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第4章
母上の導きかも?
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僕は手の中の髪飾りを呆然と見つめる。
サラに「もう来なくていい」って言われたあの日、ルークはこの髪飾りを見て「ドネロン伯爵の」と口走ってたんだっけ。
だとしたら……。
「あら? そこにいらっしゃるのは……」
僕の後ろから聞こえた声には、覚えがあった。
振り向くと、立っていたのは四十代半ばくらいの女性だ。栗色の髪をきっちりと後ろにまとめて、手入れの行き届いた服を着こなしている。
あれ? 服と雰囲気は違うけど、もしかして。
僕が気づくと同時に、彼女もパッと顔を輝かせた。
「やっぱり! パートリッジ伯爵家の、グレアム坊ちゃまですね!」
「もしかしてニコール? 久しぶりだね、元気だった?」
「……私のこと、覚えていてくださったのですね」
「もちろんだよ。」
「ありがとうございます」
ニコールは指先で涙をぬぐった。
彼女はパートリッジ家のメイドだった女性だ。主に母上のそばにいたから、僕の面倒もよく見てくれた。
母上が亡くなったあと、ニコールも紹介状を持って別の屋敷へ移って行った。家を離れる前に僕にも挨拶に来てくれたのを覚えてるよ。
まさかこんなところでまた会えるなんて、なんだか嬉しいな。
僕がそう言うと、ニコールも「本当に」と言って微笑む。
「亡きパートリッジの奥様のお導きですね」
「きっとそうだよ。ニコールは今、どこで働いてるんだっけ」
「ドネロン伯爵のお屋敷でございます」
ん?
「今日は劇場の方へ、伯爵様のお着替えを届けに参ったのです」
ん? んん? んんん?
「劇場?」
「はい。こちらの劇場ですよ」
と言ってニコールは『約束の花束をあなたに』という大きな看板を掲げている建物を指さした。ええと……。
「この劇場はドネロン伯爵と関係があるの?」
「はい。旦那様が出資しておられる劇場のひとつなのです。ほら、装飾に蝶と花が使われておりますよね。あれはドネロン家の紋章を模したものですよ」
僕の胸の奥で点と点が繋がった。
なるほど!
姉上の髪飾りと、ルークの言葉と、劇場の蝶と花、それにドネロン伯爵は、こんな形で絡んでたんだね。
だけどまだ分からないことがある。姉上とドネロン伯爵の関係はなんだろう。ここが明らかにならないと、僕が王都に来た意味がないんだよなぁ。
僕がそっとため息をつくと、ニコールがそばに来てひそひそと囁く。
「あのう、グレアム坊ちゃま。もしかすると私は、坊ちゃまの手助けができるかもしれません」
「えっ?」
ぎくりとする僕はニコールの方へ顔を向ける。
僕は今、姉上とドネロン伯爵の関係について考えてた。もしかしてニコールはそのことを知って……? いやいや、僕の心を読まないとそんなところまで気が回ったりしないないよね? でもニコールは「役に立てるかも」って言ったし……。
ニコールの言葉をどう捉えていいのか分からない僕が黙っていると、ニコールは「これは、秘密ですけどね」と言って更に声を潜める。
「三日後でよろしければ、坊ちゃまをこっそりドネロン伯爵のお屋敷にご案内できますよ。そこで坊ちゃまの望みを叶えて差し上げられると思うんです」
瞬きも出来ない僕の目を見返しながら、ニコールは秘密を共有するみたいに「ふふ」と笑う。
「もちろん完全な形ではありません。ですが十分な状態ではあると思います」
「な、なんの話をしてるの?」
ニコールはゆっくり口を開いた。
「『約束の花束をあなたに』の上演に関する話ですよ」
……はい?
「旦那様は召使いたちの慰労のため、王都のお屋敷にある劇場で芝居を上演してくださるのです。ここしばらくはずっと『約束の花束をあなたに』が演じられております。三日後に行われるその日も、同じ演目なんですよ」
ニコールの声はとっても誇らしげだった。
反して僕はちょっぴり落胆する。姉上とドネロン伯爵の関係を教えてもらえるわけじゃなかったのかぁ。
考えてみれば当たり前だ。もしもニコールが姉上たちの話を始めたら、それこそ僕の心を読む魔法使いだもんね。
でも、ニコールはどうして『約束の花束をあなたに』の上演の話をし始めたんだろう?
