優等生と劣等生

和希

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LASTSEASON

目覚め!

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(1)

「冬夜さん、朝ですよ」

愛莉に起こされる。

「おはよう愛莉」
「おはようございます。朝食出来てますよ」
「いつもありがとう」
「いいえ」

愛莉とダイニングに行くと朝食を食べる。
朝食を食べ終わると愛莉が食器を洗ってる間じっと愛莉を見て考える。
どうにかして愛莉の負担を減らしてやりたい。
そんな視線に愛莉は気づいた。

「どうかされましたか?」

首をかしげて愛莉は僕を見ている。

「うん、食洗器買おうか?と、思ってさ」
「え?」
「掃除機もうちフローリングだしロボット掃除機買おうかなって」

愛莉もその方が楽だろ?

「……私の家事に落ち度がありましたか?」

そう捕らえるか。

「そういう意味で言ったんじゃないんだ。ただ毎日大変だろうって思って」
「これが私の仕事ですから。ぐうたら主婦にさせないでください」
「じゃあさ、今日くらいは……」
「やることはさせてください。その後冬夜さんに甘えますから」

愛莉はにこりと笑って作業を続ける。
そんな愛莉をずっと見てる。

「今日はBlu-rayみて過ごすんだよな?」
「ええ、一つだけお願いしてもよろしいですか?」
「どうしたの?」
「リビングで見るより寝室で見たいのです」
「リビングのテレビの方がでかいよ。音響もいいし」
「でも広いから……」

愛莉の目を見る。……なるほどね。

「わかったじゃあ、コーヒー淹れて待ってる」
「わ~い。優しい旦那様で本当に嬉しいです」

その言葉に思わず僕はにやりと笑ってしまう。

「どうかされましたか?」
「今『わ~い』って……久しぶりに聞いたから」
「す、すいません」
「謝らなくていいよ。愛莉の喜んでる気持ちは伝わったから」
「……私は本当に幸せ者ですね」

愛莉の家事が済むとコーヒーを入れて寝室のテーブルに置く。
愛莉と二人並んでコーヒーを飲む。
こうした朝を迎えるのも久しぶりだな。
愛莉は僕に体を預けている。愛莉は邦画の恋愛ものを見てる。
愛莉が選んだのは女子高生と警察官の禁断の恋愛もの。
まあ大体この手のものは最後には結ばれるんだけどね。
年の差を越えるとか卒業するまで待つとか。
現実はそんなに甘くないと思ったけど、親から早く結婚しろと言われることになるとは誰も思わないだろ。
籍だけでも入れてしまえ!
そんな現実に直面してるんだけど。まあ、愛莉が必死に見てるのに水を差す真似はしたくない。
愛莉のテレビに食い入る愛莉を眺めている。
そしてエンディングで涙をためる。
丁度いいタイミングでインターホンが鳴った。
余韻に浸ってる愛莉に替わってインターホンに出る。

「冬夜、いるか?」

親’sが来ている。
慌てた。
愛莉の掃除が済んでいるからいいとして愛莉はあとで洗濯物を片付けようとしたのだろう。
余韻に浸ってる愛莉には悪いけどそんな場合じゃない。
愛莉に親が来たことを知らせる。

「ああ、随分のんびり来たんですね」

え?

「あれ?私朝言うの忘れてましたか?」

愛莉は説明を始めた。

朝メッセージが入る。

りえちゃんからだ。

「愛莉ちゃん久しぶり~今日は予定あるの~冬夜君はちゃんと相手してくれてる~?」
「凄く優しいんだよ~」
「今日の予定は~?」
「最後の休日だから家でのんびりしてる~」
「じゃあ、ママたち様子を見に行ってもいいわね~?」
「いいよ~」
「じゃあ、後で行くわね~」

だから冬夜さんを早く起こしたのだという。
まずい、部屋着のままだ!

