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LASTSEASON
ツミビト
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(1)
「おはようございます。朝ですよ」
愛莉に起こされる。
「おはよう愛莉」
「本当に早く起きてくださるんですね」
愛莉は喜んでる。
その後着替えて、支度をしてダイニングに向かうといつものように食事が並んでいる。
……え?
何かおかしくないか?
パンを齧りながら愛莉の顔を見て考える?
「あの、どうかされましたか?」
ふとした疑問。
「僕今日早く起きたんだよね?」
「ええ、素直に起きてくれました」
「……愛莉は?」
「え?」
「愛莉は何時に起きたの?」
「その前に置きましたよ」
だよね。……ってダメだろそれじゃ。
「愛莉何時に起きたの!?」
「冬夜さんが起きる30分前です。いつも通りですよ?」
いつも通りじゃないだろ!?
「愛莉と同じ時間に起こしてくれたらいいのに!愛莉寝不足で倒れちゃうよ!」
「でもそれだと朝食の支度が間に合わなくなります」
「僕が愛莉と同じ時間に合わせたら十分間に合うだろ!」
「……すいません」
愛莉は落ち込んでいるようだ。
悪いのは僕なのに。
「愛莉が謝らなくていいんだよ。僕がうかつだった」
「冬夜さんは悪くないです。折角の冬夜さんのご好意を無駄にしてしまいました」
こんな時どうすればいいんだろう?
愛莉が納得いく方法を考えてみた。
……あるじゃないか!
「愛莉、昔僕達が学生だった頃。愛莉が同居してた頃思い出して」
「え?」
愛莉が首をかしげている。
「ベッドの中で隣に寝てる愛莉が僕を起こしてくれた時の事」
「……そんなこともありましたね。冬夜さんなかなか起きてくれなくて」
「あれ、やりたいな」
「え?」
「愛莉と同じ朝を迎えたい。多分そうじゃなきゃだめだ」
「……意地悪しないって約束してもらえますか?」
「ああ。」
「わかりました。では、そのようにいたします」
甘えてばかりで困った旦那様ですね。と愛莉は笑っていた。
朝食を食べるといつもよりゆとりがある。
少し愛莉とリビングでゆっくり過ごして時間になると会社に向かう。
「じゃあ、行ってくる」
「お気をつけて」
愛莉に見送られて家を出ると会社へ急ぐ。
「おはようございます」
席に座ると、準備を始める。
いつもと同じ朝だった。
上原夫妻もいつも通り来る。
夏美さんはぎりぎりまで働くらしい。
そしていつも通り朝礼が始まるはずだった。
皆が立ち上がり社長が前にいる。
違うのは社長の隣にいる二人の男女。
社長が挨拶すると二人を紹介する
「今日から一緒に働くことになった沢尻龍之介君と臨時で雇った派遣社員の神木恵里香さんだ」
「沢尻龍之介です。よろしくお願いします」
「神木恵里香です。わたしを雇って後悔はさせません」
沢尻さんは物腰柔らかそうな好青年といった感じ。と言っても僕より年上だけど。
神木さんはなにかオーラを放ってる、派遣とは思えない威圧感。
その後仕事は始まった。
僕はとりあえず試験も控えているという事で5件の顧客を任されている。それに達彦先輩のデータ入力。
午前中は外回りしてとにかく顧客と相談する。
顧客の方針と要望を聞いて、データを見てアドバイスをする仕事。
一件に付き、月に一回出る程度だ。
沢尻さんは営業にでたり、任せられた顧客に挨拶に行ったりと大変そうだ。
僕も今日は午前中は出先に出ていて午後からは事務所で作業をしていた。
今日は暇だったんだろう。
皆和やかに業務をしてると思ってたが、なんか空気が変だ。
特に女性陣。
それは同じく昼から事務所内で作業をしていた達彦先輩も感じ取ったんだろう?
その理由は女性陣の中で浮いている神木さんにあると思ったのだろう。
神木さんは気にも止めず作業に没頭している。
「神木さんてさあ、どんなところで働いてきたの?」
達彦先輩が神木さんに話しかけた。
「今業務時間です。私語は慎むべきでは?」
なるほどね……。
達彦先輩はそれでもめげなかった。
「君綺麗だよね~彼氏とかいるの?……いてぇ!」
無言で達彦先輩の足を抓る夏美さん。まあ、情緒不安定な時期らしいからしかたないね。
捨て身の達彦先輩の声掛けは功を奏したようだ。
「いますけど、それが何か?」
「いたんだ!何かそういうの感じさせないキャリアウーマンって感じで格好いいよね。神木さんて」
驚いたのは達彦先輩だけじゃない。僕も驚いた。
なんか彼氏とかそういうの匂わせない感じの女性だったから。
「上原さんの発言セクハラだと思うんですけど」
その一言が事務所の温度を下げた。
不満を言ったのは達彦先輩じゃない。他の女性職員2名だった。
「あなたね!ちょっと評価されてるからって高飛車にもほどがあるんじゃない!?」
「そうよ!誰が社内の空気悪くしてると思ってるの!?」
坂本さんと飯塚さんが言う。
「まあまあ、落ち着いて!」
達彦先輩が言うものの落ち着く様子がない。
社長は客先に出向いてる。
郡山先輩と下田先輩が帰ってきた。
何事かと聞いてきたので事情を説明すると「あちゃ~」と頭を抱える。
そういや午前中二人共居たんだっけ?
午前中に何があったのか達彦先輩と聞いていた。
夏美さんが作業の手順を紙に書いて説明しようとした時だった。
「結構です。作業内容だけメモしておいてください」
それを聞いた坂本さんが抗議する。
「初日だから手順を親切に教えようとしただけじゃない。そういう言い方ってないんじゃない?
