優等生と劣等生

和希

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5thSEASON

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(1)

「冬夜君おはよう!」
「おはよう愛莉」

朝の儀式をすると、僕はベッドを出る。
愛莉はもう着替えてある。
着替えてる時は抱きつくなという意思らしい。
大人しく従う事にしよう。

朝食を食べるとコーヒーを入れて部屋に戻る。
そしてテレビを見ながらコーヒーを飲んで寛ぐ。
渡辺班男子会のメッセージが流れる。
当然のように愛莉が見ようとする。
そのメッセージを見た僕は咄嗟に隠す。
当然愛莉は見せるように催促する。

「今日はちょっと見せられない」
「夫婦に隠し事は無しだよ!」
「愛莉だってみられたくないことあるだろ?」
「ないもん!」
「女性同士の秘密ってない?」
「ってことは男同士の秘密なんだ?」
「そうだね」
「絶対にだめ!見せなさい!」

これ以上隠すのは無理だ。

メッセージを見る。どうやら抵抗を試みたのは僕だけじゃないらしい。
誠が慌ててメッセージを削除してる。

「そういうことをここで言うな今すぐメッセージ削除しろ!」
「妻に見られる。急いで消せ!」
「そういう事に巻き込むなと言っただろ誠」

桐谷君と、木元先輩と、渡辺君が言ってる。
誰がどう見ても誠が主犯だってわかるよね。

「冬夜君?誠君なんて言ってたの?」

愛莉の追及が入る。

「愛莉聞きたい事があるんだけど?」

取りあえず話題を逸らしてみる。

「なに?」

明らかに機嫌の悪い愛莉の声。

「2次会は男女一緒にするって言った約束は……みんな知ってる事なの?」
「冬夜君にだけ教えただけだよ?他の人は分からない」
「そうか……」

それでこんなことを。

「誤魔化そうたってそうはいかないんだから!誠君は何を言ったの!?」

どうせバレる事だしいいか。他の人も喋ってるだろ。

「あのね『今日は男子会に行ってる事にしておいてくれ。サッカー部の合コンに行ってくる』って……」

愛莉は電光石火の早さでメッセージを打とうとしたがその指が止まった。

「秘密な無しだもんね。冬夜君にも見せてあげる」

愛莉は自分のスマホを見せる。

「誠君サッカー部の合コンに行くらしいよ」
「あの馬鹿……」
「どうする?完全に浮気するつもりよ」
「……放っておく」
「いいの?」
「誰か言ってたろ?社会人になったら多かれ少なかれ飲み会に誘われるもんだって。誠を信じるよ」
「神奈がそういうなら私達は何も言わないけど」
「神奈ちゃんいざとなったら頼ってね。弁護士つけて慰謝料ふんだくってやるから!」
「そうならないように祈るよ」

カンナなんか落ち込んでるみたいだな。……諦めているんだろうか?

「神奈大丈夫かな?」

愛莉が心配してる。
昼休みにでも聞いてみるか?

(2)

「皆すまんな。うちの馬鹿がまた皆を巻き込んだ」

カンナが謝る。

「神奈ちゃんが謝る事じゃない。悪いのは誠君よ」

恵美さんは腹を立てているようだ。
と、いうか女性陣皆そうだけど。

「うちの主人は隠すどころか誠君を庇おうとしてましたからね!」

花菜さんが言う。

「あれほど渡辺班を巻き込むなと行ったんだがな……」

渡辺君はため息をついている。
ちなみに最初に白状したのは桐谷君らしい。

「で、今日はどうするの?」
「予定通りやるさ。他の男は隠し事してないだろうな!」

カンナが言うと皆それは無いという。
僕は弁当を食べてる。
北村さんも昼ご飯を食べてる。
女子は作戦会議をしてるみたいだ。
予定通り二次会で合流する。
明日の朝誠を問い詰める。
そんなところだろう?