「大丈夫ですよ。今日は家でゆっくりしてると言いましたから」

とりあえず寝室を出ると寝室のドアを閉める。
またインターホンが鳴る。

「今から出るから~」

愛莉が言うと愛莉は玄関の鍵を開けた。

「愛莉ちゃん久しぶり~」
「りえちゃんも久しぶり~。狭いけど上がって」

愛莉はすんなりリビングに通す。

「へえ、意外と綺麗につかってるのね」

母さんが見回している。
しかし母さんの目は誤魔化されない。

「その部屋は何?」
「寝室だよ」
「見せなさい」
「今ちょっと散らかってるから」

無駄な抵抗だった。
その惨状を見た母さんは激高する。

「冬夜!!」

リビングで母さんの説教を受けている。

「まさかあんた家事を愛莉ちゃんに押し付けてるんじゃないだろうね?」

愛莉が手伝わせてくれないんだよ

「麻耶さん、それは私の仕事だから。冬夜さんはお金を稼いでくれてるし」
「愛莉ちゃん駄目よ、この子は育児まで愛莉ちゃんに押し付ける気よ」
「それはないって、冬夜さんが言ってくれたから」
「で、急にどうしたのさ?」
「お前たちの生活ぶりが気になるって麻耶たちが言い出してな」
「……う、うむ」
「愛莉ちゃんもいけないのよ~全然連絡くれないから~」
「ごめんなさい」
「でもしっかりやってるみたいで安心したわ~これなら安心ね」
「うん」

母さんたちは満足したみたいだ。

「これ、お茶です、あとつまらないものだけどお茶請です」

愛莉が母さんたちに紅茶を出す。

「しっかり板についてきたようね~愛莉ちゃん~」
「えへへ」
「冬夜も良い彼女をもったようだな」
「う、うん」」
「あんたまた愛莉ちゃんに何もかもおしつけてるんでないだろうね?」

手伝ってあげたくてもさせてもらえないんだよ!
出来ることは愛莉になるべく家事させない事。

「冬夜さんは優しいの。私を休ませようと努力してくれてるし。でもそんな冬夜さんの役に立ちたいから」
「……うむ」
「じゃあ、2人の元気な姿も見れた事だしそろそろ行きますか?」
「……そうですね」
「もっとゆっくりしていけばいいのに」

両親たちは立ち上がるとリビングを出る。

「最後の休日だ。ゆっくりしてるといい」
「愛莉ちゃんもゆっくり休むのよ?」

両親がそう言う。

「愛莉ちゃん偶には顔見せに来てね~」
「……冬夜君、君も小さいながらも一国一城の主だ。ドンと構えてなさい。君がふらふらしていたら愛莉を不安にさせる」
「はい」
「じゃ、またね~」

2台の車が走り去るのを見送ると部屋にもどった。

「驚きましたね、突然でしたから」
「そうだね」
「ごめんなさい、うっかりしてて冬夜さんに恥をかかせてしまいました。私もまだまだですね」
「気にしなくていいよ」
「はい。じゃあ、とりあえず洗濯物片付けてからお昼にしますね」

愛莉は時計を見ながら言う。

「僕はなにをしたらいい?」
「ゲームでもなさっていてくださいな」

愛莉はそう言って洗濯物を片付けると、昼食の準備を始めた。
僕に出来るのはそんな愛莉の話し相手になるだけ。

「今日は何を作ってくれるの?」
「いつもラーメンだと飽きるのでオムライスを作ろうと思って」
「楽しみだな」
「はい」

そうしてオムライスを食べると、愛莉は片づけをして再びテレビを見る。
日曜のお昼は愛莉が好きな番組をやってる。
愛莉はそれを見ながら笑ってる。
僕達はどんな対応をするんだろうな?
そんな事を考えながら、観てた。

「みんな幸せそうですね」

新婚。

愛莉はそんな言葉に憧れているんだろう。

「愛莉もそうなれるよ……」
「ずっと待ってますから」

番組が終わると映画を見る。
結婚詐欺師の話。
結婚という言葉の響きと結婚詐欺という言葉の響き。
結婚に幸せを感じるだろうか?

愛莉はそんな映画を真剣に見ていた。

「結婚も大変なんですね……」

愛莉はそう呟く。
結婚の大変さは身近に感じる事が出来た。
カンナや亜依さんを見ていたらよく分かる。
花菜さんの愚痴を聞いていたら不安になる。
愛莉を幸せにしてやれるのか?
愛莉を失うのは怖い。
きっとこの主人公の様な結末を迎えるかもしれない。
恐怖を感じた。
そんな僕の気持ちを察したのか愛莉は僕の手に自分の手を重ねる。

「私達は大丈夫ですよ」
「……そうだね」

目覚め。
恐れることは無い。愛は真っ暗な世の中でも僕達を導いてくれる。
僕は愛莉に出会った。
僅かな星明りを頼りに。
向かい風に汚れない。失う怖ささえ輝いている。

(2)

僕は、美月の実家に来ていた。
緊張する。
初めての彼女、そして初めて対面する彼女の両親。

「いらっしゃい」

美月の母さんは僕達を温かく迎えてくれた。
そして居間に通される。
今には美月の父さんがいた。

「初めまして、美月さんと交際させてもらっている小泉と申します。これ詰まらないものですけど……」

菓子折りを差し出す。
美月の父さんは黙って受け取ると美月の母さんに渡す。
美月の母さんは「お茶を入れてきますね」と言って部屋を出ていった。

「で、今日は何の用件で?」
「それは……」
「夏休みに入ったら同棲しようと思うの。彼と……」

美月がそう言った。

「同棲だと?」

美月の父さんが反応する。

「誠に勝手な話だと重々承知してますが、お許しを願いたいと思いまして」

美月の父さんは何も言わない。

「勝則さんには私の事情を説明しました。勝則さんは公私ともに私を支えてくれています。なら一秒でもそばにいた方がいい。勝則さんはそう判断してくれました」

私の覚悟を受け止めてくれた、そして彼も覚悟を決めてくれた。だから許して欲しい。美月はそう嘆願する。

「お茶をお持ちしました」

美月の母さんが戻って来た。

「母さんと、美月は席を外してくれないか?」

美月の父さんが言った。

「父さん勝則さんは……」
「勝則君と二人で話がしたい」
「美月、行きましょう」

美月の母さんがそう言うと美月は不安そうな顔をしながらも部屋を出た。
それをみた美月の父さんはお茶を飲む。
見る限り僕に嫌悪感を抱いているようだ。
これは一発くらいは覚悟しないと駄目かな?
歯を食いしばる。

「……美月には済まない事をしたと思っている」

え?

「うちの家内も美月の病気が発覚した時泣いていたよ。美月の将来に絶望していたよ。自分が元気に産んでやれなかったって後悔してる」

僕は美月のお父さんの話を静かに聞いていた。
美月のお父さんの話は続く。

「それなのにあの子は擦れることなく、明るく真面目に育ってくれた。吉野さんという親友も手に入れて元気に育っていた。ある一点を除いては」
「それは?」
「優しい子なんだけどね、吉野さんと違って優柔不断なところもあって、どうしても吉野さんと比較されてあの子は恋人に恵まれなかった」
「美月さんには美月さんの良い所があります。優しいし器用だし……」
「他の人はそうは見てくれなかった。君が初めてだよ、あの子が彼だといったのは」

嬉しそうだけど、淋しそうな美月さんのお父さん。

「あの子の願いはできる事なら叶えてあげたい。君はどこまであの子について覚悟を決めているのか知りたい」
「……約束しました。一生彼女を守ると」
「ならどうして結婚をしないんだ?」

え?
突然の言葉に頭がパニックになった。

「あの子はもう十分結婚できる年だ。君も美月も働いているのだろう。どうして結婚しない?」

何か話が妙な方向に走ってるような。

「僕も美月もまだ学生です。結婚は早すぎます」
「君もまた真面目なんだな」

美月の父さんは突然頭を下げた。
何が起こっているのかさっぱり理解が出来なかった。

「娘の願いは何でも叶えてやると私も誓った!あの子をどうか幸せにしてやってくれ!」

その言葉の重みは十分承知していた。そして僕自身も昨日誓った。

「僕も美月に約束しました。一生をかけて美月を守ると」

美月の父さんは美月と美月の母さんを呼ぶ。
2人が入ってきた。

「良い時間だ、お昼にしよう。母さん、極上のお寿司を用意しなさい」
「父さんそれじゃあ……」
「お前が良い人に出会えてよかった。父さんも肩の荷が下りた気分だよ。仲良くやっていきなさい」
「父さん……ありがとう」

