87 / 97
86.ディティ本山②
しおりを挟む
「力は使うなと言っただろ」
「そうだけど…。試してみたかったし、これ以上誰かにバレるのはまずいと思って…」
アーキルさんの屋敷から戻った私はさっそくレグからお説教を食らってしまった。
目の前に座るレグは怒りのオーラを出して私を睨みつけ、隣に座るセトさんは私の体調を心配している。
ちょっと心臓が熱くなって頭が痛くなったけど大丈夫。どこも痛くない。
いくら大丈夫だと伝えても心配のあまり怒りが収まらないレグに言い訳をしつつ、最後に謝罪をするとめちゃくちゃ重たい溜息を吐かれた。
「頼むから使うな」
「わかったよ…」
「本当に体調は大丈夫なんだな?」
「うん。問題ないよ」
「それでもいきなり倒れるかもしれませんし、今日はもうお休み下さい」
「大丈夫だけど…」
「トワコ」
「わかりました…。寝ます」
「お風呂の準備をしてきますので少々お待ち下さい」
「はーい」
シャルルさんとアルファさんはまだ戻って来ていない。
セトさんが離れ、気まずいなかレグと二人きりになるのはちょっと…。
チラリとレグを見るとまだ睨んでくるので思わず目を反らす。
心配してくれるのはわかるよ。前に何日も寝込んでしまったし、鼻血も出しちゃったし…。
でも今回はアーキルさんだけにしか使ってない。
「まだ何か言いたそうな顔をしてるなぁ、トワコ…」
「反省してますっ」
使うなとあれだけ言われたのに使ってしまった私が悪い。
諦めて再び始まる説教をひたすら謝罪と「はい」だけで乗り越えようとするも、なかなか終わらない…!
子供じゃないんだから何回も同じこと言わなくてもいいのに…。
そんな態度が出てたのかさらに説教に力が加わる。
「(もー…!)レグ、私もうちゃんと反省してるよ。みんなに迷惑かけたくないから使っちゃったけど、今度は勝手に使わないって約束する」
「そう言ってどうせまた使う気だろう」
「大好きなレグからのお願いだもん。今度こそちゃんと約束するよ! 使う前に相談だってする!」
「…」
「好きだよレグ。大好き。レグの怒った顔は怖いからいつもの優しいレグに戻ってほしいな?」
「ならあと十回言え」
「ぅえっ!? あー…えっと、優しいレグが好き。気遣ってくれるとこも好き。本読んでる姿も格好よくて好き。たまに圧かけてくるけど心配してくれるレグが好き。一緒に寝ると安心するとこも好き。強いとこも好き…。えっと…身体が大きくて抱き着きやすいとこも好き。隣にいてくれるだけで安心できるから好き……。んと…顔が好みだから好き。でも一番は優しく微笑んでくれるとこが好き!」
お説教を終わらせたくてついご機嫌取りみたいな台詞を言ってしまったけど、思った以上に効果がありそうだったので思いつく限りレグの好きなところを言った。
これは嘘じゃない。本当に思ってること。
全部言い終えると普段見せないような満面の笑みを浮かべ、ようやく説教が終わる!と思った矢先、
「で、説教に戻るが」
また怖い顔をして説教の続きが始まった…。
いいように遊ばれてしまった! いつになったらレグに勝てる日がくるんだ…!
「トワコ嬢、お風呂の準備ができました」
「っもう! レグはお母さんみたいでイヤッ! セトさーん」
戻って来たセトさんに駆け寄ると訳もわからず両腕を広げて受け入れてくれる。
逃げる私にレグが「おい」と言って引き留めようとするのを無視をしてセトさんの腹筋に顔を埋めて聞かないフリ。
「おいセト。反省してないようだから寄越せ」
「で、ですが…」
「私の大好きなセトさんは説教なんてしませんよね?」
「う…その…」
「セト!」
「もう反省してます。それとも言うこときかない悪い私のこと嫌いになりましたか?」
「悪いのは交尾中だけにしろ! 絆されるな!」
「…っ…き、らい…じゃありません…! どんなトワコ嬢も…魅力的ですので…」
「わーい、セトさんありがとうございます! 大好き! お風呂入ってきますね!」
「あ、アルファが戻って来たので少しお待ち下さい」
「了解でーす!」
ふふっ、セトさんは優しいなぁ!
