優等生と劣等生

和希

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LASTSEASON

未熟な革命

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(1)

「冬夜さん、朝ですよ」
「おはよう愛莉」
「おはようございます」

愛莉と挨拶を交わすと着替える。
その間に愛莉は朝食の支度をする。
そして愛莉と話しながら朝食を食べる。
話題は一泊二日のキャンプ。
毎年の恒例行事となっていた。
朝食を食べ終わると、愛莉が片付けて準備してる間に荷物を車に積み込む。
忘れ物が無いかチェックする。
チェックが終わった頃愛莉の準備も終わる。
今年は現地集合にした。
入園ゲート前に着くと晴斗達が早かった。

「冬夜先輩お久しぶりっす!」
「久しぶり、元気にやってる!」
「完璧っす!」

次々と来る渡辺班の面々。
開園時間までまだ時間がある。
その間に、西松君と咲さんから説明がある。

「中では自由行動です。15時にはこの場所に戻っていてください。皆集まったら湖に移動します」
「何かあったら渡辺班のグループチャットか私か西松君に連絡ください」

渡辺君は黙って二人を見守っている。
開園時間になると皆ゲートをくぐっていく。
僕達は渡辺夫妻と多田夫妻と行動することにした。
ゲートをくぐるとフリーパスのバンドをつける。
と言っても特に乗りたいものが無い。
年に一度来てれば飽きもするだろう。
でも女性陣はそうでは無い様だ。
美嘉さんとカンナと愛莉がマップを見ながら話しあってる。

「ここに来たらこれは外せねーだろ!」
「ここにも行ってみたいんだよな」
「私それ無理……」

美嘉さんとカンナと愛莉が話し合っている中、誠が渡辺君に聞いていた。

「さっきなんで渡辺君が説明をしなかったんだ?リーダーは渡辺君だろ?」

渡辺君は笑って答えた。

「もう俺達は隠居組だよ。現役に任せて困っていたら助言してやる程度で良い」

俺達は俺達の社会ができつつある。いつもイベントに参加できるわけじゃない。だから自覚させるためにやらせるのさ。と渡辺君は言う。
誠は納得したようだ。

「おーいお前ら!ぼーっとしてねーで早く行くぞ!」

女性陣に呼ばれると僕達は後を追いかけた。

(2)

「もう一回乗りたい!」
「私も乗りたい!」

奈留と瞳美の要求にこたえる公生と中山君。
まだ遊びたい盛りなんだろう。
僕と酒井君と恵美と晶さんは4人が飽きるまで自由にさせていた。
若いというのは凄い事だ。
バイタリティ溢れる彼らは何度も同じアトラクションに挑んでいる。
僕達が高校生の頃どうだっただろう?
精々カラオケとボーリングくらいか。
今のうちに留めておきたい思い出があるなら納得いくまで刻んでおくと良い。
暫くすると二人は満足したようだ。

「次行こう!」
「わかったよ」

そうして、同じことを繰り返していると昼食の時間になる。
レストランで昼食を食べる。
その間も4人は次どれにする?とはしゃいでいる。

「ねえ、恵美さん?」

奈留が恵美に何か聞いていた。

「どうしたの?奈留」
「午後は私達別行動でもいい?スマホあるし」
「どうして?」
「恵美さん達退屈そうだから」
「どうする?望」
「……いいんじゃない?」

僕が答えると「じゃあ、15時にゲートだね!」

公生がそう言うと料理をかきこんで4人は飛び出していった。

「元気あるわね」

晶さんが言う。

「で、私達はどうする?」

恵美が聞いてきた。

「恵美は乗りたいアトラクションとかない?」
「うーん……大体乗ったから」
「そうね、毎年ってのに問題あるのかもしれないわね」
「と言っても地元にそんな遊び行くところないしね」