その後4人でお寿司を食べながら、美月のお父さんから亭主の心得等を聞かされた。
まだ気が早い気がするんだけど。

「じゃ、今日公演あるから」
「また、引っ越す前に来なさい」
「今日はありがとうございました」
「娘をよろしく頼む」

僕達は事務所に向かった。

「上手く行ってよかったね」
「まさか結婚の約束までさせられるとは思いませんでした」
「あら?結婚してくれないの?」

美月はそう言って微笑む。

「まだ待って欲しい。僕が独り立ち出来たらその時申し込むよ」
「……はい」

その日の公演の彼女は輝いていた。
舞台袖から見ていてはっきりわかった。


君に降る光を全て集めてあげる。
公演が終わった後僕達は社長に同棲の事を伝えた。

「何を馬鹿な事言ってるの!」

恵美さんがそう言った。
社長は笑ってる。

「善は急げというでしょ!今すぐ部屋を見つけてあげるからすぐに引っ越しなさい!」

恵美さんはそう言って笑った。

「まさか美月に先越されるとはね、ちょっとショックだわ……」

香澄さんが言ってる。
香澄さんは僕を睨む。

「あんた分かってるでしょうね!美月傷つけるような真似したら承知しないからね!」

香澄さんがそう言った。
その後美月を家に送った。

「まさかすぐに引っ越せなんて言われるとは思わなかった」
「そうですね」
「勝則さんは後悔してる?」
「まさか」

僕は笑って言った。
帰ったら引越しの準備だな。少しずつ片付けて行かないと。

目覚め!
恐れることは無い。愛は真っ暗な世の中でも僕達を導いてくれる。
君に降る痛みを全て拭ってあげたい。

(3)

「渡辺さん、旦那さんが見えたよ」

お、来たか。
腕がなるな!
さっそく調理に取り掛かる。

「女性を連れてるけど誰?」

女だぁ?
私は厨房からそっと覗く。
正志の正面にはベリーショートの栗毛の女性が。年上のようだ。正志め、もう浮気か!?
しかも嫁の仕事場で堂々とするたぁ良い度胸じゃねーか!
2人はコース料理を注文したらしい。
酒は二人とも無しのようだ。
2人の料理を任される。
次々と作っていく。
そして最後のデザートを任せると「旦那さんなんだろ?あいさつしておいで」と言われて殴り込みに行く。
本当に殴り飛ばしたい気分だったが、自分が接客業と自覚してるので自制した。
その代わり家に帰ったらきっちりしぼってやる!

「今日はご来店誠にありがとうございました。今回の調理を担当した渡辺美嘉ともうします」
「おお、美嘉。美味しかったぞ」
「それはよかったです」

私は正志を睨みつける。
それに正志は気づく。

「どうしたんだ?美嘉」

どうしたんだ?じゃねーぞ!この馬鹿。

「若いのに凄いわね、美味しかったわ。ご馳走様」
「ありがとうございます」

女性は余裕がある顔だった。
年上っぽい、大人の余裕という奴だろうか?

「ああ、紹介するよ。こちら職場の先輩の悠木沙織さん。先輩こいつが俺の妻の……」
「それではごゆっくりお楽しみください」

そう言って踵を返して立ち去った。
仕事が終わるとすぐに家に帰る。
家に帰ると正志がリビングでくつろいでいた。

「お?美嘉今日は帰りが早いな?」

私はバッグを正志に投げつける!

「ど、どうしたんだ美嘉!?」
「どうしたもこうしたもあるか!嫁が働いてる時に悠々と浮気たあいい度胸じゃねーか!しかも嫁の職場で!」
「ま、まて美嘉!大きな誤解をしてるぞ!」
「誤解も六回もあるか!!そりゃ、私はまだ子供っぽいよ!お前はああいう大人の女性が好きなんだろうよ!」

辺りにある物を正志に投げつける!!