「そんなにがんじがらめにしていて疲れませんか?」

北村さんが問いかける。

「がんじがらめにしないと何するか分からない方に問題あると思うんだけど」

咲さんが言う。

「栗林君をがんじがらめにしたいって思ったことは?」
「むしろされてる感が強いですね。悪い気はしないけど」

恵美さんが言うと意外な回答が帰ってきた。

「彼朝から晩までメッセージが凄いんです。朝と夜はおはようとお休みなさいの電話がかかってくるし」

意外とマメなんだな、栗林君。
栗林君は北村さんの隣で弁当を食べてる。
簡単なものだけど北村さんのお弁当だって事は分かった。

「でもさ、サッカー部の合コンに行くのってそんなに悪い事?」

僕が言うと女性の視線を一身に浴びた。

「バスケ部でも合コンあるじゃん。なあ佐(たすく)」
「そ、そうだな。見張りもいるけどな」
「ちぃちゃんとかは嫌だと思ったことは?」
「ないです。翔は私の相手しかしないから」
「トーヤ論点がおかしい。」

カンナが言う。

「隠れてこそこそ行くことが問題なんだよ。やましいことがある証拠じゃないか?」
「神奈ちゃんの言う通りよ。前も言ったけどこそこそやることが問題なの」
「じゃあ、こそこそやらなかったらいいんだな?」
「実際してるじゃねーか」

僕は誠にメッセージを送る。

「誠、もう女性陣にばれてるぞ。素直に白状した方がいい」

誠からすぐに返信返ってきた。

「まじかよ!今すぐ神奈に連絡する」

カンナのスマホが鳴るとカンナが出る。

「もしもし……この大馬鹿が!!」

しばらくしてカンナは電話を切った。

「どうしても来て欲しいと頼まれたんだってよ。プロ入り確定だからな。あの顔だし大方女性陣の餌に使われてるんだろう」
「神奈ちゃんは平気なの?」

恵美さんが聞く。

「後は信じるしかねーよ」

そう言ってカンナは昼ご飯を食べ終わる。

「ご馳走様美里。今日も美味しかったよ」
「ほとんどレンチンものなんですけどね」
「美里の愛情感じたよ。それだけでも嬉しいよ」
「それならいいんですけど」

北村さんはそう言いながらまんざらでもない様子で弁当箱を片付けている。

「じゃあ、私そろそろ時間なので行きますね」

北村さんがそう言うと、皆移動を始める。

「じゃあ、今日夕方にね」

(3)

