優等生と劣等生

和希

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5thSEASON

君の仕種に恋をした

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(1)

「冬夜君おはよう~朝ごはん出来てるよ~」
「愛莉、おはよう」

そう言って朝の儀式を愛莉とすれば、愛莉は僕に抱きついてくる。

「朝ごはんさめるだろ?急ごう」

そう言えば愛莉は落ち込む。そんな愛莉に一言「準備終わったら構ってやるから」と言えば愛莉は機嫌を直す。
そして朝食を食べる。朝食を食べると支度をしてコーヒーを入れて愛莉と部屋に戻り着替える。
その後はコーヒーを飲んで愛莉とお楽しみ。
テレビを見ながら愛莉を愛でてやる。
愛莉はうっとりと僕に身を預ける。
1チャンネルを観ると朝のドラマをやってる。それを見た後学校に行く。
授業を受けて昼休みに入ると学食に皆集まる。

「おはよう神奈」
「……おっす愛莉」

神奈の機嫌は悪いみたいだ。

「片桐君おはよう、凄いわねALICEの1stシングル「不思議の国」10万枚売れたらしいわよ」
「そりゃすごいな」

恵美さんが言うと僕は驚いた。
メジャーデビューしてるわけでもないのに。

「そりゃそうだろうな」

カンナは理由を知ってるようだ。

「どうしてなんだ?」

カンナに理由を聞いてみた。

「地下アイドルってライブアイドルって言うくらい連日ライブをやってるらしいんだ」

そのくらいはネットで調べた。

「で、そのライブハウスでCDやら物販をするらしいんだが……CDを買うと握手が出来るらしい」
「ふーん……」

そこまでして握手したいものかね。

「亜依の奴言ってたぜ。瑛大が10枚くらいCD買ったって。その日のうちに大ゲンカさ」

ひょっとして……。

「誠も行ったとか?」
「ああ、そうだよ!あの馬鹿まだ懲りてないらしい」

それで神奈の虫の居所は悪かったらしい。

「あいつ自分の立場解ってるのか?騙された相手に媚び売ってるんだぞ!浮気だろ?」
「それは違うよ神奈。誠君を理解してあげて?」
「どういう意味だよ愛莉」
「冬夜君も好きな女性ボーカルいるんだ。私にその子の恰好の真似させてる」

カンナは僕を睨みつける。

「でも私はそれを受け入れたよ。どんなに好きでもそれは画面の向こう側の話だって。現実は私が一番だって言ってくれるの」
「……誠も似たようなこと言ってたな」
「神奈も憧れのアイドルとかいるでしょ?」
「まあ、洋画の映画俳優とかなら」
「でも誠君とは比べ物にならないでしょ?同じだよきっと」

一々妬くだけ無駄だと愛莉は言う。

「それでも桐谷君はちょっとやりすぎだね」
「ライブも毎回通ってるみたいだしな」

その度にCDが増えて大変らしい。

「今夜夕方テレビに出演するらしいから愛莉ちゃん達見てみたら?」
「どうする冬夜君?」
「その番組なら毎日夕飯の時に見てるからリビングで観ればいいだろ」
「うん」

出る時間なら予測がつく。多分17時半頃だろう。

「飛ぶ鳥を落とす勢いで売れてるわね」
「そうだな」
「そいつの話するのやめてくれないか?どうしてもイライラする」
「まあ、女性ならしかたないわね」

カンナが言うと恵美さんが言う。

「そこを何とかその話続けてもらえませんか?」

北村さんが知らない男を連れてた来た。
馬面のややイケメン、短髪で茶髪。背は高い。

「北村さん誰?」
「同じクラスの秋吉さんです。弓道部に所属してるそうです」
「あ、秋吉です。初めまして」
「栗林です、美里とはどういう関係ですか?」

栗林君が聞いてた。
まあ、気になるだろうね。

「勘違いしないで、偶然受ける授業が一緒だっただけのただのクラスメートだから」

北村さんが言う。
間違いは無さそうだ。

「その秋吉君がどうかしたのか?」

渡辺君が言う。

「それをこれから説明します」

北村さんが話を始めた。

(2)

