403 / 442
LASTSEASON
星空のパトス
しおりを挟む
(1)
「じゃあ、今日も色々あったけどお疲れ様でした。乾杯!」
色々あったけど皆和解し、こうしてBBQにこぎつけた。
僕は愛莉が運んできた物だけを食べる。
「食べ過ぎに気を付けてくださいね」
そう言いながらも愛莉は次々に食べ物をとってきてくれる。
「愛莉も食べなよ、この肉美味しいよ?」
そう言って愛莉の口に運んでやれば。
ぱくっ
「もう、冬夜さんたら……」
嬉しいの恥ずかしいのか愛莉の顔には笑みがこぼれている。
「冬夜、食うのもいいが少しは飲んでるか?」
渡辺君がやってきた。
渡辺君に空になった缶ビールを見せる。
そりゃ社会人だもん。ビールの味くらい慣れるよ。
愛莉はそれをもって新しいお酒を取りに行ってくれる。
そんな愛莉を見ながら渡辺君は言う。
「お前達が羨ましいよ」
「え?」
「本当に仲がいいんだな」
「渡辺君だって美嘉さんと仲良さそうじゃないか?」
本気で喧嘩してるようには見えない。
「だといいんだがな……」
「なにかあった?」
「お前たちを見てると自信がなくなるんだよ。俺にもまだ至らないところがあるんじゃないかって」
「僕が言うのも変な話だけど、同棲と結婚生活の違いってあるんじゃない?」
「どういう意味だ?」
渡辺君が聞いてきた。
「夫婦になって、はじめて気づくことがあるっていうか……」
たった紙切れ一枚の差だけどそれはものすごく分厚いみたいな。
「あら?冬夜さんは私の事をお嫁さんって言ってくれましたよ?」
愛莉が戻って来た。愛莉から酒を受け取る。
「私も今は主婦見習いの時期だと自覚してます。冬夜さんもそうじゃないのですか?」
「そうだったね。ごめんね愛莉」
「いいんです。冬夜さんの負担にならないようにがんばりますから」
愛莉はそう言って微笑む。
「話は変わるがどうだ?今年の新人は?」
渡辺君が話題を変えてきた。
「どうもこうもないよ、僕達がとやかく言う前にくっついちゃってるじゃないか?」
「みたいだな……」
そういって仲良く食事をしている新人たちを見る。
ちょっと手を貸してあげないと駄目かな?と思った小泉君も買い出しの際中に何かあったみたいだ。
「今年も渡辺班は安泰か。今年の4年生も就職先決まってるみたいだしな」
渡辺君はそう言う。お酒のせいもあって上機嫌のようだ。
「じゃ、俺は他のメンバーにも声掛けするから」
そう言って渡辺君は他のメンバーに声をかけに行った。
僕達は二人で食べていた。
「問題あったけど今年も無事合宿が終れそうですね」
「だといいね」
「冬夜さんはまだ何かあるというんですか?」
愛莉が聞いてくる。
「まだ最後の実践が残ってるだろ?それが不安でね」
「新條さんがついてるから大丈夫なのでは?」
「なんかすんなりと終わらない。そんな気がするんだ」
その時愛莉のスマホが鳴った。
メッセージの着信だ。愛莉はメッセージを読んで笑ってる。
「なんて送られてきたの?」
愛莉はスマホを見せてくれた。
「男共に伝えておけ、私たちが風呂から戻るまで飲むの禁止!」
なるほどね。
「冬夜さん、明日で合宿は終わりだけど残りの二日間は何か予定を考えているのですか?」
「いや、特に決めてないけど」
「では、私が決めても構いませんか?」
「いいけど」
「では、二日間家でのんびりなさってください」
「それだと愛莉が家事しちゃうじゃないか」
「空いた時間にお相手していただければそれで十分ですから」
「愛莉がそこまで言うならそうさせてもらうよ」
「ありがとうございます」
ありがとうと言いたいのはこっちだけどね。
「そろそろお開きにしようか!」
渡辺君が言う。
僕達は片づけを始めた。
(2)
「ふぅ~」
二日目のお風呂。
広いお風呂に足を延ばして入るって気持ちが良いね。
「あいかわらずのようだな冬夜も」
佐(たすく)がやってきた。
「佐はどう?社会人バスケの方は?」
「拍子抜けしたよ。すぐにレギュラーになれたしな」
「それはすごいじゃないか」
「それがさ、なんか物足りないんだよな。充実感がないっていうかさ」
「それはバスケに対する姿勢の違いじゃないかな?」
木元先輩が来た。
「企業バスケも福利厚生の一環だからね。プロ程勝ちにこだわらない。純粋にバスケ好きが集まるから」
「それはあるかもしれないっすね」
佐がうなずく。
そういやうちの会社にもバスケ部あるって言ってたっけ?
