?私達に不満があるってことですか?」
花菜さんが食いついてきた。
「いいじゃん、聞いてやろうじゃない。私達に言えない不満があるっていうの?」
亜依さんが言う。
「落ち着け亜依さん。そんなんじゃ話し合いにならない」
「落ち着けない原因を作ってるのは男性陣でしょ!」
渡辺君が言うと亜依さんが激高する。
「男ってそういう生き物だって認めていると思ったけど?」
深雪さんが言う。
「そういう不満を抱えさせたのは皆がそうやって頭ごなしに怒鳴りつけるからじゃないの?現に片桐君や如月君からはそういう不満出てないでしょ?」
聡美さんが言う。
「でも、男性陣も悪いのよ?隠れてこそこそやるから女性陣がいらいらするの。言いたい事があるなら面と向かって言えば良い。自分の奥さんを信用してない証拠じゃなくて?」
聡美さんが言うと男性陣は黙った。
「聡美さんの言う事も最もだ。俺達も悪い所があった。それは反省してる。なあ皆?」
渡辺君が言うと皆謝る。それぞれのパートナーに。
もっとも愛莉は何とも思ってないようだが。
「冬夜君はいいの。だって私以外に興味全く示さないし」
愛莉は笑って言う。
「まあ、ここら辺で仲直りしようや。折角の週末の海行くのが台無しになる」
渡辺君が言う。
「渡辺君の言うとおりね。折角だから皆で楽しみましょう?」
聡美さんが言う。
「待て、他の男性はいい。問題は瑛大と誠だ!」
カンナが言う。
「そうね、二人には罰を与える必要があるわね……」
恵美さんが2人を睨みつけて言う。
「それならいい案あるけど~」
愛莉が言う。
「なに、愛莉ちゃん?」
「今度海行くとき二人はずっと亜依と神奈につきっきりでいる事ってのはどう?隠れてこそこそするから悪さするんでしょ?」
「そう言われるとそうね」
「確かに愛莉の言う通りだ」
「それともう一つ、水着買いに行くのに付き合え、妙なもの選んだら海で説教だからな!」
愛莉が提案すると恵美さんとカンナと亜依さんが承諾する。
「じゃあ、私も晴斗に罰ゲームしようかな?」
白鳥さんが言う。
「な、何をやればいいっすか?」
「二つ要求があるんだけど」
「いくらでも」
「一つは前日の晩私の家に泊まって。バイトの後でもいいから」
「了解っす。もう一つは?」
「一回やってもらいたいたかったことがあるの。私も水着で行くから日焼け止めぬって欲しい」
「お安い御用っす」
そう言って各自それぞれ罰ゲームも課せられる男性陣だった。
僕は何も無かったよ。
ちゃんと愛莉の機嫌とっていたから。
(3)
「それじゃ、正式に未来さんの入社が決まったことだし乾杯」
今日は私の本採用が決まったお祝い。
私のテーブルには聡美さんと真鍋君。倭(やまと)さんに友坂主任、近藤さんがいた。
近所のお好み焼き屋で開かれていた。
「しかし、本当に新戦力ですね。助かっていますよ」
「そうね。助かってるわ」
友坂主任と聡美さんに言われた。
「まだまだですよ、これからビシビシ鍛えていくんで」
倭さんが言う。
「あまり厳しくしないでよ。辞められたら困るんだから」
友坂主任が言う。
「そのくらい分かってますよ。ちゃんと家でケアしてる」
「へえ、どうやって?」
「愚痴を聞いてやったり不満をきいてやったり」
「その割にはこの前の女子会では随分不満を言ってたわよ彼女」
聡美さんが言う。
「それは聞き捨てならないですね。どんな不満ですか?」
「それは女性同士の秘密よ。しいて言うならもう少し気づかいが欲しい所じゃない?」
「と、いうと……」
「あなた達は渡辺班でも両方とも社会人。そうね、そろそろ子どもの事も考えてあげた方がいいんじゃない?」
聡美さんが言うと私はむせた。
「それって会社的にはダメージですよ?」
友坂主任が言う。
「仕事にかまけているとタイミング逃すわよ」
「……善処します」
「そうしてあげてちょうだい、彼女寂しがっていたから。不満はないけど良い事もない。そんな感じだった」
「なるほどね」
倭さんはにやりと笑う。
「と、ところで男子会では本当に倭さん何もなかったんですか?」
私は話題を変えていた
「若いうちに結婚してしまうと苦労するんだなって思ったくらいだよ。真鍋君もそうだけど」
「何でおれに振るんですか!」
真鍋君が抗議する。
「私も驚いたわ。まさかそういう店に興味があったなんてね」
「社長!それは誤解だ!あの晩説明しただろ!」
「私は別にいいのよ。まったく無欲な男性なんているわけないんだから」
「その話やめにしませんか……男性陣でも困り果ててるんですよ」
「困るようなことをするからそうなるんじゃない?」
そう言って聡美さんは笑う。
こういう奥さんになりたい。
少々の事では揺るがない。
そんな奥さんになりたい。
そう思った。
どうしてそんなに強いのか聞いてみた。
「覚悟ね」
覚悟?
