都市伝説と呼ばれて

松虫大

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第二章 巨星堕つ

31 エステル、フォレスへ行く

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 エステルとユーリの婚約が発表されてからしばらく経つと、カモフの谷は秋が深くなり街では慌ただしく冬支度が始まっていた。あとひと月程すればンガマトの山から寒風が吹き下ろし始めるため、家屋の外へ出ることすら困難になってくる。
 そんな冬支度の忙しい最中、トゥーレの姿はフォレス行きの船上にあった。
 年内にフォレスに行くタイミングとしてはもうギリギリだった。この機会を逃せば春になるまで動くことが困難になるのだ。
 商船を改造した二十丁櫓の軍船の上だ。サトルトでは将来旗艦となる軍船を建造中だったが進水の予定は来年の秋。その間の繋ぎと水夫たちの訓練のために商船を買い取り改装したものだ。
 アルテミラとフォレス間を繋ぐ七十丁櫓の強大な船には遠く及ばないが、普段サザンで目にする船は十から十六丁櫓の船だ。それよりもひとまわり以上大きな二十丁櫓の船は、目にしたサザンの人々を驚かせるには充分だった。

「ピエタリ、出航してくれ!」

 もちろんこの船を預かるのはピエタリだ。移り住んできた二〇〇名の中から十名がこの船に乗り込み、他の兵たちの指導をおこなっている。所謂、訓練船だった。

「ようし、お前等出航だ! アンカーを上げろ!」

 威勢のいい彼の言葉で、船首のアンカーが巻き上げられていく。
 櫓を漕いで桟橋を後ろ向きにゆっくりと離れた船は、今度は左舷側へ船首を回頭させていく。

「帆を上げろ!」

 サザンの港をゆっくりと離れた船は、号令に合わせて帆柱に畳んでいた帆を広げた。バサリと順風を受けた船が、湖の上を滑るように走って行く。

「まぁ! カモフの谷があんなに遠くになりました!」

 お茶会での約束通り、今回のフォレス行きにはエステルが同行していた。いつもの臙脂色の膝丈のスカートにブラウスを合わせ、濃緑色のボディスを着けショールを羽織っていた。
 初めて見る景色に彼女は先程からはしゃいだように歓声を上げている。目に映るもの全てに興味を示すように、左舷のデッキにいたかと思えば右舷に、前部デッキかと思えば後部と先程からひとつ所に落ち着かない。彼女が移動する度にエステル付きの側近たちもぞろぞろと移動していく。
 景色に飽きると今度はピエタリに舵を取らせろと交渉したりする。
 しかし風の強いデッキで膝丈のスカート履きだ。風に煽られて下着がチラチラと見え隠れするたびに、男性の側近や護衛が目のやり場に困ったように目を逸らしていた。

「姫様、あまり身を乗り出しますと危のうございます。・・・・うっ!」

 十名程の彼女の側近の中で唯一船酔いしてしまったフォリンが、青い顔を浮かべながら必死に勤めを果たそうとエステルを追いかけていた。だが、すぐに動くことができなくなった彼女は、この後すぐにフォレス到着まで寝込むこととなってしまう。

「誰だ? 直ぐに静かになると言ったのは?」

「トゥーレ様だった筈ですが?」

「むぅ・・・・、貴様の嫁だろう? 大人しくさせろ!」

「まだ婚約者です。結婚まではまだ三年もございます。それにトゥーレ様の妹君でしょう? トゥーレ様が言い聞かせた方がよろしいかと」

 トゥーレらはエステルのはしゃぎっぷりに辟易し、早々に船室へと待避していた。それでもデッキでの賑やかな雰囲気は伝わってきていた。彼らは響いてくるエステルの軽い足音に、天井を見上げて苦笑いを浮かべていた。
 今回のフォレス行きは年二、三回の定期的なトゥーレの通いのひとつだ。
 今回は前回約束した通りにリーディアと近郊の森で狩りをおこなう予定だった。
 そこに急遽同行が決まったエステルだが、リーディアと違って乗馬や射撃は出来ない。彼女の希望通りリーディアとのお茶会は予定されたが、狩りの当日はフォレスの街や港の視察となっていた。
 前回襲撃を受けたことからフォレスでは数日前から厳戒態勢が敷かれ、街には衛兵の姿が目立つようになった他、狩りをおこなう予定の森も立ち入り禁止の処置がとられているという。
 護衛の数を増やすべきでは?という意見もあったが、ウンダル側への信頼を示すためもあって、トゥーレの側近の人数は殆ど変えてはいない。若干武官の比率が増えた程度だ。
 もちろん全面的に信用している訳ではない。数日前からオレクやニオール商会の手の者を街に忍ばせて情報収集にも当たらせている。

「あれがフォレスですか? 美しい街並みですねっ、うっ・・・・うえぇぇぇ・・・・」

 旅程は順調に消化し、出発から三日目の午後にはフォレスの丘の上に建つ、城の二本の尖塔を眺める事が出来た。
 エステルが元気だったのは最初だけで、一日目の午後からは酷い船酔いで桶を手放すことが出来なくなっていた。
 今もフォレスが見えたと聞いてデッキに上がってきたものの、顔には血の気がなく胸には桶を抱えたままだ。無理矢理笑顔を見せたが、その直後には嘔吐していた。最早吐く物がなく胃液だけを桶の中に戻す有様だった。
 因みにフォリンに至っては立ち上がる気力すらなく、今も船室でぐったりしているらしい。

「・・・・残念すぎる」

 トゥーレはやれやれと溜息を吐いて首を振る。
 兄のそんな態度にも反論する元気もないようで、エステルは左舷デッキの手摺りの傍にぺたんと座り込んでいた。

「もうすぐ着くから、もうそのままデッキで風に当たってろ」

「うぅぅぅ・・・・そうしますぅ。・・・・お兄様ぁ、お願いがあります」

 動く元気もないのか、目の周りが落ち窪んだ表情で力なく頷く。それでも何か頼みたいことがある様子で顔を上げた。

「何だ?」

「ユ、ユーリをお貸しくださいませ」

 若干頬を染めながら小さな声でそう告げる。

「何だお前、そんな甘えん坊だったか?」

「い、いいじゃないですか!? 到着するまででいいので、っうぷ!」

 今度は耳まで真っ赤に染め、それでもトゥーレの言葉を否定しなかった。
 トゥーレは肩を竦めたものの拒否はすることなく、『到着までだぞ』と許可を出した。

「エステル様は良くても、私は恥ずかしいのですが・・・・」

「姫のご指名だ。しっかり尽くせ!」

「後でトゥーレ様に弄られるのが目に見えるようですが」

 照れたように頬を指で掻くユーリの肩をポンと叩くと、トゥーレは船室へと降りていった。
 残されたユーリは仲間の冷やかしの視線に晒される中、エステルの傍で優しく声を掛け、時折背中を擦ったり手を繋いだりと甲斐甲斐しくフォレスに到着するまでエステルの世話を焼いていたのだった。



「トゥーレ様!」

 船がフォレス湾内に入っていくと、桟橋でリーディアが手を振っていた。彼女の護衛騎士のアレシュや側勤めのセネイといった顔なじみとなった彼女の側近達の姿も見える。

「リーディア! 元気そうで何よりだ」

 舷側から身を乗り出すようにしながらトゥーレも手を振る。彼の傍には青い顔をしたエステルがユーリに支えて貰いながら、兄の婚約者の顔をひと目見ようと顔を覗かせていた。

「あの方がリーディア様ですの?」

 エステルが驚いたように声を上げる。
 リーディアはそれまで乗馬をしていたのか、濃紺のキュロットに乗馬ブーツを履き、ゆったりした濃灰色のブラウスを身に着け、上からカーキ色のローブを羽織っている。赤毛は邪魔にならないように後ろで一本に纏められていた。
 一見すると姫様というより騎士のような格好に近い。しかしよく見れば細かい仕草のひとつひとつは洗練され上品さが漂っていた。

「はい。トゥーレ様の婚約者です」

「ふうん、そう。姫様ですのに日焼けして真っ黒では・・・・うっ!」

 ユーリの言葉に値踏みするような眼差しを向けるエステルだったが、吐き気には勝てずに直ぐに桶を抱え直すのだった。



「何だかまだゆらゆらと船に揺られているような感じがします」

 下船してようやく人心地着いたエステルだったが、直ぐに気分が良くなるはずもなく、青白い顔でユーリの袖口を掴んだままだ。その場でリーディアに挨拶するのは遠慮して、早々に迎えの馬車へと乗り込む。
 トゥーレはリーディアと同乗、ユーリは船を下りるまでとの約束だったが、エステルがピッタリと寄り添ったまま離れなかったため、別の馬車に乗りそれぞれ城へと向かって行った。

「随分楽になりましたが、まだ水に浮いてるような感じがします」

 城に着いた時には、エステルの顔色は随分と良くなっていたが、馬車から降りた後もそう言ってはユーリの腕を放さず甘えたままだった。

「エ、エステル様!」

 慌てた声でユーリがそう言うと、引きはがすようにしてエステルから離れる。
 不満そうな顔を浮かべるエステルに、ユーリは黙って前方を指差して静かに跪いた。
 トゥーレたちの馬車の傍で、オリヤンが出迎えに出ていたのだ。
 先日の退任発表により領主をダニエルに譲った後は、僅かな護衛を連れたのみで気軽に出歩くことが増えたという。今回もトゥーレが到着したと聞いて出迎えに出てきたようだ。

「トゥーレ殿、怪我の具合はすっかり良さそうだな。安心したぞ」

「はい、もうすっかり良くなりました。ご心配おかけしました」

 トゥーレは跪きながらそう言って笑顔を見せ、リーディアはトゥーレから離れてオリヤンの傍へと移動している。

「儂はもう只の隠居なのでな、そのような礼は不要だ。立ってくれ。それよりも後遺症がなさそうで良かった」

 ユーリに甘えていたため出遅れたものの、優雅な足取りで移動したエステルは、立ち上がったトゥーレの傍に立つ。

「オリヤン様もお変わりない様子で安心致しました。今回は妹も同行しておりますので紹介させてください。こちらが私の妹のエステルでございます。エステル、オリヤン様とリーディア姫だ」

「お初にお目にかかりますオリヤン様、リーディア姫様。カモフのザオラルが次女エステルにございます。この度はわたくしの願いを聞き届けいただき、フォレスに招待いただいた事、誠に嬉しく存じます」

 静かに進み出ると優雅な仕草でカーテシーで頭を下げ、卒のない挨拶をおこなった。

「其方がエステル殿か、トゥーレ殿にも似ているがそれ以上にテオドーラ殿によく似ている。よく来てくれた、歓迎するぞ。リーディアとは歳も近いし仲良くしてやってくれ」

「ありがとう存じます」

「エステル姫様、お初にお目にかかります。トゥーレ様からお伺いしております。酷い船酔いのご様子でしたがお身体は大丈夫ですか?」

「はい、先ほどはご挨拶が出来ずに申し訳ございませんでした。船を下りたら随分と楽になってきました」

「今夜は充分お身体を休めてくださいね。三日後のエステル様とのお茶会を楽しみにしております。カモフの事をたくさんお聞かせくださいね」

「お気遣いありがとう存じます。こちらこそお茶会を楽しみにしております。わたくしにもウンダルのお話を色々教えてくださいませ」

 お互いにそう挨拶を交わすと笑顔を浮かべた。
 その夜歓迎会が開かれたが、この頃には快復していたエステルは、ドレス姿でダニエルへの目通りを卒なくこなしたのであった。
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