Rabbit bride 2085 第7話 強襲のブライド

まろうど

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3 強襲のブライド

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令和の終わり頃から始まった3度の震災の影響を受けて、東京湾の沿岸部は地盤沈下により水没していた

東京都中央区を震源とする局地地震は、震度6弱以上の強い揺れが10年の間に3回、震度4以上の余震は800回以上続いた

その影響で沿岸部は海に没し、海岸線は内陸部に大きく移動していた

2085年の海岸線は、まるで江戸時代の海岸線に戻ったようだった

平成から令和の時代に臨海部に建てられた高層ビル群は、そのほとんどが倒れずに林立しているが、人々が生活していける地域ではなくなってしまった

海上に取り残されたビル群は、大手企業が解体する名目で買い取りを進めた

だが実際は、海上のビル群は解体されることはなかった

水没地帯のビル群は、発電システムを整備して、非合法な製品の開発や製造、取引などの場所として利用されていたからだ

ブライドが向かっているのはそのビル群のひとつだった

昔の住所で言えば月島にあたる場所だ

東河岸通りを、ボートがゆっくり進む

ブライドの乗るボートは小型のものだった

バッテリーとモーターで静かに進むことができるボートだ

光学迷彩を使うブライドならば、ボートだけが潮に流されているように見えるだろう

水没地帯の利用価値のない小さな建物は、すでに解体は完了している

逆に、5階建て以上のヘリポートを持つビルのほとんどが残っていた

長嶋第7ビル....

それは7階建ての、それほど大きくはないビルだ

「ここで、お母さんの亡骸が実験に使われているのね⁉️

....絶対に許さない💢」

この日の昼間に、内閣調査室本部にいるブライドに来客があった

時々会う刑事だった

たまもにお願いして、刑事の消された記憶を呼び覚ましていたのだった

消された記憶は、初代ブライド....アリスとルカの母親のことだった

3年前、初代ブライドは殺された

その犯人はM109....
ブルバードだった

そして、ブルバードは初代ブライドの亡骸を、実験材料として販売していたのだ

刑事が集めた情報では、元月島のこのビルに、初代ブライドの亡骸があるはずだった

お母さんを実験の道具になんかさせない.....

うさぎの母を思う心が、非合法施設への強襲となった

母親の亡骸を奪還するために‼️

..........

波の音と海鳥の声しか聞こえない

夕暮れの海は、潮が静かに流れていた

2階の床上まで水没しているそのビルは、新たに作られた2階の入り口から、ボートで直接ビル内部に進入できるように改修されていた

とは言え、どこのビルも警備システムは完備している

ボートで進入する前に発見されてしまう

(うさぎちゃん。

周囲のビルの警備システムは制圧しているよ。

いつでも侵入できるよ)

波に揺れるボートの上で、ブライドはサポートAIの報告を聞いていた

「行きましょう」

ブライドは静かに答えた

ビル内部の小さな船着場にボートが寄せられた

ロープをボラードに固定して、ブライドは入り口に向かった

建物外部の警備システムを制圧しているとは言え、発電システムを持つ建物の制御機能を個人のコントロール下に置く事は無理がある

なぜなら、制御機能を完全に奪うには、発電システムから供給される電力を上回る必要があるからだ

建物外部の警備システムは市販品だから制圧は容易い

しかし、建物内部は別だ

パスワードなどが分かれば、入り口のドアを開けることはできるだろう

だが、特注で作られている建物内部の警備システムに発見されて、即座に対処されてしまう

だから、その警備システムの制圧は、圧倒的な電力を使った力技が必要となる

ドア横に静脈認証のパネルがあった

「これを使いましょう」

無造作に、パネルに左手を当てるブライド

右手は、壁の中のケーブルを探す

静かに目を閉じるブライド

サポートAIのkameが警備システムに侵入した

建物の発電システムを上回る電力で、警備システムの制御を奪って行く

電撃が得意なブライドは、自分の体内で電気を発生させることが出来るのだ

とある理由があり、電撃=ライオットはブーツの靴底でしか使っていないのだった

(制御を奪えるのは数分だね

それでも、独立思考型の警備システムがあるから、侵入したらすぐに見つかるかもしれないよ)

「かまいません❗️

その場合は力技で突破します」

(一応、中の映像を確認してみよう)

サポートAIが、内部の監視カメラの映像をブライドの脳内で映した

「荒い画像ですね」

とても2085年相応の解像度ではない

(ところどころノイズがあるのは、罠かもしれないよ)

「かまいません」

ブライドは、あえて光学迷彩をオフにした

(開けるよ)

静脈認証パネルの緑のランプが点灯した

ドアがゆっくり開いた

脚を踏み入れるブライド

通路の左はすぐに行き止まり

右は奥に続いている

その突き当たりを、さらに左右に行けるようだ

監視カメラは制御下に置いている

....何⁉️

通路の右奥

何かいる❓

壁の一部が揺らいだ

身構えるブライド

ドアが閉じると同時に、ブライドの正面に独立思考型の警備システムが姿を現した

全高185センチくらいだろうか❓

白いボディの警備ロボが、光学迷彩で身を隠していたようだ

これがノイズの正体か❓

「侵入者を排除します」

電撃警棒を持つ、格闘戦用の警備ロボだ

「わたしを止められますか⁉️」

ブライドが一気に間合いを詰める

電撃警棒をかわして、ブライドの体重と速度が乗った左の蹴りが警備ロボの顔面に決まった‼️
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