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5thSEASON
あやまちの愛
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(1)
「冬夜君、起きて。朝だよ~」
「おはよう愛莉」
「最近素直だね」
愛莉はそう言って笑う。
準備をすると朝食を食べてマグカップを持って部屋に戻る。
テーブルに置くと着替えながらテレビを見る。
ALICEの人気は相変わらずのようだ。
しかしこうなると不安要素が出て来る。
彼女の悪事が公になる事。
やってしまったものは仕方ない。
しかし僕達も手をこまねいているわけじゃない。
「OK、冬夜に言われたとおりにスティンガーと事務所のサーバーから彼女のファイルは削除しといた」
朝からこんな物騒なメッセージが渡辺班に走る。
「私、やっぱり自首した方が……」
「自白だけじゃ起訴はできない。心配するだけ無駄だよ」
僕が下村さんに答えた。
「でも……」
「今日15時ごろ空いてる?」
「え?」
「事務所に行きたいんだけど?」
「いよいよ動くのね?こっちの準備はできてるわ」
恵美さんが言う。
「冬夜君今日はどの服がいいかな~?」
「う~ん、黒と赤がいいな~」
「わかった~」
愛莉が着替えだす。
「15時なら大丈夫です、私も事務所でレッスンしてるから」
「わかった、じゃあ15時で」
「OK」
3人で話がまとまる頃には愛莉の着替えは済んでいる。
ネットのニュースを見る。
愛莉もデスクトップのモニターを凝視している。
……思った通りもう噂が流れ始めている。
ALICEは詐欺師。
多分事務所がもみ消すだろう。
だが、事務所がやってる詐欺まがいの商法までは消せやしない。
急ぐ必要がありそうだ。
下村さんが巻き込まれる前に。
デスクトップをシャットダウンすると愛莉に「そろそろ行こうか?」と言う。
もう実は大学にいく必要はほぼないんだけどね。
卒論も提出したし、必修単位を取るだけでいいんだけど、愛莉が「最後までしっかり勉強するの!」と言うから言ってるだけ。
大丈夫、ちゃんと経済学科に添った論文を書いたから。
まちがっても「公道最速理論」なんてとち狂った論部は提出してない。
大学に行ってもほとんど遊んでるだけの時間。
愛莉が授業を聞いてるから、愛莉にあとでかみ砕いて説明してもらうだけ。
でも愛莉の説明を聞くくらいなら講師の説明を聞いてた方が分かりやすいって言うくらい愛莉は大雑把なんだけど。
「これでわかんない?」って本気で聞いてくるから困る。
そんな感じで午前中を終えて昼休みに入る。
四年生なんてほとんどいない。
皆免許を取ったり徹マンして昼過ぎからの授業に出たり色々だ。
そんな中渡辺班も皆忙しい。
「先輩たちマジ大変みたいっすね」
晴斗が言う。
僕達は余裕だけどね、愛莉のスケジュール調整は神がかっていた。
誠とカンナと亜依さん穂乃果さんが大変みたいだけど。
渡辺班の4年生組は皆就職先だけは決まっている。桐谷君を除いて。
恵美さん達がやってきた。
「準備は整った。小さな芸能事務所を設立したわ。資本金もそんなにないけど問題ないわ。スタッフに芸能関係にコネある人を雇った。あとはタレントを用意するだけ」
本当に一晩でやってのける人達だな。
「事務所なら私が用意してあげる。ちょうどパパたちが貸店舗抱えてたし」
晶さんが言う。
「何て名前のプロダクションなの?」
愛莉が聞く。
「USEよ。代表取締役は望にまかせたわ。副業でいいみたいだし」
「他に必要な人材は?」
僕が恵美さんにきいていた。
「大丈夫マネージャーも決まってるし、ね?秋吉君」
へ?