「事務の経験はあります。内容だけ書いておいて頂いたら問題ありません。自分でやれます。それに彼女喋れないのでしょう?そんな事細かに書いていたら時間の無駄です。こうしてあなたと喋ってる時間も給料は発生しているのですよ」
坂本さんはキレた。
「どんな仕事してきたんだかしらないけど。ちょっとキャリアあるからって生意気すぎじゃない!?たかが派遣の癖に」
「たかが派遣に給料の仕組みを教わる社員さんの質も大したもんじゃないですね」
そこで郡山先輩が仲裁に入る。
「まあまあ、彼女も初日なんだ。お手柔らかに頼むよ。それに彼女は派遣でも経験年数が違うんだ。そういう言い方はないだろう」
「私皆さんと仲良くするためにここに来たのではありません!お給料をもらうために来たんです。余計な手間とらせないでください」
郡山先輩も笑うしかなかったらしい。
社長が出て来て「騒がしいぞ!何事だ!」といい事態は収まったという。
そして今再び燃料が投下された。
鎮火するべき社長は出てる。
どうしたものか……。
「えーと、神木さんだっけ?」
僕は神木さんに話しかけていた。
「神木さんの主張を尊重しよう。確かに一秒でも給料の発生してる時間に無駄話はいけないよね」
女性二人が睨みつける。だが僕は続ける。
「でも、神木さんの配慮の足りない対応が彼女たち二人の業務に支障をきたしている。それは君がお詫びするべきじゃないのかな?」
僕の言葉で神木さんの手が止まった。
神木さんは立ち上がる。
「それもそうですね。配慮が足りませんでした。申し訳ありません」
神木さんはそう言うと席に戻り、作業に戻る。
とりあえずこの場は凌いだ。
この一件でだいぶ時間を食った。
仕事はその分ずれ込む。
だけど、神木さんはきっちり定時になると席を立ち更衣室へ向かう。
そして着替えて「お疲れ様でした」と一言言って帰っていった。
飯塚さんと坂本さんが文句を言ってる。
夏美さんは神木さんが終わらせた書類に目を通す……。
そしてメッセージを送る。
「今日の分全部完璧に出来てる……」
二人は何も言わなかった。
そして皆それぞれの業務を終わらせて帰っていった。
僕も仕事を終わらせて家に帰る。
「お帰りなさい、お疲れ様でした」
愛莉が出迎えてくれる。
夕食を食べながら愛莉に今日あったことを話す。
愛莉は最初は頷いていたが徐々に表情が険しくなる。
「どうした愛莉?」
「やけにその神木さんって方を推すんですね」
「うん、凄い人だと思うよ」
「そういう事を言ってるんじゃありません!」
愛莉の機嫌を損ねたようだ。
なんとなく理由は分かった。
だから笑って言う。
「達彦先輩も夏美さんに怒られていたよ『綺麗だね』っていうから」
「そんなに綺麗な方なんですね」
「……でも思うんだ。それでもやっぱり一番なのは愛莉だよ」
「本当ですか?」
「ああ」
「片付けてしまうのでお風呂入ってくださいな」
「わかった」
そして風呂に入って、愛莉を待つ。
愛莉が出て来ると二人でゆっくり夜を過ごす。
「なあ、愛莉」
「どうされました?」
「もしさ、僕以外の誰かに『彼氏いるの?』って聞かれたらどう思う?」
「え?」
「もし僕が他の女性に『彼氏いるの?』って聞いたらどう思う」
「……もう!」
愛莉は僕を抱きしめる。
「冬夜さん最近はずっと優しかったのにまた意地悪が始まりました」
それが答えか。
「ごめんごめん」
そう言って愛莉の頭を撫でてやる。
だが、愛莉はテレビの電源を落とすとベッドに入る。
機嫌損ねたかな?
「そんなことで私の機嫌は直りませんよ。ちゃんと機嫌とってくださいな」
そういう事か。
部屋の照明を落とすと僕もベッドに入る。
「どうしたら直してくれるかな?」
「冬夜さんは心が読めるんだから、しっかり読んでくださいな」
そう言って愛莉は目を閉じる。
心を読むまでもないさ。
「明日の朝も早いのだから早く寝ましょう」
「ああ」
(2)
「お疲れ様です」
仕事が終わるとまっすぐ家に帰る。
同僚も同じだ。
仕事帰りにいっぱいやろうぜと言う事はほぼない。
理由はそういうルールになってるから。
家に帰るまでが仕事。
そして仕事中に飲むなど言語道断。
明確に記載されてるわけではないが、暗黙の了解として周知されている。
公務員は税金泥棒。
自分の税金で仕事サボって飲みに行くなんてとんでもない奴だ。
世間にそう思われたくないから皆そうしてる。
新人歓迎会もなかった。
福利厚生すら文句を言われる公務員。
国が借金を背負ってるんだからそのくらい自分で金を出せ。
どうせ残業もしないで楽して税金で飯食ってんだろう。
そんな目線が突き刺さる毎日。
どこかの地方では家での飲酒以外禁止という理不尽な命令が出たらしい。
それに比べたら、まだましな方か?
家に帰ると作り置きされてある夕飯がある。
家の中ではなるべく静かに行動している。
穂乃果が深夜勤に備えて寝ているから。
電子レンジで温めて食べる。
食べた後自分で片づけてシャワーを浴びると、リビングで一人空しくテレビを見る。
穂乃果と会話は殆どない。
穂乃果は口を開くと大体職場での愚痴から始まる。
そして俺の仕事への不満を言う。
「公務員は楽でいいわね。定時で上がれて休日出勤もない。給料も保証されている」
公務員は公僕だから国民の為に働け!
そう罵られることもある。
公務員は公僕だ。だけど私僕じゃない。文句を言う個人の為に働くわけじゃない。
国の借金があるんだからというなら不良債権の処理で税金を払ってこなかった大手銀行員は365日働くべきじゃないのか?
公務員だって労働者だ。
国のお金で遊んでるように思えるが仕事に就いてみるとそんなことはなかった。
普通の会社の方がまだましだ。
普通の会社は慰安旅行の旅費は半分会社が半分は積み立てでという仕組みになってるらしい。
だが、公務員は国や県の議会で承認された費用しか認めらえない。
公僕は疲れをいやす事すら認められないらしい。
正に奴隷だ。
車で出回ることもしなくなった。
外出は控えるようになった。
事故を起こせば真っ先に公務員という文字が出てしまう。
交通事故をを起こすどころか道交法違反でも懲戒免職。
そんなリスクを冒せない。
1人で遊びに行けば穂乃果に責められる。
「人が働いてるのにいい気なものね!」と
俺は何のために生きているのだろう?
楽しいのは渡辺班で騒いでる時だけ、その時だってひやひやしてる。
誰かが捕まれば俺と渡辺君は真っ先に叩かれるだろう。
渡辺君は自覚してるのだろうか?
気が休まるのは水道局に出勤している間だけ。
仕事の先輩との他愛もない話をしている一時。
しかし仕事となるとまた変わる。
水道料金の支払いが滞ってるところの水道を止めると市民の理不尽な怒りを買う。
督促状を出すとクレームが飛んでくる。
電話が鳴るのを皆恐れている。
俺は「幸いにも」料金関係の部署に配属された。
現場関係の同僚の話だと「公務員の仕事」とは程遠い24時間体制のシフトになるらしい。
常に蛇口をひねれば水が出る。
そんな「当たり前」を維持するのにどれだけの人が頑張っているのだろう?