「それじゃあ、今日の女子会は栗林君の行動について話しましょう」

亜依がそういうと女子会の始まり。

「そもそも話してどうにかなるのでしょうか?」
「それをどうにかするのが渡辺班なのよ」

北村さんが言うと恵美が答える。

「北村さんとしてはやっぱり栗林君からして欲しいよね?」

亜依が言う。

「まあ、そうですね……」

興味なさそうにウーロン茶を飲んでいる。

「て、事はキスはしたいんだ?」

私が言うと美里は俯いてしてしまった。
やっぱりそうなんだ。

「後はシチュエーションの問題ですよね。奈留みたいな年頃ならやっぱりイルミネーションの下とか観覧車の中とかいろいろあるだろうけど」
「シチュエーションかあ~」

佐倉さんが言うとみんな悩んでる。

「晴斗は考えてくれた。展望台まで連れて行ってくれた。一生の思い出だからって」

白鳥さんが言う。

「私としては今夜中に片づけたいと思ってる」

亜依が言う。

「どうやるの!?まさか2次会で無理矢理させる気!?」
「朝の日の出を見ながらするってそれなりにいいと思わない?」

恵美が言うと亜依が答える。

「つまり、帰りにドライブさせると?」
「ベタだけどね」
「朝って眠くないですか?そんな危険な時間に運転なんてさせられない」

北村さんが2人に反論する。

「と、なるとやっぱり白鳥さんの線なのかな」
「2次会追い返して夜にドライブ?」
「栗林君ならまだ飲んでないでしょう」
「私は家でいいです」

北村さんがめんどくさそうに答える。

「それだよ!」

私が言った。

「どういうことですか?」

北村さんが聞いてきた。興味は示したようだ。

「北村さん、今夜彼を家に泊めなさい!それなら間違いなくしてくる!その先まで行っちゃうかも」
「それはまだ心の準備が……」
「彼の得意分野に入れば彼がリードしてくれるよ。後は彼に任せたらいい。最低限キスくらいはしてくれるよ」
「愛莉いいアイデアね!」

亜依は賛同してくれたようだ。

「でも私の家予備の布団ないですよ?それにシングルベッドだし」
「いいじゃない。シングルベッドに2人で寝る。最高のシチュエーションだよ。ベッドの中でなくてもいいし。シングルベッドで夢と一緒に抱いてもらうんだよ」
「そういうものでしょうか……?」

北村さんは疑問に感じてるようだ。

「あとは美里からちょっとアクション欲しい所だな」

神奈が言う。

「そうね、体を密着させるとかすると相手も緊張感ほぐれるかも」
「変な意味じゃないんだよ。手と手を重ねるとかその程度でいい」

恵美と私が言う。

「それくらいならまあ、できるかもしれませんね」
「出来るかもじゃない!やるんだよ!最初のアクションは肝心だぞ!相手が奥手ならなおさら。ムードを作り出してやるんだよ」

美嘉さんが言う。

「公生君の時はどうだったの?」
「公生は何も言わずにしてきてくれました。そういう雰囲気には敏感だったみたいで」

奈留が言うと「おお~」と皆がどよめく。

「遠坂さんのアイデアはいいかもね。自然が一番大事。男っていざとなると臆病になるから。それは女慣れしてる男と思ってるほど」

その代わり一度転がりだしたら止まらないけどと聡美さんが付け足す。

「遠坂先輩はどうだったんですか?」
「私は自分からいったよ。家の前でいきなりした」

私が言うと皆が驚いていた。

「神奈が転校してきた日だったかな。冬夜君は私のものだって主張したかったから」

あの晩あったことを皆に説明した。
神奈もあの時の様子を語る。

「思い切りも大事だって事だよ。待ってるだけでしてくれないなら自分からキスしたいって思わせるしかない」

神奈が言う。

「それじゃ、大体決まったわね。2次会が終わったら彼を家に泊める!そして自分から手と手を触れる!これでもししてこなかったら教育してやるわ」

恵美が言う。

「2次会で雰囲気作ってやろう?前準備って必要だと思うし」
「そうだね」

亜依が言うと皆が同意する。

「2次会って言えば男共は知ってるの?」

晶さんが言う。

「私は冬夜君に言ったよ~」
「私も渡辺君と打ち合わせしたからな~」

他の人は秘密だという。
何も知らない彼等はどう思うだろう?

「でも2次会は一緒にってのはいいアイデアね。お互いストレスにならない」
「そもそも別々にする必要ないからね」

聡美さんと亜依が言ってる。

「美里!今夜決めるんだよ!いや、ちゃんとパスを送るだけでいい!」

亜依が言う。

「わかりました。善処はしてみます」

北村さんは言う。

「じゃ、この件はとりあえずいいとして他の皆は何かある?」

亜依が皆に聞いていた。
その後は皆が思い思いの事を話していた。
如月君がなかなか次の段階に進んでくれない事、高槻君と千歳さんの事など。
高槻君と千歳さんは私達が旅行に行ってる間にやったらしい。
突然ホテルに連れて行かれたんだとか。

「いやな気分はしませんでした。緊張はしましたけど。ついにきたんだなって感じでした」

高槻君は上手くリードしてくれるらしい。
未来たちは上手くやれてるのだろうか?