「僕がマネージャーをします。最初は色々教えてもらいながらだけど」
「大学はどうするの?」
「マネージャーの仕事なんてそんな大したことないし、営業は別に雇ってるから下村さんの世話さえしてもらえばいいわ」
恵美さんが言う。
「なら早いうちがいいね。さっさと下村さんを引き抜こう」
「そうね。じゃあ、3限が終わったら向かいましょう」
僕と恵美さんが言う。
「僕も言った方がいいですね。代表取締役だし」
「僕も行きます、彼女のマネージャーだし」
石原君と秋吉君が言う。
愛莉の顔を見ると自分も行くと言いたげだ。
結果行くのは僕と愛莉と石原夫妻と秋吉君で行くことになった。
大勢で言っても仕方ない。
カンナには誠への伝言をお願いしていた。
「噂を流したものの特定」
恐らくスティンガーの者だろうけど。
「わかった、相手はスティンガー絡みなんだろ?お前らも気をつけろよ」
カンナが言う。
「大丈夫ちょっと騒ぎがあるかもしれないけど派手には動かないよ」
僕が言う。
そして3限が終ると僕達は芸能事務所に向かった。
(2)
今日も授業が終わると事務所でレッスンをしていた。
WHITEの人達は集まって喋っている。
そんな人たちに目もくれず振り付けを必死に覚える。
「有栖、ちょっと着替えて応接室に来てくれ」
来栖さんがそう言うと私は彼女たちの冷たい視線を浴びながら更衣室で着替えて応接室に向かった。
「話と言うのは、噂の件なんだが。本当か?」
社長が言う。今更隠したところで、どうなる事でもない。
「本当です」
私は正直に答えた。
「取材を受けたら違いますと答えるんだ。いいな。あとはこっちでどうにかする」
社長は言う。
スティンガーの力を使ってもみ消しに入るのだろう。
「まあ、その話はおいておいて。君のファンだというテレビ局の関係者がいてね。その接待をお願いしたい」
接待の内容は聞くまでもない。
「……お断りします。それと大事なお話が」
「なんだと?」
「大事な話ってなんだ?」
来栖さんと社長の声音が変わる。
足が震える。
「私……この事務所を止めます」
「ふ、ふざけるな!!貴様を買うのにいくらかかったと思ってるんだ!?」
「そのお返しは十分したはずです」
私の声は震えていた。
「この前の爆買いの女性が原因か!?」
私は黙ってうなずいた。
「今度からあの女は出禁だな」
社長が言う。
「有栖。お前足洗えると思ってるんじゃないだろうな?」
来栖さんが言う。
それまで黙ってみてた木刀……に見せかけた仕込み刀を持った男が近づいてきた。
「ちょっとこの子には教育が必要ですかね?」
「顔には傷つけるなよ。大事な商品だ」
社長が言う。男が近づいてくる。逃げようにも足が震えて動けない。そんな時だった。
「ちょっと、ここから先は関係者以外立ち入り禁止……ぐぁっ!」
外が騒がしい。
社長たちも気になったみたいだ。
やがてドアが開くと片桐さん達がいた。
片桐さんは左手に……日本刀?石原君はアタッシュケースを二つ抱えている。
恵美さんは社長と私達をみてくすりと笑った。
「その様子だとちょうどいいタイミングみたいね」
「なんだ貴様ら!!」
男が言う。
「ビジネスに来たのよ?社長さんはどなたかしら?」
恵美さんが言う。
「私がそうだけどビジネスとは?」
「望」
石原君は二つのアタッシュケースを出す。
「これでALICEを譲ってもらえないかしら?現金で2億用意してある」
に、2億円!?
「地下アイドルにしては破格の金だと思うんだけどどうかしら?社長さん」
恵美さんが言う。
しかし社長はハイとは言わない。
「彼女はそれ以上稼ぎになる、ちょっと無理な相談だね」
黙って聞いていた片桐君がにこりと笑って言った。
「そこを何とか受けてくれませんか?彼女はこんな詐欺まがいの地下アイドルにしておくには惜しい。もっとたくさんの人に夢と希望を与える事が出来るはずだ」
「詐欺だと……?噂の事を言ってるのか?」
「そうじゃない、噂なんてすぐに消えるさ。一日デート権なんて何するかわかったもんじゃないし、風営法に引っかかるんじゃない?」
「揺すりに来たのかお前ら!」
男が片桐君を脅す。
だけど片桐君は意にも介さず話を続ける。
「僕達は事を穏便に運びたい。どうかこの条件を飲んで欲しい」
「ガキが舐めてんじゃねえ!」
男が仕込み刀を抜いて片桐君に斬りかかる。危ない!