テレビもいいのが終る頃俺はソファーで寝る。
寝室には穂乃果が寝ているから。
深夜勤の出勤時間になると容赦なくリビングの照明がつく。
その明りで目を覚ますと「あら?帰ってたの?」と一言。
「ああ、今から仕事」
「うん」
「気を付けてね」
「ええ、行ってきます。あなたもそんなところで寝てると風邪ひくわ。ちゃんとベッドで寝てちょうだい」
穂乃果を起こすと悪いと思ってソファで寝てたんだ。でもそんな事は口に出来ず……。
「わかった。そうする」
その時穂乃果が俺の顔を見て心配そうに言う。
「あなたご飯ちゃんと食べてる?眠れてる?疲労感とかない?」
そう言えば最近疲れが取れないな。
でも、穂乃果に心配させられない。
「大丈夫」
「そうよね、公務員だもん。うつ病なんてなるわけないよね」
そういって微笑む穂乃果を見送って俺はやっとベッドで眠れる。
最近寝つきが悪いな。
朝起きるとだるい体を気合を入れて起こしてキッチンに立つ。
俺と穂乃果の朝食を準備して、一人で朝食を食べると出勤する。
今日も公務員という十字架を背負って働きに出る。
公務員に労働基準法は適用されない。
そして公務員は転職が出来ない。
(3)
「それじゃみんなお疲れ様でした」
今日は佐々木君と小林さんの歓迎会。
いつもの焼き鳥屋で飲んで騒ぐ。
僕の席には愛莉と渡辺夫妻。佐々木君と小林さんが座っていた。
佐々木君が一人で場を盛り上げているので僕達はただ聞いてるだけ。
僕達の心配は他にあった。
今日集まった時一目で感じた。
中島君の様子が明らかにおかしい。
元気というか生気がない。
何かあったか?
この前の二次会の時はどうだった?
誰も見てない。
ただの思い過ごしだといいんだけど。
「どうしたんですか?片桐さんさっきから静かだけど」
佐々木君が声をかけてきた。
「あ、ごめん気になることがあって」
「気になること?」
「ああ、大丈夫……」
多分ね
「ひょっとしてこの前の事気にしてるんですか?ちょっと興味があったから試してみただけですよ」
「ああ、別に気にしてないから大丈夫」
「冬夜さん、何を気にされているのですか?」
愛莉が聞いてきた。
「何でもないから話続けててよ」
「じゃあ、そういうなら続けますね……」
そう言って話し続ける佐々木君の声は殆ど聞いてなかった。
全神経は中島君のテーブルに集中していた。
中島君のテーブルは中島夫妻、多田夫妻、桐谷夫妻がいた。
「穂乃果も明日は準夜勤だし2次会行けるよな?」
「ええ、大丈夫だけど?」
「じゃあ、今日は思いっきり盛り上がろうぜ!」
「どうした中島、今日はやけに機嫌が良いじゃないか?」
「え、いつも通りだぜ?誠君」
「なんかいいことあったか?」
「べ、別になにもないぜ?」
「良いじゃん誠!機嫌がいいなら問題ない!騒ごうぜ!」
「そうそう!瑛大の言う通り!」
やっぱり気になる。
僕は席を移動しようとした。
「どうしたの片桐さん。片桐さんの話題をしているんだけど?」
佐々木君が僕を呼び止める。
「僕の話題?」
「片桐さんはサッカーの才能もあるのに棒に振ったんだって話しててさ、どうしてそんなに才能があるのに活かそうとしないのか興味が沸いてね。天才の心理ってやつ?」
「ああ、そういうことね」
「やっぱり持ってるものにしか分からない心理って言う奴ですか?詳しく知りたいんだけど」
「豊、人には言えない事情があるっていつも言ってるでしょう!」
「そういえばそうだったね。すいませんでした。今のは水に流して」
「ああ、気にしてないから」
本当に気にも止めてなかった。今はもっと気になることがある。
「あの、俺たちの歓迎会なんですよね?どうして他の人気にしてるんですか?」
「そうだぞ冬夜、お前今日変だぞ?一体誰を気にしてるんだ?」
渡辺君が聞いてきた。
「……続けててよ」
「続けててッて言われたもお前に質問が集中してるんだが……」
「そうですよ、一時は時の人だったんだから。気にするなって方が無理でしょう」
佐々木君が言う。
「何が聞きたいの?」
「溢れるばかりの才能を持っていながらそれを封印して苦手な職に就く心理って言うんですか?そこを知りたくて」
「才能があるイコール天職じゃないってことだよ」
「それって自分で思い込んでるだけじゃないんですか?意外と楽しいんじゃないですか?」
「バスケをやってる時は楽しかったね」
「楽しいのに辞めちゃうんですか?」
「惰性で続けててもしょうがないだろ?」
「惰性って言いきっちゃう辺りがすごいな。他の人には言えないセリフですよ」
「それだけ?」
「渡辺さんに聞いたんだけど、渡辺班の縁結びも片桐さんの能力なんでしょ?」
「最近はそうでもないよ」
「また謙遜しちゃって。柚希も折角のスターに会えたんだから質問しときなよ」
「やめときなよ豊。片桐さんそれどころじゃないみたい」
小林さんの言う通り、今はそれどころじゃない。
「じゃあ、渡辺さんに質問。僕達はこの後どうすればいいんですか?」
「そうだな、活動に参加してくれるだけでいい、君達は既に結ばれてるんだろ?」
「縁が切れないようにとか取り計らってくれないんですか?」
「君達に限ってそれは無いよ。そうだよな冬夜?」
僕の視線は相変わらず中島君に言っていた。
全力で嫌な予感がする。こういう予感程当たるんだ……。
「中島さんがどうかされたのですか?」
愛莉が気づいたようだ。
「……愛莉は気づかなかった?」
「いつも通りかと思いましたが?」
「ああ、中島さんか!確か公務員でしたよね!羨ましいな!将来安泰だ!クビもないしボーナスもしっかり出るし!」
「ふざけるな!!」
そう叫んだのは悠木さんだった。
「私らだって一労働者なんだ!身勝手な価値観で物事決めつけるな!」
「公務員同士で庇ったって何の説得力もないですよ。一般企業に勤めてる人は残業しないとやってけないくらい年収低いんですよ。それに国は赤字だっていうのに毎年昇給ってずるくないですか?」
「そういう安直な思想を押し付けるな!人がやりたがらない仕事、人から自分勝手な恨みを背負う仕事、何より誰からも褒められない『やって当然』と思われる仕事。学生気分のお子様には理解できないでしょうね」
「理解できないって逃げ口上じゃないですか?理解してもらおうという努力が足りないんじゃないですか?第一そんなにイヤなら辞めたらいい。辞めることが出来ないのは結局待遇がいいからでしょ?」
悠木さんが手を上げようとしたのを止めたのは長谷部さんだった。
「ここで手を出したら沙織が全面的に悪くなってしまう!堪えてください」
「僕もそう思う。ここで手を出したら駄目だ」
「片桐君にはわからないわよ。公務員の実情を知ってる者にしか分からない!」
「今は佐々木君の相手をするより中島君の心配をした方がいい。中島君店を変えよう」
