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LASTSEASON
ラストシーン
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(1)
10月5日
「誠!起きろ!」
私は誠を叩き起こす。
「ああ、仕事か。気を付けてな」
布団からひらひらと手を振る誠。
こいつ寝惚けてやがるな。
容赦なく布団を引きはがす。
「今日は10月5日だぞ!忘れたのか!それとも髪をセットもしないで式に出るつもりか!?」
「あ、そうだった!」
誠は起きた。
まったく……。
「やっとこの日が来たんだな」
誠が言う。
「そうだな」
「一番早く結婚すると思ったけど、結局同期じゃ一番最後か」
「あいつも頑固だったからな」
そんなところに惹かれたのかもしれないが。
あいつはいつも自分の道を進み続けた。
迷うことなく泥沼を突き進んできた。
それを最後まで見守ることが出来たのは愛莉だけだった。
そのゴールにやっとたどり着くんだ。
華々しく見送ってやりたい。
服を着替えると美容室に向かう。
二人ともに髪をセットしてもらうと駅に急ぐ。
あいつも面倒な式場を選んでくれたものだ。
駐車場はあるって言ったって飲むんだぞ。
第一、二次会の場所知らないわけじゃないだろ。
どうやって移動するんだ?
送迎バスを手配しているらしいけど。
駅に着くと桐谷夫妻と会った。
二人も美容室に寄って来たらしい。
びしっと決めてあった。
「まあ、この時間じゃないと間に合わないよね」
亜依がそう言って笑う。
「でも穂乃果達といい良く休みとれたな」
「そりゃあの二人の式だもん、多少般若にも歯向かいますよ」
「俺もETCだったから有給すんなりとらせてくれた」
石原の会社だから事情を分かってくれたらしい。
私も有給を使った。
電車が来ると乗る。
終点につくと電車を降りてバスに乗る。
15分ほどでバスを降りて歩くと式場に着く。
海岸沿いの式場。
式は14時からだという。
その間私達は桐谷夫妻と話をしていた。
(2)
「美嘉!まだか!?」
「もうちょっとだ!」
美嘉の準備を待つと家を出る。
式場がいつもと違う微妙な位置にある為、普段慣れないバスに乗るしかない。
バスの時間は確認してあった。
式は14時からだという。
急ぎ足でバス停に向かう。
「そんなに慌てなくてもいいだろ。歩きにくいんだよ!」
「そんなにヒールの高い靴を履くからだろ!」
「スニーカーで式に出ろって言うのか正志は!」
それも考え物だな。
バス停でばったり会ったのは木元夫妻だった。
「君達も今から式場に?」
「はい、しかし冬夜の奴にも困ったものです」
「まあ愛莉さんの希望を叶えたかったんだろ」
ずっと夢見てきた二人だからこそみんなで祝ってやりたい。
あの二人の式は渡辺班にとっても特別の意味があった。
「木元先輩平日なのに休んでよかったんですか?」
「ああ、亀梨君達に大体説明してあるから。あの二人も2次会にはでるつもりらしいけど」
とはいえ、木元先輩たちの仕事に不都合が出た場合、現場自体を止めかねない事態になるらしい。
実際3人休みたいと言った時「現場を止めなさい!1日現場を止めて慌てるような工程組んでる無能な所長ならいくらでも変わりはいるわよ!」と大騒動になったそうだ。
それを亀梨君と三沢君が「披露宴には呼ばれてないから日中の仕事は俺達がします」といって落ち着いたらしい。
下手すれば現場所長交代の危機だという。
バスが来た。
俺達はバスに乗る。
15分ほどでバス停に着く。
バスを降りると徒歩で式場に向かう。
海に面した景色のいいチャペル。
なるほど、愛莉さんが憧れるわけだ。
式場に着くと多田夫妻たちがいる。
俺達は式まで雑談して時間を潰すことにした。
(3)
「望!何やってるの!?」
「え、恵美!?」
パーティドレス姿の恵美が会議室に怒鳴り込んできた。
「も、もう少しだけ!」
「今日は仕事はオフにしなさいって言ったでしょ!」
「経産省の官僚が今日たまたま地元に立ち寄ったから話がしたいと言ってきて……」
「たまたまですって?」
まずい、このパターンは酒井君と同じだ。
「どこの馬の骨とも知れぬ雑魚のたまたまに付き合って、今日という大事な日にあなたは何やってるの!?」
「恵美……その人が今目の前にいるんだけど」
恵美は官僚を睨みつける。
「あなたね、アポも無しにくるような礼儀知らずの雑魚に付き合ってるほどうちの主人は暇じゃないの!」
そして専務たちを叱りつける。
「あなた達もこんな小者の相手くらい自分たちで対応しなさい!」
言いたい放題言って恵美は僕を引きずって会議室を出る。
幸い服はちゃんとスーツを着ていた。出かける直前のハプニングだったんだ。
車に乗り込むと新條さんに急ぐように言う恵美。
「まったく、折角のお祝い事が台無しだわ」
折角の事業拡大が台無しになっちゃうかもよ?