それは余計な心配だったようだ。
片桐君は高速で刀を抜くと彼の顎を切り上げる。
打ち上げられた男は天井に突き刺さり伸びしてしまった。
「俺は社長と話してるんだ。外野は少し黙ってろ」
いつもの片桐君じゃない冷淡な声。
「こ、こいつら凶器(どうぐ)持ってる!来栖!!兵隊を呼べ!」
来栖さんが部屋を出て部下を呼ぼうとしたが声が出なかった。
私も部屋を出る。通路にはボコボコにされた社員たちが……。
「彼女は俺達の大事な仲間だ。素直に引き渡してもらえないか?ここで組が総崩れになるよりははるかにましだと思うが」
片桐君は切っ先を社長に向ける。
「わ、わかった。好きにしろ……」
「契約書を出せ」
社長は慌てて金庫のかぎを開けて契約書を差し出す。
片桐君は何も言わずにそれを恵美さんに渡すと恵美さんはびりびりに破り捨てる。
「話のわかる社長さんで助かるわ。じゃ、彼女は連れて帰るわね。有栖、行くわよ」
私は恵美さんに連れられて事務所を出る。
「もし今後下村さんに手を出したらどうなるかわかってるだろうな?」
片桐君の冷酷な声を背中に受けながら。
(3)
「うぅ……」
「どうしたの愛莉?」
ぽかっ
「運転中に危ないだろ?」
「冬夜君怖い顔のままだよ?」
あ……。
「ごめん、ついカッとなって」
「その癖やめたほうがいいよ」
「愛莉の前ではしないよ」
「本当に?」
「ああ」
「じゃあ、許す~」
僕達はALICEの新しい、事務所に向かっていた。
石原君が副業で経営するらしい事務所「USE」
晶さんのもっていた貸事務所の一つだったらしいんだけど……。
大手町のど真ん中にある事務所。
事務所と言うよりビルだった。
5階建てのビル。
「今日からここで貴方の生活がはじまるのよ」
恵美さんが言う。
たった一人の芸能事務所にしては立派過ぎないか?
「ダンスも歌もコーチを用意してるわ。しっかり練習しなさい。新しいデビュー曲も用意してあげる」
「ありがとうございます」
下村さんは新しい事務所を見て回ってる。
地下にライブ会場がある。
愛莉たちも事務所を見て回ってた。
それを待っていると誠から電話が来た。
「そっちはどうだ?」
「予定通り行ったよ。誠は?」
「ああ、お前の予想通りだ。商標登録はされてない。ALICEの名義で動ける。そっち関係は晶さんが動いてる」
「じゃあ、誠は予定通り」
「ああ、大丈夫だ。噂の出どころは掴んだ。渡辺君達が出向いて『交渉』をしてるはずだ」
「わかった」
「今日は打ち上げか!?」
「いや、今日中にやることがまだ残ってるから」
「そうか、終わったら教えてくれ」
「ああ、また連絡する」
電話は終わった。
「どうやら順調みたいですね」
石原君が言う。
「みたいだね」
「あとやる事って何ですか?」
石原君が聞いてきた。
「秋吉君の家、名家らしい。学校の校長やら、官僚やら、トップクラスの親戚で固めてるらしいんだ」
「それの説得……ですね?」
石原君が言うと僕はうなずいた。
秋吉君達が出て来る。
「じゃ、帰ろうか?」
僕が言う。
「ぼ、僕……」
「わかってる、頑張って」
秋吉君が何かを言おうとすると僕は頑張ってと応援した。
秋吉君は有栖さんを車に乗せて市街地へ向かって行った。
(4)
僕は高級宝石店に入ると下村さんに言った。
「あ、あの……」
「はい……」
その次の言葉がなかなか出ない。
しばらく黙ったままだった。
そんな僕をじっと見て待っていてくれていた。
静かに呼吸を整える。
そして静かに言った。
「僕と指輪を選んでくれませんか?」
「……私なんかでよければ」
嬉しさがこみあげてくる。
「ありがとうございます」
「私こそありがとう、私なんかが人並みの幸せを手に入れる事が出来るなんて思ってもみなかった」
店員さんに指のサイズを計ってもらい指輪を選んでもらう。
ダイヤを散りばめた綺麗な指輪を彼女の左手の薬指にはめる。
彼女は少し照れくさそうにしていた。
次の日僕は下村さんの家に挨拶に行った。
両親は驚いていたけど認めてくれた。
問題は僕の両親だ。
僕の家に行くと彼女の緊張がわかった。
どうしたら彼女の緊張をほぐす事が出来る?
自然と彼女の手を握っていた。
彼女は握り返してくれた。
そして僕の両親と対面する。
両親に説明をする。
彼女の素性もすべて晒した。
父の眉がピクリと動いた。
そして両親が話し合っている。
しばらく沈黙が流れる。
彼女の手が震えている。
「お前が彼女を連れて来るとはな……」
父が口を開いた。
僕は決心していた。
もし父が反対するなら、僕は大学を止めて家を出る。
働き口は既に確保してある。
彼女に僕の人生のすべてをささげよう。
過ちの愛でもいい。
僕にとって初めてのたった一人の彼女なのだから。
「お前はそのマネージャーとやらで一生やっていくつもりか?」
「はい」
父の声はとても重く感じた。
「男に二言は無いぞ?」
「わかってます」
「彼女の親には知らせたのか?」
「はい?」
「……学生婚は認めないからな」
え?
「4年間、もたないようなら結婚は諦めろ。どのみち長続きしない」
どういう意味だ?