恵美と晶さんが相談している。

「他の皆も上手くやってるのかしら?」

恵美が言う。

「多分大丈夫だよ。上手くやれてる」

僕が言う。

「ま、観覧車くらいは乗っておいていいかもしれないわね」

恵美が言う。

「とりあえず店を出ないかい?人も増えて来たし」

酒井君が言う。
僕達は店を出ると観覧車に向かった。
恵美と二人で観覧車に乗る。
2人で静かに観覧車から見える景色を眺める。

「お疲れ様、望」
「え?」
「盆休みも満足に休めなかったでしょ。両親に会ったりで」
「まあ、そうだね」
「私もまだまだね、あなたのスケジュール管理が出来てない」
「そんなことないよUSEの事は恵美に任せっきりだし」
「あなたはUSEの社長。ただいてくれるだけでいい」

まあ、実際そうだけどね。

「この後どうするの?」
「お土産屋さんでも回ろうかと思ったけど?」
「一つ乗ってみたいものがあるんだけど」
「酒井夫妻と相談かな」
「そうね」

観覧車を降りると酒井夫妻を待つ。
酒井夫妻が来ると恵美が晶に相談している。
了承は得たようだ。
僕達はそれ人る。
ただ上に上がるだけ。
上空から景色を見渡すだけ。
学生時代はつまらないものと思っていたけど、今だから分かる。
この何も無い時間を買ってるんだ。
平穏な日常に金を払っているんだ。
大人になって失うものばかりではない。
大人になって気づくこともたくさんある。
僕の心の中に未熟な革命が生まれていた。

「この後どうするの?」
「お土産屋で時間潰して時間余ったらお茶でもしない?」
「いいわね」

そうしてお土産を選んで、クレープを食べると良い時間になったので、ゲートに戻る。
いるのは公生達だけだった。

「楽しめたかい?」

公生達の顔を見ると聞くまでも無かった。
他の皆を待ちながら興奮冷めやらぬ奈留達の話を聞いていた。

(3)

「あら?亀梨君達じゃない」
「あ、丹下さん」

俺達は丹下夫妻新名夫妻真鍋夫妻と遭遇した。

「未来、海未ちゃんと乗っておいで」
「倭さん達は?」
「俺達は少し休憩するよ」

椎名さんと丹下夫妻が言う。

「2人とも私達と一緒に乗ろうか?」
「私達も退屈してたからさ」

香織と夏凛が言う。
聡美さんも同伴するという。
5人は列に並び始めた。
丹下さんと椎名さん、真鍋さんは一緒に煙草を吸い始めた。

「あいつらと一緒だとどうも吸いづらくてな」
「たしかにそうですね」

渡辺班に喫煙者はそういない。
こんな時じゃないと吸いにくい。
それから男達5人で話をしていた。
別に彼女の不満をもらしてたわけじゃない。
ただの世間話だ。
5人の女性が戻って来た。
そして言う

「もう一回だけ乗ってきていいかな?」
「ああ、いっといで」

椎名さんが言うと5人は再び並びだす。

「君達は遊ばなくていいのかい?」
「俺達は歳だけ取ってしまったみたいで」

椎名さんが言うと俺と守は言う。

「真鍋にも言えるが、今のうちに遊んでおけ?今のうちだぞ。遊べるのは」
「……そうかもしれませんね」

丹下さんが言うと真鍋君が答える。

「椎名さん達は遊ばないんですか?」
「違うよ、遊べないんだ。はしゃいでる姿がみっともないという体裁もあるけど、何より体がついて行かない」

丹下さんがそう言うと椎名さんが「そうですね」と笑う。

「22を過ぎるとあっという間に30台が待ってる。そうなってからでは遅いよ」

丹下さんが言う。
嫁さんに構ってやりたいが体がついて行かないという。
歳なんてとる物じゃないという。
5人が戻って来た。

「ちょっとあんた達タバコばっかり吸ってないで少しは一緒に遊びなよ」

香織が言うと女性陣がそうだと言う。

「わかったよ。どれに乗る?」
「これに乗ってみなよ。面白いよ」

まだ乗るのか!?
列に並ぶ。
椎名さんと丹下さんも一緒に並ぶ。
そしてアトラクションに乗る。
楽しそうにしている香織たちを見て思う。
これでいいんだよな?と。
終わると5人は満足したらしい。
だが……。

