17 / 64
第2章
どうしてこうなった?
しおりを挟む
眠い目をこすりながら明け方に自室へ行った僕だけど、困ったことに扉を開けることすらできなかった。理由はもちろん姉上だ。
「ここは淑女の部屋ですわよ! 時間というものを考えなさい!」
なんて追い返されたんだけど、あのう、もともとそこは僕の部屋で……って反論しても相手はあの姉上だ。聞く耳を持たないだろうなってことは理解できるから、僕はすごすごと父上の部屋に戻るしかなかった。
困ったなあ、今日は僕も忙しいんだよ。メイドと約束したから町へ石鹸を買いに行かなきゃいけない。その前にできれば先に姉上と話したいことがあったんだ。
まあ、姉上が王都へ帰るのは明日だし、町から戻って来て話をすればいいか。
そう考えて僕は厩舎へ向かう。
昨日も乗った葦毛の馬はぐっすり眠っていた。長距離を移動して疲れたんだな。年寄りだもんね、仕方ないよね。
じゃあってことで、今日の僕は栗毛の馬を引き出した。この馬は若いし足も早いんだけど、気分にムラがあるのが困りものなんだよね。
幸いにも行きは調子良く進んでくれた。でも帰りは動きたい気分じゃなくなったらしくて、のろのろ動いてはすぐに止まる。それをなんとか宥めながら往路の倍以上の時間をかけて本邸に戻ると、姉上はもういなかった。
「どうして……」
「お嬢様は町へ行って、そこで泊まることにしたらしいですよー」
は? 嘘だろ? 僕は当の“町”から戻って来たばっかりなのに!
誰もいない自室で僕が呆然としていると、メイドが「実はですねえ」と言いながら頬をかく。
「坊ちゃんが町へお出かけになったあと、旦那様がお嬢様につきまとってたんですよお。結婚相手はどうなってるんだーとか、ところで知り合いの金持ちからちょっと金を借りられないかーとか、なんかそんなことを言ってましてねえ。お嬢様はしばらく黙ってたんですけど、なんか突然『うるさぁい!』って叫んで……あ、いやー、ちょっと違いますねえ。うーんと」
メイドは大きく息を吸う。
「『ぅうるさぁい!』」
だああっ! 耳が! キーンって!
「ありゃー、やっぱりアタシじゃ似ませんねぇ。えーと……『うるぅぅ、さぁい!』……これもダメだぁ。『うるさぁぁ、い!』……うーん。『うるさぁいぃ!』……もっとこう、ドスが効いていながらも甲高くて、びっくりするくらいに綺麗で……『うぅるさぁい!』『うるっさい!』」
自分がうるさいの分かってる? とか、べつに叫びかたは重要じゃないだろとか、言いたいことはあったけど今の僕はそれどころじゃない。『うるさい』を繰り返すメイドの声を聞きながら、がっくりと膝を折るしかなかった。
ねえ、姉上はさ、昨日『約束の花束をあなたに』って言ってたよね。
姉上が引き合いに出すくらいだから重要なことなんだろうけど、僕、それがどういうものかは知らないんだ。だから全然、心に響かないんだよ……。
厳密に言えばその言葉に聞き覚えはある。つい先月、女装の準備をするため王都へ行ったときに店の中で女性たちが興奮気味に話してたの耳にしたから。
だけど詳しいことは何も分からない。だってそのときの僕ときたら、“王都の”、”女性向けの店”、なんていう見知らぬ場所に、あの口うるさい姉上と一緒にいたんだ。周囲の話に興味深く耳を傾ける余裕なんて、ほんの少しだって生まれるはずがない。
うーん。
わざわざ『約束の花束をあなたに』なんてものを持ちだした姉上は、どういう内容を伝えたかったんだろう?
そこで僕が思い出したのは姉上が持って来てくれた箱だ。あの中にあった話題が書かれた紙に『約束の花束をあなたに』のこともあるんじゃないかな?
僕はまず「うるさぁぁい!」「ヴるさい!」と叫び続けるメイドを部屋の外へ押し出してから大きな箱を開け、姉上が書いたという紙を取り出した。想像通り三枚目に『約束の花束をあなたに』という文字を見つけることができたけど、でも、一緒に書かれていたのは『王都で流行りの演劇』という文字だけ。確かに姉上は「それは物語やお芝居の中だけ」って言ってたから、演劇なのは当然かな。
「だけど他の演目に関しては簡単な説明があるのに、どうして『約束の花束をあなたに』だけは何も書いてないんだろう」
僕は首をひねるけど、ないものはないんだもんね。しょうがないから想像してみようか。
確か昨日の姉上は、身分差のある関係について話すときにこの作品を名前を口に出したんだっけ……。
ははあ、分かったぞ。きっと『約束の花束をあなたに』っていうのは、没落した貴族の男が高い地位を持つ家の女性を誘惑する話なんだ。きっと少し、その……オトナな内容の話なのかもね。だから姉上は内容を書けなかったし、いつか僕が同じように行動するんじゃないかっていう危惧もしてるんだ。うん、そうに違いない。
だけどそんなのは無用の心配だよ。
あと半年、新年の王宮舞踏会が開かれるまでのあいだにサラの婚約者が決まる。僕は“エレノア”としてその手伝いをするんだ。それが、サラのためだから。だって、僕が好きなのはサラなんだから。……ほら、こんな僕が醜聞を巻き起こすわけないだろう?