「倭(やまと)さん困ってました。そろそろ子どもが欲しい。でも今産休とられると仕事がまわらないって」

未来は笑って言う。

「修ちゃんはどう思ってるのか分からない。子供欲しくないのかな?」

海未ちゃんは悩んでる。
そうしてみんな話していると時が経つのも早いもので。

「そろそろ2次会行こうか?男共より先に部屋に入っておきたいし」

亜依が言う。

「そうね、男共の驚く姿が見たいわ」

恵美が言う。
私達は店を出てカラオケ屋に向かった。

(4)

1次会を終えた僕達はカラオケ屋に向かう。
桐谷君は相変わらずだった。
店の周りを見回ってる。

「渡辺君が今夜の2次会の場所は?」
「今回は無難にカラオケにしようと思ってな」

桐谷君が聞くと渡辺君が答えた。

「なんだよ、奥さんにビビってる?」
「まあな、これ以上機嫌を損ねると本気で離婚届突き出されそうだしな」
「勘弁してくれ瑛大。お前達の行動で皆迷惑してるんだ」

木元先輩が言った。
僕も愛莉の機嫌はこれ以上損ねるのは得策じゃない。

「そんなんだから、女房に舐められるんだよ!俺がびしっと決めてやる」

そう言う事あまり言わない方がいいと思うよ?桐谷君。

「まあ、カラオケでもいいから皆不満を吹き飛ばそうぜ!」

桐谷君の威勢は部屋のドアを開けるまでだった。
部屋に先に入って待ってる女性陣の顔を見て顔が引きつっていた。
それは渡辺君と僕を除く皆そうだった。
石原君と酒井君は危機を感じ取っていたらしい。

「待っていたよ~渡辺君」

亜依さんが言う。

「ああ、待たせたね」

渡辺君が言う。

「どうした瑛大?そんなところに突っ立ってないでこっちにこい」

口をパクパクさせて亜依さんを指差している桐谷君。

「1次会で話は済んだんだろ?じゃ2次会は一緒でも問題ないよな?」
「そうだな、何の問題もない」

渡辺君は言う。

「じゃあ、今夜も盛り上がろうじゃないか?瑛大」

強制的に亜依さんの隣に座らせられる桐谷君。
僕達もそれぞれのパートナーの隣に座る。
心なしか北村さんが緊張してる。
ああ、そうか。キスの話したんだね。

「愛莉、あの話どうなったの?」
「ちゃんと作戦考えたよ~」
「へえ、どんなの?」
「あのね~……」

愛莉が僕に耳打ちする。

「それはいいかもね」
「わ~い、冬夜君に褒められた~」

愛莉は嬉しそうに僕に抱き着く。
辺りを見回すと皆それなりにいちゃついてる。
口にあーんしたり、一緒の飲み物を飲んだり。それぞれ楽しんでる。
北村さんも、恐る恐るから揚げを手に取って栗林君の口に運んでる。

「ありがとう美里」
「い、いえ……」

今ならはっきり見える。

期待と不安と渇望。

彼女は緊張している。
動き出したのは女性陣からだった。

「北村さんは栗林君を家に泊めたことはあるんだよね」
「ええ。ありますけど」

愛莉が聞くと北村さんは答える。

「じゃあ逆は?」
「え?」
「栗林君の家に泊まったことは?」
「ありますよ。彼結構生活しっかりしてるみたいで、綺麗に片付いてました」
「じゃあ、問題ないね~」

愛莉が言う。

「何がですか?」
「今日は土曜だし、栗林君の家に泊めてもらいなよ。いいよね?栗林君」
「俺は構わないけど、美里いいのか?」
「……私も構いません」

桐谷君と亜依さんは相変わらずだ。
他の皆も歌っている。
北村さん達も歌いだした。
北村さんは結構古めの曲を好むようだ。
しかも男性ボーカルの歌。
だから自然と栗林君と歌っている。
この二人なら大丈夫だろ。
そう確信していた。
それより気になったのはカンナ。
スマホを見て不安そうにしている。

