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契り
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俺と桜は予定通り祝言が行われた。
奥宮で神聖な儀式が執り行われた。
白無垢の桜の姿はとても清らかで綺麗だった。
誰もがその桜の姿に見とれていたであろう。
祝言が終ると俺と桜は新居に帰る。
桜が湯浴みをしてる間に俺は月を見ながら酒を飲んでいた。
どんな時でも酒は美味い。
それでも酒がまずいと感じた時は己が病んでいる証拠だと父上が話していた。
月と今でも覚えている桜の婚礼衣装姿を思い出しながら酒を楽しんでいた。
「手酌酒ではさみしいでしょう」
振り向くと湯浴みを終えた桜が寝間着姿でやってきた。
「私が注ぎますよ」
桜がそう言って徳利をとると俺はお猪口に残っている酒を飲み干し、桜に差し出す。
桜が酒を注いでくれて俺はそれを飲む。
「私も一杯もらってもいいですか?」
「ああ、桜はお酒大丈夫なのか?」
「少しくらいなら。それに今日はおめでたい日ですし」
桜の手にあるお猪口に酒を注いでやる。
湯上りだからかお酒が効いたのか頬が少し赤くなっていた。
「大丈夫か?」
「酔いつぶれたら旦那様が介抱してくれるのでしょ?」
旦那様か……。
「なあ、桜」
「どうなさいました?」
「俺と桜の2人でいる時くらいもっと気を楽にしないか?」
そんな堅苦しい言葉遣いを一日中されたらこっちも疲れる。
「では何とお呼びすれば?」
「竜樹でいいよ」
「分かりました。……竜樹、夜も更けたしそろそろお布団に入らない?」
桜がそう言うと俺は一気に酔いが醒めた。
桜が指差す方向には布団が敷かれてある。
俺と桜が一緒に寝れるように……。
今宵は新婚初夜。
祝宴の時も散々兄上から冷やかされていた。
まだ俺もそんなに詳しいわけじゃないけど、桜にちゃんとしてやれるのか不安があった。
だから酔って寝てしまおうという目論見もあったのだけど。
「竜樹?」
「あ、ああ。今日も疲れたしゆっくり寝ようか」
「……え?」
桜が寂しそうな顔をしている。
理由は聞くまでもない。
「竜樹。私じゃまだ幼いかな?」
「そ、そんな事無いよ」
「じゃあ、魅力がない?」
「十分綺麗な妻だよ」
「ならどうして?」
「俺……初めてで未熟だから」
そう言うと桜は笑いだした。
「意地悪な旦那様だね。私だって初めてだよ」
条件は同じだと桜は言う。
「初めてが竜樹だという事が嬉しいの。だから緊張しないで」
「下手だったらごめん」
「本当に意地悪なんだから。そんなの私に判断する基準がないじゃない」
あ、そうか。
納得した俺の顔を見ると、桜は俺に抱きついてきた。
「夢じゃないんだね。私まだ夢を見てるみたいで……」
「……なら、夢じゃないと確かめないといけないな」
「優しくしてね」
「努力するよ」
そうして二人で布団に入る。
桜は目を閉じる。
体が少し震えていた。
大丈夫だとしっかり抱擁してやる。
月が雲で隠れてひときわ夜が暗くなる。
翌日から俺と桜の新婚生活がはじまった。
桜が朝食の支度をしてる間、俺は薪割り。
桜が準備を終えると2人で宮にお勤めに行く。
帰る時も同じ時間。
お勤めの間は桜の周りには警護の兵がいる。
それ以外は常に俺が桜の側にいてやる。
桜を狙おうとする輩はいたが、俺が全員退けた。
甘い生活は3ヶ月ほど続いた。
桜も新婚当初は緊張していたみたいだったけど、今は慣れたようで元気に明るく振舞っている。
今、天の国と戦争状態にあるのが嘘のような平穏な生活。
しかしそれも長くは続かなかった。
「おーい竜樹はいるか?」
「どなた様でしょうか……兄上?」
その声を聞いて俺も玄関に行くと桜の兄上と俺の兄上がいた。
「竜樹、すぐに家に帰ってきなさい。その間俺と楓殿が桜を警護するから」
「なにかあったのですか?」
「帰れば分かる」
兄上の表情は険しかった。
まさか父上たちに何かあったのか?