レグの説教から強引に逃げ出し急いでお風呂場へと向かった。
「……お前…」
「悪いとは思っていますがトワコ嬢も十分に反省していますし…。あまり言いすぎると逆効果ですよ」
「だからっていいように扱われていいのか」
「トワコ嬢になら問題ありません。元々主導権はトワコ嬢にありますし」
「そうだとしても今回のは危険だ。成功したからよかったものの、失敗したら始祖の力についてもバレていた。それがどれだけ危ないか解ってるだろう」
「勿論です。でも結果は成功しましたし、最善な方法でした。…レグルスが過保護になる気持ちは解ります。純粋な方ですから自身の管理下に置きたい気持ちも十分察してます」
「……はぁ、トワコがそれを望んでないのも解ってる。だがどうしても最悪の想定ばかり浮かんで閉じ込めておきたくなるんだ」
「レグルスだけでなく、私もあとの二人もそう思ってますよ」
「なら簡単に許すな」
「嫌われ役を買って出てくれることには感謝してますが、やはりトワコ嬢には嫌われたくないです」
「いい性格してるな。タカ族らしい」
「ありがとうございます」
「おー、ここにいたんだ。で、どうだった?」
「クソガキと番犬への説明は任せた。俺は明日の話し合いについて考えてくる」
「解りました。その前にシャルル、先にそっちの情報だ」
「特になんもねぇ街だよ。神官様も敬虔(けいけん)でトワコみたいに穏やかな奴ばっか。観光客も大体は始祖教の信者だし、揉め事起こしそうな奴らもとりあえず見てない」
「それはなにより。で、例の部屋については」
「始祖の御神体を祀ってある部屋だろ。一応あることはあるけど中に入るどころか近づくのは無理。でも選ばれた神官だけしか近づけないからオヴェールの名前使えば入れると思う」
「どんな部屋だったかも解らないか?」
「全然ダメ。とりあえず見てる間まったく開かなかったし、誰も入ろうとしてなかった。夜中になればホラー展開になるかもしんないけど今は無理」
「そうか…。やはりオヴェールが来てからじゃないとどうしようもないな」
「確認だけどさ。あのメスが来て、部屋が確保できそうならトワコ置いてあのクソサル殺しに行くんだよな」
「一応その予定だ。ついでにアーキル様の軍もお借りできそうになった」
「あ、そうなったんだ。海賊関係?」
「そうだ。あの二人は海賊と手を組んでいるらしい。それと、アーキル様にトワコ嬢が始祖だと言うことがバレた」
「はぁ!? え、それ大丈夫か!? 王様はなんて!?」
「……トワコ嬢が始祖の力を使ってアーキル様の記憶を消した」
「…どういうこと…?」
「命じたんだ。トワコ嬢が始祖だということを忘れるように、と」
「……マジ…? そんなこともできんの…?」
「動きを止めるだけじゃなく、記憶も操作できるようだ」
「うっわ…。それまじでやばくね? あっ、てか体調は!?」
「体調は今のところも問題ない。様子見は大事だがな」
「そりゃそうだろ。あー、それであの王様機嫌悪かったんだ」
「そうだな。散々説教されていた」
「王様の説教しつこいからなぁ。危なっかしいとこはあるけどトワコはバカじゃないって知ってるのに過保護すぎなんだって。それで嫌われるならこっちは助かるけど」
「あまりそう言うな。率先して嫌われ役を買って出てくれてるだろ」
「自分のいいように操りたいから力で押さえつけようとしてるだけだろ。人のこと言えねぇけど相当不器用だよな。まぁ大丈夫ならいいや。それよりトワコの能力ってマジでやべぇのな」
「ああ。早急にあの二人を処理しなければならない」
「でも今どこにいるのかわかんねぇだろ。あ、ハイオットニーに来てるんだっけ」
「多分海賊と合流して行方を捜してると思う」
「できれば海上でやり合いたくねぇなぁ…。頑丈な船なんてすぐ手配できねぇ……いや、アーキルがいるから大丈夫か?」
「それらも含め、明日詳細を話し合うことになってる」
「そ。じゃあ明日はトワコといちゃいちゃしよーっと」
「せっ、しゃるっ! た、助けてくれ!」
「アルファ?」
「おいいくら安全だからってトワコから離れるなよ」
「おっ、俺には無理だって…! 無理だっていうのにっ…。トワコさんが…!」
「落ち着けアルファ。トワコ嬢がどうした」
「きょっ、きょ、今日は俺と寝るってぇ…!」
「はぁあああ!? ふざけんな! 何で俺じゃなくてアルファなんだよ! トワコー、どういうこと!?」
「お、俺は同じ部屋ならって言ったんだけど…。それだと悪いから一緒の寝床にぃ…! む、む、無理だって言ったら可愛くおねだりしてきてぇ…! 可愛いのにいきなりで怖くなってどうしたらいいかっ…」
「ともかく落ち着け。シャル…はもう行ったな。まぁさすがにレグルスが許さないと思うから安心しろ」
「そ、そうだよな…! さ、寂しいけどそっちのほうがトワコさんは安全だ…。でもなんでいきなりあんなこと言ったんだ…」
「あー…アーキル様にトワコ嬢が始祖だってことがバレて、トワコ嬢が始祖の力でその記憶を消したからだ」
「えッ!? そ、そんなことが……っいや、身体は大丈夫だったのか!?」
「それは大丈夫だ。風呂も問題なかったか?」
「ああ、それは問題なかった。…あ、それでレグルスに怒られて俺とってことか…」
「そういうことだ」
「ところで始祖の力って身体に影響を与えるだけじゃないんだな。記憶を消すって………も、もしかして俺も何か消されてるってことはないよな…?」
「ないと思いたい。こればかりはトワコ嬢を信じるしかない」
「も、もしかしたらいつの間にかトワコさんのことを忘れて…また前みたいな生活に戻ってる…ってこともありえるよな…!?」
「……」
「ぜ、絶対嫌だ! しっ、信用してるけどトワコさんに始祖の力なんて使ってほしくない!」
「それは私もだ。体調も悪くなるし使うものじゃない」
「レグルスにもっと言って…いや俺からもお願いしとかないと…! ようやく慣れてきたのに…キ、キスだってできるようになったのに…。好きって言われた記憶を消されたら…俺、俺ぇ…!」
「だから落ち着け。あまり悪いほうには考えるな。それに試着室で襲った記憶も残ってるだろ。トワコ嬢が本当に嫌なら消してるはずだ」
「………消されてない! よかった…」
「いやよくはないがな」
「すっ、すまん!」
「もう信じらんないっ!」
「ト、トワコ嬢!?」
「ひゃああああ!!」
屋敷に来ても多分レグと一緒に寝ることになってると思って、今日はアルファさんと一緒に寝たいと誘ったけど逃げられた。
そのあとすぐシャルルさんが来て、それなら俺とって言ってくれたから二つ返事を返すと青筋浮かべたレグがお風呂に突撃してきた。
どうせ寝るときも説教される。
そう思って遠まわしに断ったら、寝衣を奪われた!
