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第4章
意外なことに
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僕は赤の曜日をじっと宿で耐え、ついでに食事量を減らし空腹にも耐えて、いよいよ青の曜日を迎えた。
ニコールと会うのは午後だけど、僕は朝から外へ出る。
なんでかといえば理由は簡単、女装の準備をしなきゃならないから。
……はあ。王都でも女装するなるなんて思わなかったなぁ……。
向かうのは劇場の並ぶ『まがりかえで通り』から一本裏手に入った『すぐもみじ通り』だ。
この『すぐもみじ通り』というのは『まがりかえで通り』を支える場所みたいなところ。通りの両側には、衣装、化粧、かつら、小道具なんかを販売修理する職人さんの店がずらっと並んでるんだ。
入口や壁には劇のポスターが何枚も貼られている。店ごとに内容が違うから、もしかしたら職人さんたちはそれぞれ特定の劇場と関わりがあるのかもしれないね。
僕の目的地はそんな『すぐもみじ通り』の途中にある、おしゃれな水色の壁の店だった。
ここはいわゆる貸衣装屋さん。
劇の登場人物と同じような衣装が着られるということもあって賑わってるらしい。今も窓の向こうには数組のお客さんがいて、店員さんと話してる。
そんな中で「女性用の衣装を借りたい」って言うのは嫌だけど、仕方ない。
意を決して僕は扉を開ける。香水と化粧の匂いがふわっと通りへ流れて行った。
「いらっしゃいませー」
奥から出てきたのは陽気そうな女性店員だ。
……なんか顔つきとか体型がうちのメイドに似てるぞ……。
「すみません、衣装を貸してもらえますか」
「はーい! どの劇の衣装にします? いまの人気はやっぱり『約束の花束をあなたに』ですよ! ムダルの衣装を着て意中の女性にプロポーズっていうのがですねえー!」
そこまで言って店員さんは「あちゃー」と言いたそうな表情になる。
「プロポーズって言葉を聞いてションボリしちゃったお客さんはもしかして、失恋したばっかりですか?」
どうしてそんなことを大きい声で言うんだぁぁぁ!
ほら、周囲のお客がちらりと僕を見るじゃないか。みんなして「あちゃー」って表情になるから僕はすごく気まずいよ!
でも店員さんは周囲のことなんてまったくお構いなし。
「お客さんったらイイオトコなのに残念ですねえ。飴あげますから元気出してくださいな。大丈夫、またすぐ素敵な恋に出会えますって!」
ダメだ。この店員さんは見た目だけじゃなく、性格までうちのメイドにそっくりだ。
放っておくとひたすら余計なことを言いつづけるぞ、僕には分かる。だってうちのメイドがそうだから。
よし。ここは強引に話を進めよう。
「実は探してる服がありまして」
「はいはい、どんな衣装ですか?」
「……あんまり大きい声で言わないでもらいたいんですけど」
「もちろんですとも。アタシの声は小さいことで有名ですからご安心くださいな!」
いや、このやりとりでさえ、店の中にわんわん響いてるよね?
不安しかないけど、ほかの店員さんはみんな接客中みたいだ。僕は仕方なくこの店員さんに話を切りだす。
「劇の衣装じゃなくて、ただの女性用の服を探してるんです。普通の人がちょっとおしゃれをしてる、くらいの雰囲気のものがいいんですけど。ありますか?」
僕が扮するのは劇の女性じゃなくて現実の女性、ニコールの娘さんだ。
彼女は別の町にある貴族の屋敷で侍女として働いてるらしい。だったらきっと、ドレスのようなものは着ないはず。でも、普通の町の人になりたいなんて願望を持つ人は少なそうだし……大丈夫かな。
少し不安だけど尋ねてみたら、店員さんはニッコリ笑ってうなずいた。
「ありますよー! 世の中には違う性別になってみたいという願望をお持ちの方も多くおられますからね、うちの店ではそういう方のために、普通の男性服や女性服も置いてるんです! はい、そこ、通してくださいな! お客さんご希望の“普通の女性服”はこちらでございまーす! サイズもバッチリ揃えてますよー!」
だから!
声が!
大きいって!
ほら、店のお客さんが全員こっちを見てるじゃないか!