「どうしたカンナ」
「ああ、あの馬鹿と連絡とれなくてな」

何かあったんだろうか?
朝まで飲んで歌って騒ぐと皆始発で帰っていった。
北村さんと栗林君を見送って。

「北村さん達上手くいくといいね」
「愛莉は確信してるんだろ?」
「冬夜君は?」
「あそこまでお膳立てしたら多分大丈夫だろ?」
「だよね~」

愛莉はご機嫌のようだ。

「ねえ?冬夜君」
「どうした?」
「帰ったらキスして?」

どうしたんだいきなり。

「そういう気分なの」

2人にあてられたってところか?

「キスだけでいいのか?」
「うん……冬夜君も疲れてるだろうし」
「わかった、いいよ」
「わ~い」

きっと、他の皆も強請られているんだろうな。
そんな事を思いながら家に変えてシャワーを浴びるとベッドの中で思う存分愛莉の要求を満たしてやった。

(5)

純一さんの家に泊まるのは今日が初めてじゃない。
何度もある。
だけど今日は緊張していた。
それが渡辺班のおまじない?
渡辺班の皆は言う。

「その緊張を純一さんが解してくれる」と。

純一さんが紅茶をもってくる。

「コーヒーはだめだったね?」
「はい」

純一さんから紅茶を受け取った。
純一さんは私に密着してる。
彼から誘ってる?
まだ私を警戒してる?
すべてが、渡辺班の思うように事が進んでいるようだ。
あとは私の心ひとつ。
私は意を決して、彼の腕を掴む。
彼はそれに気づいて私の目を見つめている。
私も自然と彼の目に吸い込まれるように彼を見つめていた。
彼が私の頬に手を当てると、私に顔を近づける。
私は目を閉じる。
唇に感じる柔らかくて温かな感触。
私は彼を抱きしめていた。
その時間がとても長く感じられた。
そして突然ふと消える。
やっと一歩進めた。
渡辺班とは本当に不思議なグループだ。
一つ一つ障害を乗り越えさせてくれるグループ。
私でも人並みの恋をすることがあるんだ。

「ごめん、突然で」
「かまいません、恋人なら当たり前なのでしょう?」

どうしてこういう言い方しかできないんだろう。

「俺床で寝るから美里ベッド使ってよ」

気にしなくていいのに。
くすっと笑っていた。
凄く生真面目な性格。
そんな彼が私の運命の振り子を動かした。
私は動いている。
だから言うんだ。

「そんなところで寝てると風邪引きますよ。一緒に寝ましょう」
「……いいのか?」
「今さらです」
「ありがとう」

彼から何もしてこなかった。
先に辿り着くのはまだ先の話のようだ。

(6)

やばい!
目が覚めた時思った。
隣で寝ている女性は裸だった。
俺も裸だった。
酔っていて覚えてない。
何も無かった。
そう思いたい。
ゴミ箱を見る。
ゴムは捨てられてない。
未遂で済んだ。
スマホを見る。
神奈からの着信履歴とメッセージで溢れている。
どう言い訳しよう?
取りあえず何も無かった。
それは確かだ。
寝ていた女性が起きた。
彼女は合コンで意気投合した女性。
彼女が酔っていたから送ると言ったら休憩したいと言い出して……。
記憶をたどっていく。
うん、何も無かった。
とりあえず安心する。
だが、それは自己満足でしかない。
彼女が何かあったと言えばそれで事実は覆る。
そして彼女と寝たという事実は覆らない。

「おはよう、誠君」
「おはよう、下村さん」

とりあえず挨拶する。

「あのさ……」
「昨夜は楽しかったです。ありがとうございます」

楽しかった?飲み会の事だよな?