「出来婚も許さない。一族の恥になるような真似は断固許さん」
母さんが一言静かに言った。
「おめでとう。圭太にお嫁さんができるとはね……」
「ありがとうございます」
彼女が言う。
僕は報われたんだ。
「父さん、母さん。ありがとう」
「お前が自分の意思を自分で伝えたんだ。決して曲げるな。一生貫き通しなさい」
父さんが言う。
その日ささやかな宴会が行われた。
(5)
「……と、いうわけで今日は秋吉君と下村さんの婚約祝いだ!皆盛り上がろう!」
渡辺君が言うと宴の始まり!
僕達のテーブルには多田夫妻石原夫妻愛莉下村さん秋吉君がいた。
「みなさん、本当にありがとうございます」
秋吉君は深々と頭を下げた。
「君が勝ち取った幸せだ。大切にすると良い」
「でも、マネージャーしながら弓道部でしかも大学生活って厳しくないか?」
「弓道部は辞めます。家でもできるから」
「……ごめんなさい」
下村さんが謝る。すると愛莉が言う。
「下村さんだめだよ。こういう場所ではもっと相応しい言葉がある。わかるでしょ?」
下村さんは訂正する。
「ありがとう」
愛莉は満足したようだ。
「それにしてもアイドルと結婚か!羨ましいな!俺もしたいぜ!」
桐谷君がまた暴走してる。
誠は知らんふりをしてる。
「誠だってわかってくれるよな!?」
桐谷君は容赦なく誠に振ってくる。
「お、俺にはカンナがいるから十分だよ」
「ほお、お前も言うようになったもんだな?」
「ば、馬鹿だな俺はいつだってカンナ一筋だぜ」
「今は信じてやるよ」
カンナは笑ってる。しかし亜依さんはそうではないらしい。
「そんなにアイドルと結婚したいか?なら今すぐ離婚してやろうか?あとは自分で探せ」
「あ、亜依……こういう時は嘘でもそう言うもんだろ?」
口は禍の元か……。
「でも本当に二人をくっつけるとは恐れ入りました。片桐君」
石原君が言う。
「2人の意思がそうさせたんだよ。僕は導いただけ」
「それが片桐君の凄い所なのよ」
恵美さんが言う。
「さて、来月は忙しくなるわよ!」
「なにかあるの?」
「有栖。あなたからいいなさい」
恵美さんが言うと下村さんが立ち上がった。
「あ、あの。来月のクリスマス会招待してもらえませんか?」
「渡辺班だから当然招待するけどなにかあるのか?」
「私の新曲の初披露をしたくて!」
下村さんが言うと皆が盛り上がった。
「今もうレッスン中よ、やはり彼女努力家だわ。呑み込みも早いしとりあえず地元を制圧する予定よ」
恵美さんが言う。
「そりゃステージがある場所を用意しとかないといけないな」
渡辺君が言う。
「大丈夫私のママが経営してるホテルのホールを使うわ」
晶さんが言う。渡辺班なんでもありだな。
「活動はしばらくは地元で?」
「大学が休みの時に遠征できればと思ってます」
「チケット優先で都合してくれないかな?」
「俺も俺も」
誠と瑛大が裏取引に出る。
「もちろんです!皆さんには特別席を用意します」
下村さんが言う。
「それともう一つお知らせがある」
深雪さんが言った。
「彼女の末女の心臓欠陥。私が執刀して治療するわ。長女の病気は地道な治療が必要だけど」
深雪さんが言うと皆盛り上がる。
「渡辺班もついに芸能界に進出か!こりゃ、もう政界も乗っ取るしかねーな!」
さすがにそれは無理だろ……。
あ、でも……あり得るかも……。
「立候補だれがするんだ!?」とか「公約は!?」とかそんな話題で盛り上がった1次会。
2次会はカラオケで盛り上がった。
下村さんは振り付けまで付けて歌ってくれたのでさらに盛り上がった。
宴は朝まで続いた。
朝になると皆帰る。
秋吉君はさっそく下村さんのマネージャーとして動き始めタクシーで彼女を送って行った。
僕達もタクシーで家に帰る。
「冬夜君」
「どうした?」
「渡辺班て本当に不思議なグループだね」
「そうだな」
「でも本当にすごいのは冬夜君」
「え?」
「本当に二人を幸せに導いちゃった」
今言うべきなんだろうな。