僕はぎゅっと唇を噛んで箱を開け、明日の授業に必要そうな資料を探す。
あんまり遅くなるまで起きていたくないんだけど、今日は昼に町まで出かけたし、サラのところへ行くのは明日なんだし、いつもより蝋燭代がかかるのは仕方がないよね。
僕は夜が更ける頃まで本を読み、更に思いついて追加の資料も作った。寝台に潜り込んだのは予想よりもずっと遅い時間になったから、またしても僕は寝不足だ。三日連続の寝不足になったせいで目の下の隈《くま》だって最高潮だよ。やれやれ、今日の化粧も濃い目にしなきゃな。
だけどその苦労は報われるはず!
約束の時刻に来た馬車に僕は、先日よりも分厚い紙の束を抱えて乗り込む。
今日の資料は姉上からもらった本を元に作ったもの。ジェフリーに文句なんて絶対に言わせないよ。もちろん隔週の授業に関しての話だって、うまく承諾させてみせるからね!
「ここは淑女の部屋ですわよ! 時間というものを考えなさい!」
なんて追い返されたんだけど、あのう、もともとそこは僕の部屋で……って反論しても相手はあの姉上だ。聞く耳を持たないだろうなってことは理解できるから、僕はすごすごと父上の部屋に戻るしかなかった。
困ったなあ、今日は僕も忙しいんだよ。メイドと約束したから町へ石鹸を買いに行かなきゃいけない。その前にできれば先に姉上と話したいことがあったんだ。
まあ、姉上が王都へ帰るのは明日だし、町から戻って来て話をすればいいか。
そう考えて僕は厩舎へ向かう。
昨日も乗った葦毛の馬はぐっすり眠っていた。長距離を移動して疲れたんだな。年寄りだもんね、仕方ないよね。
じゃあってことで、今日の僕は栗毛の馬を引き出した。この馬は若いし足も早いんだけど、気分にムラがあるのが困りものなんだよね。
幸いにも行きは調子良く進んでくれた。でも帰りは動きたい気分じゃなくなったらしくて、のろのろ動いてはすぐに止まる。それをなんとか宥めながら往路の倍以上の時間をかけて本邸に戻ると、姉上はもういなかった。
「どうして……」
「お嬢様は町へ行って、そこで泊まることにしたらしいですよー」
は? 嘘だろ? 僕は当の“町”から戻って来たばっかりなのに!
誰もいない自室で僕が呆然としていると、メイドが「実はですねえ」と言いながら頬をかく。
「坊ちゃんが町へお出かけになったあと、旦那様がお嬢様につきまとってたんですよお。結婚相手はどうなってるんだーとか、ところで知り合いの金持ちからちょっと金を借りられないかーとか、なんかそんなことを言ってましてねえ。お嬢様はしばらく黙ってたんですけど、なんか突然『うるさぁい!』って叫んで……あ、いやー、ちょっと違いますねえ。うーんと」
メイドは大きく息を吸う。
「『ぅうるさぁい!』」
だああっ! 耳が! キーンって!
「ありゃー、やっぱりアタシじゃ似ませんねぇ。えーと……『うるぅぅ、さぁい!』……これもダメだぁ。『うるさぁぁ、い!』……うーん。『うるさぁいぃ!』……もっとこう、ドスが効いていながらも甲高くて、びっくりするくらいに綺麗で……『うぅるさぁい!』『うるっさい!』」
自分がうるさいの分かってる? とか、べつに叫びかたは重要じゃないだろとか、言いたいことはあったけど今の僕はそれどころじゃない。『うるさい』を繰り返すメイドの声を聞きながら、がっくりと膝を折るしかなかった。
ねえ、姉上はさ、昨日『約束の花束をあなたに』って言ってたよね。
姉上が引き合いに出すくらいだから重要なことなんだろうけど、僕、それがどういうものかは知らないんだ。だから全然、心に響かないんだよ……。
厳密に言えばその言葉に聞き覚えはある。つい先月、女装の準備をするため王都へ行ったときに店の中で女性たちが興奮気味に話してたの耳にしたから。
だけど詳しいことは何も分からない。だってそのときの僕ときたら、“王都の”、”女性向けの店”、なんていう見知らぬ場所に、あの口うるさい姉上と一緒にいたんだ。周囲の話に興味深く耳を傾ける余裕なんて、ほんの少しだって生まれるはずがない。
うーん。
わざわざ『約束の花束をあなたに』なんてものを持ちだした姉上は、どういう内容を伝えたかったんだろう?