僕が問いかけると、ニコールは「分かってますもの」と言いながら笑顔を見せる。
「『約束の花束をあなたに』はかなり人気ですから、券を手に入れるなんてほぼ不可能になってますものね。しかもずいぶん値段も高くなってしまいましたし」
なるほど。ニコールは僕が『約束の花束をあなたに』を観られなくてガッカリしてると思ったんだね。
別に僕は『約束の花束をあなたに』が気になって仕方ない、ってわけじゃない。だから別に観られなくても――。
……待てよ。
ニコールはなんて言った? 『約束の花束をあなたに』はどこで上映されるって?
少し考えた僕はニコールの方へ身を屈め、囁く。
「その劇は僕が観ても大丈夫なの?」
「本当は駄目なんですけれど、特別です。坊ちゃまの身元は分かっていますし、坊ちゃまが変なことはしないと私も信じておりますから」
「ありがとう!」
劇は観られるものなら観ておきたいけど、どうしてもってわけじゃない。
だけどドネロン伯爵邸に入ることができるなら、僕の知りたい内容に関して手がかりがつかめるんじゃないかと思うんだ。状況次第では伯爵家の関係者とつながりができるかもしれないし。
うん、先が見えてきた! いいぞ!
「……ただ」
ニコールは少し悪戯めいた笑みを浮かべる。
「観劇は使用人と、その身内に限るんです。私には若い男性の縁者がいませんから、坊ちゃまには女性のフリをしていただくことになります」
「へ? 女性?」
思わず間の抜けた声が出てしまった。
ニコールは真面目な顔でうなずく。
「ええ。幸いにも私の下の娘は坊ちゃまと同い年なんです。今は遠方のお屋敷で働いてるんですが、ちょうど王都へ来ていたことにしましょう」
待って待って。
それって、もしかして……。
「僕は……女装、するの……?」
「はい。当日はこのニコールが、坊ちゃまを立派な女性にしてみせます!」
言ってニコールはくすっと笑った。
「ご心配にはおよびませんよ。坊ちゃまは線も細いですし、少し整えれば十分に女性として通用するはずです」
うん、僕が女性として通用するっぽいのはもう分かってるんだ。何しろこの数か月、僕は二週間おきに“姉上”になってたからね。
だけどさぁ。
「はあ……」
ため息が自然にこぼれる。
まさか王都に来てまで女装することになるとは思わなかったよ。あーあ……。
サラに「もう来なくていい」って言われたあの日、ルークはこの髪飾りを見て「ドネロン伯爵の」と口走ってたんだっけ。
だとしたら……。
「あら? そこにいらっしゃるのは……」
僕の後ろから聞こえた声には、覚えがあった。
振り向くと、立っていたのは四十代半ばくらいの女性だ。栗色の髪をきっちりと後ろにまとめて、手入れの行き届いた服を着こなしている。
あれ? 服と雰囲気は違うけど、もしかして。
僕が気づくと同時に、彼女もパッと顔を輝かせた。
「やっぱり! パートリッジ伯爵家の、グレアム坊ちゃまですね!」
「もしかしてニコール? 久しぶりだね、元気だった?」
「……私のこと、覚えていてくださったのですね」
「もちろんだよ。」
「ありがとうございます」
ニコールは指先で涙をぬぐった。
彼女はパートリッジ家のメイドだった女性だ。主に母上のそばにいたから、僕の面倒もよく見てくれた。
母上が亡くなったあと、ニコールも紹介状を持って別の屋敷へ移って行った。家を離れる前に僕にも挨拶に来てくれたのを覚えてるよ。
まさかこんなところでまた会えるなんて、なんだか嬉しいな。
僕がそう言うと、ニコールも「本当に」と言って微笑む。
「亡きパートリッジの奥様のお導きですね」
「きっとそうだよ。ニコールは今、どこで働いてるんだっけ」
「ドネロン伯爵のお屋敷でございます」
ん?
「今日は劇場の方へ、伯爵様のお着替えを届けに参ったのです」
ん? んん? んんん?
「劇場?」
「はい。こちらの劇場ですよ」
と言ってニコールは『約束の花束をあなたに』という大きな看板を掲げている建物を指さした。ええと……。
「この劇場はドネロン伯爵と関係があるの?」
「はい。旦那様が出資しておられる劇場のひとつなのです。ほら、装飾に蝶と花が使われておりますよね。あれはドネロン家の紋章を模したものですよ」
僕の胸の奥で点と点が繋がった。
なるほど!