「落ち着け!説明をしてやるから!」
「してやるだあ!?何様のつもりだ?」
「俺は前に言ったぞ、お前の料理屋つかわせてもらっていいか?って」
「ああ、覚えてるよ!まさか浮気に使われるとは思わなかったよ」
「だからどうしてそうなるんだ!」
「じゃあ、どう説明するんだよ!」
「それを今から話すから落ち着け」
「……聞いてやろうじゃねーか!納得いく説明をしてくれるんだろうな?」
「当然だ。俺だって世帯持ちの公務員だ。浮気なんて馬鹿な真似せんよ!」

そこまでいうなら説明きいてやるよ。そのかわり納得できかった時はとことん説教だからな!

「まず彼女は悠木沙織。俺の職場の先輩だ」
「そう言ってたな」

それから正志の説明が始まった。
話は連休に入る前まで遡る。

(4)

俺はいつも通り仕事を済ませて。帰宅しようとしていた。

「渡辺君、ちょっといいかしら?」

話しかけてきたのは悠木先輩だった。

「どうしたんですか?」
「あなた大学では渡辺班っていうグループ作ってたそうね?縁結びのグループだとか?」
「ええ、今でもありますよ?」
「その事でお願いしたい事があるんだけど」

参ったなそう言う相談は大体冬夜に任せていたんだが……。

「いいですよ。いつがいいですか?」
「私この後まだ残業なのよ。出来れば連休がいいんだけど」
「最初の3日間以外ならいつでも?」
「それなら最終日にどうかしら?」
「わかりました時間と店は俺がセッティングします」
「決まったらメッセージ頂戴」
「わかりました」

帰って、夕食を作ると一人で食べる。
美嘉はその日は遅番だった。
帰ってくるのは22時過ぎ。

「ただいま」

帰って来た。

「おかえり」

美嘉はすぐに冷蔵庫からビールを取って飲む。

「やっぱり仕事上がりの一杯はうめーなぁ!」
「美嘉、お願いがあるんだが」
「なんだ?珍しいな」
「連休の最終日店予約とれないか?」
「食べに来てくれるのか?」
「ああ、せっかくだし。2名で頼む」
「多分19時くらいが空いてると思う」
「じゃあ、その時間で」
「わかった、美味いもん食わせてやるからな」

美嘉は上機嫌だった。
そのあと、悠木先輩に連絡を入れた。


そして今日悠木先輩と店で落ち合った。

「19時に予約してあった、渡辺ですが」
「ああ、あなたが。お席に案内します」

特等席を予約してくれたらしい。

「メニューはお任せでよろしいでしょうか?」
「はい」
「ではお待ちください」

店員はそう言って去った。

「それで話って?」

俺は早速本題に切り込んだ。

「……あなた長谷部君てどう思う?」

長谷部先輩、俺より一個上の先輩。
こういっちゃなんだが、人任せで頼りなくておどおどしてる。

「同じ男としてもちょっと頼りないところありますね」
「そうなのよね、放っておけないところがある……」

冬夜でなくてもピンときた。

「悠木先輩は長谷部先輩に気があると?」
「……まあね」
「それならそう言えばいいじゃないですか?」
「職場恋愛ってリスク高くない?失敗したら職場に居づらくなるっていうか……」

確かにそれはあるかもな。

「それに……頼りない彼だけどやはり彼から告白されたいじゃない」

悠木先輩は俯いている。
こんな一面もあったんだな。いつもはてきぱきと仕事をこなしてしっかりした人だと思っていたが。

「わかりました。そういうことなら任せてください」
「本当に、ありがとう!」

とは言ったもののどうしたものかな?
いきなりさしでで話させるのは長谷部先輩には無理だろう?
何か口実をつける必要があるか……。
渡辺班の皆の力を借りるか。

(5)

「じゃあ、お前は単にその悠木先輩の相談を受けたってわけか?」
「それだけだ、他に何も無いよ」

確かにそいつは渡辺班の得意分野だ。

「すまんかったな?他の店を使おうとも思ったんだがそれはそれで話がややこしくなりそうだと思ってな。まさか美嘉の目の真で浮気するなんて馬鹿な真似はないだろうと思ってな」
「私の早とちりだったことは認めるよ。で、どうするんだ?」
「それを悩んでる」