「大学の時もそんな感じだったのを鬼マネージャーが現れて監督が変わってスタイルが変わったんだよな」
「冬夜の存在が大きかったけどな」
佐と木元先輩が言う。
「佐、仕事の方がどうなんだ?」
「まだ覚えたてって感じだな。定時で上がれてる。冬夜はどうなんだ?」
「職業柄月末が忙しくてね。来月は三月期の決算があるからてんてこまいらしいよ」
とはいえ、21時くらいまでの残業らしいけどね。
「佐仕事もそうなんだけど合宿終わったら佐倉と同棲だって?」
木元先輩が佐に聞いていた。
「そうなんすけど、多田君達の話聞いてると不安になって来てな。桜子とうまくやっていけるんだろうかって」
あの二人が特殊なんだと思うよ?
「まあ、怒らせなきゃいいよ。後は佐倉の言う事には大人しく従っとけ」
木元先輩がアドバイスしてる。
「木元先輩はどうなんですか?花菜さんってやっぱ厳しいですか?」
「冬夜のところが特殊なんだろう。やっぱり一緒に暮らすと女って変わるよ」
愛莉も変わったけどなあ。
「それありますね、結婚の有無も左右するかもしれなません」
竹本君が来た。
「うちもそろそろ子供をなんていってるけどな、出産後の事を考えると一歩踏み出せないよ」
木元先輩が首を振ってる。
出産すると女性がますます強くなるらしいしな。
父さんも言ってたっけ?
「うちの血筋はみんな女性に頭が上がらない」って……。
「咲良もそうなんだ……冬夜のケースを見るとやはり結婚の有無がでかいんだろうな」
檜山先輩もまざってきた。
「僕も同棲してますけど、別に特段五月蠅いってことはないですね」
月見里君が言う。
「冬夜も秋空もまだそんなに経ってないからそう言えるんだよ!時間が経つと化けの皮が剥がれて来るぜ」
こういう話をしてるとトラブルメーカーが寄ってくる。
桐谷君と誠がやってきた。
「冬夜も今のうちに上下関係はっきりさせておいた方がいいかもな!後になってからだと手遅れだ」
誠が言う。
「俺達みたいになりたくないなら今のうちに手を打っておけ!イチャイチャしてる期間なんてあっという間だぜ」
だから桐谷君声が出かい。
「聞こえてるぞ瑛大!誰が化けの皮が剥がれたって!?」
ほらね。
誠達は顔を見合わせるとそそくさと風呂を出た。
これで多分平穏が訪れるだろう。
「お前たち、あまり難しく考えない方がいいぞ」
「そうそう、下手に顔色うかがうよりは堂々としてた方がいい。まだ皆若いんだ。遊んだり甘えたりしたい年頃だろう?可愛い我儘だと思って受け止めてやればいいんだよ」
丹下さんと椎名さんが言う。
愛莉の場合その甘えすらなくなったから怖いんだ。
後で聞いてみるかな?
「冬夜、俺達もそろそろ出ないか?誠達を放っておくのは危険な気がするんだ」
渡辺君が言う。
確かにあの二人は危険だ。
僕達は風呂を出た。
(3)
「全くあの馬鹿は……まだ懲りてないのか」
亜依が呟いてる。
「あの二人は死ぬまで治らないな!」
カンナが言う。
そんな二人を見ながら私は思う。
この二人と私の違いってなんだろう?
彼の違いくらいは分かるけど……私が特殊なのかな?
「あの……深雪さん」
私は深雪さんに聞いてみた。
「深雪さんは自分のご主人に不満を持ったことってあるんですか?」
「細かい所ならあるわよ。今だにふらふらした生活してるし」
学生だからしかたないけどね。と笑っていた。
「そうね、学生だから仕方ないって事もあるかもしれないわね。私達がしっかりするしかない」
聡美さんも言う。
「じゃあ、亭主が社会人の場合はどうなんですか?」
「春樹も思いっきり愚痴言ってました~」
花菜と咲良が言う。
「あなた達の場合はそうね……どんな不満があるの?」
聡美さんが言う。
「夜遅くまで遊んでる事かな~。バスケの練習の後は飲み会だし。それに休日もバスケに出かけるし」
「春樹も同じですね~。夜飲み会で帰るのが遅いかな~。徹夜で麻雀してることもあるし」
花菜と咲良が言う。
すると聡美さんが二人にたずねた。
「そうね、例えばあなた達と遠坂さんの違いってなんだと思う?」
「なんか面白そうな話題してますね。混ぜてもらってもいいかな?」
「私も混ぜて欲しいかも。愛莉との違い……参考になるかもしれない」
「私も参考にしたいから、混ぜてください」
そう言って亜依と神奈と小鳥遊さんが加わった。
他の女性達も興味をもったようだ。皆の注目が聡美さんにいく。
「そうね、亜依さんと神奈さんにも同じ質問をするわ。遠坂さんと自分の違い分かる?」
「優しさ?」
「仕事してるかしてないか?」
「主人の出来の良さかな?」
皆がそれぞれ意見を言う。
しかし聡美さんは首を振る。
「そうね……最初の二人が分かりやすいかもしれない。花菜さんと咲良さんは何が違うと思う?」
あ!
「主人が早く帰って来るか、そうでないかですか?」
私が答えた。
聡美さんはにこりと笑ってうなずいた。
そして次の質問に入る。
「その差って何だと思う?」
私にもわからなかった。
冬夜さんはどうして早く帰ってきてくれるんだろう?