いくら屋敷に到着しても一人で寝るのはダメ。自分以外は熟睡してしまうから守れない。だから今日も一緒に寝る。
そう言われてもあんなことがあったあとで一緒に寝たくない!
ついつい本音をこぼしたら裸のまま連れ去られそうになったのでバスタオルで身体を巻いてセトさんとアルファさんのところまで逃げてきた。
急いで二人の後ろに隠れて抵抗すると少し焦ったシャルルさんと相変わらずご立腹なレグもやって来た。
「今日はシャルルさんと寝るの!」
「だから駄目だと言ってるだろ」
「トワコー、風邪引いちゃうよ」
「どうせ寝るときも説教するんでしょ! もうわかったって言ってるのに聞きたくないの!」
「お前がどれだけ危険なことをしたか理解してないからだろう」
「してるってば! なんで……なんでもっと私のこと信用してくれないの!? 私だって…私だってみんなの役に立ちのにっ…! 相手が一人なら全然大丈夫だもん!」
前まで以上に自分の重要価値というものを理解している。
常に最悪を想定してるし、できるだけ彼らの言う通りに周囲を警戒している。
でも、私にだってできることはある。守ってばかりじゃ心苦しい。
苦しい思いをするのも、痛い思いをするのも彼らだけ。命の危険がある彼らを少しでも軽減してあげたい。
もちろん、自分のできる範囲で。
そう思ってるのにレグは私のことをまったく信用してくれない!
何もできないけど、少しぐらいできることはある。私だってみんなを助けたい!
子供みたいに駄々をこねる私に苛立ってるレグの気持ちもわかってる。
信用してほしい。もっと頼ってほしい。
それを言えばいいのに感情と理性とがごちゃまぜになって溢れ出る気持ちが涙となってこぼれ落ちる。
「トワコ嬢…」
「な、泣かないで下さい…!」
「あーあ、トワコ泣かせた」
「トワコは何もしなくていい。安全な場所にいることがお前の役割りだ」
「っばかぁ! レグッ、は…バカだ! 大嫌いッ!」
わかってるよ。弱い私にできることなんてない。安全な場所で彼らの報告を待つのが私の仕事。
それでみんなが安心できるならそうしてあげたい。
でもっ…ずっと守られてばかりだと彼らがケガをしたとき…死んだときどうしようもなく自分を責めて、殺したくなる…!
ただの八つ当たり。
それでも思わず出てしまった言葉を飲み込むことはできず、レグにぶつけてしまった。
すぐに後悔してレグを見るとショックを受けているような、傷ついているような複雑な表情をして固まっていた。
「…っあ…もう寝る!」
ごめんなさいって謝ればいいのに、言えなかった。
逃げるように部屋に戻ってベッドに引きこもる。
言ったらいけない言葉を言ってしまった。
大嫌いなんて嘘だ…! 守ってくれる人を嫌いになんてなれるわけがない。
大人になったと思ってもまだまだ子供の未熟な自分に腹が立つ。
「トワコ」
レグの顔を思い出すだけで心が苦しくなる。今すぐ謝りたいのに変なプライドが邪魔して動けない。
どうしようか悩んでいる間にシャルルさんが部屋に入って来て、ベッド脇に座る。
「明日腫れちゃうから泣き止みな?」
「うう…」
「ほら髪の毛もちゃんと乾かさないと風邪引くしさ。あと服も着替えないと。ね?」
弱った心にシャルルさんの優しい言葉が染みわたる。
シーツを捲って軽く頬を触り、持っていたタオルで目元を優しく拭う。
「あんな王様のために泣く必要ないよ。傲慢すぎるよねぇ」
「うー…!」
「はい、座って。簡単にしか聞いてないけど、それぐらい許してくれよって感じ? トワコだって頼りになるのにね」
「……っでも…勝手に力使ったから…」
「トワコはそれが最善だと思ったんでしょ? なら正しいよ。まー…いきなり使われたら俺でもビックリするけどトワコは確信してたんだよね?」
「……うん…」
髪の毛を乾かしてもらいながら私の心に寄り添ってくれるシャルルさん。
慰められて、肯定されて、私は悪くないって思うけど、それと同じぐらい浅はかな行動をしてしまったと凹んでしまう。
「じゃあ正解だよ。王様が敏感すぎ。気持ち解らなくないけど、トワコだってやればできるのにね」
「…き、らいって言っちゃった…」
「ああ、いいんじゃね? 王様にはあれぐらい言わないとトワコの気持ちなんて伝わらないよ。今まで力で押さえつけて生きてきた奴だからトワコも押さえつけようとしてるし、いい勉強になったんじゃない?」
「…でも、言っちゃいけない言葉だった…」
「トワコはほんと優しいねぇ! 大丈夫大丈夫。明日謝っとけばいつも通りに戻るって」
「……うー…!」
「トワコも役に立ちたかったんだよね。俺らに負担かけさせたくないって気持ちは十分伝わってるよ。王様はそれすらも嫌がってるけど。まぁでもそれはこれから解らせていけばいいよ。俺はいつでもトワコの味方だから安心してケンカしな。はい、髪の毛完了。服持ってくるね」
シャルルさんの言葉に心が落ち着いていく。
渡されたタオルで涙を拭いてもっと冷静になろうと深呼吸をして心をさらに落ち着かせる。