「この人に嫁ぐって決めた時から覚悟はしてた。何があってもこの人について行くって」
私に足りないのは覚悟なのだろうか?
「年の功もあるかもね」
聡美さんはそう言って笑う。
そんなに歳変わらないのに。
やっぱり聡美さんは強くてカッコいいな。
(4)
その日は海で遊んだ。一泊二日の毎年恒例の行事。
それぞれの男性が罰ゲームと称したサービスを行っていた。
僕は何も無かったよ。
だからこうやって作ったハンモックでゲームしながら寝てる。
ぽかっ
「ど、どうしたの愛莉」
「お嫁さんが水着きて遊びに来てるんだよ。ちょっとは構ってよ!」
それが僕の罰ゲームなのだろうか?
「わかったよ、何をして遊ぶ?」
「んとねー、皆でビーチバレーしてるんだけど。冬夜君もやろう?」
「わかったよ」
浜辺に出ると皆がビーチバレーして遊んでた。
「佐!あと50回!!」
「ちょ、ちょっとは休憩させろよ」
「駄目です、徹底的に足腰鍛えてもらいます!」
佐はご愁傷様。
僕達はみんなでビーチバレーをしていた。
晴斗はサーフボードに乗って遊んでる。
白鳥さんは日焼け止めを塗ってもらって木陰で本を読んでる。
大人組はビールを飲んで寛いでいる。
海未ちゃんは巨大なサンドアートを作って遊んでいる。
日が暮れだすと僕達男性陣は火の準備を始めた。
ご飯も研いで炊き出す。
慣れてない桐谷君や如月君に教えながら。
そう、今夜のごはんは男性陣で作る。
その間女性陣だけで遊んでもらおう。
そう決めていた。
だけど女性陣はやっぱり気にするらしい。
「ご飯と肉だけってお前らそれで料理したつもりか!」
美嘉さんが言う。
「まあ、いいじゃない。男性陣だけでやるって言ってるんだから」
愛莉が美嘉さんを宥める。
「冬夜君途中で蓋開けたら駄目!」
愛莉も気になるらしい。
肉を食べながら酒を飲んで楽しむ。
夜の海岸で花火を楽しむ。
相変わらずロケット花火や打ち上げ花火の打ち合いをして女性陣の顰蹙を買うわけだけど。
僕は愛莉と花火を二人で楽しむ。
「綺麗だね~」
「もっと派手な奴もあるぞ?」
「爆竹とかは駄目だよ?」
「ただの打ち上げ花火だよ」
「打ち合いとかしたら怒るからね?」
「愛莉相手にそれはないよ」
「じゃあ、いいよ」
花火を楽しむと鍋にお湯を沸かしてインスタントラーメンを食べる。
懲りないのは誠と瑛大。
男性陣が集まって誠達の動画を見ていると一人また一人と逃げていく。
僕はラーメン食べてたから今回は被害は無かったよ。
大人組も飲んでいたから難を逃れた。
渡辺君石原君酒井君も気配を感じて逃げた。
公生も危機を察したのかさっさと奈留とテントに入っていた。
捕まったのは誠、桐谷君、中島君、如月君、高槻君。
「誠楽しんでみたいだな……ちょっと見せて見ろ」
「い、いや。男のロマンで……」
「お嫁さんが少しでも旦那の趣味を理解してやろうと言ってるんだ。見せろ」
「いや、別に理解してもらわなくてもいいから……」
「つべこべ言わずに出せ!」
「瑛大!お前もだ!何見てた!?」
「普通のアニメだろ」
「じゃあ、今すぐ見せて見ろ!」
「いや、亜依には刺激が強いかなって……」
「全然普通じゃないじゃないか!この馬鹿!」
「あの……翔ちゃんに変な事吹き込まないで」
「兄……翔をまきこまないで」
「伊織、誤解だよ!たまたまみんな集まってたから……って誰もいない!?」
「千歳、話せばわかる。落ち着こう」
如月君と翔は逃げ遅れたようだ。
「翔は信じてる。全部兄の仕業でしょ?」
「ちぃ、そんな事言われる兄は傷つくぞ」
「傷つくなら最初からやるなボケ!」
そしてそれぞれのテントに入って一夜を明かす。
朝になると皆散歩したり浜辺で話していたり、それぞれの朝を過ごす。
そして朝食は女性陣が担当。
さすが女性陣、ボリュームもあり上手い。
いう事無い!