恵美が電話する。
「あ、英恵。私だけど……って雑魚が突然やってきて……そうよ。お願い」
電話を終えると僕に向かってにこりと笑う。
「後始末はきちんとしておいたわよ」
「そ、そう?ありがとう」
その後今日来た官僚は突然左遷されたらしい。
車は海岸沿いの国道を走り式場に着く。
式場には渡辺君達がいた。
十分間に合ったようだ。
僕達は式の時間まで話をしていた。
(4)
まずい!
時計を見て慌てて着替えを始める。
「隆司さん起きて!時間!」
「え!?ああ!」
隆司さんも慌てて着替え始める。
美容室に言ってる時間はない!
仕方ないか!
服を着替えて化粧して急いで仕度する。
隆司さんは先に準備を済ませている。
タクシーを手配しているようだ。
本当に交通の便の悪い所だ。
もう大学にこだわる必要ないし子供が出来る前に引っ越そう。
そんな事を考えていた。
「5分したら来るって」
タクシーが来るまで外で待つことにした。
「やっとあの二人も式だね」
「俺達の方が早いのが不思議なくらいだ」
確かに言えてる。
タクシーが来た。
「海辺の式場までお願いします」
結構な出費になるけど仕方ない。
愛莉の念願らしい。
でも……
「なんでわざわざ平日の昼間にするかな」
隆司さんが言った。
多分平日の昼間を選んだんじゃない。
10月5日が偶々平日だっただけだ。
片桐君はいつも愛莉の夢を叶える為に動いている。
今回もきっとそうなのだろう。
そしてこれからもずっと。
タクシーが式場に着いた。
披露宴に呼ばれた人は大体の人が揃ってる。
あとは水島夫妻と酒井夫妻だけ。
私達は神奈達と話をして時間を潰した。
(5)
服を着替えて街まで出て予約していた美容室に行ってバスターミナルで佐を待つ。
佐が先に待っていた。
「よぉ」
「おまたせ」
バスを待ってる。
「やっとあいつらも式か」
「本当にやっとですね」
「正直なところどうなんだ?」
「え?」
「やっぱり悔しいとかあるのか?」
「そうですね……」
もったいない事をしたかもしれないな。
「でもいいんです。佐というプレゼントを片桐先輩はくれたから」
そして私は片桐先輩に金メダルというプレゼントを残せた。
「私の夢は決まりました。自分の子供で夢を叶えてみせる」
「まずは子作りからか。しんどいんだけどな」
「なんかいいましたか?」
「い、いや何も言ってない」
「ならいいんです」
私は笑った。
バスが来た。
バスに乗ると15分ほどでバス停に着く。
バスを降りると徒歩で式場まで行く。
ここが愛莉先輩の夢見てた式場か。
ちょっと不便だけどいい思い出を残せそうだ。
誰か見慣れない人がいる。
誰だろう?
声をかけてみた。
「あの、片桐先輩のお知り合いですか?」
私達よりちょっと年上な人達と中年の夫婦が言った。
「ああ、俺達冬夜の同僚。で、こっちが社長」
「はじめまして」
私達は礼をする。
「あ、達彦先輩来てたんですか?」
片桐先輩だ。白いスーツに身を包んでいる。
「あ、冬夜おめでとう。夏美は育児でこれなくてさ。これ預かってきたから後で嫁さんと一緒に読んでくれないか」
片桐先輩は手紙を受け取る。
「わざわざすいません」
「いや、いいんだ。じゃ、また後で」
「新郎の方新婦の準備出来ましたよ」
「あ、はい。じゃあ佐たちもまたあとで」
「ああ」
片桐先輩は呼ばれていった。
「あ、桜子達じゃねーか」
神奈先輩たちがいる。
あと来てないのは酒井夫妻だけだという。
私達は話をして。時間を潰すことにした。
(6)
「善君どこに行くの?」
玄関で晶ちゃんに呼び止められた。
「ご、午前中だけちょっと会議に顔を出して欲しいと言われて……」
式は14時からだから間に合うでしょ?