いつも通り授業に出ていた。
すると突然話しかけてきた男性。
渡辺班に入ってる事はもう知れ渡ってる。
渡辺班に入りたくて私に話しかけてくる人も少なくない。
正直うんざりしていた。
私は適当にあしらおうと思った。
が、彼は必死に縋りつく。
話だけ聞いてあげようと思った。
彼は恋をしたらしい。
シンデレラのようなお姫様。
知り合ったのは、友達に誘われていった地下アイドルのライブ。
ライブで彼女と目があった時彼女は微笑んでくれた。
それで心を奪われた。
それから毎晩通うようになった。
毎回CDを買って彼女と握手をしていた。
彼女の手のぬくもりが忘れられないらしい。
そして次第に彼女を手に入れたいと思った。
自分だけの特別なものにしたいと思った。
そう、彼女に恋をした。
でも、身分が違う自分を受け入れてくれるだろうか?
彼女にとって彼はファンの一人にすぎないということくらい分かってる。
彼女の事を調べた。
彼女の悲惨な家庭事情も知った。
なおさら彼女を救ってやりたいと思った。
でもどうしたらいいか分からない。
そんな時に渡辺班の噂を聞いた。
どんな恋でも叶えてくれる不思議なグループ。
同じ学部の同じコースにそのグループに所属してる人がいるらしい。
そして私を突き止めた。

「諦めた方がいいんじゃない?さすがに相手が悪いわ。その人にとってもあなたにとってもその方が幸せよ?」

私はそう言った。

「一番想っている人を忘れる事の一体どこが幸せなんですか?」

彼を憐れに想った。
そして彼を放っておけなくなった。
だからダメもとで渡辺先輩に報告しよう。
それでだめなら諦めてくれるかも。
それでもできるなら彼の願いをかなえてやりたい。
純粋な彼の人を見る目は間違いじゃないことをの願った。

(3)

「ふざけるな!」

神奈がテーブルを叩きつけて立ち上がった。

「話にならない!あんな奴を渡辺班に入れるって事だろ?そんな事するなら私は抜ける!」
「まて神奈さん、落ち着け。俺も反対だ。いくら何でもそれはあり得ない!」

神奈と渡辺君は反対のようだ。

「でも僕達は亀梨君達を仲間にした。危険なのは変わりないんじゃないのか?」
「トーヤはもし愛莉が誠と同じ目にあったらどう思う!?愛莉は女性だ。もっとひどいことになってたかもしれないんだぞ」
「カンナ落ち着け!」
「お前は自分の愛莉が無事だから平然としてられるんだ!愛莉にもしものことがあったらと考えたことあるのか!?」
「冬夜君は馬鹿じゃない!冬夜君は私が殺されそうになった時助けてくれた。人一人殺そうとしたんだよ!」

愛莉、気持ちは分かるが少なくとも学食で話す話題じゃないぞ。

「愛莉は賛成派なのか?」

カンナは愛莉を睨む。

「そ、それは……」

愛莉自身も悩んでいる。

「神奈先輩には悪いけど、私にはその有栖って子の気持ち分かります」

咲さんがいう。

「きっと以前の私と似たような感じなんだと思う。心が荒んでる、潤いを求めて間違った方向に突き進んでる事にきづいてない。そしてそんな彼女を利用する者が許せない」
「竹本が誠と同じ目に遭っても許せるのか?竹本はそんなことしない。そう信じてるんじゃないのか?」
「信じてる。だから多田先輩と同じ目にあってもまず私は話をする。信じてる気持ちが残ってるから!根本的に神奈先輩は間違ってる。悪いのは彼女じゃない彼女の境遇を利用した者達」