「いや、気にする事無いよ。そろそろ出ようか?」
「そうですね」

そう言って彼女は服を着る。
俺も服を着る。

ホテルを出ると「じゃあ」といって去ろうとすると下村さんが俺の手を掴む。

「折角だし朝食くらい一緒しませんか?」
「で、でも早く帰らないと」
「奥さんが待ってるでしょ。この時間になったら関係ないですよ。少々時間とるくらい」

それもそうだな。

「じゃあ朝食食って帰るか?」
「はい」

商店街の中にある喫茶店でモーニングを食べてから俺達は分かれた。
帰りの電車の中で言い訳を考えていた。
2次会が盛り上がって朝になった。
渡辺班なら良くあることだ。
それで行こう!
家に帰る。
チェーンロックはされてない。
俺はほっとした。
そっと家に入る。
神奈も遅かったんだろう、寝てるようだ。
と、思ったら甘かった。

「随分遅かったな。誠」
「か、神奈」
「どこに行ってた?」
「に、二次会の店で盛り上がってさ」
「変な店には行ってないだろうな?」
「行ってないよ、約束しただろ!」

嘘はついてない。

「連絡したのに出なかったのは?」
「盛り上がって気が付かなかったんだよ」
「そうか……遅くなるなら連絡くらいしろ」
「わかった、悪かったな」
「じゃあ、私は寝るぞ」
「俺も寝るよ、疲れた」
「……その割には顔色良いな?」

こういう時の女性の勘は鋭い。

「まだ俺も若いからな。このくらいじゃなんともないよ」
「そうか?」
「と、取りあえず寝ようぜ」
「ああ、そうだな……?」
「どうした?」
「いや、別に何ともない」
「そうか?」
「ああ、おやすみ」

そう言って神奈は眠りにつく。
俺は今後どうするか男子会に相談していた。それが大きなミスだった。

(7)

「冬夜君お昼だよ~。起きて~」

愛莉に言われて目が覚める。

「愛莉よく眠れた?」
「うん、お昼ご飯作ってくるね」
「簡単なものでいいぞ」
「インスタントラーメンでいいよね?」
「それなら……」
「玉子入れてねでしょ?分かってる~」

愛莉はそう言って部屋を出ていった。
スマホを取りあえず確認する。
男子会にメッセージが入っている。
皆が誠にすぐメッセージを削除しろと言っている。
なにがあったんだ?
履歴を辿ってみる。
絶句した。
あの馬鹿……。
寝ているのか?メッセージを削除する気配が無い。
埒が開かない。
誠に電話する。

「もしもし~冬夜どうした?」
「どうした?じゃない、今すぐメッセージ消せ!女性に見られてるの忘れたのか!」
「あ、そうだった!すまん今すぐ消す!」

スマホを見るとメッセージが消されたのを確認する。

「で、どうしたらいい!」
「僕に分かるわけないだろ!」

そんな修羅場起こしたら愛莉パパが殴りこんできそうだ。

「……何も無かったんだろ?」
「記憶ではない」
「だったらこのまま何も無かった事にしてしまえ。絶対にカンナに言うな!」
「分かってるよそのくらい。あ、神奈起きてしまったから切るわ」
「落ち着け、まだ慌てる時間じゃない」
「わかってる、じゃあな」

電話は終わった。
だけど僕も致命的なミスを犯していたようだ。

「神奈がどうかしたの?」

愛莉が部屋に戻ってきていた。

「愛莉こそどうしたの?」
「お昼できたよ~て呼びに着たのに気づいてくれないんだもん」
「ああ、ごめん。ラーメンのびちゃうね。今すぐ行くよ」

そしてダイニングで昼ご飯を食べる。

「で、神奈になにかあったの?」
「ああ、誠が朝帰りして怒ってるみたいだ」

嘘はついてない。

「うぅ……冬夜君また何か隠してるでしょ?」
「何も隠してないよ」
「うそだもん、誠君が朝帰りしたくらいで怒るわけない。昨日合コン行ってたことくらい知ってるんだから」
「そうだね、神奈が起こるわけないよね。誠の気のせいだよな」
「『落ち着け、まだ慌てる時間じゃない』ってどういう意味?」
「単なる漫画の台詞を言ってみたかっただけだよ」
「冬夜君からそういう事ばらすって事は何か隠してる」