「あなた……いつものスーツでいくつもりだったの?」
「僕達の式じゃないんだからいいんじゃないかなって……」
「ただの式じゃないのよ!片桐夫妻の式なのよ!美容室くらい行ってきなさい!」
「でも……なんか与党の地元本部長とか来てるらしくて」
「だからなに?」
「へ?」
「そんな小者の為に善君を呼び出したって言うの!?」
始まった。
晶ちゃんは電話する。
「佐瀬!私は言ったはずよ!今日は善君はオフだと!本部長だか酢昆布だかしらないけど、そんな雑魚相手に善君のスケジュールを変えるとは随分偉くなったわね!……そうよ、今すぐ白紙にしなさい!」
晶ちゃんの電話は終わらない。
「パパ?地元の与党本部長如きが主人に無礼を働いたわ!……そうよ。……お願い。じゃあ急いでるから」
晶ちゃんの電話は終わった。
「善君一人だと危なっかしいわ。私も同行するから美容室に行くわよ」
「じゃ、じゃあ。服を着替えるよ」
「その必要はない!途中で買っていくから!善君のスマホ貸してちょうだい」
「……はい」
その後僕が髪をセットして服を選んでいる間かかってくる商談を悉く退ける晶ちゃん。
あとで聞いた話なんだけど……片桐君、君の式の為に中小企業が何件か経営危機に陥ったらしいよ。
大工場の復興計画も晶ちゃんの逆鱗にふれて危うく白紙になりかけたそうだよ。
君の式ってすごいね。
スーツを買うとすぐに式場に向かう。
間に合ったようだ。
式と披露宴には同期のものだけ呼んだらしい。
みんな揃っていたな。
「善幸遅かったな」
中島君が言う。
「いろいろあってね」
多分今でも色々起こってると思うけど。
「一々雑魚の相手するのも面倒になって来たわ。式のマナーよね……」
僕のスマホの電源をオフにする晶ちゃん。
「晶も大変ね。うちの亭主も折角の式の日に仕事を入れたがる困った人なのよ。真面目なのはいいんだけど」
「お互い大変ね恵美、夫のスケジュール管理ってこんなに大変だなんて知らなかったわ」
石原君を見ると頭を抱えている。同情するよ。
この二人の機嫌で今後どれだけの損害を地元経済は生み出していくのだろうか。
「せっかく皆集まったんだし記念撮影しないか?」
神奈さんが言う。
「でも片桐夫妻が入ってないんじゃ意味ないんじゃない?」
恵美さんが言う。
「それもそうだな。じゃ、あとでいいか」
「皆さん準備が出来ましたチャペルの方へどうぞ」
係員に案内され中に入る。
いよいよ式が始まる。
(7)
憧れの純白のドレス。
「りえちゃん私変じゃないかな?」
「綺麗よ~似合ってるから安心しなさい~」
りえちゃんはそういう。
「あ、そうだちょっと待ってて~パパさん~」
パパさんが中に入ってきた。
パパさんは私を見るなり泣き出す。
「ほら泣いてないでパパさん。すいません~3人で写真撮ってもらっていいですか~?」
係の人にお願いして写真を撮ってもらう。
「……この日が来るのをどれだけ夢見ていた事か」
それは私も一緒だよパパさん。
冬夜さんがやっと叶えてくれた夢。
冬夜さんが子犬に餌をやっている時からずっと夢に抱いていた事。
冬夜さんは自分を劣等生だと決めつけていた。
私は手に届かない存在だと言ってた。
でも私にとっても冬夜さんは手に届かない存在だった。
けれどそれは違う。
優劣が人を結びつけるんじゃないの。
私が勇気を出してミルクを与えた時から。
私が勇気を出してあなたにチョコを渡した時から。
あなたが勇気をだして私の家に来てくれた時から。
挫けてあなたから離れようとした私抱きしめてくれた時から。
ほんの少しの勇気が人生を変える。
それを証明してくれたのは冬夜さんだよ。
これからも色んな事が起こるかもしれない。
その度に私は勇気をあなたにあげる。
だから私にも勇気を下さい。
一緒に生きて行く力を与えてください。
私とこれから生まれて来る子供たちに生きる糧を与えてください。
「さて、もう冬夜君呼んでもいいわよね~?」
りえちゃんがいう。
係員の人が冬夜さんを呼ぶ。
冬夜さんは私を見て驚いていた。
そして一言。
「綺麗だよ」
「ありがとう」
私は微笑む。
「じゃあ、時間まで二人でゆっくりしてなさいな」
そう言ってりえちゃん達が出ていった。
冬夜さんは私を見ていた。
緊張しているのかな?
私も同じだよ。
だから冬夜さん何か声をかけてよ。
(8)
係の人に呼ばれて愛莉が待機してる部屋に入る。
純白のドレスに身を包まれた愛莉。
ポニーテールにしてある。
椅子に腰かけている愛莉を見て息を飲んだ。
「綺麗だよ」
「ありがとう」
愛莉は微笑んでいた。
「じゃあ、時間まで二人でゆっくりしてなさいな」
愛莉の両親がそう言って出ていった。
沈黙が流れる。
何か言わなきゃ……。
「……やっとたどり着けたね」
「そうですね」
「遠回りしてきたけど、やっと着いたよ」
「ええ」
「でもまだ終わりじゃないよね?」
「はい、これからもよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
「冬夜さん。昔見た映画覚えてる?」
「え?」
「中学生の頃に見た映画」
どれの事だろう?