また感情的になりすぎた。もっと冷静に話してレグに私の気持ちを理解してもらえばよかった。
寝衣を手に戻って来たシャルルさんにお礼を言って布団の中で着替える。
少し冷たくなった身体が温かくなり、泣いたのもあって次第に瞼が重たくなっていく。
「明日…レグに謝るとき一緒にいてくれる…?」
「いいよ。俺としてはこのまま番解消してくれたほうが嬉しいんだけど」
「やだ…。レグのこと好きだもん…」
「残念。もう寝る?」
「うん、一緒に寝たい…」
「トワコと一緒に寝るの久しぶりだね。熟睡しないよう気を付けるから安心して」
「いいよ…ここ安全だし……」
「おやすみトワコ」
「おやすみなさい、シャルルさん…」
明日朝一番にレグに謝ろう。
そして後悔しないためにも自分に頼ってほしいことをちゃんと伝えよう。
シャルルさんの体温を感じながら明日のことを考え眠りに落ちた。
✿
「あーあ、トワコ怒らせた。マジで怒ってんじゃん。とりあえず俺が見てくるから今日は近寄んなよ」
「……」
「レグルス…その、大丈夫か?」
「―――……閉じ込めるか…」
「いけません。余計嫌われてしまいますよ」
「そうでもしなければ余計なことをするだろう。鎖に繋いで閉じ込めたほうが安心できる」
「どうしてそういう思考になるんですかっ。そんなことをする前にトワコ嬢にちゃんと謝って、話し合えばいいだけです」
「……」
「…えっと、トワコさんには危ないから何もしてほしくないし、何かされるたび俺達が役立たずって間接的に言われてるみたいで嫌だけど…その、トワコさんって頼られるのが好きだろ?」
「だからって一緒に戦えと言うのか?」
「いやそれはさすがに無理だけど…。うーん…ずっと押さえつけるのはよくないと俺は思う…。いや…うーん、やっぱり何もしてほしくないかも…」
「レグルスの気持ち寄りではありますが、折衷案を探るべきかと。何もできない人形にはなりたくないと言ってましたし」
「そもそも俺は始祖の力を使うなって言ってるだけだ。それ以外なら………まぁ…。大体始祖の力だってまだ完全に理解できてるわけじゃないのにあいつは…! 何かあったときに何もできないなんてあってみろ。俺は俺を殺したくなる」
「そうですね…。力を使えばどうなるか解りませんし、薬も効くかどうか不明…」
「それなのにあいつは簡単に使いやがって…! どれだけ自分が弱いか解ってるのか!」
「落ち着けって。あと壁を壊すなよ」
「それでもトワコ嬢とはよく話し合うべきです。私も同席しますしできる限りレグルスに賛同します」
「俺も」
「どうせトワコにお願いされたら言い返せないだろう」
「「…」」
「断れるようになってから言ってくれ」
「……頑張ります…」
「頑張る。そ、それよりレグルスはやっぱり強いな! トワコさんに嫌いって言われても平然としてるなんて俺には真似できない」
「最近の駄犬は余計な一言が多いな。この屋敷の地下に決闘用の広場があるらしい。平和ボケしてるお前達にはいい遊び場だな」
「アルファ…」
「だ、だって俺だったら絶望して死んでるのに…。あ、でも久しぶりに身体を動かすのはいいかもな! 色々調整しておきたいし、皆と戦えばもっと強くなれる!」
「レグルス、協会内部にはいつに行きますか?」
「明後日以降にしろ。明日は外に出すな」
「色々ありましたしゆっくり休んでもらいましょう。それと、もう一度言っておきますが明日は冷静に話し合いをして下さいね」
「……解った」
「そうだけど…。試してみたかったし、これ以上誰かにバレるのはまずいと思って…」
アーキルさんの屋敷から戻った私はさっそくレグからお説教を食らってしまった。
目の前に座るレグは怒りのオーラを出して私を睨みつけ、隣に座るセトさんは私の体調を心配している。
ちょっと心臓が熱くなって頭が痛くなったけど大丈夫。どこも痛くない。
いくら大丈夫だと伝えても心配のあまり怒りが収まらないレグに言い訳をしつつ、最後に謝罪をするとめちゃくちゃ重たい溜息を吐かれた。
「頼むから使うな」
「わかったよ…」
「本当に体調は大丈夫なんだな?」
「うん。問題ないよ」
「それでもいきなり倒れるかもしれませんし、今日はもうお休み下さい」
「大丈夫だけど…」
「トワコ」
「わかりました…。寝ます」
「お風呂の準備をしてきますので少々お待ち下さい」
「はーい」
シャルルさんとアルファさんはまだ戻って来ていない。
セトさんが離れ、気まずいなかレグと二人きりになるのはちょっと…。
チラリとレグを見るとまだ睨んでくるので思わず目を反らす。
心配してくれるのはわかるよ。前に何日も寝込んでしまったし、鼻血も出しちゃったし…。
でも今回はアーキルさんだけにしか使ってない。
「まだ何か言いたそうな顔をしてるなぁ、トワコ…」
「反省してますっ」
使うなとあれだけ言われたのに使ってしまった私が悪い。
諦めて再び始まる説教をひたすら謝罪と「はい」だけで乗り越えようとするも、なかなか終わらない…!