咲さんとカンナの論争も平行線のままだ。

「わかったよ、渡辺班としての行動はとらない。それでいいんだね」

僕が言った。
秋吉君は絶望した。

「あ、ああ。それが一番だろうな。今回ばかりは俺もかばいようがない」

渡辺君が言う。

「秋吉君、今夜空いてる?」
「部活が終ってからなら」
「チケットを用意してくれないか?僕と愛莉と恵美さんと石原君の分」
「そのくらいなら可能ですけど」
「ライブは何時からなの?」
「20時からです」
「その前に青い鳥は無理だな……敷戸駅のそばのファミレスに来れない?」
「待て冬夜。何を企んでる!?」

渡辺君が言う。

「カンナ。お前はあの時一緒にいたよな?」
「あの時?」
「ああ、誠を救った時。初めて有栖さんと会った時」
「ああ、見たよ」
「……その時お前は何を見てた?有栖さんをちゃんと見てたか?」
「それがなんだってんだ?」
「あの時彼女が言っていた言葉『……私はもう二度と戻れない』本当に神奈の言うような人間なら絶対に出ない言葉だ。彼女自身後悔してるんだ。後悔を背負ったまま生きてる」
「自業自得だろうが!」
「あの時僕は見た、彼女が僕達を寂しそうな瞳で見てるのを。一瞬だったけど。人が動くに一々理由が必要ならば僕の理由はそれで十分だ!」
「待て!冬夜!渡辺班が動かないって自分で言っただろ!」

渡辺君が言う。

「分かってる。これは渡辺班の行動外での行動だ。それなら問題ないだろ?」
「片桐君に僕もついて行きます!彼女も秋吉君も放っては置けない!」

石原君が言う。

「よく言ったわ望。そういう事なら私もついて行くわ。旦那が動くんだもの私は旦那について行くだけ!」

恵美さんが言う。

「やれやれ……また面倒事ですか?でも厄介な事にそういう事を放っておけない性格になってしまった。困ったものです」

酒井君が言う。

「立派になったわよ。誇りに思っていいわ。いいわよ、私達の分もチケット準備してちょうだい」

晶さんが言う。

「まてまて、ただの渡辺班の分裂じゃないか!?落ち着け!皆で話し合おう」

渡辺君が言う。

「……俺達も協力します。まずはスティンガーから足を洗わせる方法ですね。考えてみます」
「興毅……」

亀梨君達が言う。

「渡辺班が僕を縛ると言うなら僕は渡辺班を抜ける」

僕が言うと次々と抜けると言い出す者が増えた。

「冬夜、一日だけ待ってもらえないか!?今夜緊急招集をかける」

渡辺君が言うと。みんなとりあえず待つことにした。

「ライブは何時に終わるの?」
「21時には終わります。それから握手会を……」
「そう、その時にALICEに会えるわけね?」
「はい」
「じゃあ23時にファミレスで集合しよう。僕は今日のうちに確認しておきたい事がある」
「冬夜君も握手するの?」
「あってみないと話にならないだろ?」
「うぅ……仕方ないか」

愛莉は複雑な思いのようだ。

「なんだよ……私一人悪者みたいじゃないか……でも誰かを助けるのに理由はいらないか……わかったよ。私も行く」
「神奈!」
「納得したわけじゃないからな。トーヤの言うような人物なのか見極めたいだけだ!」

神奈が言う。

「……一々理由が必要か。わかった!俺が全責任を取る!地元大組で来れるやつは19時半にはライブハウスに集合しよう」

渡辺君が立ち上がった。

「渡辺班が動くならまずやることあるんじゃない?」
「そうだな……秋吉君スマホを」

秋吉君がスマホを出す。
そして渡辺班に招待した。

「で、具体策はあるのか?トーヤ」

神奈が聞く。

「無いよ?だから確かめに行くんだ。まずは相手を知ることからだろ?」

僕が答える。

「何を調べるんだ?」
「彼女の気持ち。想像はつくんだけど想像は想像でしかないから、それをしっかり確かめたい」
「まどろっこしい事考えてないでとりあえず彼女を買い取ればいいんじゃない?芸能事務所作るくらい容易い事よ」

恵美さんの家って何やってるんだ?

「それじゃだめだよ、まずは秋吉君と縁結びから始めないと」

彼女に抜け出そうというきっかけを作ってやりたい。

「わかったわ……」

恵美さんは新條さんに電話して何かを手配している。
何をする気だ?想像はつくけど。

(4)

今夜は2ndシングル「ティータイム」のお披露目。
私の気分は沈んでいた。
今回は握手券の他に一番多く買ってくれた人とデートする権利が与えられる。
デートのコースは自由。
デートもキスも経験済みだけどやっぱり知らないおじさんとかとするのは嫌な気持ちになる。
衣裳に着替えウィッグをつけてカラコンをする。
化粧をしていると来栖さんが「そろそろ本番だよ」って知らせてくる。

「いつも通りで頼むよ!派手にお披露目して来い」

私は自分の気持ちを押し隠して舞台に立つ。
ライブは1時間続いた。
盛り上がるファン達。
その中で一部で異質な存在に気づいた。
つまらなさそうにしてるわけじゃないんだけどマジマジと私を見ている客の群れがいる。
中にはいつも来てくれる彼がいる。
彼はいつもCDを買ってくれる。
握手するときも恥ずかしそうに照れくさそうにする。
ちょっと異質な存在。
そんな彼に憧れる。
彼とデートならしてもいいんだけど。
他の人は恐らく最後にはホテルに連れ込む気だろう。
それ自体は初めてじゃないけどやっぱり嫌だ。
スティンガーで仕事をしていた時も気分は沈んでいた。
それでも笑わなければいけない。
それは今の私も同じ。
ALICEと言う仮面で隠して、素顔を曝け出せないでいる。
デート権の事は事前に告知してある。
誰が一番買うのか?
それが不安だった。
ライブが終ると販促にその足で向かう。
作った笑顔で客に礼を言いながら握手をする。
その時どこかで見た顔にあった。
彼は私と握手するときににこりと笑っている。
そして私の目を見る。
彼の目線はカラコンを突き抜けて虹彩を見ているようだった。
彼は何も言わずに立ち去った。
そのあとに彼が来る。
彼は1000枚買ってくれた。
今のところ一番だ。
このままなら一番は彼だ。
少しだけ期待が沸いた。

「じゃあ俺は1500枚」

え?

「ふざけるな瑛大!そんな金何処にある!?」
「ちゃんと貯金を下ろして来た!」
「この馬鹿!すいません2枚でいいです」

ほっとした。夫婦で来ているようだ。
どこかで見たことある。
嫌な予感がした。
このままでは終わりそうにない。
そしてその予感は当たった。

「現金じゃないと駄目?カード決済は可能?」
「現金でお願いします」

マネージャーが言う。
その客は現金が詰まったアタッシュケースをテーブルの上に載せた。

「この金で買えるだけ全部!足りない分は後日配送で構わない」

爆買いと言う奴か?
どんな人が……?

綺麗な女性の人が買っていた。

「もらえるのはデートする権利で間違いないのよね?」
「ええ、そうですけど」
「じゃあ、手続きをお願い」

CDは売り切れた為CDの即売会は終わる。
残された皆は落胆しながらグッズを買って行った。
CDを一番買った客は別室に呼ばれる。
誰も女性が爆買いするなんて思わなかっただろう。
女性とサシで話す時間が設けられた。

「あなた妊娠詐欺してた人よね?下村有栖さん?」

私の事を知っている!?

「そうです……」

終わった。私はまたドジを踏んでしまた。

「ここでその名前で呼ぶのはまずいわねALICEさんと呼ばせてもらうわ」
「はい」
「デート権は譲るのは不可能?」
「はい」
「デートのコースはこっちが勝手に決めて良い。そうね?」
「はい」
「ここに盗聴器は?」
「ありません」
「そう、じゃあこっちの要件を手短に言うわ」

要件?

「まず私たちは多田誠の仲間」

やっぱり……

「そしてあなたを助けに来た」

え?

「感謝しなさい。あなたの未来も捨てたもんじゃないわよ」
「どういう意味ですか?」
「拾う神もいるってことよ。あなたの事情は粗方把握してる」
「私を拾うってどういう意味?」

また、私を売り飛ばすつもりなの?

「あなたスマホは変えてる?」
「いえ……」
「じゃあ、後日スマホに連絡する。ここからは普通の会話にもどすわ」
「はい」
「デートの件だけどどうやって連絡すればいい?」
「こちらの連絡先に……」

それには私のスマホの電話番号が書いてあった。

「わかったわ。あなた車は持ってる?」
「いえ……」
「じゃあ、地元駅南口にいや、あなたの寮からなら大在駅の方がいいわね。そこに週末10時に」
「わかりました」
「じゃあ、ありがとう。これで失礼するわ」
「あ、あの……」
「なに?」
「彼に、多田先輩に伝えてくれませんか?『非常に申し訳ないことをしました。すいません』と……」

償っても償いきれるものじゃないけど。

「希望を持てって言ったでしょ?貴方にそんな顔をさせる為にCDを買ったんじゃない。がんばってね」

そう言って彼女は退室していった。
私に希望?
彼女は私を救いに来たと言った。
本当に救われるときが来るのだろうか?

(5)

「……てなわけ」

恵美さんの話をみんな聞いていた。
亜依さんと美嘉さんは相変わらず反対派だった。

「カンナはどう思った?」
「どうもこうも……お前はどうだったんだ?トーヤ」
「思った通りだ。しかも都合のいいことが一つ分かった」
「なんだそれ?」
「彼女、理由は分からないけど秋吉君に憧れている」

僕の一言に皆が騒然としていた。

「どうしてそんなの分かるんだよ?」

神奈が聞いた。

「彼女無意識のライブ中僕達を見ていたんだ。そして握手会の時も僕の後ろにいた秋吉君が爆買いしたときほっとしてた」
「これからどうするつもりだ」

渡辺君が聞く。

「週末のデートとやらを考えなきゃね?でもその前に決めておくことがあるでしょ?渡辺君」
「なんだそれは?」

僕は皆の顔を見る。

「皆が彼女を受け入れるかどうか?それ次第でプランが変わる」
「私は反対だ!そんな性悪女何するか分からねえ」

美嘉さんが反対する。

「それはどうかな?」
「どういう意味だよ?」
「こっちには秋吉君てカードがある。手は考えてるよ」
「どういう手だ?」

渡辺君が聞く。

「俺達にも手段とやらを話してくれ、でないと俺にも判断する材料が欲しい」
「渡辺班は縁結びのグループ。そう噂されている」
「冬夜の言う通りだがそれがどうかしたのか?」
「わかった~」

愛莉が言う。

「そういう事ね、私が買って置いて良かったわね」

恵美さんが言う。

「私には分からない。ちゃんと説明しろトーヤ!」
「神奈の言う通りだ。ちゃんと説明しろとーや!」
「俺は薄々気づいたがそれが通用する相手なのか?冬夜」
「言ったろ?彼女は秋吉君を強く求めてると」

カンナと美嘉さんと渡辺君が言うと、僕はそう言って笑う。
当の秋吉君にはわからないらしい。
僕ははっきりと答えた。

「彼女と秋吉君をくっつけるだけ」だと。
「もし俺達が渡辺班に入れることを拒めば?」

渡辺君が聞く。

「この件は渡辺班の外で動く。それだけだよ」
「困ったな……最初から選択肢なんてない、ただの脅しじゃないか」
「昨日言ったはずだよ、渡辺班が僕の行動を束縛するものなら僕は渡辺班を抜けると」
「わ、私も抜ける。冬夜君について行くだけだから」
「僕も抜けます。困っている人を見過ごす真似なんてできない」

愛莉と石原君が言う。

「と、なると新しいグループを作る必要があるわね」

晶さんが言う。

「う~ん名前か~この際だから片桐班でいいんじゃない?」

愛莉が言う。

「待て待て、まだ俺は判断してない。早まるな!」

渡辺君が愛莉たちの勝手な暴走に待ったをかける。

「お前のやることは卑怯だぞ!神奈さん達の気持ちを考えたのか?」
「僕はいつも自分の意思で行動してきた。カンナの時も愛莉の時もそして今度も自分の意思で決める」

人にとやかく言われる筋合いはない!

「……で、どうやってくっつける気なんだよ?」

カンナが言った。

「ちょっと神奈あんたまさか!」
「早まるな神奈!私達がついてる!こんな卑怯な真似許さない!」

亜依さんと美嘉さんが言う。

「くやしいけど、こいつの言う事は正論だ。そのくらい私にだってわかる……こいつはいつだって自分の目の前に映る人を救おうとしてるだけだ。損得なんて考えないんだよ」

カンナが言う。

「神奈がそう言うなら私達も反論する理由がないね」
「そうだな、だけどもし何かあったらとーやが責任とるんだろうな!?」

亜依さんと美嘉さんが言う。

「絶対にそうはならないって言ったろ?」
「時に冬夜、俺達が拒否した場合はどうするつもりだったんだ?」
「恵美さんを説得してむりやり秋吉君と引き合わせる覚悟だった。多少の損失はやむを得ない」

でも、グループを離れても絆は切れない。そう思った。と渡辺君に説明する。
もう誰も反論する者はいなかった。

「決まりだな。冬夜具体策を教えてくれ」

渡辺君が言う。

「まず恵美さんが大在駅に迎えに行く。僕達はファミレスで待つ。あとはわかるよね」
「私がファミレスに案内すればいいのね?」

恵美さんが言う。

「うん、友達を紹介したいとも言えば良いよ。デートのプランは自由なんだろ?」
「その後は?」

恵美さんが聞いてきた。

「後は僕に任せてくれ。恵美さんは適当に話を合わせてくれるだけでいい」
「わかった。まかせて」
「冬夜君……」
「わかってる。愛莉も一緒のテーブルだ」
「うん!」

僕達のテーブルには渡辺夫妻、愛莉、秋吉君、石原夫妻、下村さんの8名テーブルにすることにした。

「じゃあ、話もまとまったし解散するか?」

渡辺君が言うと皆解散していった。

(6)

「ねえ?冬夜君」
「なんだい?」

愛莉と部屋でテレビを見ながらくつろいでる。

「本当にうまくいくの?」
「自信はあるよ」
「どうして?」
「みんな……特に女性陣は最初のインパクトもあって見落としてるみたいだけど彼女の目はいつも何かを探し続けてた」
「それが秋吉君なの?」
「みたいだね。流石に驚いたけどね」

自分の目を疑ったほどだ。

「それでさ、仮に二人が付き合いだしたとして上手くいくの?」
「いくね」

僕は断言した。

「どうして?」
「運命の糸って本当にあるんだねって思った」
「うぅ……。そんなの分かり切ってるじゃない!」
「どうして?」
「私と冬夜君がそうだもん!」

そう言って愛莉が抱きついてくる。

そんな愛莉の頭を撫でてやる。

「ごめんそうだったね」
「えへへ~」

愛莉を見て想う。
一目惚れか。

僕も周りの人に元気に挨拶してる愛莉に一目惚れした。
そして教室で一人泣いてる愛莉を見て守らなきゃって思った。
今度もそうだ。
あの時感じた事が確かなのなら。
しっかり守ってみせる。
人は何気ないふとした仕種で恋に落ちる。
彼女は秋吉君の何を見て恋に落ちたのだろうか?
聞いてみたいと思った。
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