悩んでいると愛莉が一言言った
「結婚するまでに8年かかったやつ」
「ああ、あれか?」
「私達もあそこまではないけど平坦な道ではなかった」
「そうだね」
「10年越しの花嫁」
「ああ……」
愛莉を一目見てからひたすら愛莉を追いかけて来た。
偶に忘れてしまう事があったけど愛莉は僕を見ていてくれた。
愛莉が挫けそうなときは僕が支えることが出来た。
これからもずっと変わらない。
あ、そうだ。
「さっき達彦先輩から手紙を預かっていて。夏美さんからみたいなんだけど」
「夏美さん?」
「うん、二人で読んで欲しいって」
僕は手紙を取り出すと二人で読んだ。
秋のこもれびがあの日と同じようです。
私は片桐君がいなくても達彦さんと今を生きています。
きっと片桐君は早く行こうってはしゃいで駆け出して遠坂さんの事を困らせてきたのでしょう。
いつも追いかけるだけで片桐さんの背中を、涙を隠してみていた遠坂さんを知らずに。
それでもきっと遠坂さんは胸を張って言えるはずです。
「私は幸せです」
風のように消えてしまう声に慌てて片桐君は遠坂さんの名前を呼ぶのでしょう。
振り返った遠坂さんの笑顔はきっと綺麗なのでしょうね。
ずっと隣にいる優しいそのぬくもりが手のひらに残っています
想いをつなぐ為に手を握り続けいつも片桐君の声は切なく揺れている。
言葉に出来なかった全部がほら、片桐君の中にあって今を生きている。
「どうしてそんな顔で立ち止まっているの?」
片桐君は私をそんな風に思っていたのかな?
傷ついて挫けてしまったかもしれないけど、片桐君はこれから愛する人と生きなきゃいけない。
叶わぬこともあった。
やりきれない悔しさを幾つも超えた。
この街もずいぶん変わってしまった。
だからあなたも変わってください。
二人歩いた道で今も二人で変わらない空を見上げてください。
涙がこぼれないように片桐君を思い出すけど。
私の中ではいつも片桐君は笑っています。すこしずるいけど。
でも私もあの日から強くなりました。
達彦さんがいるから、風が笑っています。
もう私の隣に片桐君はいません。
今は私を想ってくれる人が隣にいます。
一緒に過ごした日が遠い光になっていきました。
だから片桐君も遠坂さんと歩いてください。
二人で明日を見つめてください。
私は片桐君に好きだと言えてよかったです。涙はありません。
何度春が来ても忘れないで。
二人だけの今を生きてください。
今日から片桐君が歩いていく新しい未来への道
沢山の愛に包まれて大きな夢を今この場所で叶える片桐君に逢えてよかった。
空に鳴り響く幸せの鐘。
遂にこの日がきました。
真っ白に輝くドレス姿。
目を合わせるのも少し照れくさいでしょう。
だけど一言言ってあげてください。
「今まで一緒に過ごした時の中で一番可愛いよ。綺麗だよ」
嬉しい日も不安な日も片桐君の隣には遠坂さんがいます。
何があっても心配することはありません。
短い間だったけどあなたを見て来た私が胸を張って保証します。
新しい苗字も自然になって、慣れない料理も少しずつ上手くなって。
変わっていく毎日と時の中でもずっと遠坂さんは変わりません。
遠坂さんにお願いがあります。
片桐君が笑顔の日も涙の日も守ってあげてね。
白いベールの横顔に一つ涙の雫が光って一歩ずつ歩幅を合わせて二人だけの明日を歩いてください。
愛する人がいるだけで、こんなにも強く優しくなれることを教えてくれたのは片桐君です。ありがとう。
大きな愛を今この場所で誓う二人の幸せをお祈りしています。
今日から片桐君が歩いてく新しい未来への道。
たくさんの愛に包まれて大きな夢をこの場所で叶える片桐君を心から祝福します。
その笑顔が自分の事みたいに嬉しいです。
今日この日をずっとずっと忘れられない日になりますように。
本当におめでとう。幸せになってね。
僕と愛莉は最後まで読み終えるまで一言も喋らなかった。
読み終わった後もしーんとしていた。
「とても優しさに溢れている手紙ですね」
愛莉はそう評した。
私達の事を心から祝福してくれてる。愛莉はそう言った。
「愛莉」
「どうなされました?」
「愛してるよ」
「……私も愛しています」
コンコン
「準備が出来ました」
係の人が言う。
「じゃあ行こうか愛莉」
そう言って手紙を仕舞って立ち上がる。
「冬夜さん少しだけ時間を下さい」
「どうした?」
愛莉は少し頬を赤らめて俯いてる。
「実はこの前病院に行ってきたんです」
「え?」
まさか……。
「……無事に授かったみたいです」
愛莉の手を握り締める。
僕達の物語はまだ続く。
Fin。
10月5日
「誠!起きろ!」
私は誠を叩き起こす。
「ああ、仕事か。気を付けてな」
布団からひらひらと手を振る誠。
こいつ寝惚けてやがるな。
容赦なく布団を引きはがす。
「今日は10月5日だぞ!忘れたのか!それとも髪をセットもしないで式に出るつもりか!?」
「あ、そうだった!」
誠は起きた。
まったく……。
「やっとこの日が来たんだな」
誠が言う。
「そうだな」
「一番早く結婚すると思ったけど、結局同期じゃ一番最後か」
「あいつも頑固だったからな」
そんなところに惹かれたのかもしれないが。
あいつはいつも自分の道を進み続けた。
迷うことなく泥沼を突き進んできた。
それを最後まで見守ることが出来たのは愛莉だけだった。
そのゴールにやっとたどり着くんだ。
華々しく見送ってやりたい。
服を着替えると美容室に向かう。
二人ともに髪をセットしてもらうと駅に急ぐ。
あいつも面倒な式場を選んでくれたものだ。
駐車場はあるって言ったって飲むんだぞ。
第一、二次会の場所知らないわけじゃないだろ。
どうやって移動するんだ?