「愛莉も幸せに導いてあげるから」
「ほえ?」
「愛莉にも素敵な世界を見せてあげるから」
愛莉は笑う
「それは無理だよ」
「どうして?」
「だって今私幸せだもん」
そう言って僕に抱きつく。
誰かが言ってた。
渡辺班に手を出したらただじゃすまない、幸せが待っていると。
家に帰るとシャワーを浴びて、愛莉を待つ。
テレビをつける。
地元の深夜番組ではすでにALICEの電撃移籍が報じられている。
裏で何が動いているのかは分からないままだったが。
そして今年最後の月がやってくる。
「冬夜君、起きて。朝だよ~」
「おはよう愛莉」
「最近素直だね」
愛莉はそう言って笑う。
準備をすると朝食を食べてマグカップを持って部屋に戻る。
テーブルに置くと着替えながらテレビを見る。
ALICEの人気は相変わらずのようだ。
しかしこうなると不安要素が出て来る。
彼女の悪事が公になる事。
やってしまったものは仕方ない。
しかし僕達も手をこまねいているわけじゃない。
「OK、冬夜に言われたとおりにスティンガーと事務所のサーバーから彼女のファイルは削除しといた」
朝からこんな物騒なメッセージが渡辺班に走る。
「私、やっぱり自首した方が……」
「自白だけじゃ起訴はできない。心配するだけ無駄だよ」
僕が下村さんに答えた。
「でも……」
「今日15時ごろ空いてる?」
「え?」
「事務所に行きたいんだけど?」
「いよいよ動くのね?こっちの準備はできてるわ」
恵美さんが言う。
「冬夜君今日はどの服がいいかな~?」
「う~ん、黒と赤がいいな~」
「わかった~」
愛莉が着替えだす。
「15時なら大丈夫です、私も事務所でレッスンしてるから」
「わかった、じゃあ15時で」
「OK」
3人で話がまとまる頃には愛莉の着替えは済んでいる。
ネットのニュースを見る。
愛莉もデスクトップのモニターを凝視している。
……思った通りもう噂が流れ始めている。
ALICEは詐欺師。
多分事務所がもみ消すだろう。
だが、事務所がやってる詐欺まがいの商法までは消せやしない。
急ぐ必要がありそうだ。
下村さんが巻き込まれる前に。
デスクトップをシャットダウンすると愛莉に「そろそろ行こうか?」と言う。
もう実は大学にいく必要はほぼないんだけどね。
卒論も提出したし、必修単位を取るだけでいいんだけど、愛莉が「最後までしっかり勉強するの!」と言うから言ってるだけ。
大丈夫、ちゃんと経済学科に添った論文を書いたから。
まちがっても「公道最速理論」なんてとち狂った論部は提出してない。
大学に行ってもほとんど遊んでるだけの時間。
愛莉が授業を聞いてるから、愛莉にあとでかみ砕いて説明してもらうだけ。
でも愛莉の説明を聞くくらいなら講師の説明を聞いてた方が分かりやすいって言うくらい愛莉は大雑把なんだけど。
「これでわかんない?」って本気で聞いてくるから困る。
そんな感じで午前中を終えて昼休みに入る。
四年生なんてほとんどいない。
皆免許を取ったり徹マンして昼過ぎからの授業に出たり色々だ。
そんな中渡辺班も皆忙しい。
「先輩たちマジ大変みたいっすね」
晴斗が言う。
僕達は余裕だけどね、愛莉のスケジュール調整は神がかっていた。
誠とカンナと亜依さん穂乃果さんが大変みたいだけど。
渡辺班の4年生組は皆就職先だけは決まっている。桐谷君を除いて。
恵美さん達がやってきた。
「準備は整った。小さな芸能事務所を設立したわ。資本金もそんなにないけど問題ないわ。スタッフに芸能関係にコネある人を雇った。あとはタレントを用意するだけ」
本当に一晩でやってのける人達だな。
「事務所なら私が用意してあげる。ちょうどパパたちが貸店舗抱えてたし」
晶さんが言う。
「何て名前のプロダクションなの?」
愛莉が聞く。
「USEよ。代表取締役は望にまかせたわ。副業でいいみたいだし」
「他に必要な人材は?」
僕が恵美さんにきいていた。
「大丈夫マネージャーも決まってるし、ね?秋吉君」
へ?
