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第6話 楚夢雨雲-5
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「あの……今日、幼なじみさんと会うんですか?」
バツが悪そうに目を伏せながら聞いてくる神田。視線があちこちに泳いでいる。
「ああ、そのつもりだけど。どうかしたのか?」
「…………はい、そうですね。どうかしてます」
そこで、神田と目が合う。何かを決意したような、強い意思を感じた。何だよ、どうしたっていうんだ。ここに来て恋ばなが聞きたいってことか?
「なんで、会うんですか?」
「なんでって、特別な理由なんてないよ別に。久々に連絡取ったら会おうって話になっただけで」
「高坂さん、女の勘を舐めてはいけません。私これでも一応女なので、その辺は敏感ですよ」
「敏感って……。そんなこと言われても、それが事実なんだっつうの。ていうか、俺が幼なじみと会うのに理由なんかどうでもいいだろ。神田に何か迷惑がかかるわけでもあるまいし」
「迷惑かかるんです!!」
突然、大声をあげる神田。すぐにしまったっという顔をして、手で口を塞ぐ。
「すみません、大きな声出して」
「それは大丈夫だけど、迷惑だってどういうことだ?」
「…………ほんとに、鈍感なんですね」
そう言って神田は、そっと俺の左手に自分の手を置いてきた。急の出来事に、心臓が軽く跳ねる。こいつはまた、男が勘違いするようなことを平気でしやがる。
「迷惑に決まってるじゃないですか。だって…………」
いつの間にか溜まったいた唾を呑み込む。なぜか心臓が早鐘を打っている。神田の雰囲気が明らかに変わったからだろうか。いつものとは違う、女性らしい雰囲気。
次の神田の言葉が出てくるまでの僅か時間が、果てしなく長いものに感じた。
心臓が、痛い。
「……好きなんです、先輩のこと」
顔を真っ赤にしながらも、目を合わせてその言葉を口にする神田。鈍感だという俺でも、さすがに理解した。
なんで俺なんか? とか、いつからなんだ? とか、そういった疑問が頭を駆け巡る。先ほどよりも2倍は心拍数が上がっている気がする。上手く考えがまとまらない。
「だから、だから…………会わないでほしんです」
神田はいつの間にか、俺の上に被さるように乗ってきていた。今日の夢の感触を思い出し、全身からアドレナリンが溢れ出す。近い、近すぎるだろ……!
俺の胸に顔を置き、さらに言葉を続ける神田。
「すみません、高坂さん。迷惑ですよね、突然こんなこと。でも、どうしても伝えたくて。私の気持ちを……知っておいてほしくて」
神田を払いのける気にはなれなかった。俺は、こいつの気持ちに、どう答えるべきなんだ。
美幸と会ってほしくない、か。俺はどうなんだ? 勇気を出してくれた神田の告白を断ってまで、美幸と会いたいと思っているのか?
思っている、つもりだ。なら答えは簡単。神田にそれを伝えないと。返事をしてやらないとダメだ。
なのに、俺の体は動かなかった。
「私、馬鹿なやつですけど、頑張りますから……! 高坂さんの役に立てるように。だから、だから……!」
顔をあげ、潤んだ瞳で俺を見つめる神田。なんで、こいつは俺のことなんか好きになったんだろう。純粋なその気持ちが、俺に向けられているのだということが不思議でならない。
って、今はそんなことを考えている場合じゃない。一刻も早く、神田を引き剥がさないと。このままでは、俺の中の狼さんが、こんにちはしてしまう。それはダメだ。
「私じゃ、ダメでしょうか……?」
息がかかるほど近い距離に、神田がいる。神田の柔らかい肉体と体温が、俺の鼓動をさらに高鳴らせる。これ以上は本当にダメだ。自制できなくなってしまう。神田を引き剥がそう。
「神田、俺は…………」
「それ以上は言わないでください……。答えを聞くの、怖いです。自分から勝手なこと言っといて、さらに勝手ですけど……。ごめんなさい、もう少しだけ」
神田の唇が、口づけできるほどの距離まで近づいてきた。
この流れは、まずいだろ。
「夢を、見させてください」
バツが悪そうに目を伏せながら聞いてくる神田。視線があちこちに泳いでいる。
「ああ、そのつもりだけど。どうかしたのか?」
「…………はい、そうですね。どうかしてます」
そこで、神田と目が合う。何かを決意したような、強い意思を感じた。何だよ、どうしたっていうんだ。ここに来て恋ばなが聞きたいってことか?
「なんで、会うんですか?」
「なんでって、特別な理由なんてないよ別に。久々に連絡取ったら会おうって話になっただけで」
「高坂さん、女の勘を舐めてはいけません。私これでも一応女なので、その辺は敏感ですよ」
「敏感って……。そんなこと言われても、それが事実なんだっつうの。ていうか、俺が幼なじみと会うのに理由なんかどうでもいいだろ。神田に何か迷惑がかかるわけでもあるまいし」
「迷惑かかるんです!!」
突然、大声をあげる神田。すぐにしまったっという顔をして、手で口を塞ぐ。
「すみません、大きな声出して」
「それは大丈夫だけど、迷惑だってどういうことだ?」
「…………ほんとに、鈍感なんですね」
そう言って神田は、そっと俺の左手に自分の手を置いてきた。急の出来事に、心臓が軽く跳ねる。こいつはまた、男が勘違いするようなことを平気でしやがる。
「迷惑に決まってるじゃないですか。だって…………」
いつの間にか溜まったいた唾を呑み込む。なぜか心臓が早鐘を打っている。神田の雰囲気が明らかに変わったからだろうか。いつものとは違う、女性らしい雰囲気。
次の神田の言葉が出てくるまでの僅か時間が、果てしなく長いものに感じた。
心臓が、痛い。
「……好きなんです、先輩のこと」
顔を真っ赤にしながらも、目を合わせてその言葉を口にする神田。鈍感だという俺でも、さすがに理解した。
なんで俺なんか? とか、いつからなんだ? とか、そういった疑問が頭を駆け巡る。先ほどよりも2倍は心拍数が上がっている気がする。上手く考えがまとまらない。
「だから、だから…………会わないでほしんです」
神田はいつの間にか、俺の上に被さるように乗ってきていた。今日の夢の感触を思い出し、全身からアドレナリンが溢れ出す。近い、近すぎるだろ……!
俺の胸に顔を置き、さらに言葉を続ける神田。
「すみません、高坂さん。迷惑ですよね、突然こんなこと。でも、どうしても伝えたくて。私の気持ちを……知っておいてほしくて」
神田を払いのける気にはなれなかった。俺は、こいつの気持ちに、どう答えるべきなんだ。
美幸と会ってほしくない、か。俺はどうなんだ? 勇気を出してくれた神田の告白を断ってまで、美幸と会いたいと思っているのか?
思っている、つもりだ。なら答えは簡単。神田にそれを伝えないと。返事をしてやらないとダメだ。
なのに、俺の体は動かなかった。
「私、馬鹿なやつですけど、頑張りますから……! 高坂さんの役に立てるように。だから、だから……!」
顔をあげ、潤んだ瞳で俺を見つめる神田。なんで、こいつは俺のことなんか好きになったんだろう。純粋なその気持ちが、俺に向けられているのだということが不思議でならない。
って、今はそんなことを考えている場合じゃない。一刻も早く、神田を引き剥がさないと。このままでは、俺の中の狼さんが、こんにちはしてしまう。それはダメだ。
「私じゃ、ダメでしょうか……?」
息がかかるほど近い距離に、神田がいる。神田の柔らかい肉体と体温が、俺の鼓動をさらに高鳴らせる。これ以上は本当にダメだ。自制できなくなってしまう。神田を引き剥がそう。
「神田、俺は…………」
「それ以上は言わないでください……。答えを聞くの、怖いです。自分から勝手なこと言っといて、さらに勝手ですけど……。ごめんなさい、もう少しだけ」
神田の唇が、口づけできるほどの距離まで近づいてきた。
この流れは、まずいだろ。
「夢を、見させてください」
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