そこで僕が思い出したのは姉上が持って来てくれた箱だ。あの中にあった話題が書かれた紙に『約束の花束をあなたに』のこともあるんじゃないかな?
僕はまず「うるさぁぁい!」「ヴるさい!」と叫び続けるメイドを部屋の外へ押し出してから大きな箱を開け、姉上が書いたという紙を取り出した。想像通り三枚目に『約束の花束をあなたに』という文字を見つけることができたけど、でも、一緒に書かれていたのは『王都で流行りの演劇』という文字だけ。確かに姉上は「それは物語やお芝居の中だけ」って言ってたから、演劇なのは当然かな。
「だけど他の演目に関しては簡単な説明があるのに、どうして『約束の花束をあなたに』だけは何も書いてないんだろう」
僕は首をひねるけど、ないものはないんだもんね。しょうがないから想像してみようか。
確か昨日の姉上は、身分差のある関係について話すときにこの作品を名前を口に出したんだっけ……。
ははあ、分かったぞ。きっと『約束の花束をあなたに』っていうのは、没落した貴族の男が高い地位を持つ家の女性を誘惑する話なんだ。きっと少し、その……オトナな内容の話なのかもね。だから姉上は内容を書けなかったし、いつか僕が同じように行動するんじゃないかっていう危惧もしてるんだ。うん、そうに違いない。
だけどそんなのは無用の心配だよ。
あと半年、新年の王宮舞踏会が開かれるまでのあいだにサラの婚約者が決まる。僕は“エレノア”としてその手伝いをするんだ。それが、サラのためだから。だって、僕が好きなのはサラなんだから。……ほら、こんな僕が醜聞を巻き起こすわけないだろう?
僕はぎゅっと唇を噛んで箱を開け、明日の授業に必要そうな資料を探す。
あんまり遅くなるまで起きていたくないんだけど、今日は昼に町まで出かけたし、サラのところへ行くのは明日なんだし、いつもより蝋燭代がかかるのは仕方がないよね。
僕は夜が更ける頃まで本を読み、更に思いついて追加の資料も作った。寝台に潜り込んだのは予想よりもずっと遅い時間になったから、またしても僕は寝不足だ。三日連続の寝不足になったせいで目の下の隈《くま》だって最高潮だよ。やれやれ、今日の化粧も濃い目にしなきゃな。
だけどその苦労は報われるはず!
約束の時刻に来た馬車に僕は、先日よりも分厚い紙の束を抱えて乗り込む。
今日の資料は姉上からもらった本を元に作ったもの。ジェフリーに文句なんて絶対に言わせないよ。もちろん隔週の授業に関しての話だって、うまく承諾させてみせるからね!
1
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
モブの私がなぜかヒロインを押し退けて王太子殿下に選ばれました
みゅー
恋愛
その国では婚約者候補を集め、その中から王太子殿下が自分の婚約者を選ぶ。
ケイトは自分がそんな乙女ゲームの世界に、転生してしまったことを知った。
だが、ケイトはそのゲームには登場しておらず、気にせずそのままその世界で自分の身の丈にあった普通の生活をするつもりでいた。だが、ある日宮廷から使者が訪れ、婚約者候補となってしまい……
そんなお話です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さくら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
寵愛の花嫁は毒を愛でる~いじわる義母の陰謀を華麗にスルーして、最愛の公爵様と幸せになります~
紅葉山参
恋愛
アエナは貧しい子爵家から、国の英雄と名高いルーカス公爵の元へと嫁いだ。彼との政略結婚は、彼の底なしの優しさと、情熱的な寵愛によって、アエナにとってかけがえのない幸福となった。しかし、その幸福を妬み、毎日のように粘着質ないじめを繰り返す者が一人、それは夫の継母であるユーカ夫人である。
「たかが子爵の娘が、公爵家の奥様面など」 ユーカ様はそう言って、私に次から次へと理不尽な嫌がらせを仕掛けてくる。大切な食器を隠したり、ルーカス様に嘘の告げ口をしたり、社交界で恥をかかせようとしたり。
だが、私は決して挫けない。愛する公爵様との穏やかな日々を守るため、そして何より、彼が大切な家族と信じているユーカ様を悲しませないためにも、私はこの毒を静かに受け流すことに決めたのだ。
誰も気づかないほど巧妙に、いじめを優雅にスルーするアエナ。公爵であるあなたに心配をかけまいと、彼女は今日も微笑みを絶やさない。しかし、毒は徐々に、確実に、その濃度を増していく。ついに義母は、アエナの命に関わるような、取り返しのつかない大罪に手を染めてしまう。
愛と策略、そして運命の結末。この溺愛系ヒロインが、華麗なるスルー術で、最愛の公爵様との未来を掴み取る、痛快でロマンティックな物語の幕開けです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる