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第7話 浮生若夢-1
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もうすぐ18時になる。そろそろお店開けないと。気持ちを切り替えて、お仕事しないと。
「神田ちゃん? まだ顔色悪いけど、大丈夫?」
「ああ、大丈夫です。ありがとうございます、三嶋さん」
私なんかに気を遣ってくれる三嶋さん。その優しさが、今の私には骨身に染みる。でも、上手いこと気持ちを切り替えることができない自分がいた。
「神田ちゃん、あの後なんかあったの?」
「えーっと……」
実は、高坂さんが意識を失ったとき、たまたま三嶋さんから電話がかかってきたんです。今日の勤務について確認したいって。その時状況を説明して、高坂さんをベッドまで運ぶのを手伝ってもらったんです。
その後は、ちょっと用事があるからって三嶋さんは帰ったので、私が高坂さんを看病することになったんですけどね。
「…………フラれちゃったんです、私」
「……そっか。告白したんだ、あいつに」
「驚かないんですね、三嶋さん」
「そりゃあ、普段の神田ちゃんを見てれば一目瞭然だよ。むしろあいつが鈍感過ぎるってだけで」
「そう、ですよね。ほんと、高坂さんは鈍感野郎です。困ったものです」
「……はい、これ使って」
「え?」
いつの間にか、私は涙を流していた。三嶋さんがハンカチを差し出してくれた。それを受け取り、涙を拭かせてもらう。
「すみません、ありがとうございます。ダメですね、私。これからお客様いらっしゃるのに……切り替えなきゃ」
こんな個人的な感情を、お仕事に持ち込んじゃダメだ。
もうすぐ18時になる。そろそろお店開けないと。気持ちを切り替えて、お仕事しないと。
頑張ろう、頑張るぞ私。気合いを入れろー! おー!
「神田ちゃん? まだ顔色悪いけど、大丈夫?」
「ああ、大丈夫です。ありがとうございます、三嶋さん」
私なんかに気を遣ってくれる三嶋さん。その優しさが、今の私には骨身に染みる。でも、上手いこと気持ちを切り替えることができない自分がいた。
「神田ちゃん、今日仕事終わったら遊びに行こっか?」
「遊びに、ですか?」
「そう。神田ちゃん、明日休みだよね?」
「まあ、そうですけど」
「やった、ビンゴだ。じゃあ行こうよ。憂さ晴らしだと思ってさ」
三嶋さんから遊びに誘われるなんて初めてだ。というか、誰かと遊びに行くっていうこと自体久しぶりな気がする。
明日は休みだし、今日は母方の叔母さんがお母さんのことを見てくれてるから、お家のことも大丈夫。私が仕事の時は、基本的に叔母さんがお母さんに付いてくれている。
高坂さんに話してた時は、黙ってました。ずるい女です、私は。
「わかりました。行きましょう」
三嶋さんの言うとおり、今の私には憂さ晴らしが必要です。普段しないようなことをして、今日あったことは忘れちゃいましょう。そうです、そうすれば楽になれるはずです。こんな……こんな気持ちはどっかに行っちゃうんです。
「三嶋さん、私と二人で行くんですか?」
「ん? 当たり前じゃん」
「え? でも、彼女さんに悪いんじゃ……」
確か、三嶋さんは彼女さんがいらっしゃったはず。異性と二人で遊んでるとなれば、彼女さん的にはいい気持ちではないと思いますね、これは。
「ああ、あれ嘘だよ」
「嘘?」
「そうそう。高坂を焚き付けるための嘘。だから、何も気にしなくていいんだよ」
「そうだったんですか」
「ていうか神田ちゃん、あいつも相当鈍感だけどさ……」
ポリポリと頭をかく三嶋さん。
「神田ちゃんも大概だよね」
「え? それってどういう……」
その時、お店の扉が開いた。三嶋さんの言葉の意味は、お仕事が終わってから聞いてみよう。うん、そうしよう。
「神田ちゃん? まだ顔色悪いけど、大丈夫?」
「ああ、大丈夫です。ありがとうございます、三嶋さん」
私なんかに気を遣ってくれる三嶋さん。その優しさが、今の私には骨身に染みる。でも、上手いこと気持ちを切り替えることができない自分がいた。
「神田ちゃん、あの後なんかあったの?」
「えーっと……」
実は、高坂さんが意識を失ったとき、たまたま三嶋さんから電話がかかってきたんです。今日の勤務について確認したいって。その時状況を説明して、高坂さんをベッドまで運ぶのを手伝ってもらったんです。
その後は、ちょっと用事があるからって三嶋さんは帰ったので、私が高坂さんを看病することになったんですけどね。
「…………フラれちゃったんです、私」
「……そっか。告白したんだ、あいつに」
「驚かないんですね、三嶋さん」
「そりゃあ、普段の神田ちゃんを見てれば一目瞭然だよ。むしろあいつが鈍感過ぎるってだけで」
「そう、ですよね。ほんと、高坂さんは鈍感野郎です。困ったものです」
「……はい、これ使って」
「え?」
いつの間にか、私は涙を流していた。三嶋さんがハンカチを差し出してくれた。それを受け取り、涙を拭かせてもらう。
「すみません、ありがとうございます。ダメですね、私。これからお客様いらっしゃるのに……切り替えなきゃ」
こんな個人的な感情を、お仕事に持ち込んじゃダメだ。
もうすぐ18時になる。そろそろお店開けないと。気持ちを切り替えて、お仕事しないと。
頑張ろう、頑張るぞ私。気合いを入れろー! おー!
「神田ちゃん? まだ顔色悪いけど、大丈夫?」
「ああ、大丈夫です。ありがとうございます、三嶋さん」
私なんかに気を遣ってくれる三嶋さん。その優しさが、今の私には骨身に染みる。でも、上手いこと気持ちを切り替えることができない自分がいた。
「神田ちゃん、今日仕事終わったら遊びに行こっか?」
「遊びに、ですか?」
「そう。神田ちゃん、明日休みだよね?」
「まあ、そうですけど」
「やった、ビンゴだ。じゃあ行こうよ。憂さ晴らしだと思ってさ」
三嶋さんから遊びに誘われるなんて初めてだ。というか、誰かと遊びに行くっていうこと自体久しぶりな気がする。
明日は休みだし、今日は母方の叔母さんがお母さんのことを見てくれてるから、お家のことも大丈夫。私が仕事の時は、基本的に叔母さんがお母さんに付いてくれている。
高坂さんに話してた時は、黙ってました。ずるい女です、私は。
「わかりました。行きましょう」
三嶋さんの言うとおり、今の私には憂さ晴らしが必要です。普段しないようなことをして、今日あったことは忘れちゃいましょう。そうです、そうすれば楽になれるはずです。こんな……こんな気持ちはどっかに行っちゃうんです。
「三嶋さん、私と二人で行くんですか?」
「ん? 当たり前じゃん」
「え? でも、彼女さんに悪いんじゃ……」
確か、三嶋さんは彼女さんがいらっしゃったはず。異性と二人で遊んでるとなれば、彼女さん的にはいい気持ちではないと思いますね、これは。
「ああ、あれ嘘だよ」
「嘘?」
「そうそう。高坂を焚き付けるための嘘。だから、何も気にしなくていいんだよ」
「そうだったんですか」
「ていうか神田ちゃん、あいつも相当鈍感だけどさ……」
ポリポリと頭をかく三嶋さん。
「神田ちゃんも大概だよね」
「え? それってどういう……」
その時、お店の扉が開いた。三嶋さんの言葉の意味は、お仕事が終わってから聞いてみよう。うん、そうしよう。
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