「環境……ですか?冬夜さんの会社はみんな世帯持ちだから夜遊びしないって言ってました」
「惜しいけど違うわね」
聡美さんが言うと、皆頭を悩ませている。
聡美さんはそんな皆を見て答えた。
「答えは簡単なのよ。家に帰りたいか帰りたくないか。ただそれだけ」
意味が分からなかった。
「例えば片桐君が帰るのが遅くなった時遠坂さんはどうしてる?」
「普通に『お帰りなさい、お疲れ様でした』って返してますけど」
「多分咲良さんと花菜さんはそれを忘れてるんじゃない?」
「そう言えば……」
「言ってませんね~」
2人が言う。
でもそれがそんなに違う事なんだろうか?
「たった一言が男の心理を変えるの。『可哀そうな事をした。次は気をつけよう』って考えたりね」
なるほど~。
でもそれが家に帰る帰らないにつながるのだろうか?それに私と神奈や亜依の違いにどうつながるんだろう?
「そうね、二人と遠坂さんの違いから説明して言った方が分かりやすいわね。そういう積み重ねがある心理につながるのよ」
「ある心理?」
深雪さんが言うと私が聞き返していた。
「大雑把に言うと思いやり。分かりやすく言うと『家に帰りたいか帰りたくないか』かな?」
「私の主人は家に帰りたくないと思ってるって事ですか?」
花菜が聞くと深雪さんは頷いた。
「片桐君の場合は『早く家に帰ろう』『休日は彼女を休ませてやろう』そう言う心境なのかもね。一方二人の場合は『家に帰りたくない。自分の時間が欲しい』そう言う風になってるの」
「その話私も興味あるわね」
「私も……」
恵美と晶も関心を持ったようだ。
「どうして後者は家に帰りたくないんですか~?」
「自分の時間が欲しいって片桐君はどうして思わないんですか?」
咲良と花菜が質問した。
「それがさっき言った思いやりにつながるの。『自分の為にここまでしてくれる愛しい人にお返しをしたい』片桐君はそう思ってるのかもね」
「冬夜さんがそう思う理由は?」
私が聞いていた。
「遠坂さんは片桐君を立ててるから、だから自分の家が居心地がいいのよ。そんな居心地のいい場所を作ってくれる人に優しくしない人なんていないわよ」
深雪さんが言う。
「じゃあ、私達の場合は居心地が悪いってことですか?」
花菜が聞いていた。
「……家でくつろいでる主人にあれしろこれしろってうるさく言ってない?」
聡美さんが言った。
「それって単に甘やかせってことですか?」
花菜が聞くと聡美さんが言った。
「北風と太陽の話を知ってる?遠坂さんに聞くわ。片桐君に不満はないって言ったわよね?」
私はうなずいた。
「でも家事はしてない……させてないって言った方が正しいのかしら?」
「はい、いつも仕事をしてるから。休みの日くらいゆっくりさせてあげたいって」
「……前に亜依さんが言ってたわね『朝ごはんを作ってくれて、お疲れ様って書置きがあるだけで嬉しい』って」
聡美さんが言うと亜依がうなずいた。
「同じ事が皆にも言えるんじゃないかな?居心地の悪い家にいるより外で遊んでたい。こっそり遊びたい。不満のはけ口を探し出す」
「それって私達は文句を言わず我慢しろってことですか?」
亜依が聞くと聡美さんが言う。
「そうはならない。それは遠坂さんが実証してる。彼女は言ったわ『不満はない』って……」
「つまりどういうことなんだ?」
美嘉さんが聞いた。
「そうね、優しさが相手の優しさを引き出す。とでも言えば分かるのかしら」
聡美さんが言うと女性陣は皆聞いていた。
「遠坂さんのケースは稀なケース。でも理想の夫婦像が身近にあるのは間違いないわ」
「愛莉達が理想の夫婦像……たしかにそうかもしれないな」
神奈が言うと皆うなずいた。
「いきなり遠坂さんのようになれとは言わない。まずは多少のやんちゃは許してあげなさい。少しずつ変わってくるから」
聡美さんが言う。
誰も反論しなかった。
「帰る場所をつくるか……」
花菜が呟く。
聡美さんは皆を見るとうなずく。
「話はこのくらいにして早速実践してみたら?」
「そうね、そろそろ男性陣がしびれを切らしてる頃だから」
聡美さんと深雪さんが言うと皆思い出したかのように浴場をでる。
私も浴場を出ようとする。
すると、聡美さんと深雪さんが声をかけた。
「そういうわけだから、遠坂さんは今のままでいいのよ」
「そうそう、自信を持って自分が思っているように行動しなさい」
私は二人に礼を言うと浴場を出た。
(4)
僕は片桐君と渡辺君と見てはいけないものを見てしまっている気がする。
昨日の悪夢がまた再び始まっていた。
「こりゃ、明日もまた大変だな」
「そうだね……」
渡辺君と片桐君が言った。
「渡辺君も冬夜も何を怯えてるんだ!今夜は盛り上がろうぜ!」
「そうだ!!一々嫁にびびってんじゃねーよ!」
誠君と瑛大君を止める者は誰もいない。
しかし関わろうとする者もいなかった。
2人を除いて。
「誠君の言う通りだ!一々嫁の顔色うかがって生きてられるか!」
「その通り!俺だってやることやってんだ!嫁の顔色気にして言いたい事も言えないなんて間違ってる!!」
木元君と中島君も加わった。
そしてタイミングを見計らったのように近づいてくる女性陣。
女性陣の話声を壁越しに聞いた渡辺君と片桐君が止めに入る。
「そ、その辺にしとかないか!?」
「木元先輩もそろそろまずい!」
だが4人は止まらない!