「どの色にします? 青? 緑? そうだ、失恋した気持ちをパーっと明るくするためにも綺麗なピンクにしちゃいましょうか! もちろんカツラもありますよ! こっちの金のロングなんて、お客さんの髪が伸びたみたいでいいんじゃないですか? 靴も可愛いのがいっぱいですし、化粧道具もそろってますからね! ちゃーんと綺麗にできますからね! まずはこっちの試着室へどうぞどうぞー!」
ああ……やっぱりこの店員さんはうちのメイドにそっくりだ……。
何かを言い返す気力もなくなった僕は、店員さんがめくってくれた分厚いカーテンの向こうへよろよろと進んだ。
試着室っていうくらいだからごく小さな場所を想像したけど、僕が思っていたよりずっと立派な部屋だった。
小さな控室とでも言うのかな。壁には淡い黄色の紙が貼られてて、天井には小さなシャンデリアが下がっている。
一番奥には大きな姿見鏡があって、横の壁には小ぶりなドレッサーが置かれている。
そうして窓際を目にして、僕は息が止まるかと思うほどびっくりした。
白い出窓には優しいオレンジ色のカーテンがかかってる。
そしてその前のオシャレな花瓶が置かれていた。
飾られているのは薄紅色の花。一本の茎の先に、フリルを重ねたみたいな大ぶりの花が一つ、咲いている。しかもそれが何本も。
間違いない。
あれは『暁の王女』だ!
慌てて近づいて僕は気がついた。この花は布で作られた造花だ。
でも、本物じゃないとはいえ、どうしてここに『暁の王女』が?
「はーい、お待たせしました! アタシのセンスでお客さんに似合いそうな衣装一式を選んで来ちゃいましたよ! ……おんや?」
店員さんがトコトコと足音を立てて僕の横までやってくる。
「お客さん、お花も好きなんですね! この花は『約束の花束をあなたに』の小道具なんですよ!」
「えっ?」
「くっふっふ。劇中の花とは違うぞーって言いたいんでしょう? 分かります分かります!」
いや、劇を観たことないから言わないけど……じゃなくて。
『約束の花束をあなたに』の小道具だったって? 『暁の王女』に似た、この花が? 本当に?
「実はですね、『約束の花束をあなたに』の花って、最初はこの形だったんですよ。うちは“上演してる劇の衣装ならなんでも揃う”が売りなもんんで、『約束の花束をあなたに』上演が始まった翌日には、衣装も小道具も全部用意したんです。この花もその一つだったんですねぇ」
どうやら小劇場で上演していた最初期にはこの形の花が舞台に使われていたらしい。だけど花の構造が複雑で修理が大変なため、すぐ花びらの少ないものに変更された。それが今も劇場で見られる花の姿なんだって。
「合わせてうちの店も花を新しくしたんです。余っちゃったこの初期の花は、もったいないから試着室に飾ってるんですよー。綺麗でしょう?」
「うん……」
そんな事情なんて関係ないよとばかりに、花は窓辺で静かにたたずんでる。
ニコールと会うのは午後だけど、僕は朝から外へ出る。
なんでかといえば理由は簡単、女装の準備をしなきゃならないから。
……はあ。王都でも女装するなるなんて思わなかったなぁ……。
向かうのは劇場の並ぶ『まがりかえで通り』から一本裏手に入った『すぐもみじ通り』だ。
この『すぐもみじ通り』というのは『まがりかえで通り』を支える場所みたいなところ。通りの両側には、衣装、化粧、かつら、小道具なんかを販売修理する職人さんの店がずらっと並んでるんだ。
入口や壁には劇のポスターが何枚も貼られている。店ごとに内容が違うから、もしかしたら職人さんたちはそれぞれ特定の劇場と関わりがあるのかもしれないね。
僕の目的地はそんな『すぐもみじ通り』の途中にある、おしゃれな水色の壁の店だった。
ここはいわゆる貸衣装屋さん。
劇の登場人物と同じような衣装が着られるということもあって賑わってるらしい。今も窓の向こうには数組のお客さんがいて、店員さんと話してる。
そんな中で「女性用の衣装を借りたい」って言うのは嫌だけど、仕方ない。
意を決して僕は扉を開ける。香水と化粧の匂いがふわっと通りへ流れて行った。
「いらっしゃいませー」
奥から出てきたのは陽気そうな女性店員だ。
……なんか顔つきとか体型がうちのメイドに似てるぞ……。
「すみません、衣装を貸してもらえますか」
「はーい! どの劇の衣装にします? いまの人気はやっぱり『約束の花束をあなたに』ですよ! ムダルの衣装を着て意中の女性にプロポーズっていうのがですねえー!」
そこまで言って店員さんは「あちゃー」と言いたそうな表情になる。
「プロポーズって言葉を聞いてションボリしちゃったお客さんはもしかして、失恋したばっかりですか?」
どうしてそんなことを大きい声で言うんだぁぁぁ!
ほら、周囲のお客がちらりと僕を見るじゃないか。みんなして「あちゃー」って表情になるから僕はすごく気まずいよ!