愛莉の勘は鋭い。

「後でスマホ見せて。どうせ男子会で何か話してたんでしょ?」
「あ、ああいいよ。何も無いから」

誠はメッセージ削除した。後はしらを切ればいいだけだ。
愛莉の片づけを手伝ってやると部屋に戻る。
そして僕のスマホを見せる。
愛莉は迷いもなく男子会のメッセージを見る。

「おせーよ馬鹿?これどういう意味?」

誰だそんな余計な情報を流したのは?
桐谷君だ……見られたんだな?
そしてありはログを辿ると誠がメッセージを削除したところでぴたりと止まる。

「冬夜君、誠君なんて言ったの?」
「覚えてない」
「嘘!冬夜君も『メッセージを早く消せ』って言ってるもん!」

ああ、しまった。先に電話するべきだった。

「他の男性も言ってるね。女性に見られてるから早く消せ……見られたらまずい事誠君したんだ?」
「まあ、知られたくない事くらい誰でもあるだろ?」
「うぅ……夫婦で隠し事はしないって言ったもん!」
「本当に大したこと無いから……あ!」

しまった!

「大したこと無いかは私が判断するから知ってる事を言いなさい!」

誠の馬鹿が、こっちが修羅場になってしまたじゃないか?
その時愛莉のスマホが鳴っている。
多分女子会だ。
他の男性も問い詰められていたんだろう?
そして喋ってしまった奴がいる。
そんなところか?
喋ったのは多分桐谷君だろうな?
当たっていたみたいだ。
愛莉が突き付けた、スマホには亜依さんのメッセージが映ってる。
それはスクリーンショットできっちりとられた画像。

「やばい、朝起きたら裸の女性と寝てた。未遂だとはおもうけどやばいよな?」

誠も桐谷君もどうして簡単に男子会にそういうヘビーな内容載せるかな。
巻き込まれる方の身にもなれっていうの。

「冬夜君1から説明してもらおうかな?」
「本当に知らないんだ!起きてからスマホ見たらそのメッセージがあって!」
「……それで誠君に電話してたんだね?」
「うん」
「悪いのは誠君だけど、冬夜君も冬夜君だよ!どうして私に隠し事しようとするの!?」
「友情ってのもあるだろ!?愛莉だって僕に隠し事するじゃないか!」
「うぅ……悪いことは隠したりしないもん!」

やばい、愛莉本気で怒ってる。
明日は誕生日。
この空気で折角の誕生日を台無しにするのはよくない。

「愛莉落ち着こう?悪いのは僕だよね?ごめんなさい」

下手な小細工せずに謝るのが一番。

「どうして最初から素直に言わないの!?」
「本当にごめん!でも言ったら愛莉怒るだろ?」
「言わなくても怒る事分かってるでしょ?」
「もう隠し事しないから」
「本当にしない?」
「絶対しない」
「……神奈の事で私達が喧嘩するのもおかしいよね?今回は許す」

首の皮一枚つながった。

「でも、どうして知らない女性と寝てたんだろ?」
「合コンで知り合ったんだろ?」
「うぅ……やっぱり冬夜君は合コン禁止!私を連れて行くこと!」
「心配しなくてももう呼ばれる事無いよ。呼ばれても断るから」
「それは信じてあげる。ご飯につられたら駄目だよ」
「それなら愛莉とご飯食べに行くよ」
「わ~い」

この日皆が誠を恨んでいた。
男性陣は皆スマホのチェックを受けたらしい。
僕も当然検閲された。
愛莉はまだ優しい方だと聞かされたのは後になってからだった。
そして事件はこれだけではすまなかった。
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