俺は2人に桜を任せると家に向かう。
それが俺達が夫婦になって最初の試練だった。
奥宮で神聖な儀式が執り行われた。
白無垢の桜の姿はとても清らかで綺麗だった。
誰もがその桜の姿に見とれていたであろう。
祝言が終ると俺と桜は新居に帰る。
桜が湯浴みをしてる間に俺は月を見ながら酒を飲んでいた。
どんな時でも酒は美味い。
それでも酒がまずいと感じた時は己が病んでいる証拠だと父上が話していた。
月と今でも覚えている桜の婚礼衣装姿を思い出しながら酒を楽しんでいた。
「手酌酒ではさみしいでしょう」
振り向くと湯浴みを終えた桜が寝間着姿でやってきた。
「私が注ぎますよ」
桜がそう言って徳利をとると俺はお猪口に残っている酒を飲み干し、桜に差し出す。
桜が酒を注いでくれて俺はそれを飲む。
「私も一杯もらってもいいですか?」
「ああ、桜はお酒大丈夫なのか?」
「少しくらいなら。それに今日はおめでたい日ですし」
桜の手にあるお猪口に酒を注いでやる。
湯上りだからかお酒が効いたのか頬が少し赤くなっていた。
「大丈夫か?」
「酔いつぶれたら旦那様が介抱してくれるのでしょ?」
旦那様か……。
「なあ、桜」
「どうなさいました?」
「俺と桜の2人でいる時くらいもっと気を楽にしないか?」
そんな堅苦しい言葉遣いを一日中されたらこっちも疲れる。
「では何とお呼びすれば?」
「竜樹でいいよ」
「分かりました。……竜樹、夜も更けたしそろそろお布団に入らない?」
桜がそう言うと俺は一気に酔いが醒めた。
桜が指差す方向には布団が敷かれてある。
俺と桜が一緒に寝れるように……。
今宵は新婚初夜。
祝宴の時も散々兄上から冷やかされていた。
まだ俺もそんなに詳しいわけじゃないけど、桜にちゃんとしてやれるのか不安があった。
だから酔って寝てしまおうという目論見もあったのだけど。
「竜樹?」
「あ、ああ。今日も疲れたしゆっくり寝ようか」
「……え?」
桜が寂しそうな顔をしている。
理由は聞くまでもない。
「竜樹。私じゃまだ幼いかな?」
「そ、そんな事無いよ」
「じゃあ、魅力がない?」
「十分綺麗な妻だよ」
「ならどうして?」
「俺……初めてで未熟だから」
そう言うと桜は笑いだした。
「意地悪な旦那様だね。私だって初めてだよ」
条件は同じだと桜は言う。
「初めてが竜樹だという事が嬉しいの。だから緊張しないで」
「下手だったらごめん」
「本当に意地悪なんだから。そんなの私に判断する基準がないじゃない」
あ、そうか。
納得した俺の顔を見ると、桜は俺に抱きついてきた。
「夢じゃないんだね。私まだ夢を見てるみたいで……」
「……なら、夢じゃないと確かめないといけないな」
「優しくしてね」
「努力するよ」
そうして二人で布団に入る。
桜は目を閉じる。
体が少し震えていた。
大丈夫だとしっかり抱擁してやる。
月が雲で隠れてひときわ夜が暗くなる。
翌日から俺と桜の新婚生活がはじまった。
桜が朝食の支度をしてる間、俺は薪割り。
桜が準備を終えると2人で宮にお勤めに行く。
帰る時も同じ時間。
お勤めの間は桜の周りには警護の兵がいる。
それ以外は常に俺が桜の側にいてやる。
桜を狙おうとする輩はいたが、俺が全員退けた。
甘い生活は3ヶ月ほど続いた。
桜も新婚当初は緊張していたみたいだったけど、今は慣れたようで元気に明るく振舞っている。
今、天の国と戦争状態にあるのが嘘のような平穏な生活。
しかしそれも長くは続かなかった。
「おーい竜樹はいるか?」
「どなた様でしょうか……兄上?」
その声を聞いて俺も玄関に行くと桜の兄上と俺の兄上がいた。
「竜樹、すぐに家に帰ってきなさい。その間俺と楓殿が桜を警護するから」
「なにかあったのですか?」
「帰れば分かる」
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まさか父上たちに何かあったのか?
俺は2人に桜を任せると家に向かう。
それが俺達が夫婦になって最初の試練だった。
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