「お、俺はこの辺で失礼します。俺のせいで折角の飲み会が無駄になっちまう」
中島君は帰ると言い出した。穂乃果さんも様子がおかしいのにようやく気が付いたらしい。
「そういうな、中島。職場は違うけど公務員同士腹を割って話そうや」
渡辺君が言う。
中島君はついて行くことにした。
行くのは中島夫妻と桐谷夫妻、西松夫妻、それに僕と愛莉と渡辺夫妻。
「なんだ、大体居なくなっちゃうじゃないですか。それに僕が悪者みたいだし。なんかしらけちゃうな」
「君を悪者にするつもりは無いよ。君の意見が一般論なんだろう?」
僕が言う。
「でしょ、片桐さんなら分かってくれると思いましたよ」
「でも君は知らなさすぎる。正論が人を傷つけるんだ」
「また僕がはわかってないですか?分かってないなら教えてくださいよ」
「その機会はまた作る。今は残った皆で楽しんで」
そう言って僕達はいつものスナックに向かった。
(4)
「じゃあ、話を聞こうか?」
渡辺君が言う。
「本当に何もないですって。大丈夫ですよ。公務員だから悩みなんてない気楽なもですよ。ハハハ」
誰の目から見てもそれが嘘偽りのものだとわかった。
さっきよりはっきりと分かる。
彼が隠していたことが。
カマをかけてみた。
「どうしてそんなに家を怖がるの?穂乃果さんが怖い?」
「そんなんじゃないですよ、ただ家に帰っても居場所がないってだけで、明日になるのが嫌だなって思うくらいで」
「居場所がないってどういう意味?」
穂乃果さんが聞いていた。
そして中島君は自分の失言に気付く。
「悩みがあるなら言えば良いじゃない!?何のための私なの!?私そんなに信用無い!?」
穂乃果さんが中島君を責めるのを僕が宥める。
「多分なんだけど、中島君も働き出して変わったんだと思う。穂乃果さんにも心当たりない?」
僕は穂乃果さんに聞いていた。
「最近主人とろくに話ししてなかった。ただ最近元気が無いから大丈夫?って……目がうつろだったし……あっ!」
「何か心当たりあるんだね?」
穂乃果さんは俯いて言う。
「私なにも考えなくて、仕事でイラついて言っちゃうんです。『公務員は気楽でいいよね』って……。昨日も言ってしまいました。『公務員がうつなんてありえないよね』って」
「穂乃果は悪くないよ。僕が悪いんだ。今の待遇に不満を言っちゃ罰があたるよね。残業も無いし」
「残業がないから追い詰められることが無いと思ったら大間違いよ。どんなことがストレスになるのか自分にしか分からない」
深雪さんが言う。
「なあ、中島君。俺も公務員、しかも生活福祉課だ。市民の負の部分を一番受け止めてる部門だと思う。中島君の気持ちは分かるつもりだ。穂乃果さんは自分の愚痴を言ってるんだろ?お前も悩みくらい言ったところで罰は当たらんと思うが」
渡辺君が言うとしばらく中島君は黙っていたがやがて語りだした。
公務員だからというプレッシャー。それは家に帰ってからも続く。相談相手は同僚だけ。それもお互い頑張ろうと励まし合うだけどの日々。でもそれだけが彼の救いだったという。
「公務員だからって皆は簡単に言ってくれるけど部署によっては本当に激務なの。残業したって議会が決めた予算内でしかでないしね」
悠木さんが言う。
「民間企業だと、半分は自己負担、半分は会社負担だったり全額福利厚生費でレクリエーションだったり何かしら息抜きができるだろ?だけど公務員はないんだ。全額自己負担」
長谷部さんが言う。
「公務員にノルマはない。だけど自己満足で働くしかない。周りからは公僕なんだからそれをやって当たり前。中にはまっとうに職務を果たすと文句を言われる部署もあるわ」
悠木さんたちの話は続く。
「それでもやるしかないのが公務員なの。嫌だからと言っても民間企業への転職率は絶望的だわ」
地方公務員に夢見るものじゃない。悠木さんはそう語る。
安定・クビにならない。その程度しか魅力は無いという。
それだけで、公務員は気楽でいいな、仕事もろくにしないで、この税金泥棒と罵られるんだ。彼が苦しむ理由がだんだんわかってきた。
クレームの電話に怯える毎日か……。
僕には愛莉という居場所がある。だから耐えられる。でも中島君にはそれすらなかったんだ。
黙っていた中島君が話を始める。
「穂乃果の方が激務だ。そう思って我慢してる。愚痴も言わないようにしていた。でも実情は今言った通りだ。自分が働けば働くほど人から非難を浴びる。働かなくても税金泥棒と罵られる。何の為に働いてるんだろうって偶に考える時がある。それでも働かなくちゃならない」
穂乃果さんは静かに聞いていた。
静かに話を聞いていた深雪さんが中島君にいくつか質問する。
それに淡々と答える中島君。
そして深雪さんは言う。
「重症ね……、すぐに病院に放り込みたいくらい」
「そうですよね、私から見てもわかる。顔つきやばいって」
亜依さんが言う。
「ごめんなさい。私が隆司さんを追い詰めてたんだね……」
穂乃果さんは泣いている。
そんな穂乃果さんを慰める愛莉。
最後の心の休まる場所だった渡辺班の飲み会であんなこと言われたら中島君の居場所は何処に作ればいい?
「いいんだ……俺が甘えてるだけなんだから」
中島君が言う。
中島君の言葉に皆言葉を失った。
どう声をかけたらいいか分からなかった。
同じ境遇である渡辺君達ですら分からないのだから。
(5)
話しが終ると僕達は家に帰る。
家に帰ると二人で交互に風呂に入りそしてベッドに入る。
「中島君大丈夫でしょうか?」
愛莉が質問する。
「そうだね、深雪さんも言っていたけど重症みたいだね」
「冬夜さんは大丈夫ですよね。仕事のストレスとかないですよね?」
愛莉が心配している。
「僕は大丈夫だよ。愛莉って言う理解者がいるんだから」
「だと、いいのですが……」
「共働きってのも影響あるのかもね」
「そうですね……」
でもあそこまで追いつめられていたとはね。
公務員も大変なんだな。
「私に出来ることがあるなら何でも仰ってくださいね」
愛莉が言う。
「わかってるよ。こう見えて愛莉には感謝してるんだ」
「そうですか」
「……今日はもう寝ようか?」
「そうですね」
そう言うと愛莉は照明を落とす。
僕達はベッドに入ると眠りにつく。
抱きしめたい、離れたくない、離さないでと囁いて、僕と躓けばいい。
見つけて欲しい、見ないで欲しい、守って欲しいと泣き止まない。
僕が必要なんだね。ツミビト。
僕に崩れればいい、可愛い人。
僕が必要なんだね。ツミビト。
「おはようございます。朝ですよ」
愛莉に起こされる。
「おはよう愛莉」
「本当に早く起きてくださるんですね」
愛莉は喜んでる。
その後着替えて、支度をしてダイニングに向かうといつものように食事が並んでいる。
……え?