私も考えた。
私はあまり難しい事は嫌いだ。

「そんなの長谷部ってやつに他に付き合ってる奴がいないか確認していないなら無理矢理言わせればいいじゃないか?」
「それなんだがな……実は長谷部先輩の話は聞いてあるんだ」
「は?」

正志は言う。
職場の新歓があった時2次会での話


「渡辺君はいいねしっかりしてて、僕も君みたいにうまれたかったよ」
「長谷部先輩もしっかり仕事してるじゃないですか?」
「僕はこんな性格だからね……彼女みたいな人に憧れるんだ?」
「彼女って?」
「悠木先輩」
「なるほど……」


「って具合にな」

正志が説明した。

「だったら話は早い!その長谷部ってやつを連れてこい!私達がその軟弱な精神を鍛えなおしてやる」
「待て美嘉!強引な手段はまずい!言ったろ職場恋愛にはリスクがあるって……」
「相思相愛なら問題ないだろ!」

私はそう言いながら女子会グルにメッセージを送信する。
その反応は。すぐに渡辺班に返ってくる。

「まずはその長谷部ってやつと話をさせろ!話はそれからだ!」
「久々に鍛えがいのあるやつが来たじゃない」
「軟弱な精神を徹底的に鍛えてあげる」

神奈と亜依と恵美がそう言ってる。

「わかったよ、二人を渡辺班に入れてみるよ」

正志はそう言った。
正志はスマホを操作してる。
そして……

まさしは沙織を招待しました。
まさしは健司を招待しました。

2人は挨拶する。
私は悠木さんを女子会グルに招待する。
それから色々相談する。
結果、まずは飲み会で二人で話をさせる。
話はそこからだ!

「正志!二人の歓迎会をセッティングしろ!」

渡辺班にそうメッセージを送信する。
うじうじしてるのは性にあわねえ。
とっととケリをつけるに限る!
職場恋愛?そんなの関係ないね。
恋愛なんてどこでしようが自由だ!

(6)

「また美嘉さん無茶やってるなあ」

僕はため息をついた。
言ってる事は正論なんだけど……。

「どうかされましたか?」

愛莉が髪を乾かしながら言ってる。

「スマホみたらわかるよ」
「はい」

自分のスマホを見ればいいのに僕にぴたりとくっつきたいのか僕のスマホを覗き込むように見てる。
そして自分のスマホを見る。
そしてくすっと笑って僕に見せてくれた。
……これは酷い。
策も何もあったもんじゃない。
直球すぎだ。

「長谷部ってやつ悠木さんの事好きだってよ」
「嘘!?」
「じゃあ、悩む必要ないじゃない」
「あとは長谷部に言わせればいいだけだな!」
「……そうなるわね」
「心配しないで悠木さん。そういうのは渡辺班の得意分野。力づくでも言わせて見せる」

脅迫でもするつもりか?

「……なあ愛莉?」
「どうされました?」
「女性て男性に告白されると嬉しいものなの?それが無理矢理言わされたものでも」
「無理矢理はどうかと思いますがどちらかと言えばやはり告白されたいですね。自分の気持ちに気づいて欲しいも思う事はありますよ」

そんなものなのか?
僕は考えてみた。
女性陣がここまで盛り上がってるんだ。
女性陣やりたいようにやらせてみるのも手か。

「今回は僕の出番は無しかな?」
「あら?どうしてですか?」
「女性陣のお手並み拝見といきたいから」
「大丈夫でしょうか?」
「多分大丈夫でしょ?」
「冬夜さんがそういうならそうでしょうね」

愛莉はそう言って迫ってくる。

「冬夜さんは私の気持ちに気付いていただけないのですか?」

愛莉がそう言うと僕はくすりと笑う。

「まだ早いと思ったんだけどね」
「明日は朝早いですよ?」

愛莉は待ちきれないようだ。
僕は立ち上がるとベッドに入る。
愛莉は寂しそうに僕を見てる。

「……なにしてるの?おいで」

僕がそう言うと愛莉は嬉しそうにベッドに入ってくる。

「私が我儘いったみたいでごめんなさい」
「大丈夫、また残業続きそうだしね」
「はい」

心から君に伝えたい
君の笑顔いつも見つめられたら……
心から君を愛してる。
君に降る光を全て集めてあげよう。
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