送迎バスを手配しているらしいけど。
駅に着くと桐谷夫妻と会った。
二人も美容室に寄って来たらしい。
びしっと決めてあった。
「まあ、この時間じゃないと間に合わないよね」
亜依がそう言って笑う。
「でも穂乃果達といい良く休みとれたな」
「そりゃあの二人の式だもん、多少般若にも歯向かいますよ」
「俺もETCだったから有給すんなりとらせてくれた」
石原の会社だから事情を分かってくれたらしい。
私も有給を使った。
電車が来ると乗る。
終点につくと電車を降りてバスに乗る。
15分ほどでバスを降りて歩くと式場に着く。
海岸沿いの式場。
式は14時からだという。
その間私達は桐谷夫妻と話をしていた。
(2)
「美嘉!まだか!?」
「もうちょっとだ!」
美嘉の準備を待つと家を出る。
式場がいつもと違う微妙な位置にある為、普段慣れないバスに乗るしかない。
バスの時間は確認してあった。
式は14時からだという。
急ぎ足でバス停に向かう。
「そんなに慌てなくてもいいだろ。歩きにくいんだよ!」
「そんなにヒールの高い靴を履くからだろ!」
「スニーカーで式に出ろって言うのか正志は!」
それも考え物だな。
バス停でばったり会ったのは木元夫妻だった。
「君達も今から式場に?」
「はい、しかし冬夜の奴にも困ったものです」
「まあ愛莉さんの希望を叶えたかったんだろ」
ずっと夢見てきた二人だからこそみんなで祝ってやりたい。
あの二人の式は渡辺班にとっても特別の意味があった。
「木元先輩平日なのに休んでよかったんですか?」
「ああ、亀梨君達に大体説明してあるから。あの二人も2次会にはでるつもりらしいけど」
とはいえ、木元先輩たちの仕事に不都合が出た場合、現場自体を止めかねない事態になるらしい。
実際3人休みたいと言った時「現場を止めなさい!1日現場を止めて慌てるような工程組んでる無能な所長ならいくらでも変わりはいるわよ!」と大騒動になったそうだ。
それを亀梨君と三沢君が「披露宴には呼ばれてないから日中の仕事は俺達がします」といって落ち着いたらしい。
下手すれば現場所長交代の危機だという。
バスが来た。
俺達はバスに乗る。
15分ほどでバス停に着く。
バスを降りると徒歩で式場に向かう。
海に面した景色のいいチャペル。
なるほど、愛莉さんが憧れるわけだ。
式場に着くと多田夫妻たちがいる。
俺達は式まで雑談して時間を潰すことにした。
(3)
「望!何やってるの!?」
「え、恵美!?」
パーティドレス姿の恵美が会議室に怒鳴り込んできた。
「も、もう少しだけ!」
「今日は仕事はオフにしなさいって言ったでしょ!」
「経産省の官僚が今日たまたま地元に立ち寄ったから話がしたいと言ってきて……」
「たまたまですって?」
まずい、このパターンは酒井君と同じだ。
「どこの馬の骨とも知れぬ雑魚のたまたまに付き合って、今日という大事な日にあなたは何やってるの!?」
「恵美……その人が今目の前にいるんだけど」
恵美は官僚を睨みつける。
「あなたね、アポも無しにくるような礼儀知らずの雑魚に付き合ってるほどうちの主人は暇じゃないの!」
そして専務たちを叱りつける。
「あなた達もこんな小者の相手くらい自分たちで対応しなさい!」
言いたい放題言って恵美は僕を引きずって会議室を出る。
幸い服はちゃんとスーツを着ていた。出かける直前のハプニングだったんだ。
車に乗り込むと新條さんに急ぐように言う恵美。
「まったく、折角のお祝い事が台無しだわ」
折角の事業拡大が台無しになっちゃうかもよ?