何かおかしくないか?
パンを齧りながら愛莉の顔を見て考える?
「あの、どうかされましたか?」
ふとした疑問。
「僕今日早く起きたんだよね?」
「ええ、素直に起きてくれました」
「……愛莉は?」
「え?」
「愛莉は何時に起きたの?」
「その前に置きましたよ」
だよね。……ってダメだろそれじゃ。
「愛莉何時に起きたの!?」
「冬夜さんが起きる30分前です。いつも通りですよ?」
いつも通りじゃないだろ!?
「愛莉と同じ時間に起こしてくれたらいいのに!愛莉寝不足で倒れちゃうよ!」
「でもそれだと朝食の支度が間に合わなくなります」
「僕が愛莉と同じ時間に合わせたら十分間に合うだろ!」
「……すいません」
愛莉は落ち込んでいるようだ。
悪いのは僕なのに。
「愛莉が謝らなくていいんだよ。僕がうかつだった」
「冬夜さんは悪くないです。折角の冬夜さんのご好意を無駄にしてしまいました」
こんな時どうすればいいんだろう?
愛莉が納得いく方法を考えてみた。
……あるじゃないか!
「愛莉、昔僕達が学生だった頃。愛莉が同居してた頃思い出して」
「え?」
愛莉が首をかしげている。
「ベッドの中で隣に寝てる愛莉が僕を起こしてくれた時の事」
「……そんなこともありましたね。冬夜さんなかなか起きてくれなくて」
「あれ、やりたいな」
「え?」
「愛莉と同じ朝を迎えたい。多分そうじゃなきゃだめだ」
「……意地悪しないって約束してもらえますか?」
「ああ。」
「わかりました。では、そのようにいたします」
甘えてばかりで困った旦那様ですね。と愛莉は笑っていた。
朝食を食べるといつもよりゆとりがある。
少し愛莉とリビングでゆっくり過ごして時間になると会社に向かう。
「じゃあ、行ってくる」
「お気をつけて」
愛莉に見送られて家を出ると会社へ急ぐ。
「おはようございます」
席に座ると、準備を始める。
いつもと同じ朝だった。
上原夫妻もいつも通り来る。
夏美さんはぎりぎりまで働くらしい。
そしていつも通り朝礼が始まるはずだった。
皆が立ち上がり社長が前にいる。
違うのは社長の隣にいる二人の男女。
社長が挨拶すると二人を紹介する
「今日から一緒に働くことになった沢尻龍之介君と臨時で雇った派遣社員の神木恵里香さんだ」
「沢尻龍之介です。よろしくお願いします」
「神木恵里香です。わたしを雇って後悔はさせません」
沢尻さんは物腰柔らかそうな好青年といった感じ。と言っても僕より年上だけど。
神木さんはなにかオーラを放ってる、派遣とは思えない威圧感。
その後仕事は始まった。
僕はとりあえず試験も控えているという事で5件の顧客を任されている。それに達彦先輩のデータ入力。
午前中は外回りしてとにかく顧客と相談する。
顧客の方針と要望を聞いて、データを見てアドバイスをする仕事。
一件に付き、月に一回出る程度だ。
沢尻さんは営業にでたり、任せられた顧客に挨拶に行ったりと大変そうだ。
僕も今日は午前中は出先に出ていて午後からは事務所で作業をしていた。
今日は暇だったんだろう。
皆和やかに業務をしてると思ってたが、なんか空気が変だ。
特に女性陣。
それは同じく昼から事務所内で作業をしていた達彦先輩も感じ取ったんだろう?
その理由は女性陣の中で浮いている神木さんにあると思ったのだろう。
神木さんは気にも止めず作業に没頭している。
「神木さんてさあ、どんなところで働いてきたの?」
達彦先輩が神木さんに話しかけた。
「今業務時間です。私語は慎むべきでは?」
なるほどね……。
達彦先輩はそれでもめげなかった。
「君綺麗だよね~彼氏とかいるの?……いてぇ!」
無言で達彦先輩の足を抓る夏美さん。まあ、情緒不安定な時期らしいからしかたないね。
捨て身の達彦先輩の声掛けは功を奏したようだ。
「いますけど、それが何か?」
「いたんだ!何かそういうの感じさせないキャリアウーマンって感じで格好いいよね。神木さんて」
驚いたのは達彦先輩だけじゃない。僕も驚いた。
なんか彼氏とかそういうの匂わせない感じの女性だったから。
「上原さんの発言セクハラだと思うんですけど」
その一言が事務所の温度を下げた。
不満を言ったのは達彦先輩じゃない。他の女性職員2名だった。
「あなたね!ちょっと評価されてるからって高飛車にもほどがあるんじゃない!?」
「そうよ!誰が社内の空気悪くしてると思ってるの!?」
坂本さんと飯塚さんが言う。
「まあまあ、落ち着いて!」
達彦先輩が言うものの落ち着く様子がない。
社長は客先に出向いてる。
郡山先輩と下田先輩が帰ってきた。
何事かと聞いてきたので事情を説明すると「あちゃ~」と頭を抱える。
そういや午前中二人共居たんだっけ?
午前中に何があったのか達彦先輩と聞いていた。
夏美さんが作業の手順を紙に書いて説明しようとした時だった。
「結構です。作業内容だけメモしておいてください」
それを聞いた坂本さんが抗議する。
「初日だから手順を親切に教えようとしただけじゃない。そういう言い方ってないんじゃない?