でも店員さんは周囲のことなんてまったくお構いなし。
「お客さんったらイイオトコなのに残念ですねえ。飴あげますから元気出してくださいな。大丈夫、またすぐ素敵な恋に出会えますって!」
ダメだ。この店員さんは見た目だけじゃなく、性格までうちのメイドにそっくりだ。
放っておくとひたすら余計なことを言いつづけるぞ、僕には分かる。だってうちのメイドがそうだから。
よし。ここは強引に話を進めよう。
「実は探してる服がありまして」
「はいはい、どんな衣装ですか?」
「……あんまり大きい声で言わないでもらいたいんですけど」
「もちろんですとも。アタシの声は小さいことで有名ですからご安心くださいな!」
いや、このやりとりでさえ、店の中にわんわん響いてるよね?
不安しかないけど、ほかの店員さんはみんな接客中みたいだ。僕は仕方なくこの店員さんに話を切りだす。
「劇の衣装じゃなくて、ただの女性用の服を探してるんです。普通の人がちょっとおしゃれをしてる、くらいの雰囲気のものがいいんですけど。ありますか?」
僕が扮するのは劇の女性じゃなくて現実の女性、ニコールの娘さんだ。
彼女は別の町にある貴族の屋敷で侍女として働いてるらしい。だったらきっと、ドレスのようなものは着ないはず。でも、普通の町の人になりたいなんて願望を持つ人は少なそうだし……大丈夫かな。
少し不安だけど尋ねてみたら、店員さんはニッコリ笑ってうなずいた。
「ありますよー! 世の中には違う性別になってみたいという願望をお持ちの方も多くおられますからね、うちの店ではそういう方のために、普通の男性服や女性服も置いてるんです! はい、そこ、通してくださいな! お客さんご希望の“普通の女性服”はこちらでございまーす! サイズもバッチリ揃えてますよー!」
だから!
声が!
大きいって!
ほら、店のお客さんが全員こっちを見てるじゃないか!
「どの色にします? 青? 緑? そうだ、失恋した気持ちをパーっと明るくするためにも綺麗なピンクにしちゃいましょうか! もちろんカツラもありますよ! こっちの金のロングなんて、お客さんの髪が伸びたみたいでいいんじゃないですか? 靴も可愛いのがいっぱいですし、化粧道具もそろってますからね! ちゃーんと綺麗にできますからね! まずはこっちの試着室へどうぞどうぞー!」
ああ……やっぱりこの店員さんはうちのメイドにそっくりだ……。
何かを言い返す気力もなくなった僕は、店員さんがめくってくれた分厚いカーテンの向こうへよろよろと進んだ。
試着室っていうくらいだからごく小さな場所を想像したけど、僕が思っていたよりずっと立派な部屋だった。
小さな控室とでも言うのかな。壁には淡い黄色の紙が貼られてて、天井には小さなシャンデリアが下がっている。
一番奥には大きな姿見鏡があって、横の壁には小ぶりなドレッサーが置かれている。
そうして窓際を目にして、僕は息が止まるかと思うほどびっくりした。
白い出窓には優しいオレンジ色のカーテンがかかってる。
そしてその前のオシャレな花瓶が置かれていた。
飾られているのは薄紅色の花。一本の茎の先に、フリルを重ねたみたいな大ぶりの花が一つ、咲いている。しかもそれが何本も。
間違いない。
あれは『暁の王女』だ!
慌てて近づいて僕は気がついた。この花は布で作られた造花だ。
でも、本物じゃないとはいえ、どうしてここに『暁の王女』が?
「はーい、お待たせしました! アタシのセンスでお客さんに似合いそうな衣装一式を選んで来ちゃいましたよ! ……おんや?」
店員さんがトコトコと足音を立てて僕の横までやってくる。
「お客さん、お花も好きなんですね! この花は『約束の花束をあなたに』の小道具なんですよ!」
「えっ?」
「くっふっふ。劇中の花とは違うぞーって言いたいんでしょう? 分かります分かります!」
いや、劇を観たことないから言わないけど……じゃなくて。
『約束の花束をあなたに』の小道具だったって? 『暁の王女』に似た、この花が? 本当に?
「実はですね、『約束の花束をあなたに』の花って、最初はこの形だったんですよ。うちは“上演してる劇の衣装ならなんでも揃う”が売りなもんんで、『約束の花束をあなたに』上演が始まった翌日には、衣装も小道具も全部用意したんです。この花もその一つだったんですねぇ」
どうやら小劇場で上演していた最初期にはこの形の花が舞台に使われていたらしい。だけど花の構造が複雑で修理が大変なため、すぐ花びらの少ないものに変更された。それが今も劇場で見られる花の姿なんだって。
「合わせてうちの店も花を新しくしたんです。余っちゃったこの初期の花は、もったいないから試着室に飾ってるんですよー。綺麗でしょう?」
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