「ほら、ぼーっとしてないで次に行くよ!」

香織たちが言う。

「これ楽しそうじゃない!」

未来さんが言う。

3人は賛成する。

「待ってくれ、その前に飯にしないか?腹減ったよ」

守が言うと、5人の女性は承諾してくれたようだ。
それから飯を食う。
すると吸いたくなる。
再び喫煙所を探して一服する。
それが終ると再びアトラクションを回る。
集合時間ぎりぎりまで楽しんでいた。
そうして遊ぶと出場ゲートに向かう。

「楽しかったね」

香織が言う。

「ああ、そうだな」

俺はとりあえず合わせる。

「ありがとうね」

香織は言う。

「俺も楽しんだからいいさ」

俺は笑う。

俺の声は届いているだろうか?
答えのなき虚構の空を目指して飛ぶ。
言葉じゃ足りないから俺の全てをお前にぶつけるよ。
制御できない、しようとも思わない。
初めて知る感覚。
お前に歌うよ、永遠の始まり。

だから笑って欲しい……。

誰よりも熱く、誰よりも強く抱きしめるよ。
震える心、揺さぶればいい何かが動き出す。
生まれた日からずっと出会える日を探していた。
風のなく夜は思い出して欲しい。
共に奏でた軌跡は天に舞うだろう。
俺の想いは届いているだろうか?
触れ合うたび、もどかしさが募る。
いつも避けてばかりいた、明日を見失いそうで。
傷つけないように傷つかないように。
嘘だけが増えていく。
だけど笑って欲しい……。
痛いくらいに、苦しいほどに愛しいから。
求める気持ち抑えきれない自分が怖かった。
もう二度とお前を離さない。
幾つもの昨日が明日を照らす。
この身朽ち果てても伝えたいものがある。
響け生命の歌。彼方羽ばたいて。
共に紡いだ軌跡は空に描くだろう。
だから笑って欲しいと俺は願った。

(4)

「ちょっとここは僕は遠慮しとくかな?」
「なんだよ咢!びびってんじゃねーよ!」

半ば強制的に連れられたお化け屋敷。
この手の仕掛けはそろそろ来そうだなと思った時に必ず来る。
そして驚いてい逃げ出そうとする僕を美琴は掴む。

「この程度で逃げ出してじゃねーよ!」

そんなやりとりを何度も繰り返して僕達はお化け屋敷を出た。

「本当に怖がりだな」

顔面蒼白の僕を見て笑う美琴。
そして満足したのか。

「次行こう」

僕達は次のアトラクションに向かう
僕達は美琴、桜木さん、梅本君と行動していた。
3人のテンションは高い、高すぎると思うくらいに高い。
そして昼食を食べる。
盛り上がる3人とは対照的に沈んでいる僕。
昼食を食べながら次行くアトラクションを決めている。