「事務の経験はあります。内容だけ書いておいて頂いたら問題ありません。自分でやれます。それに彼女喋れないのでしょう?そんな事細かに書いていたら時間の無駄です。こうしてあなたと喋ってる時間も給料は発生しているのですよ」
坂本さんはキレた。
「どんな仕事してきたんだかしらないけど。ちょっとキャリアあるからって生意気すぎじゃない!?たかが派遣の癖に」
「たかが派遣に給料の仕組みを教わる社員さんの質も大したもんじゃないですね」
そこで郡山先輩が仲裁に入る。
「まあまあ、彼女も初日なんだ。お手柔らかに頼むよ。それに彼女は派遣でも経験年数が違うんだ。そういう言い方はないだろう」
「私皆さんと仲良くするためにここに来たのではありません!お給料をもらうために来たんです。余計な手間とらせないでください」
郡山先輩も笑うしかなかったらしい。
社長が出て来て「騒がしいぞ!何事だ!」といい事態は収まったという。
そして今再び燃料が投下された。
鎮火するべき社長は出てる。
どうしたものか……。
「えーと、神木さんだっけ?」
僕は神木さんに話しかけていた。
「神木さんの主張を尊重しよう。確かに一秒でも給料の発生してる時間に無駄話はいけないよね」
女性二人が睨みつける。だが僕は続ける。
「でも、神木さんの配慮の足りない対応が彼女たち二人の業務に支障をきたしている。それは君がお詫びするべきじゃないのかな?」
僕の言葉で神木さんの手が止まった。
神木さんは立ち上がる。
「それもそうですね。配慮が足りませんでした。申し訳ありません」
神木さんはそう言うと席に戻り、作業に戻る。
とりあえずこの場は凌いだ。
この一件でだいぶ時間を食った。
仕事はその分ずれ込む。
だけど、神木さんはきっちり定時になると席を立ち更衣室へ向かう。
そして着替えて「お疲れ様でした」と一言言って帰っていった。
飯塚さんと坂本さんが文句を言ってる。
夏美さんは神木さんが終わらせた書類に目を通す……。
そしてメッセージを送る。
「今日の分全部完璧に出来てる……」
二人は何も言わなかった。
そして皆それぞれの業務を終わらせて帰っていった。
僕も仕事を終わらせて家に帰る。
「お帰りなさい、お疲れ様でした」
愛莉が出迎えてくれる。
夕食を食べながら愛莉に今日あったことを話す。
愛莉は最初は頷いていたが徐々に表情が険しくなる。
「どうした愛莉?」
「やけにその神木さんって方を推すんですね」
「うん、凄い人だと思うよ」
「そういう事を言ってるんじゃありません!」
愛莉の機嫌を損ねたようだ。
なんとなく理由は分かった。
だから笑って言う。
「達彦先輩も夏美さんに怒られていたよ『綺麗だね』っていうから」
「そんなに綺麗な方なんですね」
「……でも思うんだ。それでもやっぱり一番なのは愛莉だよ」
「本当ですか?」
「ああ」
「片付けてしまうのでお風呂入ってくださいな」
「わかった」
そして風呂に入って、愛莉を待つ。
愛莉が出て来ると二人でゆっくり夜を過ごす。
「なあ、愛莉」
「どうされました?」
「もしさ、僕以外の誰かに『彼氏いるの?』って聞かれたらどう思う?」
「え?」
「もし僕が他の女性に『彼氏いるの?』って聞いたらどう思う」
「……もう!」
愛莉は僕を抱きしめる。
「冬夜さん最近はずっと優しかったのにまた意地悪が始まりました」
それが答えか。
「ごめんごめん」
そう言って愛莉の頭を撫でてやる。
だが、愛莉はテレビの電源を落とすとベッドに入る。
機嫌損ねたかな?
「そんなことで私の機嫌は直りませんよ。ちゃんと機嫌とってくださいな」
そういう事か。
部屋の照明を落とすと僕もベッドに入る。
「どうしたら直してくれるかな?」
「冬夜さんは心が読めるんだから、しっかり読んでくださいな」
そう言って愛莉は目を閉じる。
心を読むまでもないさ。
「明日の朝も早いのだから早く寝ましょう」
「ああ」
(2)
「お疲れ様です」
仕事が終わるとまっすぐ家に帰る。
同僚も同じだ。
仕事帰りにいっぱいやろうぜと言う事はほぼない。
理由はそういうルールになってるから。
家に帰るまでが仕事。
そして仕事中に飲むなど言語道断。
明確に記載されてるわけではないが、暗黙の了解として周知されている。
公務員は税金泥棒。
自分の税金で仕事サボって飲みに行くなんてとんでもない奴だ。
世間にそう思われたくないから皆そうしてる。
新人歓迎会もなかった。
福利厚生すら文句を言われる公務員。
国が借金を背負ってるんだからそのくらい自分で金を出せ。
どうせ残業もしないで楽して税金で飯食ってんだろう。
そんな目線が突き刺さる毎日。
どこかの地方では家での飲酒以外禁止という理不尽な命令が出たらしい。
それに比べたら、まだましな方か?
家に帰ると作り置きされてある夕飯がある。
家の中ではなるべく静かに行動している。
穂乃果が深夜勤に備えて寝ているから。
電子レンジで温めて食べる。
食べた後自分で片づけてシャワーを浴びると、リビングで一人空しくテレビを見る。
穂乃果と会話は殆どない。
穂乃果は口を開くと大体職場での愚痴から始まる。
そして俺の仕事への不満を言う。
「公務員は楽でいいわね。定時で上がれて休日出勤もない。給料も保証されている」
公務員は公僕だから国民の為に働け!
そう罵られることもある。
公務員は公僕だ。だけど私僕じゃない。文句を言う個人の為に働くわけじゃない。
国の借金があるんだからというなら不良債権の処理で税金を払ってこなかった大手銀行員は365日働くべきじゃないのか?
公務員だって労働者だ。
国のお金で遊んでるように思えるが仕事に就いてみるとそんなことはなかった。
普通の会社の方がまだましだ。
普通の会社は慰安旅行の旅費は半分会社が半分は積み立てでという仕組みになってるらしい。
だが、公務員は国や県の議会で承認された費用しか認めらえない。
公僕は疲れをいやす事すら認められないらしい。
正に奴隷だ。
車で出回ることもしなくなった。
外出は控えるようになった。
事故を起こせば真っ先に公務員という文字が出てしまう。
交通事故をを起こすどころか道交法違反でも懲戒免職。
そんなリスクを冒せない。
1人で遊びに行けば穂乃果に責められる。
「人が働いてるのにいい気なものね!」と
俺は何のために生きているのだろう?
楽しいのは渡辺班で騒いでる時だけ、その時だってひやひやしてる。
誰かが捕まれば俺と渡辺君は真っ先に叩かれるだろう。
渡辺君は自覚してるのだろうか?
気が休まるのは水道局に出勤している間だけ。
仕事の先輩との他愛もない話をしている一時。
しかし仕事となるとまた変わる。
水道料金の支払いが滞ってるところの水道を止めると市民の理不尽な怒りを買う。
督促状を出すとクレームが飛んでくる。
電話が鳴るのを皆恐れている。
俺は「幸いにも」料金関係の部署に配属された。
現場関係の同僚の話だと「公務員の仕事」とは程遠い24時間体制のシフトになるらしい。
常に蛇口をひねれば水が出る。
そんな「当たり前」を維持するのにどれだけの人が頑張っているのだろう?