子供じゃないんだから何回も同じこと言わなくてもいいのに…。
そんな態度が出てたのかさらに説教に力が加わる。
「(もー…!)レグ、私もうちゃんと反省してるよ。みんなに迷惑かけたくないから使っちゃったけど、今度は勝手に使わないって約束する」
「そう言ってどうせまた使う気だろう」
「大好きなレグからのお願いだもん。今度こそちゃんと約束するよ! 使う前に相談だってする!」
「…」
「好きだよレグ。大好き。レグの怒った顔は怖いからいつもの優しいレグに戻ってほしいな?」
「ならあと十回言え」
「ぅえっ!? あー…えっと、優しいレグが好き。気遣ってくれるとこも好き。本読んでる姿も格好よくて好き。たまに圧かけてくるけど心配してくれるレグが好き。一緒に寝ると安心するとこも好き。強いとこも好き…。えっと…身体が大きくて抱き着きやすいとこも好き。隣にいてくれるだけで安心できるから好き……。んと…顔が好みだから好き。でも一番は優しく微笑んでくれるとこが好き!」
お説教を終わらせたくてついご機嫌取りみたいな台詞を言ってしまったけど、思った以上に効果がありそうだったので思いつく限りレグの好きなところを言った。
これは嘘じゃない。本当に思ってること。
全部言い終えると普段見せないような満面の笑みを浮かべ、ようやく説教が終わる!と思った矢先、
「で、説教に戻るが」
また怖い顔をして説教の続きが始まった…。
いいように遊ばれてしまった! いつになったらレグに勝てる日がくるんだ…!
「トワコ嬢、お風呂の準備ができました」
「っもう! レグはお母さんみたいでイヤッ! セトさーん」
戻って来たセトさんに駆け寄ると訳もわからず両腕を広げて受け入れてくれる。
逃げる私にレグが「おい」と言って引き留めようとするのを無視をしてセトさんの腹筋に顔を埋めて聞かないフリ。
「おいセト。反省してないようだから寄越せ」
「で、ですが…」
「私の大好きなセトさんは説教なんてしませんよね?」
「う…その…」
「セト!」
「もう反省してます。それとも言うこときかない悪い私のこと嫌いになりましたか?」
「悪いのは交尾中だけにしろ! 絆されるな!」
「…っ…き、らい…じゃありません…! どんなトワコ嬢も…魅力的ですので…」
「わーい、セトさんありがとうございます! 大好き! お風呂入ってきますね!」
「あ、アルファが戻って来たので少しお待ち下さい」
「了解でーす!」
ふふっ、セトさんは優しいなぁ!
レグの説教から強引に逃げ出し急いでお風呂場へと向かった。
「……お前…」
「悪いとは思っていますがトワコ嬢も十分に反省していますし…。あまり言いすぎると逆効果ですよ」
「だからっていいように扱われていいのか」
「トワコ嬢になら問題ありません。元々主導権はトワコ嬢にありますし」
「そうだとしても今回のは危険だ。成功したからよかったものの、失敗したら始祖の力についてもバレていた。それがどれだけ危ないか解ってるだろう」
「勿論です。でも結果は成功しましたし、最善な方法でした。…レグルスが過保護になる気持ちは解ります。純粋な方ですから自身の管理下に置きたい気持ちも十分察してます」
「……はぁ、トワコがそれを望んでないのも解ってる。だがどうしても最悪の想定ばかり浮かんで閉じ込めておきたくなるんだ」
「レグルスだけでなく、私もあとの二人もそう思ってますよ」
「なら簡単に許すな」
「嫌われ役を買って出てくれることには感謝してますが、やはりトワコ嬢には嫌われたくないです」
「いい性格してるな。タカ族らしい」
「ありがとうございます」
「おー、ここにいたんだ。で、どうだった?」
「クソガキと番犬への説明は任せた。俺は明日の話し合いについて考えてくる」
「解りました。その前にシャルル、先にそっちの情報だ」
「特になんもねぇ街だよ。神官様も敬虔(けいけん)でトワコみたいに穏やかな奴ばっか。観光客も大体は始祖教の信者だし、揉め事起こしそうな奴らもとりあえず見てない」
「それはなにより。で、例の部屋については」
「始祖の御神体を祀ってある部屋だろ。一応あることはあるけど中に入るどころか近づくのは無理。でも選ばれた神官だけしか近づけないからオヴェールの名前使えば入れると思う」
「どんな部屋だったかも解らないか?」
「全然ダメ。とりあえず見てる間まったく開かなかったし、誰も入ろうとしてなかった。夜中になればホラー展開になるかもしんないけど今は無理」
「そうか…。やはりオヴェールが来てからじゃないとどうしようもないな」
「確認だけどさ。あのメスが来て、部屋が確保できそうならトワコ置いてあのクソサル殺しに行くんだよな」
「一応その予定だ。ついでにアーキル様の軍もお借りできそうになった」