「咢は楽しくないのか?」

美琴が聞いてくる。
ここで楽しくないと言える猛者がどれだけいようか。

「大丈夫だよ」
「それはよかった」

美琴が微笑む。
これでよかったんだな。
さすがにメリーゴーランドは遠慮した。
梅本君は乗ってるけど。

「咢、ちょっとジュース買いに行こうぜ」

そう言って二人を残してジュースを買いに行く。
その時に梅本君は言う。

「今日のお前、ノリ悪いぜ。彼女不安になってる。自分とのデートは楽しくないのか?って」

やっぱりそうなるよね。

「次で最後だ。最後くらいばっちり決めて来いよ」
「どういう意味?」

梅本君に聞いてみた。

「美琴ちゃんにいい想い出残してやれよ」

梅本君はそう言って二人の元に戻った。

「2人ともおまたせ~……?」

梅本君の動きが止まったのは二人が知らない男に絡まれていたから。

「もう一度いってみろ、このアマ!」
「人が下手に出てたら調子に乗りやがってこのブス!」

男の機嫌は悪いらしい。

「断られたらブス扱いか?みっともないにも程があるな!」
「こっちも機嫌が悪いんだ!怪我しないうちに失せろ!」

状況を察するに二人をナンパしようとして振られて男が逆切れしてるらしい。
梅本君は黙って4人の元に行った。

「祥子お待たせ。どうしたの?」
「こいつらが声をかけてきたんだよ」

桜木さんがいきさつを話す。
予想通りの状況だった。
梅本君は二人の男を見てにこりと笑う。

「ごめんね2人とも。実は俺たち彼女達の機嫌損ねちゃってさ。俺達も困ってたんだ。ここは大人しく引き下がってくんないかな?」
「お前も痛い目みたいのか?」
「ここで喧嘩して怪我でもしたらお互い、あんまり気分よくないと思うんだよね?お兄さんたちなら分かってくれると思うけど」
「怪我するのがどっちかわからせてやろうか?」
「俺達が怪我することもあるね。でもそれでもお兄さんたちもナンパ失敗しちゃって気分よくならないよ?」
「憂さ晴らしにはなるだろ?」
「……ここだと目立つ。いや、すでに人目を引いてる。このままだとはっきり言ってお兄さんたちカッコ悪いだけだよ」

梅本君は二人を宥める。
ここは穏便に収めてくれないかな?と頭を下げる。

「……ちっ、お前も彼氏なら彼女の面倒くらいちゃんと見とけ!」

男二人もこのままだと状況が悪いと思ったのか立ち去っていった。

「永遠!あんな男にどうして頭を下げるのか?」
「お前にはプライドがないのか!」

桜木さん達は梅本君を責める。

「ここであいつらを叩きのめして祥子たちの気が済むならそうするけどそうはならないっしょ?それよりもっと他の事に時間を割いた方がいい」

そんなに時間も残ってないしね。と梅本君は言う。

「まあ、お前の言う事も一理あるな」

桜木さん達は納得したようだ。

「じゃ、お土産買う時間も考えたら次が最後だ。最後やっぱりあれでしょう」

そう言って梅本君は観覧車を選んだ。
2人ずつ観覧車に乗る。
美琴の機嫌はまだ悪い様だ。
そんな状況で二人っきりははっきり言って気まずい。
気まずい空気のまま観覧車は回る。

「ごめんな、こんな空気にさせて」

美琴が話し出した。

「いや、僕も初めての事で梅本君みたいにうまく立ち回れなくて……ごめん」
「私もお前の事何も考えてなかった。同じだよ。何やらせても駄目だ」
「だめだったらやり直せばいいんじゃないかな?」
「やり直す?」
「うん、またいつか二人で来よう。楽しい思い出に塗り替えよう。そうやってやり直しがきくのが恋人って関係じゃないのかな?」
「……そうだな」

観覧車が頂上に着く頃彼女が動いた。
僕の前にくるとそっと口づけを交わす。

「一度やってみたかったんだよな」

美琴はそう言って笑う。
観覧車を降りると記念撮影をした。
写真を買い取るとお土産を買って出場した。

「今度来る前にお前の怖がりどうにかしないとな」

美琴はそう言って笑う。
それが僕達の初めてのデートだった。

(5)

「圭太次これにのろう?」
「紀維も行こうよ」

有栖さんと香澄さんはそう言って列に並ぶ。
美月は乗り物系がだめらしい。
4人が乗るのを待ってるだけの退屈なデート。

「小泉君ごめんね」

美月が言う。

「苦手なものはしょうがないよ」

僕は笑って言う。

「つまんないでしょ?」
「そうでもないよ」
「え?」

美月が聞き返す。

「4人が乗ってる間二人きりになれる」
「……確かにそうだね」
「それに乗り物に乗れなくても遊園地は楽しめるよ」
「どうやって?」
「そうだな……」

4人が戻ってくると「僕達別行動していいかな?」と聞いた。

「美月乗り物ダメだしね。その方がいいかも」

香澄さんが言った。
4人と分かれるとまずは腹ごしらえ。
その後ゲームセンターやパットゴルフを楽しむ。
二人乗りのゴーカートなんかもいいかもしれない。
3D体験型アトラクションなんてものもある。
乗り物に乗れなくても十分楽しめた。
美月もそれくらいなら平気だったようだ。
疲れると軽食を食べて疲れをいやす。