テレビもいいのが終る頃俺はソファーで寝る。
寝室には穂乃果が寝ているから。
深夜勤の出勤時間になると容赦なくリビングの照明がつく。
その明りで目を覚ますと「あら?帰ってたの?」と一言。
「ああ、今から仕事」
「うん」
「気を付けてね」
「ええ、行ってきます。あなたもそんなところで寝てると風邪ひくわ。ちゃんとベッドで寝てちょうだい」
穂乃果を起こすと悪いと思ってソファで寝てたんだ。でもそんな事は口に出来ず……。
「わかった。そうする」
その時穂乃果が俺の顔を見て心配そうに言う。
「あなたご飯ちゃんと食べてる?眠れてる?疲労感とかない?」
そう言えば最近疲れが取れないな。
でも、穂乃果に心配させられない。
「大丈夫」
「そうよね、公務員だもん。うつ病なんてなるわけないよね」
そういって微笑む穂乃果を見送って俺はやっとベッドで眠れる。
最近寝つきが悪いな。
朝起きるとだるい体を気合を入れて起こしてキッチンに立つ。
俺と穂乃果の朝食を準備して、一人で朝食を食べると出勤する。
今日も公務員という十字架を背負って働きに出る。
公務員に労働基準法は適用されない。
そして公務員は転職が出来ない。
(3)
「それじゃみんなお疲れ様でした」
今日は佐々木君と小林さんの歓迎会。
いつもの焼き鳥屋で飲んで騒ぐ。
僕の席には愛莉と渡辺夫妻。佐々木君と小林さんが座っていた。
佐々木君が一人で場を盛り上げているので僕達はただ聞いてるだけ。
僕達の心配は他にあった。
今日集まった時一目で感じた。
中島君の様子が明らかにおかしい。
元気というか生気がない。
何かあったか?
この前の二次会の時はどうだった?
誰も見てない。
ただの思い過ごしだといいんだけど。
「どうしたんですか?片桐さんさっきから静かだけど」
佐々木君が声をかけてきた。
「あ、ごめん気になることがあって」
「気になること?」
「ああ、大丈夫……」
多分ね
「ひょっとしてこの前の事気にしてるんですか?ちょっと興味があったから試してみただけですよ」
「ああ、別に気にしてないから大丈夫」
「冬夜さん、何を気にされているのですか?」
愛莉が聞いてきた。
「何でもないから話続けててよ」
「じゃあ、そういうなら続けますね……」
そう言って話し続ける佐々木君の声は殆ど聞いてなかった。
全神経は中島君のテーブルに集中していた。
中島君のテーブルは中島夫妻、多田夫妻、桐谷夫妻がいた。
「穂乃果も明日は準夜勤だし2次会行けるよな?」
「ええ、大丈夫だけど?」
「じゃあ、今日は思いっきり盛り上がろうぜ!」
「どうした中島、今日はやけに機嫌が良いじゃないか?」
「え、いつも通りだぜ?誠君」
「なんかいいことあったか?」
「べ、別になにもないぜ?」
「良いじゃん誠!機嫌がいいなら問題ない!騒ごうぜ!」
「そうそう!瑛大の言う通り!」
やっぱり気になる。
僕は席を移動しようとした。
「どうしたの片桐さん。片桐さんの話題をしているんだけど?」
佐々木君が僕を呼び止める。
「僕の話題?」
「片桐さんはサッカーの才能もあるのに棒に振ったんだって話しててさ、どうしてそんなに才能があるのに活かそうとしないのか興味が沸いてね。天才の心理ってやつ?」
「ああ、そういうことね」
「やっぱり持ってるものにしか分からない心理って言う奴ですか?詳しく知りたいんだけど」
「豊、人には言えない事情があるっていつも言ってるでしょう!」
「そういえばそうだったね。すいませんでした。今のは水に流して」
「ああ、気にしてないから」
本当に気にも止めてなかった。今はもっと気になることがある。
「あの、俺たちの歓迎会なんですよね?どうして他の人気にしてるんですか?」
「そうだぞ冬夜、お前今日変だぞ?一体誰を気にしてるんだ?」
渡辺君が聞いてきた。
「……続けててよ」
「続けててッて言われたもお前に質問が集中してるんだが……」
「そうですよ、一時は時の人だったんだから。気にするなって方が無理でしょう」
佐々木君が言う。
「何が聞きたいの?」
「溢れるばかりの才能を持っていながらそれを封印して苦手な職に就く心理って言うんですか?そこを知りたくて」
「才能があるイコール天職じゃないってことだよ」
「それって自分で思い込んでるだけじゃないんですか?意外と楽しいんじゃないですか?」
「バスケをやってる時は楽しかったね」
「楽しいのに辞めちゃうんですか?」
「惰性で続けててもしょうがないだろ?」
「惰性って言いきっちゃう辺りがすごいな。他の人には言えないセリフですよ」
「それだけ?」
「渡辺さんに聞いたんだけど、渡辺班の縁結びも片桐さんの能力なんでしょ?」
「最近はそうでもないよ」
「また謙遜しちゃって。柚希も折角のスターに会えたんだから質問しときなよ」
「やめときなよ豊。片桐さんそれどころじゃないみたい」
小林さんの言う通り、今はそれどころじゃない。
「じゃあ、渡辺さんに質問。僕達はこの後どうすればいいんですか?」
「そうだな、活動に参加してくれるだけでいい、君達は既に結ばれてるんだろ?」
「縁が切れないようにとか取り計らってくれないんですか?」
「君達に限ってそれは無いよ。そうだよな冬夜?」
僕の視線は相変わらず中島君に言っていた。
全力で嫌な予感がする。こういう予感程当たるんだ……。
「中島さんがどうかされたのですか?」
愛莉が気づいたようだ。
「……愛莉は気づかなかった?」
「いつも通りかと思いましたが?」
「ああ、中島さんか!確か公務員でしたよね!羨ましいな!将来安泰だ!クビもないしボーナスもしっかり出るし!」
「ふざけるな!!」
そう叫んだのは悠木さんだった。
「私らだって一労働者なんだ!身勝手な価値観で物事決めつけるな!」
「公務員同士で庇ったって何の説得力もないですよ。一般企業に勤めてる人は残業しないとやってけないくらい年収低いんですよ。それに国は赤字だっていうのに毎年昇給ってずるくないですか?」
「そういう安直な思想を押し付けるな!人がやりたがらない仕事、人から自分勝手な恨みを背負う仕事、何より誰からも褒められない『やって当然』と思われる仕事。学生気分のお子様には理解できないでしょうね」
「理解できないって逃げ口上じゃないですか?理解してもらおうという努力が足りないんじゃないですか?第一そんなにイヤなら辞めたらいい。辞めることが出来ないのは結局待遇がいいからでしょ?」
悠木さんが手を上げようとしたのを止めたのは長谷部さんだった。