姉上の髪飾りと、ルークの言葉と、劇場の蝶と花、それにドネロン伯爵は、こんな形で絡んでたんだね。
だけどまだ分からないことがある。姉上とドネロン伯爵の関係はなんだろう。ここが明らかにならないと、僕が王都に来た意味がないんだよなぁ。
僕がそっとため息をつくと、ニコールがそばに来てひそひそと囁く。
「あのう、グレアム坊ちゃま。もしかすると私は、坊ちゃまの手助けができるかもしれません」
「えっ?」
ぎくりとする僕はニコールの方へ顔を向ける。
僕は今、姉上とドネロン伯爵の関係について考えてた。もしかしてニコールはそのことを知って……? いやいや、僕の心を読まないとそんなところまで気が回ったりしないないよね? でもニコールは「役に立てるかも」って言ったし……。
ニコールの言葉をどう捉えていいのか分からない僕が黙っていると、ニコールは「これは、秘密ですけどね」と言って更に声を潜める。
「三日後でよろしければ、坊ちゃまをこっそりドネロン伯爵のお屋敷にご案内できますよ。そこで坊ちゃまの望みを叶えて差し上げられると思うんです」
瞬きも出来ない僕の目を見返しながら、ニコールは秘密を共有するみたいに「ふふ」と笑う。
「もちろん完全な形ではありません。ですが十分な状態ではあると思います」
「な、なんの話をしてるの?」
ニコールはゆっくり口を開いた。
「『約束の花束をあなたに』の上演に関する話ですよ」
……はい?
「旦那様は召使いたちの慰労のため、王都のお屋敷にある劇場で芝居を上演してくださるのです。ここしばらくはずっと『約束の花束をあなたに』が演じられております。三日後に行われるその日も、同じ演目なんですよ」
ニコールの声はとっても誇らしげだった。
反して僕はちょっぴり落胆する。姉上とドネロン伯爵の関係を教えてもらえるわけじゃなかったのかぁ。
考えてみれば当たり前だ。もしもニコールが姉上たちの話を始めたら、それこそ僕の心を読む魔法使いだもんね。
でも、ニコールはどうして『約束の花束をあなたに』の上演の話をし始めたんだろう?
僕が問いかけると、ニコールは「分かってますもの」と言いながら笑顔を見せる。
「『約束の花束をあなたに』はかなり人気ですから、券を手に入れるなんてほぼ不可能になってますものね。しかもずいぶん値段も高くなってしまいましたし」
なるほど。ニコールは僕が『約束の花束をあなたに』を観られなくてガッカリしてると思ったんだね。
別に僕は『約束の花束をあなたに』が気になって仕方ない、ってわけじゃない。だから別に観られなくても――。
……待てよ。
ニコールはなんて言った? 『約束の花束をあなたに』はどこで上映されるって?
少し考えた僕はニコールの方へ身を屈め、囁く。
「その劇は僕が観ても大丈夫なの?」
「本当は駄目なんですけれど、特別です。坊ちゃまの身元は分かっていますし、坊ちゃまが変なことはしないと私も信じておりますから」
「ありがとう!」
劇は観られるものなら観ておきたいけど、どうしてもってわけじゃない。
だけどドネロン伯爵邸に入ることができるなら、僕の知りたい内容に関して手がかりがつかめるんじゃないかと思うんだ。状況次第では伯爵家の関係者とつながりができるかもしれないし。
うん、先が見えてきた! いいぞ!
「……ただ」
ニコールは少し悪戯めいた笑みを浮かべる。
「観劇は使用人と、その身内に限るんです。私には若い男性の縁者がいませんから、坊ちゃまには女性のフリをしていただくことになります」
「へ? 女性?」
思わず間の抜けた声が出てしまった。
ニコールは真面目な顔でうなずく。
「ええ。幸いにも私の下の娘は坊ちゃまと同い年なんです。今は遠方のお屋敷で働いてるんですが、ちょうど王都へ来ていたことにしましょう」
待って待って。
それって、もしかして……。
「僕は……女装、するの……?」
「はい。当日はこのニコールが、坊ちゃまを立派な女性にしてみせます!」
言ってニコールはくすっと笑った。
「ご心配にはおよびませんよ。坊ちゃまは線も細いですし、少し整えれば十分に女性として通用するはずです」
うん、僕が女性として通用するっぽいのはもう分かってるんだ。何しろこの数か月、僕は二週間おきに“姉上”になってたからね。
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