「勝則の言う通りだね」

彼女は舞い上がっていたのだろうか?
僕はくすっと笑った。

「どうしたの?」

美月が聞いた。

「やっと下の名前で呼んでくれたね」

自分が口にしたことを理解したらしい。

「ごめん。つい……」
「いいんだ。これでも嬉しいよ」
「うん」
「そろそろ時間だ、お土産選んで帰ろう?」
「そうだね」

美月とお土産屋さんにいて色々選ぶ。
出場すると秋吉さん達は先に出ていた。

「遅かったね」

香澄さんが言った。

「ごめ~ん」

美月が返す。

「小泉君は意外と女性を扱うのが上手いみたいだね」

大泉君が耳打ちする。

「美月だけだよ」

僕が返す。
僕だけが知ってる美月のトリセツか……。
悪い気はしなかった。

(6)

「あれ?悠木さんと長谷部君じゃない?」
「こんなところで会うなんて珍しい。どうしたの?」

まずい、同僚に会ってしまった。

「ひょっとして二人でデートしてた?」
「ち、違いますよ。渡辺の友達と遊びに来てただけで」

長谷部君がそう言い訳する。
ちょっと胸が痛かった。

「ごめん、沙織。待たせたみたいだね」

西松君がそう言って来た。
事情を察したのだろうか?私と腕を組んだ。

「沙織の知り合い?」

西松君が聞いてきた。

「職場の同僚」
「なるほどね……」

西松君がくすっと笑った。

「初めまして、沙織の彼氏の西松といいます」
「悠木さん彼氏いたんだ!?」

同僚が驚いていた。

「ま、まあね」

ここは西松君の話に合わせておいた方がいいだろう。

「良さそうな彼氏じゃん。西松君は今何歳?何やってんの?」

同僚と話をしていると皆戻って来た。
皆に同僚を紹介する。
皆が挨拶する。

「パパ、ママもういこう?」

子供が退屈してるようだ。

「じゃ、私達そろそろ行くから」
「うん、また」
「じゃ、またね」

手を振って同僚を見送る。
西松君の腕は既に私から離れていた。

「西松君、ありがとう。助かったわ」
「話は渡辺さんから聞いていたから。バレなくてよかったね」

西松君はそう言って笑う。

「うちの主人は女性の心理を読むのは得意みたいだから。けど……」

けど。

「自分の妻の心理は読み取ってくれないみたいね。堂々と他の女性と腕を組んでる時の心理くらい分かってもらえないのかしら?」

深雪さんがそう言って西松君を睨む。

「わ、分かってるよ。さっきのは緊急事態だったからしかたないだろ?」
「私とは腕を組んでくれないくせに」
「わかったよ」

それから西松夫妻は腕を組んで歩き始めた。
一緒にいたのは中島夫妻、桐谷夫妻、小鳥遊さん、月見里君、卜部さん、神田さん。
それぞれが腕を組んでいる。
私は長谷部君を見る。
長谷部君は私の視線に気付く

「……しますか?」
「お願いしてもいいなら」

手をつなぐだけにした。
公の場で手をつなぐのは初めてだった。
同僚にみられたらどうしよう?
そんな心配も吹き飛んでしまうくらいに楽しい気分になれた。

(7)