朝食を食べ終わると撤収に入る。女性陣が洗い物をしてる間にテントを片付ける。
そしてそれぞれの車に荷物を積む。
そして別府の銭湯に皆寄る。
「誠先輩昨日は災難だったっすね!」
「その事は触れてくれるな……晴斗」
「てかさ、なんでみんな教えてくれないわけ!自分だけ逃げだすなんて卑怯じゃないか!」
晴斗が言うと誠は沈んでいて桐谷君は逆切れしている。
「瑛大!聞こえてるぞ!人のせいにするなボケ!」
「……また一週間は機嫌が悪いぜ亜依の奴」
桐谷君そういうことは思っていても大きな声で言わない方が良い。
「一週間で済むと思ってるのかお前は!」
ほらね……。
それに忠告はみんなしてたはずだよ。
「その辺にしとけ」って。
「誠……お前どうして気づかないんだ?ピッチにいる時は選手の位置関係把握してるって言ったじゃないか?」
前から思っていた疑問。
「のめり込むと周りが分からなくなるんだよ」
「それ直した方がいいぞ。プレイにも影響する。誠の視野は狭すぎだ」
「そうだな……」
「しかしお前たちはやっと一つの事件を解決したと思ったら次の事件を作り出すな」
渡辺君がそう言ってあきれている。
「そんな事言ったってこれは男のロマンて奴ですよ。渡辺君」
「そうだ、男のロマンだ!女性には一生理解できない!」
だから声がでかいって桐谷君。
「瑛大!お前絶対反省してないだろ!あとでみっちり説教してやる!」
言ったろ?
桐谷君は頭を抱えている。
「まあ、若いうちはそれが普通なんだろうな?」
「そうそう、若者の特権だ」
大人組が言う。
銭湯を出るとファミレスで昼食を食べて解散。
皆それぞれ家に帰る。
「どうして女性の気持ちを分かってもらえないのかな~」
愛莉が悩んでる。
「多分一生分かんないと思うよ。価値観も理念も」
「うぅ……冬夜君もわかってもらえないの?」
「愛莉の全てを理解しろってのは無理だね」
「うぅ……それはもんだいですね」
「いいじゃないか?」
「ほえ?」
「一つになる必要なんてないよ」
認め合う事ができるから。投げやりじゃなくて認め合う事が出来るから。
そうやってまた愛を求めるんだろ?
一つにならなくてもいいよ。認め合えばそれでいいよ。それだけが僕らの前の暗闇を優しく散らして、光を降らして与えてくれる。
「う~ん、認め合うか……」
「愛莉は僕を認めてくれてるんだろ?」
「うん、冬夜君は?」
「認めてるさ」
「じゃあ問題ないね」
愛莉は笑っている。
愛莉は愛莉で僕は僕そんな当たり前の事何でこんなにも見失ってしまえるんだろう?
夢見てるから儚くて、探すから見つからないし、欲しがるから手に入れられなくて途方に暮れる。
どこで間違えたのかも考える暇が無いけど答えがないと不安になる。
解り合えた振りしたって僕らは違った個体だ。
だけど一つになりたくて暗闇でもがいてる。
でも一つにならなくてもいい、認め合えればそれでいい。それだけが光をもたらしてくれる。
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