「渡辺君!何を怯えているんだ!?俺達は無敵だ!」
「そうだ渡辺君もこっちに来て騒ごうぜ!!」
「冬夜!俺が先輩として夫の立ち振る舞いを教えてやる!」
「そう言う話なら俺もまぜてもらうぜ」
誠君、瑛大君、木元君、中島君はとまらない。
檜山君は椎名さんや丹下さん、真鍋君と飲んでいる。
我関せずを決めている。
僕たち3人は皆を見捨てることにした。
でも、そうっと部屋を抜け出そうとしたが時すでに遅し
「どこに行くの?公生?」
「な、奈留!!」
「正志連れねーな。偶には一緒に飲もうぜ」
「み、美嘉!!」
「冬夜さん、私もお風呂上りに一本だけ頂きたいのですが付き合って頂けませんか?」
「愛莉……」
神奈さんと、亜依さんと、花菜さんと、穂乃果さんが4人に近づく。
「随分ご機嫌だな。でも私達を待ってくれててもよかったんじゃないのか?」
「か、神奈!!」
「楽しそうじゃない、混ぜてよ」
「亜依……」
「私も一本頂戴してもいいかな?かずさん」
「花菜……」
「今夜で最後だし一緒に楽しみましょう?隆司さん?」
「ほ、穂乃果!?」
4人の威勢が一気に弱まった。
他の女性陣もそれぞれのパートナーの元へ行く。
悪夢の再来だ。
今夜また奈留の機嫌が悪くなるのか。
だけど様子が変だ。
「公生まさかお酒飲んでないよね?私のジュースあるかな?」
「あ、ああ」
奈留にジュースを渡すとごくごくと喉を鳴らして飲み干す。
「もう一本良いかな?」
「ああ、ジュースならいくらでもあるよ」
「明日で合宿終わりだね」
「そうだね」
「最後くらい楽しく騒ぎたいね」
「そ、そうだね」
奈留の機嫌が悪くない?
それだけじゃない、他の女性陣も……神奈さん達も普通だ。
どうしたんだろう?
気づいたら片桐君達がいなかった。
(5)
「長風呂なのとちょっと酔いが回ったみたいです。少し夜風にあたりにいきませんか?」
「あ、ああ」
愛莉に言われて2階のバルコニーに行く。
「今夜も夜空が綺麗ですね」
「そうだな」
愛莉を見て不思議に思った。
特段酔ってるようには見えない。
ご機嫌なのは確かのようだけど。
「愛莉、風呂でなにかあった?」
「それは女同士の秘密です」
愛莉はにっこり笑ってそう言った。
「夫婦に隠し事は無しなんじゃなかったのか?」
「そうでしたね。困りましたね~」
愛莉は悩んでる。
「じゃあ、答えられる分だけでもいいですか?」
「ああ、いいよ」
「私達理想の夫婦像だって褒められました」
愛莉は喜んでいる。
「それが隠し事なの?」
「それ以上が内緒なんです」
「なるほどね」
夜風が今胸のドアを叩いても、僕だけをただ見つめて微笑んでる愛莉。
ずっと眠っている愛のゆりかご。
愛莉だけが夢の使者に呼ばれる朝が来る。
愛莉の細い首筋を月明かりが映してる。
もしふたり逢えた事に意味があるなら……
2人の愛のテーゼ。
哀しみがそして始まる。
抱きしめた命のかたち。
その夢見目覚めた時誰よりも光を放つだろう。
ほとばしるパトス。
想い出は裏切らない。
人は愛を紡ぎながら歴史を作る。
女神なんていらない、愛莉が生きている。
「他の皆大丈夫なんだろうか?」
「きっと大丈夫ですよ」
「そうなの?」
「そうです」
愛莉はにこりと笑って答える。
愛莉が大丈夫って言うんだから大丈夫だろう。
「そろそろ冷えてきた。もう遅いし寝よう」
そう言って戻ろうとすると愛莉が服を引っ張る。
「どうしたの?」
「今夜は月も星も綺麗な夜空、私はほろ酔いです。そして他に誰もいません、いても構いませんが……」
愛莉の言おうとすることは分かった。
愛莉を抱き寄せる。
愛莉と口づけを交わす。
「もういいだろ?早く寝よう」
「はい」
まだ物足りないらしい。
「明日の早朝散歩をしないか?」
「散歩ですか?」
「ああ」
「わかりました」
ちょっとはましになったようだ。
「帰ったら家でゆっくりだって言ったね」
「はい」
「……帰ったら一杯甘えてやるからな」
「困った旦那様ですね」
愛莉ははにかんでいる。
愛莉の手を取って部屋にもどった。
「じゃあ、今日も色々あったけどお疲れ様でした。乾杯!」
色々あったけど皆和解し、こうしてBBQにこぎつけた。
僕は愛莉が運んできた物だけを食べる。
「食べ過ぎに気を付けてくださいね」
そう言いながらも愛莉は次々に食べ物をとってきてくれる。
「愛莉も食べなよ、この肉美味しいよ?」
そう言って愛莉の口に運んでやれば。
ぱくっ
「もう、冬夜さんたら……」
嬉しいの恥ずかしいのか愛莉の顔には笑みがこぼれている。