「すいませんね、付き合わせて」
「いいよ、私達も大体乗ったし」

お土産を選びながら私達は話していた。

「竹本先輩達もう来てたんですか?」

晴斗達もお土産を選びに来たようだ。

「まあね」

と、いってもお菓子買ってくくらいしかないんだけど。
美里が乗り物に乗れないために適当にライド系以外のアトラクションで遊んでいた。
どれもあまり得意そうじゃなかったけど、そこは栗林君が上手にフォローしていた。
彩人と遥は水島夫妻と回っている。

「晴斗達は楽しめた?」
「最高っす!」

それはよかった。
お土産を選ぶとゲートに向かう。
大体のメンバーが戻ってきていた。
あと彩人達と冬夜君達だけか。
冬夜君達が戻って来た。

「僕達が最後?」

冬夜君が聞いてきた。

「いえ、まだ彩人たちが戻って来てないです」
「そうか……」

それからしばらくして、彩人たちが戻ってくる。

「悪い。桜子が強請るもんだから……」
「佐だってはしゃいでたじゃない!」
「俺達最後ですか?」
「ごめんなさい」

4人が言う。
これで最後かな?

「じゃ、湖に移動しますか?」

西松君が言うと皆車に向かう。
そして、私達も湖に向かう。
湖に着くとテントを設置して、BBQの準備を始める。
まだ始めるには早い。
それぞれがそれぞれの時間つぶしに入った。
悠馬はテントで寝ている。
時間になると、女子たちが集まり食材を切ったり米を研いだり仕度を始める。
炊事場で女子だけで話をしていた。

「問題は明日だな」

神奈さんがいう。
明日は、調和の国で過ごす予定だ。
男性陣の受けが悪い。
男性陣は上手くごまかしてるつもりだろうがさすがに気づく。
中には露骨に嫌がる者もいた。
悠馬も困惑していた。
行くことを中止するという事も考えた。
だけど晶さんが言う。

「これも訓練の一つだわ。いかに女性を上手にエスコートするか?無理とは言わせない。片桐君はできてるんだから」

晶さんが言うとみんな「そうだね」と言った。

「さっき冬夜さんも同じ様な事言ってました」

遠坂さんが言う。
遠坂さんの話を聞いていた。

(8)

テントを設営してBBQの時間が出来るとまだ始めるには早いという。
皆が自由行動を始める。
私はテントで本を読んでいた。
すると冬夜さんが呼ぶ。

「ボートにでも乗らない?」
「はい」

鯉の餌を買ってからボートに乗る。
私は群がる鯉に餌をやって、楽しんでいた。
冬夜さんはそんな私を見てニコニコしてる。

「冬夜さんは退屈じゃないんですか?」
「愛莉、退屈っていけないことなのかな?」
「え?」
「愛莉が鯉に餌をやってそれを楽しむ。そんな幸せな時間をボートに揺られながら過ごす。それをただ退屈と一言で片付けちゃうけどそれっていけないこと?」
「冬夜さんも楽しめてると言う事ですか?」
「少なくとも幸せは感じているよ」
「ならよかったです」

鯉の餌が無くなると冬夜さんは向こう岸近くまでボートを漕ぐ。
湖面と周りの木々と空を楽しんでいる。
時間が近づくとゆっくりと桟橋に向かっていく。

「明日大丈夫なんでしょうか?」
「何が?」
「男性陣、あまり楽しそうじゃないから」
「ああ、そうだね」
「冬夜さんを疲れさせるだけじゃないかと心配で」
「気にする事無いよ。その為の休日なんだ」

毎日頑張ってるお嫁さんを楽しませる日だという。

「でも、毎日頑張ってるのは冬夜さんだって一緒じゃないですか?」
「その分愛莉は夜相手してくれるだろ?」
「……それは私も楽しんでるから」
「愛莉の楽しそうな顔を見れるならそれに越したことは無いよ」

そんな愛莉の幸せな顔を見る為に毎日頑張って働いてるんだからと冬夜さんは言う。

「私は幸せなお嫁さんですね」
「そう思ってくれるだけで僕も幸せだよ」
「はい!」

桟橋に着くとテントに戻る。
皆はもう準備に入っていた。
私も女性陣に混ざって仕度を始める。
すると皆明日の事で相談していた。
私は、皆に冬夜さんが言ってたことを話した。

