【童話集】あなたのおとぎ話

松野井奏

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真っ黒クマさんとお月様

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むかしむかしのお話です。
真っ黒クマさんはお昼寝中。
夜になると起きてきて、お月様にご挨拶。
「こんばんは、お月様。」
「こんばんは、真っ黒クマさん。」
今日もお月様は綺麗だなぁと、
真っ黒クマさんは心の中で呟きました。
でもそんなこと、恥ずかしくってとても言えません。黙ってお月様を見つめるばかりです。
いつかきっとお月様に綺麗だと言うつもりですが、今日もまた勇気が足りませんでした。

次の日もまた次の日も
「こんばんは、お月様。」
「こんばんは、真っ黒クマさん。」
「……。」
やっぱり言えません。
「ぼくに勇気があったらなぁ。」
真っ黒クマさんは流れ星に願いました。
「勇気が出ますように」
「勇気が出ますように」
「勇気が出ますように」

ある日のこと、森の中に猟師が3人やってきました。森の中では動物たちが怯えています。
「みんな逃げて!」
鳥たちが騒ぎます。
「きゃー恐いよう。」
うさぎたちは巣穴に逃げ込みました。
「早く走って!」
シカが走り去って行きました。
猟銃は残酷な音を森中に響かせました。
「逃げろ逃げろ!」
「殺されちゃうよ!」
動物たちはパニックです。
その時でした。
「ぼくが追い払うよ。」
あの真っ黒クマさんでした。

真っ黒クマさんは人間たちの前に躍り出ました。自分でも不思議なくらい、勇気がどこからともなく湧き上がってきます。
「うわぁ、クマだぞ。」
「バカ、逃げるな。こっちには銃がある。」
人間たちは夢中で撃ってきます。クマさんは銃弾を避けて、人間たちに突進します。
バーン、バーン、バーン。
「よし!」
気付けば真っ黒クマさんの身体は傷だらけです。
「とどめだ!!」
猟師が真っ黒クマさんの喉笛をかき切ります。
その時、不思議なことが起こりました。
真っ黒クマさんの胸から、真っ白な光が溢れ出したのです。
「な、なんだあ!」
「森の守神を殺してしまったのかもしれないぞ!」
「俺たちきっと呪われる!」
猟師たちは目を白黒させて、逃げ出しました。

「あれ?ぼく……どうしたんだっけ……。
いったいなにが起こったの?」
真っ黒クマさんが目を覚ましたのは、月明かりしか差さない夜の森でした。
「こんばんは、真っ黒クマさん。」
「あ、こんばんは、お月様。」
「貴方はとても勇敢でした。その証を永遠に残しておきましょう。さあ、そこの池をごらんなさい。」
「わぁ!」
真っ黒クマさんは、もう真っ黒ではありませんでした。胸に、今日のお月様と同じ、三日月の模様があったのです。
「お月様、ありがとう。」
「こちらこそ、森のみんなを守ってくれて、ありがとう。」
微笑むお月様を見て、クマさんは思わず言ったのです。
「お月様は、綺麗だなぁ。」

こうして真っ黒クマさんは、ツキノワグマと呼ばれるようになったのです。
昼も夜もお月様と一緒に過ごして、森のみんなからは勇敢さを称えられるようになったのですって。

おしまい。
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