恵美が電話する。
「あ、英恵。私だけど……って雑魚が突然やってきて……そうよ。お願い」
電話を終えると僕に向かってにこりと笑う。
「後始末はきちんとしておいたわよ」
「そ、そう?ありがとう」
その後今日来た官僚は突然左遷されたらしい。
車は海岸沿いの国道を走り式場に着く。
式場には渡辺君達がいた。
十分間に合ったようだ。
僕達は式の時間まで話をしていた。
(4)
まずい!
時計を見て慌てて着替えを始める。
「隆司さん起きて!時間!」
「え!?ああ!」
隆司さんも慌てて着替え始める。
美容室に言ってる時間はない!
仕方ないか!
服を着替えて化粧して急いで仕度する。
隆司さんは先に準備を済ませている。
タクシーを手配しているようだ。
本当に交通の便の悪い所だ。
もう大学にこだわる必要ないし子供が出来る前に引っ越そう。
そんな事を考えていた。
「5分したら来るって」
タクシーが来るまで外で待つことにした。
「やっとあの二人も式だね」
「俺達の方が早いのが不思議なくらいだ」
確かに言えてる。
タクシーが来た。
「海辺の式場までお願いします」
結構な出費になるけど仕方ない。
愛莉の念願らしい。
でも……
「なんでわざわざ平日の昼間にするかな」
隆司さんが言った。
多分平日の昼間を選んだんじゃない。
10月5日が偶々平日だっただけだ。
片桐君はいつも愛莉の夢を叶える為に動いている。
今回もきっとそうなのだろう。
そしてこれからもずっと。
タクシーが式場に着いた。
披露宴に呼ばれた人は大体の人が揃ってる。
あとは水島夫妻と酒井夫妻だけ。
私達は神奈達と話をして時間を潰した。
(5)
服を着替えて街まで出て予約していた美容室に行ってバスターミナルで佐を待つ。
佐が先に待っていた。
「よぉ」
「おまたせ」
バスを待ってる。
「やっとあいつらも式か」
「本当にやっとですね」
「正直なところどうなんだ?」
「え?」
「やっぱり悔しいとかあるのか?」
「そうですね……」
もったいない事をしたかもしれないな。
「でもいいんです。佐というプレゼントを片桐先輩はくれたから」
そして私は片桐先輩に金メダルというプレゼントを残せた。
「私の夢は決まりました。自分の子供で夢を叶えてみせる」
「まずは子作りからか。しんどいんだけどな」
「なんかいいましたか?」
「い、いや何も言ってない」
「ならいいんです」
私は笑った。
バスが来た。
バスに乗ると15分ほどでバス停に着く。
バスを降りると徒歩で式場まで行く。
ここが愛莉先輩の夢見てた式場か。
ちょっと不便だけどいい思い出を残せそうだ。
誰か見慣れない人がいる。
誰だろう?
声をかけてみた。
「あの、片桐先輩のお知り合いですか?」
私達よりちょっと年上な人達と中年の夫婦が言った。
「ああ、俺達冬夜の同僚。で、こっちが社長」
「はじめまして」
私達は礼をする。
「あ、達彦先輩来てたんですか?」
片桐先輩だ。白いスーツに身を包んでいる。
「あ、冬夜おめでとう。夏美は育児でこれなくてさ。これ預かってきたから後で嫁さんと一緒に読んでくれないか」
片桐先輩は手紙を受け取る。
「わざわざすいません」
「いや、いいんだ。じゃ、また後で」
「新郎の方新婦の準備出来ましたよ」
「あ、はい。じゃあ佐たちもまたあとで」
「ああ」
片桐先輩は呼ばれていった。
「あ、桜子達じゃねーか」
神奈先輩たちがいる。
あと来てないのは酒井夫妻だけだという。
私達は話をして。時間を潰すことにした。
(6)
「善君どこに行くの?」
玄関で晶ちゃんに呼び止められた。
「ご、午前中だけちょっと会議に顔を出して欲しいと言われて……」
式は14時からだから間に合うでしょ?