「ここで手を出したら沙織が全面的に悪くなってしまう!堪えてください」
「僕もそう思う。ここで手を出したら駄目だ」
「片桐君にはわからないわよ。公務員の実情を知ってる者にしか分からない!」
「今は佐々木君の相手をするより中島君の心配をした方がいい。中島君店を変えよう」
「お、俺はこの辺で失礼します。俺のせいで折角の飲み会が無駄になっちまう」
中島君は帰ると言い出した。穂乃果さんも様子がおかしいのにようやく気が付いたらしい。
「そういうな、中島。職場は違うけど公務員同士腹を割って話そうや」
渡辺君が言う。
中島君はついて行くことにした。
行くのは中島夫妻と桐谷夫妻、西松夫妻、それに僕と愛莉と渡辺夫妻。
「なんだ、大体居なくなっちゃうじゃないですか。それに僕が悪者みたいだし。なんかしらけちゃうな」
「君を悪者にするつもりは無いよ。君の意見が一般論なんだろう?」
僕が言う。
「でしょ、片桐さんなら分かってくれると思いましたよ」
「でも君は知らなさすぎる。正論が人を傷つけるんだ」
「また僕がはわかってないですか?分かってないなら教えてくださいよ」
「その機会はまた作る。今は残った皆で楽しんで」
そう言って僕達はいつものスナックに向かった。
(4)
「じゃあ、話を聞こうか?」
渡辺君が言う。
「本当に何もないですって。大丈夫ですよ。公務員だから悩みなんてない気楽なもですよ。ハハハ」
誰の目から見てもそれが嘘偽りのものだとわかった。
さっきよりはっきりと分かる。
彼が隠していたことが。
カマをかけてみた。
「どうしてそんなに家を怖がるの?穂乃果さんが怖い?」
「そんなんじゃないですよ、ただ家に帰っても居場所がないってだけで、明日になるのが嫌だなって思うくらいで」
「居場所がないってどういう意味?」
穂乃果さんが聞いていた。
そして中島君は自分の失言に気付く。
「悩みがあるなら言えば良いじゃない!?何のための私なの!?私そんなに信用無い!?」
穂乃果さんが中島君を責めるのを僕が宥める。
「多分なんだけど、中島君も働き出して変わったんだと思う。穂乃果さんにも心当たりない?」
僕は穂乃果さんに聞いていた。
「最近主人とろくに話ししてなかった。ただ最近元気が無いから大丈夫?って……目がうつろだったし……あっ!」
「何か心当たりあるんだね?」
穂乃果さんは俯いて言う。
「私なにも考えなくて、仕事でイラついて言っちゃうんです。『公務員は気楽でいいよね』って……。昨日も言ってしまいました。『公務員がうつなんてありえないよね』って」
「穂乃果は悪くないよ。僕が悪いんだ。今の待遇に不満を言っちゃ罰があたるよね。残業も無いし」
「残業がないから追い詰められることが無いと思ったら大間違いよ。どんなことがストレスになるのか自分にしか分からない」
深雪さんが言う。
「なあ、中島君。俺も公務員、しかも生活福祉課だ。市民の負の部分を一番受け止めてる部門だと思う。中島君の気持ちは分かるつもりだ。穂乃果さんは自分の愚痴を言ってるんだろ?お前も悩みくらい言ったところで罰は当たらんと思うが」
渡辺君が言うとしばらく中島君は黙っていたがやがて語りだした。
公務員だからというプレッシャー。それは家に帰ってからも続く。相談相手は同僚だけ。それもお互い頑張ろうと励まし合うだけどの日々。でもそれだけが彼の救いだったという。
「公務員だからって皆は簡単に言ってくれるけど部署によっては本当に激務なの。残業したって議会が決めた予算内でしかでないしね」
悠木さんが言う。
「民間企業だと、半分は自己負担、半分は会社負担だったり全額福利厚生費でレクリエーションだったり何かしら息抜きができるだろ?だけど公務員はないんだ。全額自己負担」
長谷部さんが言う。
「公務員にノルマはない。だけど自己満足で働くしかない。周りからは公僕なんだからそれをやって当たり前。中にはまっとうに職務を果たすと文句を言われる部署もあるわ」
悠木さんたちの話は続く。
「それでもやるしかないのが公務員なの。嫌だからと言っても民間企業への転職率は絶望的だわ」
地方公務員に夢見るものじゃない。悠木さんはそう語る。
安定・クビにならない。その程度しか魅力は無いという。
それだけで、公務員は気楽でいいな、仕事もろくにしないで、この税金泥棒と罵られるんだ。彼が苦しむ理由がだんだんわかってきた。
クレームの電話に怯える毎日か……。
僕には愛莉という居場所がある。だから耐えられる。でも中島君にはそれすらなかったんだ。
黙っていた中島君が話を始める。
「穂乃果の方が激務だ。そう思って我慢してる。愚痴も言わないようにしていた。でも実情は今言った通りだ。自分が働けば働くほど人から非難を浴びる。働かなくても税金泥棒と罵られる。何の為に働いてるんだろうって偶に考える時がある。それでも働かなくちゃならない」
穂乃果さんは静かに聞いていた。
静かに話を聞いていた深雪さんが中島君にいくつか質問する。
それに淡々と答える中島君。
そして深雪さんは言う。
「重症ね……、すぐに病院に放り込みたいくらい」
「そうですよね、私から見てもわかる。顔つきやばいって」
亜依さんが言う。
「ごめんなさい。私が隆司さんを追い詰めてたんだね……」
穂乃果さんは泣いている。
そんな穂乃果さんを慰める愛莉。
最後の心の休まる場所だった渡辺班の飲み会であんなこと言われたら中島君の居場所は何処に作ればいい?
「いいんだ……俺が甘えてるだけなんだから」
中島君が言う。
中島君の言葉に皆言葉を失った。
どう声をかけたらいいか分からなかった。
同じ境遇である渡辺君達ですら分からないのだから。
(5)
話しが終ると僕達は家に帰る。
家に帰ると二人で交互に風呂に入りそしてベッドに入る。
「中島君大丈夫でしょうか?」
愛莉が質問する。
「そうだね、深雪さんも言っていたけど重症みたいだね」
「冬夜さんは大丈夫ですよね。仕事のストレスとかないですよね?」
愛莉が心配している。
「僕は大丈夫だよ。愛莉って言う理解者がいるんだから」
「だと、いいのですが……」
「共働きってのも影響あるのかもね」
「そうですね……」
でもあそこまで追いつめられていたとはね。
公務員も大変なんだな。
「私に出来ることがあるなら何でも仰ってくださいね」
愛莉が言う。
「わかってるよ。こう見えて愛莉には感謝してるんだ」
「そうですか」
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