「冬夜、食うのもいいが少しは飲んでるか?」
渡辺君がやってきた。
渡辺君に空になった缶ビールを見せる。
そりゃ社会人だもん。ビールの味くらい慣れるよ。
愛莉はそれをもって新しいお酒を取りに行ってくれる。
そんな愛莉を見ながら渡辺君は言う。
「お前達が羨ましいよ」
「え?」
「本当に仲がいいんだな」
「渡辺君だって美嘉さんと仲良さそうじゃないか?」
本気で喧嘩してるようには見えない。
「だといいんだがな……」
「なにかあった?」
「お前たちを見てると自信がなくなるんだよ。俺にもまだ至らないところがあるんじゃないかって」
「僕が言うのも変な話だけど、同棲と結婚生活の違いってあるんじゃない?」
「どういう意味だ?」
渡辺君が聞いてきた。
「夫婦になって、はじめて気づくことがあるっていうか……」
たった紙切れ一枚の差だけどそれはものすごく分厚いみたいな。
「あら?冬夜さんは私の事をお嫁さんって言ってくれましたよ?」
愛莉が戻って来た。愛莉から酒を受け取る。
「私も今は主婦見習いの時期だと自覚してます。冬夜さんもそうじゃないのですか?」
「そうだったね。ごめんね愛莉」
「いいんです。冬夜さんの負担にならないようにがんばりますから」
愛莉はそう言って微笑む。
「話は変わるがどうだ?今年の新人は?」
渡辺君が話題を変えてきた。
「どうもこうもないよ、僕達がとやかく言う前にくっついちゃってるじゃないか?」
「みたいだな……」
そういって仲良く食事をしている新人たちを見る。
ちょっと手を貸してあげないと駄目かな?と思った小泉君も買い出しの際中に何かあったみたいだ。
「今年も渡辺班は安泰か。今年の4年生も就職先決まってるみたいだしな」
渡辺君はそう言う。お酒のせいもあって上機嫌のようだ。
「じゃ、俺は他のメンバーにも声掛けするから」
そう言って渡辺君は他のメンバーに声をかけに行った。
僕達は二人で食べていた。
「問題あったけど今年も無事合宿が終れそうですね」
「だといいね」
「冬夜さんはまだ何かあるというんですか?」
愛莉が聞いてくる。
「まだ最後の実践が残ってるだろ?それが不安でね」
「新條さんがついてるから大丈夫なのでは?」
「なんかすんなりと終わらない。そんな気がするんだ」
その時愛莉のスマホが鳴った。
メッセージの着信だ。愛莉はメッセージを読んで笑ってる。
「なんて送られてきたの?」
愛莉はスマホを見せてくれた。
「男共に伝えておけ、私たちが風呂から戻るまで飲むの禁止!」
なるほどね。
「冬夜さん、明日で合宿は終わりだけど残りの二日間は何か予定を考えているのですか?」
「いや、特に決めてないけど」
「では、私が決めても構いませんか?」
「いいけど」
「では、二日間家でのんびりなさってください」
「それだと愛莉が家事しちゃうじゃないか」
「空いた時間にお相手していただければそれで十分ですから」
「愛莉がそこまで言うならそうさせてもらうよ」
「ありがとうございます」
ありがとうと言いたいのはこっちだけどね。
「そろそろお開きにしようか!」
渡辺君が言う。
僕達は片づけを始めた。
(2)
「ふぅ~」
二日目のお風呂。
広いお風呂に足を延ばして入るって気持ちが良いね。
「あいかわらずのようだな冬夜も」
佐(たすく)がやってきた。
「佐はどう?社会人バスケの方は?」
「拍子抜けしたよ。すぐにレギュラーになれたしな」
「それはすごいじゃないか」
「それがさ、なんか物足りないんだよな。充実感がないっていうかさ」
「それはバスケに対する姿勢の違いじゃないかな?」
木元先輩が来た。
「企業バスケも福利厚生の一環だからね。プロ程勝ちにこだわらない。純粋にバスケ好きが集まるから」
「それはあるかもしれないっすね」
佐がうなずく。
そういやうちの会社にもバスケ部あるって言ってたっけ?
「大学の時もそんな感じだったのを鬼マネージャーが現れて監督が変わってスタイルが変わったんだよな」
「冬夜の存在が大きかったけどな」
佐と木元先輩が言う。
「佐、仕事の方がどうなんだ?」
「まだ覚えたてって感じだな。定時で上がれてる。冬夜はどうなんだ?」
「職業柄月末が忙しくてね。来月は三月期の決算があるからてんてこまいらしいよ」
とはいえ、21時くらいまでの残業らしいけどね。
「佐仕事もそうなんだけど合宿終わったら佐倉と同棲だって?」
木元先輩が佐に聞いていた。
「そうなんすけど、多田君達の話聞いてると不安になって来てな。桜子とうまくやっていけるんだろうかって」
あの二人が特殊なんだと思うよ?