「あなた……いつものスーツでいくつもりだったの?」
「僕達の式じゃないんだからいいんじゃないかなって……」
「ただの式じゃないのよ!片桐夫妻の式なのよ!美容室くらい行ってきなさい!」
「でも……なんか与党の地元本部長とか来てるらしくて」
「だからなに?」
「へ?」
「そんな小者の為に善君を呼び出したって言うの!?」
始まった。
晶ちゃんは電話する。
「佐瀬!私は言ったはずよ!今日は善君はオフだと!本部長だか酢昆布だかしらないけど、そんな雑魚相手に善君のスケジュールを変えるとは随分偉くなったわね!……そうよ、今すぐ白紙にしなさい!」
晶ちゃんの電話は終わらない。
「パパ?地元の与党本部長如きが主人に無礼を働いたわ!……そうよ。……お願い。じゃあ急いでるから」
晶ちゃんの電話は終わった。
「善君一人だと危なっかしいわ。私も同行するから美容室に行くわよ」
「じゃ、じゃあ。服を着替えるよ」
「その必要はない!途中で買っていくから!善君のスマホ貸してちょうだい」
「……はい」
その後僕が髪をセットして服を選んでいる間かかってくる商談を悉く退ける晶ちゃん。
あとで聞いた話なんだけど……片桐君、君の式の為に中小企業が何件か経営危機に陥ったらしいよ。
大工場の復興計画も晶ちゃんの逆鱗にふれて危うく白紙になりかけたそうだよ。
君の式ってすごいね。
スーツを買うとすぐに式場に向かう。
間に合ったようだ。
式と披露宴には同期のものだけ呼んだらしい。
みんな揃っていたな。
「善幸遅かったな」
中島君が言う。
「いろいろあってね」
多分今でも色々起こってると思うけど。
「一々雑魚の相手するのも面倒になって来たわ。式のマナーよね……」
僕のスマホの電源をオフにする晶ちゃん。
「晶も大変ね。うちの亭主も折角の式の日に仕事を入れたがる困った人なのよ。真面目なのはいいんだけど」
「お互い大変ね恵美、夫のスケジュール管理ってこんなに大変だなんて知らなかったわ」
石原君を見ると頭を抱えている。同情するよ。
この二人の機嫌で今後どれだけの損害を地元経済は生み出していくのだろうか。
「せっかく皆集まったんだし記念撮影しないか?」
神奈さんが言う。
「でも片桐夫妻が入ってないんじゃ意味ないんじゃない?」
恵美さんが言う。
「それもそうだな。じゃ、あとでいいか」
「皆さん準備が出来ましたチャペルの方へどうぞ」
係員に案内され中に入る。
いよいよ式が始まる。
(7)
憧れの純白のドレス。
「りえちゃん私変じゃないかな?」
「綺麗よ~似合ってるから安心しなさい~」
りえちゃんはそういう。
「あ、そうだちょっと待ってて~パパさん~」
パパさんが中に入ってきた。
パパさんは私を見るなり泣き出す。
「ほら泣いてないでパパさん。すいません~3人で写真撮ってもらっていいですか~?」
係の人にお願いして写真を撮ってもらう。
「……この日が来るのをどれだけ夢見ていた事か」
それは私も一緒だよパパさん。
冬夜さんがやっと叶えてくれた夢。
冬夜さんが子犬に餌をやっている時からずっと夢に抱いていた事。
冬夜さんは自分を劣等生だと決めつけていた。
私は手に届かない存在だと言ってた。
でも私にとっても冬夜さんは手に届かない存在だった。
けれどそれは違う。
優劣が人を結びつけるんじゃないの。
私が勇気を出してミルクを与えた時から。
私が勇気を出してあなたにチョコを渡した時から。
あなたが勇気をだして私の家に来てくれた時から。
挫けてあなたから離れようとした私抱きしめてくれた時から。
ほんの少しの勇気が人生を変える。
それを証明してくれたのは冬夜さんだよ。
これからも色んな事が起こるかもしれない。
その度に私は勇気をあなたにあげる。
だから私にも勇気を下さい。
一緒に生きて行く力を与えてください。
私とこれから生まれて来る子供たちに生きる糧を与えてください。
「さて、もう冬夜君呼んでもいいわよね~?」
りえちゃんがいう。
係員の人が冬夜さんを呼ぶ。
冬夜さんは私を見て驚いていた。
そして一言。
「綺麗だよ」
「ありがとう」
私は微笑む。
「じゃあ、時間まで二人でゆっくりしてなさいな」
そう言ってりえちゃん達が出ていった。
冬夜さんは私を見ていた。
緊張しているのかな?
私も同じだよ。
だから冬夜さん何か声をかけてよ。
(8)
係の人に呼ばれて愛莉が待機してる部屋に入る。
純白のドレスに身を包まれた愛莉。
ポニーテールにしてある。
椅子に腰かけている愛莉を見て息を飲んだ。
「綺麗だよ」
「ありがとう」
愛莉は微笑んでいた。
「じゃあ、時間まで二人でゆっくりしてなさいな」
愛莉の両親がそう言って出ていった。
沈黙が流れる。
何か言わなきゃ……。
「……やっとたどり着けたね」
「そうですね」
「遠回りしてきたけど、やっと着いたよ」
「ええ」
「でもまだ終わりじゃないよね?」
「はい、これからもよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
「冬夜さん。昔見た映画覚えてる?」
「え?」
「中学生の頃に見た映画」
どれの事だろう?