「あ、そうなったんだ。海賊関係?」
「そうだ。あの二人は海賊と手を組んでいるらしい。それと、アーキル様にトワコ嬢が始祖だと言うことがバレた」
「はぁ!? え、それ大丈夫か!? 王様はなんて!?」
「……トワコ嬢が始祖の力を使ってアーキル様の記憶を消した」
「…どういうこと…?」
「命じたんだ。トワコ嬢が始祖だということを忘れるように、と」
「……マジ…? そんなこともできんの…?」
「動きを止めるだけじゃなく、記憶も操作できるようだ」
「うっわ…。それまじでやばくね? あっ、てか体調は!?」
「体調は今のところも問題ない。様子見は大事だがな」
「そりゃそうだろ。あー、それであの王様機嫌悪かったんだ」
「そうだな。散々説教されていた」
「王様の説教しつこいからなぁ。危なっかしいとこはあるけどトワコはバカじゃないって知ってるのに過保護すぎなんだって。それで嫌われるならこっちは助かるけど」
「あまりそう言うな。率先して嫌われ役を買って出てくれてるだろ」
「自分のいいように操りたいから力で押さえつけようとしてるだけだろ。人のこと言えねぇけど相当不器用だよな。まぁ大丈夫ならいいや。それよりトワコの能力ってマジでやべぇのな」
「ああ。早急にあの二人を処理しなければならない」
「でも今どこにいるのかわかんねぇだろ。あ、ハイオットニーに来てるんだっけ」
「多分海賊と合流して行方を捜してると思う」
「できれば海上でやり合いたくねぇなぁ…。頑丈な船なんてすぐ手配できねぇ……いや、アーキルがいるから大丈夫か?」
「それらも含め、明日詳細を話し合うことになってる」
「そ。じゃあ明日はトワコといちゃいちゃしよーっと」
「せっ、しゃるっ! た、助けてくれ!」
「アルファ?」
「おいいくら安全だからってトワコから離れるなよ」
「おっ、俺には無理だって…! 無理だっていうのにっ…。トワコさんが…!」
「落ち着けアルファ。トワコ嬢がどうした」
「きょっ、きょ、今日は俺と寝るってぇ…!」
「はぁあああ!? ふざけんな! 何で俺じゃなくてアルファなんだよ! トワコー、どういうこと!?」
「お、俺は同じ部屋ならって言ったんだけど…。それだと悪いから一緒の寝床にぃ…! む、む、無理だって言ったら可愛くおねだりしてきてぇ…! 可愛いのにいきなりで怖くなってどうしたらいいかっ…」
「ともかく落ち着け。シャル…はもう行ったな。まぁさすがにレグルスが許さないと思うから安心しろ」
「そ、そうだよな…! さ、寂しいけどそっちのほうがトワコさんは安全だ…。でもなんでいきなりあんなこと言ったんだ…」
「あー…アーキル様にトワコ嬢が始祖だってことがバレて、トワコ嬢が始祖の力でその記憶を消したからだ」
「えッ!? そ、そんなことが……っいや、身体は大丈夫だったのか!?」
「それは大丈夫だ。風呂も問題なかったか?」
「ああ、それは問題なかった。…あ、それでレグルスに怒られて俺とってことか…」
「そういうことだ」
「ところで始祖の力って身体に影響を与えるだけじゃないんだな。記憶を消すって………も、もしかして俺も何か消されてるってことはないよな…?」
「ないと思いたい。こればかりはトワコ嬢を信じるしかない」
「も、もしかしたらいつの間にかトワコさんのことを忘れて…また前みたいな生活に戻ってる…ってこともありえるよな…!?」
「……」
「ぜ、絶対嫌だ! しっ、信用してるけどトワコさんに始祖の力なんて使ってほしくない!」
「それは私もだ。体調も悪くなるし使うものじゃない」
「レグルスにもっと言って…いや俺からもお願いしとかないと…! ようやく慣れてきたのに…キ、キスだってできるようになったのに…。好きって言われた記憶を消されたら…俺、俺ぇ…!」
「だから落ち着け。あまり悪いほうには考えるな。それに試着室で襲った記憶も残ってるだろ。トワコ嬢が本当に嫌なら消してるはずだ」
「………消されてない! よかった…」
「いやよくはないがな」
「すっ、すまん!」
「もう信じらんないっ!」
「ト、トワコ嬢!?」
「ひゃああああ!!」
屋敷に来ても多分レグと一緒に寝ることになってると思って、今日はアルファさんと一緒に寝たいと誘ったけど逃げられた。
そのあとすぐシャルルさんが来て、それなら俺とって言ってくれたから二つ返事を返すと青筋浮かべたレグがお風呂に突撃してきた。
どうせ寝るときも説教される。
そう思って遠まわしに断ったら、寝衣を奪われた!
いくら屋敷に到着しても一人で寝るのはダメ。自分以外は熟睡してしまうから守れない。だから今日も一緒に寝る。
そう言われてもあんなことがあったあとで一緒に寝たくない!