「まあ、怒らせなきゃいいよ。後は佐倉の言う事には大人しく従っとけ」
木元先輩がアドバイスしてる。
「木元先輩はどうなんですか?花菜さんってやっぱ厳しいですか?」
「冬夜のところが特殊なんだろう。やっぱり一緒に暮らすと女って変わるよ」
愛莉も変わったけどなあ。
「それありますね、結婚の有無も左右するかもしれなません」
竹本君が来た。
「うちもそろそろ子供をなんていってるけどな、出産後の事を考えると一歩踏み出せないよ」
木元先輩が首を振ってる。
出産すると女性がますます強くなるらしいしな。
父さんも言ってたっけ?
「うちの血筋はみんな女性に頭が上がらない」って……。
「咲良もそうなんだ……冬夜のケースを見るとやはり結婚の有無がでかいんだろうな」
檜山先輩もまざってきた。
「僕も同棲してますけど、別に特段五月蠅いってことはないですね」
月見里君が言う。
「冬夜も秋空もまだそんなに経ってないからそう言えるんだよ!時間が経つと化けの皮が剥がれて来るぜ」
こういう話をしてるとトラブルメーカーが寄ってくる。
桐谷君と誠がやってきた。
「冬夜も今のうちに上下関係はっきりさせておいた方がいいかもな!後になってからだと手遅れだ」
誠が言う。
「俺達みたいになりたくないなら今のうちに手を打っておけ!イチャイチャしてる期間なんてあっという間だぜ」
だから桐谷君声が出かい。
「聞こえてるぞ瑛大!誰が化けの皮が剥がれたって!?」
ほらね。
誠達は顔を見合わせるとそそくさと風呂を出た。
これで多分平穏が訪れるだろう。
「お前たち、あまり難しく考えない方がいいぞ」
「そうそう、下手に顔色うかがうよりは堂々としてた方がいい。まだ皆若いんだ。遊んだり甘えたりしたい年頃だろう?可愛い我儘だと思って受け止めてやればいいんだよ」
丹下さんと椎名さんが言う。
愛莉の場合その甘えすらなくなったから怖いんだ。
後で聞いてみるかな?
「冬夜、俺達もそろそろ出ないか?誠達を放っておくのは危険な気がするんだ」
渡辺君が言う。
確かにあの二人は危険だ。
僕達は風呂を出た。
(3)
「全くあの馬鹿は……まだ懲りてないのか」
亜依が呟いてる。
「あの二人は死ぬまで治らないな!」
カンナが言う。
そんな二人を見ながら私は思う。
この二人と私の違いってなんだろう?
彼の違いくらいは分かるけど……私が特殊なのかな?
「あの……深雪さん」
私は深雪さんに聞いてみた。
「深雪さんは自分のご主人に不満を持ったことってあるんですか?」
「細かい所ならあるわよ。今だにふらふらした生活してるし」
学生だからしかたないけどね。と笑っていた。
「そうね、学生だから仕方ないって事もあるかもしれないわね。私達がしっかりするしかない」
聡美さんも言う。
「じゃあ、亭主が社会人の場合はどうなんですか?」
「春樹も思いっきり愚痴言ってました~」
花菜と咲良が言う。
「あなた達の場合はそうね……どんな不満があるの?」
聡美さんが言う。
「夜遅くまで遊んでる事かな~。バスケの練習の後は飲み会だし。それに休日もバスケに出かけるし」
「春樹も同じですね~。夜飲み会で帰るのが遅いかな~。徹夜で麻雀してることもあるし」
花菜と咲良が言う。
すると聡美さんが二人にたずねた。
「そうね、例えばあなた達と遠坂さんの違いってなんだと思う?」
「なんか面白そうな話題してますね。混ぜてもらってもいいかな?」
「私も混ぜて欲しいかも。愛莉との違い……参考になるかもしれない」
「私も参考にしたいから、混ぜてください」
そう言って亜依と神奈と小鳥遊さんが加わった。
他の女性達も興味をもったようだ。皆の注目が聡美さんにいく。
「そうね、亜依さんと神奈さんにも同じ質問をするわ。遠坂さんと自分の違い分かる?」
「優しさ?」
「仕事してるかしてないか?」
「主人の出来の良さかな?」
皆がそれぞれ意見を言う。
しかし聡美さんは首を振る。
「そうね……最初の二人が分かりやすいかもしれない。花菜さんと咲良さんは何が違うと思う?」
あ!
「主人が早く帰って来るか、そうでないかですか?」
私が答えた。
聡美さんはにこりと笑ってうなずいた。
そして次の質問に入る。
「その差って何だと思う?」
私にもわからなかった。
冬夜さんはどうして早く帰ってきてくれるんだろう?