「僕がマネージャーをします。最初は色々教えてもらいながらだけど」
「大学はどうするの?」
「マネージャーの仕事なんてそんな大したことないし、営業は別に雇ってるから下村さんの世話さえしてもらえばいいわ」
恵美さんが言う。
「なら早いうちがいいね。さっさと下村さんを引き抜こう」
「そうね。じゃあ、3限が終わったら向かいましょう」
僕と恵美さんが言う。
「僕も言った方がいいですね。代表取締役だし」
「僕も行きます、彼女のマネージャーだし」
石原君と秋吉君が言う。
愛莉の顔を見ると自分も行くと言いたげだ。
結果行くのは僕と愛莉と石原夫妻と秋吉君で行くことになった。
大勢で言っても仕方ない。
カンナには誠への伝言をお願いしていた。
「噂を流したものの特定」
恐らくスティンガーの者だろうけど。
「わかった、相手はスティンガー絡みなんだろ?お前らも気をつけろよ」
カンナが言う。
「大丈夫ちょっと騒ぎがあるかもしれないけど派手には動かないよ」
僕が言う。
そして3限が終ると僕達は芸能事務所に向かった。
(2)
今日も授業が終わると事務所でレッスンをしていた。
WHITEの人達は集まって喋っている。
そんな人たちに目もくれず振り付けを必死に覚える。
「有栖、ちょっと着替えて応接室に来てくれ」
来栖さんがそう言うと私は彼女たちの冷たい視線を浴びながら更衣室で着替えて応接室に向かった。
「話と言うのは、噂の件なんだが。本当か?」
社長が言う。今更隠したところで、どうなる事でもない。
「本当です」
私は正直に答えた。
「取材を受けたら違いますと答えるんだ。いいな。あとはこっちでどうにかする」
社長は言う。
スティンガーの力を使ってもみ消しに入るのだろう。
「まあ、その話はおいておいて。君のファンだというテレビ局の関係者がいてね。その接待をお願いしたい」
接待の内容は聞くまでもない。
「……お断りします。それと大事なお話が」
「なんだと?」
「大事な話ってなんだ?」
来栖さんと社長の声音が変わる。
足が震える。
「私……この事務所を止めます」
「ふ、ふざけるな!!貴様を買うのにいくらかかったと思ってるんだ!?」
「そのお返しは十分したはずです」
私の声は震えていた。
「この前の爆買いの女性が原因か!?」
私は黙ってうなずいた。
「今度からあの女は出禁だな」
社長が言う。
「有栖。お前足洗えると思ってるんじゃないだろうな?」
来栖さんが言う。
それまで黙ってみてた木刀……に見せかけた仕込み刀を持った男が近づいてきた。
「ちょっとこの子には教育が必要ですかね?」
「顔には傷つけるなよ。大事な商品だ」
社長が言う。男が近づいてくる。逃げようにも足が震えて動けない。そんな時だった。
「ちょっと、ここから先は関係者以外立ち入り禁止……ぐぁっ!」
外が騒がしい。
社長たちも気になったみたいだ。
やがてドアが開くと片桐さん達がいた。
片桐さんは左手に……日本刀?石原君はアタッシュケースを二つ抱えている。
恵美さんは社長と私達をみてくすりと笑った。
「その様子だとちょうどいいタイミングみたいね」
「なんだ貴様ら!!」
男が言う。
「ビジネスに来たのよ?社長さんはどなたかしら?」
恵美さんが言う。
「私がそうだけどビジネスとは?」
「望」
石原君は二つのアタッシュケースを出す。
「これでALICEを譲ってもらえないかしら?現金で2億用意してある」
に、2億円!?
「地下アイドルにしては破格の金だと思うんだけどどうかしら?社長さん」
恵美さんが言う。
しかし社長はハイとは言わない。
「彼女はそれ以上稼ぎになる、ちょっと無理な相談だね」
黙って聞いていた片桐君がにこりと笑って言った。
「そこを何とか受けてくれませんか?彼女はこんな詐欺まがいの地下アイドルにしておくには惜しい。もっとたくさんの人に夢と希望を与える事が出来るはずだ」
「詐欺だと……?噂の事を言ってるのか?」
「そうじゃない、噂なんてすぐに消えるさ。一日デート権なんて何するかわかったもんじゃないし、風営法に引っかかるんじゃない?」
「揺すりに来たのかお前ら!」
男が片桐君を脅す。
だけど片桐君は意にも介さず話を続ける。
「僕達は事を穏便に運びたい。どうかこの条件を飲んで欲しい」
「ガキが舐めてんじゃねえ!」
男が仕込み刀を抜いて片桐君に斬りかかる。危ない!
それは余計な心配だったようだ。
片桐君は高速で刀を抜くと彼の顎を切り上げる。
打ち上げられた男は天井に突き刺さり伸びしてしまった。
「俺は社長と話してるんだ。外野は少し黙ってろ」
いつもの片桐君じゃない冷淡な声。
「こ、こいつら凶器(どうぐ)持ってる!来栖!!兵隊を呼べ!」
来栖さんが部屋を出て部下を呼ぼうとしたが声が出なかった。
私も部屋を出る。通路にはボコボコにされた社員たちが……。
「彼女は俺達の大事な仲間だ。素直に引き渡してもらえないか?ここで組が総崩れになるよりははるかにましだと思うが」
片桐君は切っ先を社長に向ける。
「わ、わかった。好きにしろ……」
「契約書を出せ」
社長は慌てて金庫のかぎを開けて契約書を差し出す。
片桐君は何も言わずにそれを恵美さんに渡すと恵美さんはびりびりに破り捨てる。
「話のわかる社長さんで助かるわ。じゃ、彼女は連れて帰るわね。有栖、行くわよ」
私は恵美さんに連れられて事務所を出る。
「もし今後下村さんに手を出したらどうなるかわかってるだろうな?」
片桐君の冷酷な声を背中に受けながら。
(3)
「うぅ……」
「どうしたの愛莉?」
ぽかっ
「運転中に危ないだろ?」
「冬夜君怖い顔のままだよ?」
あ……。
「ごめん、ついカッとなって」
「その癖やめたほうがいいよ」
「愛莉の前ではしないよ」
「本当に?」
「ああ」
「じゃあ、許す~」
僕達はALICEの新しい、事務所に向かっていた。
石原君が副業で経営するらしい事務所「USE」
晶さんのもっていた貸事務所の一つだったらしいんだけど……。
大手町のど真ん中にある事務所。
事務所と言うよりビルだった。
5階建てのビル。
「今日からここで貴方の生活がはじまるのよ」
恵美さんが言う。
たった一人の芸能事務所にしては立派過ぎないか?
「ダンスも歌もコーチを用意してるわ。しっかり練習しなさい。新しいデビュー曲も用意してあげる」
「ありがとうございます」
下村さんは新しい事務所を見て回ってる。
地下にライブ会場がある。
愛莉たちも事務所を見て回ってた。
それを待っていると誠から電話が来た。
「そっちはどうだ?」
「予定通り行ったよ。誠は?」
「ああ、お前の予想通りだ。商標登録はされてない。ALICEの名義で動ける。そっち関係は晶さんが動いてる」
「じゃあ、誠は予定通り」
「ああ、大丈夫だ。噂の出どころは掴んだ。渡辺君達が出向いて『交渉』をしてるはずだ」
「わかった」
「今日は打ち上げか!?」
「いや、今日中にやることがまだ残ってるから」
「そうか、終わったら教えてくれ」
「ああ、また連絡する」
電話は終わった。
「どうやら順調みたいですね」
石原君が言う。
「みたいだね」
「あとやる事って何ですか?」
石原君が聞いてきた。
「秋吉君の家、名家らしい。学校の校長やら、官僚やら、トップクラスの親戚で固めてるらしいんだ」
「それの説得……ですね?」
石原君が言うと僕はうなずいた。
秋吉君達が出て来る。
「じゃ、帰ろうか?」
僕が言う。
「ぼ、僕……」
「わかってる、頑張って」
秋吉君が何かを言おうとすると僕は頑張ってと応援した。
秋吉君は有栖さんを車に乗せて市街地へ向かって行った。
(4)
僕は高級宝石店に入ると下村さんに言った。
「あ、あの……」
「はい……」
その次の言葉がなかなか出ない。
しばらく黙ったままだった。
そんな僕をじっと見て待っていてくれていた。
静かに呼吸を整える。
そして静かに言った。
「僕と指輪を選んでくれませんか?」
「……私なんかでよければ」
嬉しさがこみあげてくる。
「ありがとうございます」
「私こそありがとう、私なんかが人並みの幸せを手に入れる事が出来るなんて思ってもみなかった」
店員さんに指のサイズを計ってもらい指輪を選んでもらう。
ダイヤを散りばめた綺麗な指輪を彼女の左手の薬指にはめる。
彼女は少し照れくさそうにしていた。
次の日僕は下村さんの家に挨拶に行った。
両親は驚いていたけど認めてくれた。
問題は僕の両親だ。
僕の家に行くと彼女の緊張がわかった。
どうしたら彼女の緊張をほぐす事が出来る?
自然と彼女の手を握っていた。
彼女は握り返してくれた。
そして僕の両親と対面する。
両親に説明をする。
彼女の素性もすべて晒した。
父の眉がピクリと動いた。
そして両親が話し合っている。
しばらく沈黙が流れる。
彼女の手が震えている。
「お前が彼女を連れて来るとはな……」
父が口を開いた。
僕は決心していた。
もし父が反対するなら、僕は大学を止めて家を出る。
働き口は既に確保してある。
彼女に僕の人生のすべてをささげよう。
過ちの愛でもいい。
僕にとって初めてのたった一人の彼女なのだから。
「お前はそのマネージャーとやらで一生やっていくつもりか?」
「はい」
父の声はとても重く感じた。
「男に二言は無いぞ?」
「わかってます」
「彼女の親には知らせたのか?」
「はい?」
「……学生婚は認めないからな」
え?
「4年間、もたないようなら結婚は諦めろ。どのみち長続きしない」
どういう意味だ?
「出来婚も許さない。一族の恥になるような真似は断固許さん」
母さんが一言静かに言った。
「おめでとう。圭太にお嫁さんができるとはね……」
「ありがとうございます」
彼女が言う。
僕は報われたんだ。
「父さん、母さん。ありがとう」
「お前が自分の意思を自分で伝えたんだ。決して曲げるな。一生貫き通しなさい」
父さんが言う。
その日ささやかな宴会が行われた。
(5)
「……と、いうわけで今日は秋吉君と下村さんの婚約祝いだ!皆盛り上がろう!」
渡辺君が言うと宴の始まり!
僕達のテーブルには多田夫妻石原夫妻愛莉下村さん秋吉君がいた。
「みなさん、本当にありがとうございます」
秋吉君は深々と頭を下げた。
「君が勝ち取った幸せだ。大切にすると良い」
「でも、マネージャーしながら弓道部でしかも大学生活って厳しくないか?」
「弓道部は辞めます。家でもできるから」
「……ごめんなさい」
下村さんが謝る。すると愛莉が言う。
「下村さんだめだよ。こういう場所ではもっと相応しい言葉がある。わかるでしょ?」
下村さんは訂正する。
「ありがとう」
愛莉は満足したようだ。
「それにしてもアイドルと結婚か!羨ましいな!俺もしたいぜ!」
桐谷君がまた暴走してる。
誠は知らんふりをしてる。
「誠だってわかってくれるよな!?」
桐谷君は容赦なく誠に振ってくる。
「お、俺にはカンナがいるから十分だよ」
「ほお、お前も言うようになったもんだな?」
「ば、馬鹿だな俺はいつだってカンナ一筋だぜ」
「今は信じてやるよ」
カンナは笑ってる。しかし亜依さんはそうではないらしい。
「そんなにアイドルと結婚したいか?なら今すぐ離婚してやろうか?あとは自分で探せ」
「あ、亜依……こういう時は嘘でもそう言うもんだろ?」
口は禍の元か……。
「でも本当に二人をくっつけるとは恐れ入りました。片桐君」
石原君が言う。
「2人の意思がそうさせたんだよ。僕は導いただけ」
「それが片桐君の凄い所なのよ」
恵美さんが言う。
「さて、来月は忙しくなるわよ!」
「なにかあるの?」
「有栖。あなたからいいなさい」
恵美さんが言うと下村さんが立ち上がった。
「あ、あの。来月のクリスマス会招待してもらえませんか?」
「渡辺班だから当然招待するけどなにかあるのか?」
「私の新曲の初披露をしたくて!」
下村さんが言うと皆が盛り上がった。
「今もうレッスン中よ、やはり彼女努力家だわ。呑み込みも早いしとりあえず地元を制圧する予定よ」
恵美さんが言う。
「そりゃステージがある場所を用意しとかないといけないな」
渡辺君が言う。
「大丈夫私のママが経営してるホテルのホールを使うわ」
晶さんが言う。渡辺班なんでもありだな。
「活動はしばらくは地元で?」
「大学が休みの時に遠征できればと思ってます」
「チケット優先で都合してくれないかな?」
「俺も俺も」
誠と瑛大が裏取引に出る。
「もちろんです!皆さんには特別席を用意します」
下村さんが言う。
「それともう一つお知らせがある」
深雪さんが言った。
「彼女の末女の心臓欠陥。私が執刀して治療するわ。長女の病気は地道な治療が必要だけど」
深雪さんが言うと皆盛り上がる。
「渡辺班もついに芸能界に進出か!こりゃ、もう政界も乗っ取るしかねーな!」
さすがにそれは無理だろ……。
あ、でも……あり得るかも……。
「立候補だれがするんだ!?」とか「公約は!?」とかそんな話題で盛り上がった1次会。
2次会はカラオケで盛り上がった。
下村さんは振り付けまで付けて歌ってくれたのでさらに盛り上がった。
宴は朝まで続いた。
朝になると皆帰る。
秋吉君はさっそく下村さんのマネージャーとして動き始めタクシーで彼女を送って行った。
僕達もタクシーで家に帰る。
「冬夜君」
「どうした?」
「渡辺班て本当に不思議なグループだね」
「そうだな」
「でも本当にすごいのは冬夜君」
「え?」
「本当に二人を幸せに導いちゃった」
今言うべきなんだろうな。
「愛莉も幸せに導いてあげるから」
「ほえ?」
「愛莉にも素敵な世界を見せてあげるから」
愛莉は笑う
「それは無理だよ」
「どうして?」
「だって今私幸せだもん」
そう言って僕に抱きつく。
誰かが言ってた。
渡辺班に手を出したらただじゃすまない、幸せが待っていると。
家に帰るとシャワーを浴びて、愛莉を待つ。
テレビをつける。
地元の深夜番組ではすでにALICEの電撃移籍が報じられている。
裏で何が動いているのかは分からないままだったが。
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