悩んでいると愛莉が一言言った
「結婚するまでに8年かかったやつ」
「ああ、あれか?」
「私達もあそこまではないけど平坦な道ではなかった」
「そうだね」
「10年越しの花嫁」
「ああ……」
愛莉を一目見てからひたすら愛莉を追いかけて来た。
偶に忘れてしまう事があったけど愛莉は僕を見ていてくれた。
愛莉が挫けそうなときは僕が支えることが出来た。
これからもずっと変わらない。
あ、そうだ。
「さっき達彦先輩から手紙を預かっていて。夏美さんからみたいなんだけど」
「夏美さん?」
「うん、二人で読んで欲しいって」
僕は手紙を取り出すと二人で読んだ。
秋のこもれびがあの日と同じようです。
私は片桐君がいなくても達彦さんと今を生きています。
きっと片桐君は早く行こうってはしゃいで駆け出して遠坂さんの事を困らせてきたのでしょう。
いつも追いかけるだけで片桐さんの背中を、涙を隠してみていた遠坂さんを知らずに。
それでもきっと遠坂さんは胸を張って言えるはずです。
「私は幸せです」
風のように消えてしまう声に慌てて片桐君は遠坂さんの名前を呼ぶのでしょう。
振り返った遠坂さんの笑顔はきっと綺麗なのでしょうね。
ずっと隣にいる優しいそのぬくもりが手のひらに残っています
想いをつなぐ為に手を握り続けいつも片桐君の声は切なく揺れている。
言葉に出来なかった全部がほら、片桐君の中にあって今を生きている。
「どうしてそんな顔で立ち止まっているの?」
片桐君は私をそんな風に思っていたのかな?
傷ついて挫けてしまったかもしれないけど、片桐君はこれから愛する人と生きなきゃいけない。
叶わぬこともあった。
やりきれない悔しさを幾つも超えた。
この街もずいぶん変わってしまった。
だからあなたも変わってください。
二人歩いた道で今も二人で変わらない空を見上げてください。
涙がこぼれないように片桐君を思い出すけど。
私の中ではいつも片桐君は笑っています。すこしずるいけど。
でも私もあの日から強くなりました。
達彦さんがいるから、風が笑っています。
もう私の隣に片桐君はいません。
今は私を想ってくれる人が隣にいます。
一緒に過ごした日が遠い光になっていきました。
だから片桐君も遠坂さんと歩いてください。
二人で明日を見つめてください。
私は片桐君に好きだと言えてよかったです。涙はありません。
何度春が来ても忘れないで。
二人だけの今を生きてください。
今日から片桐君が歩いていく新しい未来への道
沢山の愛に包まれて大きな夢を今この場所で叶える片桐君に逢えてよかった。
空に鳴り響く幸せの鐘。
遂にこの日がきました。
真っ白に輝くドレス姿。
目を合わせるのも少し照れくさいでしょう。
だけど一言言ってあげてください。
「今まで一緒に過ごした時の中で一番可愛いよ。綺麗だよ」
嬉しい日も不安な日も片桐君の隣には遠坂さんがいます。
何があっても心配することはありません。
短い間だったけどあなたを見て来た私が胸を張って保証します。
新しい苗字も自然になって、慣れない料理も少しずつ上手くなって。
変わっていく毎日と時の中でもずっと遠坂さんは変わりません。
遠坂さんにお願いがあります。
片桐君が笑顔の日も涙の日も守ってあげてね。
白いベールの横顔に一つ涙の雫が光って一歩ずつ歩幅を合わせて二人だけの明日を歩いてください。
愛する人がいるだけで、こんなにも強く優しくなれることを教えてくれたのは片桐君です。ありがとう。
大きな愛を今この場所で誓う二人の幸せをお祈りしています。
今日から片桐君が歩いてく新しい未来への道。
たくさんの愛に包まれて大きな夢をこの場所で叶える片桐君を心から祝福します。
その笑顔が自分の事みたいに嬉しいです。
今日この日をずっとずっと忘れられない日になりますように。
本当におめでとう。幸せになってね。
僕と愛莉は最後まで読み終えるまで一言も喋らなかった。
読み終わった後もしーんとしていた。
「とても優しさに溢れている手紙ですね」
愛莉はそう評した。
私達の事を心から祝福してくれてる。愛莉はそう言った。
「愛莉」
「どうなされました?」
「愛してるよ」
「……私も愛しています」
コンコン
「準備が出来ました」
係の人が言う。
「じゃあ行こうか愛莉」
そう言って手紙を仕舞って立ち上がる。
「冬夜さん少しだけ時間を下さい」
「どうした?」
愛莉は少し頬を赤らめて俯いてる。
「実はこの前病院に行ってきたんです」
「え?」
まさか……。
「……無事に授かったみたいです」
愛莉の手を握り締める。
僕達の物語はまだ続く。
Fin。
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