「今年が初めての人はまだ分かってもらえないかもしれない。でも男性だって少しずつ変わってる。もっとみんな信じてあげよう?」

私は言う。
あの日誓った言葉。
この右手と左手に何を求める?
魂のカタルシスに焦がれた感情。
重ね合えば繋ぎ合えば伝わるのか?
運命のままに、流れるままに変わらぬ明日じゃ面白くない。
革命を始めよう。
以心伝心、生の咆哮届いてますか?
夢の果てよついてきて。
どんな人生だっていつかは交じり合う。
その日に革命を叫ぼう。
プラマイゼロの悪くはない調律。
キスみたいに伝染した色褪せない夢。
虹のかかる見たことのない覚醒。
胸を叩く鼓動はどこまでいける?
変わらない何かを何度信頼した?
そして私はまた恋物語に出会う。
刹那から一生さえ全てが聞こえてくる君からのラブソング。
もう覚悟を決めて。
本気を盾にした未熟な革命。
待っているのは期待の楽園。
躊躇う事に慣れ過ぎた素肌の上で事件をおこせ。
覚悟して。

「未熟な革命か……」

神奈が言う。

「確かにあいつらも変わったかもしれないな」
「変わらない人間なんていないよ。良くも悪くも」

私が言う。

「変えていく方向をかじ取りしてやるのが私達の役目なのかもね」

恵美が言う。
大丈夫だよ、あれだけ愚痴ってた誠くんや桐谷君が変わったんだから。

「男子を信じるのもありかもしれないね」

亜依が言う。

「愛莉そっちはどう?火の準備はできたよ」

冬夜さんと渡辺君と誠君が来ていた。

「そんなに持てないだろうから手伝いに来た」

冬夜さんが言う。

「じゃあこれ持ってくださいますか?」

冬夜さん達に材料とかを持たせる。

「他の男子は?」

亜依が聞いてた。

「あ、ああ。何か話し込んでるみたいだったな……」

歯切れの悪い渡辺君の言葉。
冬夜さん達の表情も苦笑いしている。
すぐに私達はテントに戻った。

「新人のお前たちに今のうちに話しておくことがある!」

中島君と桐谷君が何か言ってる。

「明日この夏最大の試練だ!とにかく耐えろ!明日一日乗り越える!それだけでいい!」
「どういう意味ですか?桐谷さん」

佐々木君が桐谷君に聞いてた。

「明日になれば分かる。多分新人のお前らには最大の試練だ。最恐の修羅場だ」

熱弁する桐谷君。

「桐谷君、気持ちは分かるが少し落ち着いた方がいい」

私達に気付いた木元先輩が桐谷君に言う。
冬夜さん達も何も言わない。
自分たちの心遣いを無にしてくれたと恨んでいるのだろうか?
だけど桐谷君の熱弁は続く。

「木元先輩だって言ってたじゃないですか!『子供が出来たらここに来るのかと思うとぞっとするよ。男の子であることを祈るしかないな』って」
「ま、まあそれは生まれてこないと分からない事だから……」

慌てる木元先輩。

「生き残る秘訣があるとしたら、それはどんなことがあっても愛想笑いを続ける根性だ!それは否応でも身につく!」
「へえ、愛想笑いね。そりゃ楽しみだ。明日が楽しみだな。瑛大」

亜依が桐谷君に話しかける。

「あ、亜依……」
「かずさんは男の子をお望みなんですね。よく分かりました」
「か、花菜……」
「愛莉の言う通りだね。男共がどう変わったのか明日が楽しみだ。期待してるぞ」

美嘉が言う。

「ま、まあ。飯にしようや。皆お腹減っただろう?」

渡辺君が仲裁に入る。
今夜も楽しい宴が始まる。
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