「環境……ですか?冬夜さんの会社はみんな世帯持ちだから夜遊びしないって言ってました」
「惜しいけど違うわね」
聡美さんが言うと、皆頭を悩ませている。
聡美さんはそんな皆を見て答えた。
「答えは簡単なのよ。家に帰りたいか帰りたくないか。ただそれだけ」
意味が分からなかった。
「例えば片桐君が帰るのが遅くなった時遠坂さんはどうしてる?」
「普通に『お帰りなさい、お疲れ様でした』って返してますけど」
「多分咲良さんと花菜さんはそれを忘れてるんじゃない?」
「そう言えば……」
「言ってませんね~」
2人が言う。
でもそれがそんなに違う事なんだろうか?
「たった一言が男の心理を変えるの。『可哀そうな事をした。次は気をつけよう』って考えたりね」
なるほど~。
でもそれが家に帰る帰らないにつながるのだろうか?それに私と神奈や亜依の違いにどうつながるんだろう?
「そうね、二人と遠坂さんの違いから説明して言った方が分かりやすいわね。そういう積み重ねがある心理につながるのよ」
「ある心理?」
深雪さんが言うと私が聞き返していた。
「大雑把に言うと思いやり。分かりやすく言うと『家に帰りたいか帰りたくないか』かな?」
「私の主人は家に帰りたくないと思ってるって事ですか?」
花菜が聞くと深雪さんは頷いた。
「片桐君の場合は『早く家に帰ろう』『休日は彼女を休ませてやろう』そう言う心境なのかもね。一方二人の場合は『家に帰りたくない。自分の時間が欲しい』そう言う風になってるの」
「その話私も興味あるわね」
「私も……」
恵美と晶も関心を持ったようだ。
「どうして後者は家に帰りたくないんですか~?」
「自分の時間が欲しいって片桐君はどうして思わないんですか?」
咲良と花菜が質問した。
「それがさっき言った思いやりにつながるの。『自分の為にここまでしてくれる愛しい人にお返しをしたい』片桐君はそう思ってるのかもね」
「冬夜さんがそう思う理由は?」
私が聞いていた。
「遠坂さんは片桐君を立ててるから、だから自分の家が居心地がいいのよ。そんな居心地のいい場所を作ってくれる人に優しくしない人なんていないわよ」
深雪さんが言う。
「じゃあ、私達の場合は居心地が悪いってことですか?」
花菜が聞いていた。
「……家でくつろいでる主人にあれしろこれしろってうるさく言ってない?」
聡美さんが言った。
「それって単に甘やかせってことですか?」
花菜が聞くと聡美さんが言った。
「北風と太陽の話を知ってる?遠坂さんに聞くわ。片桐君に不満はないって言ったわよね?」
私はうなずいた。
「でも家事はしてない……させてないって言った方が正しいのかしら?」
「はい、いつも仕事をしてるから。休みの日くらいゆっくりさせてあげたいって」
「……前に亜依さんが言ってたわね『朝ごはんを作ってくれて、お疲れ様って書置きがあるだけで嬉しい』って」
聡美さんが言うと亜依がうなずいた。
「同じ事が皆にも言えるんじゃないかな?居心地の悪い家にいるより外で遊んでたい。こっそり遊びたい。不満のはけ口を探し出す」
「それって私達は文句を言わず我慢しろってことですか?」
亜依が聞くと聡美さんが言う。
「そうはならない。それは遠坂さんが実証してる。彼女は言ったわ『不満はない』って……」
「つまりどういうことなんだ?」
美嘉さんが聞いた。
「そうね、優しさが相手の優しさを引き出す。とでも言えば分かるのかしら」
聡美さんが言うと女性陣は皆聞いていた。
「遠坂さんのケースは稀なケース。でも理想の夫婦像が身近にあるのは間違いないわ」
「愛莉達が理想の夫婦像……たしかにそうかもしれないな」
神奈が言うと皆うなずいた。
「いきなり遠坂さんのようになれとは言わない。まずは多少のやんちゃは許してあげなさい。少しずつ変わってくるから」
聡美さんが言う。
誰も反論しなかった。
「帰る場所をつくるか……」
花菜が呟く。
聡美さんは皆を見るとうなずく。
「話はこのくらいにして早速実践してみたら?」
「そうね、そろそろ男性陣がしびれを切らしてる頃だから」
聡美さんと深雪さんが言うと皆思い出したかのように浴場をでる。
私も浴場を出ようとする。
すると、聡美さんと深雪さんが声をかけた。
「そういうわけだから、遠坂さんは今のままでいいのよ」
「そうそう、自信を持って自分が思っているように行動しなさい」
私は二人に礼を言うと浴場を出た。
(4)
僕は片桐君と渡辺君と見てはいけないものを見てしまっている気がする。
昨日の悪夢がまた再び始まっていた。
「こりゃ、明日もまた大変だな」
「そうだね……」
渡辺君と片桐君が言った。
「渡辺君も冬夜も何を怯えてるんだ!今夜は盛り上がろうぜ!」
「そうだ!!一々嫁にびびってんじゃねーよ!」
誠君と瑛大君を止める者は誰もいない。
しかし関わろうとする者もいなかった。
2人を除いて。
「誠君の言う通りだ!一々嫁の顔色うかがって生きてられるか!」
「その通り!俺だってやることやってんだ!嫁の顔色気にして言いたい事も言えないなんて間違ってる!!」
木元君と中島君も加わった。
そしてタイミングを見計らったのように近づいてくる女性陣。
女性陣の話声を壁越しに聞いた渡辺君と片桐君が止めに入る。
「そ、その辺にしとかないか!?」
「木元先輩もそろそろまずい!」
だが4人は止まらない!