ついつい本音をこぼしたら裸のまま連れ去られそうになったのでバスタオルで身体を巻いてセトさんとアルファさんのところまで逃げてきた。
急いで二人の後ろに隠れて抵抗すると少し焦ったシャルルさんと相変わらずご立腹なレグもやって来た。
「今日はシャルルさんと寝るの!」
「だから駄目だと言ってるだろ」
「トワコー、風邪引いちゃうよ」
「どうせ寝るときも説教するんでしょ! もうわかったって言ってるのに聞きたくないの!」
「お前がどれだけ危険なことをしたか理解してないからだろう」
「してるってば! なんで……なんでもっと私のこと信用してくれないの!? 私だって…私だってみんなの役に立ちのにっ…! 相手が一人なら全然大丈夫だもん!」
前まで以上に自分の重要価値というものを理解している。
常に最悪を想定してるし、できるだけ彼らの言う通りに周囲を警戒している。
でも、私にだってできることはある。守ってばかりじゃ心苦しい。
苦しい思いをするのも、痛い思いをするのも彼らだけ。命の危険がある彼らを少しでも軽減してあげたい。
もちろん、自分のできる範囲で。
そう思ってるのにレグは私のことをまったく信用してくれない!
何もできないけど、少しぐらいできることはある。私だってみんなを助けたい!
子供みたいに駄々をこねる私に苛立ってるレグの気持ちもわかってる。
信用してほしい。もっと頼ってほしい。
それを言えばいいのに感情と理性とがごちゃまぜになって溢れ出る気持ちが涙となってこぼれ落ちる。
「トワコ嬢…」
「な、泣かないで下さい…!」
「あーあ、トワコ泣かせた」
「トワコは何もしなくていい。安全な場所にいることがお前の役割りだ」
「っばかぁ! レグッ、は…バカだ! 大嫌いッ!」
わかってるよ。弱い私にできることなんてない。安全な場所で彼らの報告を待つのが私の仕事。
それでみんなが安心できるならそうしてあげたい。
でもっ…ずっと守られてばかりだと彼らがケガをしたとき…死んだときどうしようもなく自分を責めて、殺したくなる…!
ただの八つ当たり。
それでも思わず出てしまった言葉を飲み込むことはできず、レグにぶつけてしまった。
すぐに後悔してレグを見るとショックを受けているような、傷ついているような複雑な表情をして固まっていた。
「…っあ…もう寝る!」
ごめんなさいって謝ればいいのに、言えなかった。
逃げるように部屋に戻ってベッドに引きこもる。
言ったらいけない言葉を言ってしまった。
大嫌いなんて嘘だ…! 守ってくれる人を嫌いになんてなれるわけがない。
大人になったと思ってもまだまだ子供の未熟な自分に腹が立つ。
「トワコ」
レグの顔を思い出すだけで心が苦しくなる。今すぐ謝りたいのに変なプライドが邪魔して動けない。
どうしようか悩んでいる間にシャルルさんが部屋に入って来て、ベッド脇に座る。
「明日腫れちゃうから泣き止みな?」
「うう…」
「ほら髪の毛もちゃんと乾かさないと風邪引くしさ。あと服も着替えないと。ね?」
弱った心にシャルルさんの優しい言葉が染みわたる。
シーツを捲って軽く頬を触り、持っていたタオルで目元を優しく拭う。
「あんな王様のために泣く必要ないよ。傲慢すぎるよねぇ」
「うー…!」
「はい、座って。簡単にしか聞いてないけど、それぐらい許してくれよって感じ? トワコだって頼りになるのにね」
「……っでも…勝手に力使ったから…」
「トワコはそれが最善だと思ったんでしょ? なら正しいよ。まー…いきなり使われたら俺でもビックリするけどトワコは確信してたんだよね?」
「……うん…」
髪の毛を乾かしてもらいながら私の心に寄り添ってくれるシャルルさん。
慰められて、肯定されて、私は悪くないって思うけど、それと同じぐらい浅はかな行動をしてしまったと凹んでしまう。
「じゃあ正解だよ。王様が敏感すぎ。気持ち解らなくないけど、トワコだってやればできるのにね」
「…き、らいって言っちゃった…」
「ああ、いいんじゃね? 王様にはあれぐらい言わないとトワコの気持ちなんて伝わらないよ。今まで力で押さえつけて生きてきた奴だからトワコも押さえつけようとしてるし、いい勉強になったんじゃない?」
「…でも、言っちゃいけない言葉だった…」
「トワコはほんと優しいねぇ! 大丈夫大丈夫。明日謝っとけばいつも通りに戻るって」
「……うー…!」
「トワコも役に立ちたかったんだよね。俺らに負担かけさせたくないって気持ちは十分伝わってるよ。王様はそれすらも嫌がってるけど。まぁでもそれはこれから解らせていけばいいよ。俺はいつでもトワコの味方だから安心してケンカしな。はい、髪の毛完了。服持ってくるね」
シャルルさんの言葉に心が落ち着いていく。
渡されたタオルで涙を拭いてもっと冷静になろうと深呼吸をして心をさらに落ち着かせる。
また感情的になりすぎた。もっと冷静に話してレグに私の気持ちを理解してもらえばよかった。
寝衣を手に戻って来たシャルルさんにお礼を言って布団の中で着替える。
少し冷たくなった身体が温かくなり、泣いたのもあって次第に瞼が重たくなっていく。
「明日…レグに謝るとき一緒にいてくれる…?」
「いいよ。俺としてはこのまま番解消してくれたほうが嬉しいんだけど」
「やだ…。レグのこと好きだもん…」
「残念。もう寝る?」
「うん、一緒に寝たい…」
「トワコと一緒に寝るの久しぶりだね。熟睡しないよう気を付けるから安心して」
「いいよ…ここ安全だし……」
「おやすみトワコ」
「おやすみなさい、シャルルさん…」
明日朝一番にレグに謝ろう。
そして後悔しないためにも自分に頼ってほしいことをちゃんと伝えよう。
シャルルさんの体温を感じながら明日のことを考え眠りに落ちた。
✿
「あーあ、トワコ怒らせた。マジで怒ってんじゃん。とりあえず俺が見てくるから今日は近寄んなよ」
「……」
「レグルス…その、大丈夫か?」
「―――……閉じ込めるか…」
「いけません。余計嫌われてしまいますよ」
「そうでもしなければ余計なことをするだろう。鎖に繋いで閉じ込めたほうが安心できる」
「どうしてそういう思考になるんですかっ。そんなことをする前にトワコ嬢にちゃんと謝って、話し合えばいいだけです」
「……」
「…えっと、トワコさんには危ないから何もしてほしくないし、何かされるたび俺達が役立たずって間接的に言われてるみたいで嫌だけど…その、トワコさんって頼られるのが好きだろ?」
「だからって一緒に戦えと言うのか?」
「いやそれはさすがに無理だけど…。うーん…ずっと押さえつけるのはよくないと俺は思う…。いや…うーん、やっぱり何もしてほしくないかも…」
「レグルスの気持ち寄りではありますが、折衷案を探るべきかと。何もできない人形にはなりたくないと言ってましたし」
「そもそも俺は始祖の力を使うなって言ってるだけだ。それ以外なら………まぁ…。大体始祖の力だってまだ完全に理解できてるわけじゃないのにあいつは…! 何かあったときに何もできないなんてあってみろ。俺は俺を殺したくなる」
「そうですね…。力を使えばどうなるか解りませんし、薬も効くかどうか不明…」
「それなのにあいつは簡単に使いやがって…! どれだけ自分が弱いか解ってるのか!」
「落ち着けって。あと壁を壊すなよ」
「それでもトワコ嬢とはよく話し合うべきです。私も同席しますしできる限りレグルスに賛同します」
「俺も」
「どうせトワコにお願いされたら言い返せないだろう」
「「…」」
「断れるようになってから言ってくれ」
「……頑張ります…」
「頑張る。そ、それよりレグルスはやっぱり強いな! トワコさんに嫌いって言われても平然としてるなんて俺には真似できない」
「最近の駄犬は余計な一言が多いな。この屋敷の地下に決闘用の広場があるらしい。平和ボケしてるお前達にはいい遊び場だな」
「アルファ…」
「だ、だって俺だったら絶望して死んでるのに…。あ、でも久しぶりに身体を動かすのはいいかもな! 色々調整しておきたいし、皆と戦えばもっと強くなれる!」
「レグルス、協会内部にはいつに行きますか?」
「明後日以降にしろ。明日は外に出すな」
「色々ありましたしゆっくり休んでもらいましょう。それと、もう一度言っておきますが明日は冷静に話し合いをして下さいね」
「……解った」
102
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーレムです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
召喚先は、誰も居ない森でした
みん
恋愛
事故に巻き込まれて行方不明になった母を探す茉白。そんな茉白を側で支えてくれていた留学生のフィンもまた、居なくなってしまい、寂しいながらも毎日を過ごしていた。そんなある日、バイト帰りに名前を呼ばれたかと思った次の瞬間、眩しい程の光に包まれて──
次に目を開けた時、茉白は森の中に居た。そして、そこには誰も居らず──
その先で、茉白が見たモノは──
最初はシリアス展開が続きます。
❋他視点のお話もあります
❋独自設定有り
❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。気付いた時に訂正していきます。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
【完結】恋につける薬は、なし
ちよのまつこ
恋愛
異世界の田舎の村に転移して五年、十八歳のエマは王都へ行くことに。
着いた王都は春の大祭前、庶民も参加できる城の催しでの出来事がきっかけで出会った青年貴族にエマはいきなり嫌悪を向けられ…
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
モブでいたはずの私が、ただひとりに溺愛されるまで
ChaCha
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したことに気づいたアイナ・ネルケ。
だが彼女はヒロインではない――ただの“モブ令嬢”。
「私は観る側。恋はヒロインのもの」
そう決めて、治癒魔術科で必死に学び、気合いと根性で仲間を癒し続けていた。
筋肉とビンタと回復の日々。
それなのに――
「大丈夫だ。俺が必ず君を守る」
野外訓練で命を救った騎士、エルンスト・トゥルぺ。
彼の瞳と声が、治癒と共に魂に触れた瞬間から、世界が静かに変わり始める。
幼馴染ヴィルの揺れる視線。
家族の温かな歓迎。
辺境伯領と学園という“日常の戦場”。
「……好き」
「これは恋だ。もう、モブではいたくない」
守られるだけの存在ではなく、選ばれる覚悟を決めたモブ令嬢と、
現実しか知らない騎士の、静かで激しい溺愛の始まり。
これは――
モブでいたはずの私が、ただひとりに溺愛されるまでの物語。
※溺愛表現は後半からです。のんびり更新します。
※作者の好みにより筋肉と気合い…ヤンデレ落ち掛けが踊りながらやって来ます。
※これは恋愛ファンタジーです。ヒロインと違ってモブは本当に大変なんです。みんなアイナを応援してあげて下さい!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる