旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

俣彦

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棲み分け

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真田幸隆「(空誓の本拠)三河はどうだったのですか?」

私(村上義清)「家康があのようなことをするまでは特段問題を抱えていたわけでは無かった。むしろ松平から優遇されていた。」

真田幸隆「その要因は何だったのでしょう?」

私(村上義清)「1つは西三河に進出した時期がほぼ同じだった。と……。」



 今の岡崎から安城に掛けての寺が本願寺派になったのは1461年頃。その後建てられた本宗寺を三河に下向した蓮如に寄進すると同時に蓮如の孫を住職に迎え入れたのが1467年。その4年後の1471年に安祥城を奪い取ったのが松平。



私(村上義清)「その際、安祥城の城主となった松平親忠から(一向宗の軍事部門を担当している)石川氏から男子一人を家老として迎え入れたいとの申し出があった。それからの付き合いだそうな。」

真田幸隆「しかし共に岡崎から安祥に拠点を設けているとなると利害の対立が発生すると思うのですが。」

私(村上義清)「そうはならなかった。」

真田幸隆「思い当たる節は?」

私(村上義清)「両者が求めているものが違っていたから問題にならなかった。一向宗は物の流れの拠点を抑え、そこでのやり取りによって生計を立てることを志向しているのに対し、松平はそうでは無かった。」

真田幸隆「何を追い求めていたのですか?」



 松平は今の豊田市松平を拠点に、鉄製の道具類の管理と奥三河の山の人々を組織、活動させていた豪族。



私(村上義清)「けっして貧しい場所では無いのではあるが、1つだけそこに居てはどうすることも出来ないものがあった。それは……。」



 コメを作ることが出来ない。



私(村上義清)「主食は焼き畑農業から生み出された粟や稗。松平の祖はお坊さん。様々なところを遊行しては接待を受けて来た身。そんな中、意気投合して松平にやって来たは良かったのだけど『おコメが無い。』と……。」



 その後、松平はコメを求め西三河を南進。岩津で初めて稲作が可能な場所を手に入れた後も拡大を目指し、1471年。ついに三河随一の穀倉地帯。安祥の地を手に入れたのでありました。そこで出会ったのが一向宗。



私(村上義清)「一向宗としての活動は10年と日が浅いとは言え、元々浄土真宗(高田派)の強い地域。耕作従事者の中に一向宗を信仰しているものも多い。一向宗の(寺がある)町は栄えている。そこから京へ様々なヒトとモノが行き交っている。これらは松平には無いものである。一方の一向宗側からすれば、地元の有力者となり得る勢力が味方であるに越したことはない。お互い強い軍事力を持っている。そして何より松平は(一向宗の商売の)邪魔をする存在ではない。それならば信頼出来る石川氏を松平の家臣団にも組み込むことによって関係を強化したい。」

真田幸隆「今川の介入がありましたが、両者の良好な関係が100年近く続いたと考えれば大成功ですね。」

私(村上義清)「ただ家康が自立してやっていくには、今の勢力(岡崎近郊のみ。あとは親戚の権益)では如何ともし難い。そうなると関係が崩れるのも……。」

真田幸隆「気をつけないといけませんね。」

私(村上義清)「そうだな。」
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