「渡辺君!何を怯えているんだ!?俺達は無敵だ!」
「そうだ渡辺君もこっちに来て騒ごうぜ!!」
「冬夜!俺が先輩として夫の立ち振る舞いを教えてやる!」
「そう言う話なら俺もまぜてもらうぜ」
誠君、瑛大君、木元君、中島君はとまらない。
檜山君は椎名さんや丹下さん、真鍋君と飲んでいる。
我関せずを決めている。
僕たち3人は皆を見捨てることにした。
でも、そうっと部屋を抜け出そうとしたが時すでに遅し
「どこに行くの?公生?」
「な、奈留!!」
「正志連れねーな。偶には一緒に飲もうぜ」
「み、美嘉!!」
「冬夜さん、私もお風呂上りに一本だけ頂きたいのですが付き合って頂けませんか?」
「愛莉……」
神奈さんと、亜依さんと、花菜さんと、穂乃果さんが4人に近づく。
「随分ご機嫌だな。でも私達を待ってくれててもよかったんじゃないのか?」
「か、神奈!!」
「楽しそうじゃない、混ぜてよ」
「亜依……」
「私も一本頂戴してもいいかな?かずさん」
「花菜……」
「今夜で最後だし一緒に楽しみましょう?隆司さん?」
「ほ、穂乃果!?」
4人の威勢が一気に弱まった。
他の女性陣もそれぞれのパートナーの元へ行く。
悪夢の再来だ。
今夜また奈留の機嫌が悪くなるのか。
だけど様子が変だ。
「公生まさかお酒飲んでないよね?私のジュースあるかな?」
「あ、ああ」
奈留にジュースを渡すとごくごくと喉を鳴らして飲み干す。
「もう一本良いかな?」
「ああ、ジュースならいくらでもあるよ」
「明日で合宿終わりだね」
「そうだね」
「最後くらい楽しく騒ぎたいね」
「そ、そうだね」
奈留の機嫌が悪くない?
それだけじゃない、他の女性陣も……神奈さん達も普通だ。
どうしたんだろう?
気づいたら片桐君達がいなかった。
(5)
「長風呂なのとちょっと酔いが回ったみたいです。少し夜風にあたりにいきませんか?」
「あ、ああ」
愛莉に言われて2階のバルコニーに行く。
「今夜も夜空が綺麗ですね」
「そうだな」
愛莉を見て不思議に思った。
特段酔ってるようには見えない。
ご機嫌なのは確かのようだけど。
「愛莉、風呂でなにかあった?」
「それは女同士の秘密です」
愛莉はにっこり笑ってそう言った。
「夫婦に隠し事は無しなんじゃなかったのか?」
「そうでしたね。困りましたね~」
愛莉は悩んでる。
「じゃあ、答えられる分だけでもいいですか?」
「ああ、いいよ」
「私達理想の夫婦像だって褒められました」
愛莉は喜んでいる。
「それが隠し事なの?」
「それ以上が内緒なんです」
「なるほどね」
夜風が今胸のドアを叩いても、僕だけをただ見つめて微笑んでる愛莉。
ずっと眠っている愛のゆりかご。
愛莉だけが夢の使者に呼ばれる朝が来る。
愛莉の細い首筋を月明かりが映してる。
もしふたり逢えた事に意味があるなら……
2人の愛のテーゼ。
哀しみがそして始まる。
抱きしめた命のかたち。
その夢見目覚めた時誰よりも光を放つだろう。
ほとばしるパトス。
想い出は裏切らない。
人は愛を紡ぎながら歴史を作る。
女神なんていらない、愛莉が生きている。
「他の皆大丈夫なんだろうか?」
「きっと大丈夫ですよ」
「そうなの?」
「そうです」
愛莉はにこりと笑って答える。
愛莉が大丈夫って言うんだから大丈夫だろう。
「そろそろ冷えてきた。もう遅いし寝よう」
そう言って戻ろうとすると愛莉が服を引っ張る。
「どうしたの?」
「今夜は月も星も綺麗な夜空、私はほろ酔いです。そして他に誰もいません、いても構いませんが……」
愛莉の言おうとすることは分かった。
愛莉を抱き寄せる。
愛莉と口づけを交わす。
「もういいだろ?早く寝よう」
「はい」
まだ物足りないらしい。
「明日の早朝散歩をしないか?」
「散歩ですか?」
「ああ」
「わかりました」
ちょっとはましになったようだ。
「帰ったら家でゆっくりだって言ったね」
「はい」
「……帰ったら一杯甘えてやるからな」
「困った旦那様ですね」
愛莉ははにかんでいる。
愛莉の手を取って部屋にもどった。
0
あなたにおすすめの小説
王宮に薬を届けに行ったなら
佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。
カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。
この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。
慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。
弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。
「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」
驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。
「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」
※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。
楠ノ木雫
恋愛
蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる