旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

一穴

春日虎綱「ただ琵琶湖南西部の港の中にも、比叡山と仲の悪い所も存在しています。それがこちらになります。」



　春日虎綱が指し示した場所。それは……。



春日虎綱「堅田になります。彼の地は今から１００年前。比叡山とのいくさに敗れるも、多額の金銭を払う事により２年後堅田へ帰還する事が許され、今も活動を続けています。」

真田幸隆「と言う事は比叡山の軍門に降っているのだろ？」

春日虎綱「はい。」

真田幸隆「ただその中に、比叡山との縁を切りたいと考えている者が存在している？」

春日虎綱「はい。その縁を切りたいと考えている層が堅田帰還への金銭を工面した者共であります。今、堅田は彼らが中心となって経済活動を行っています。」

真田幸隆「そこに信長は目を付けている？」

春日虎綱「はい。実際、義昭様を奉じての上洛以来。大量の人と物を迅速に行き来させるためにも琵琶湖の水運は必要不可欠でありますので、早くから彼らが持つ利権を保障する政策を信長は採っています。」

真田幸隆「その関係は今も崩れていない？」

春日虎綱「今の所は。」

真田幸隆「……信長にとって必要であれば、ぞんざいに扱われる事は無い。か……。」

私（村上義清）「どうした？」

真田幸隆「いえ。うちは美濃で信長と境を為しています。信長の本拠地の目と鼻の先にまで我らの勢力が及んでいます。いつ狙われても不思議では無い状況にあります。かと言いまして信長は、うちの軍備には無くてはならない種子島の供給元を押さえていますので敵対するのは得策ではありません。どのようにすればうちの利権を守りながら信長との関係を維持し続ける事が出来るのか？も考えている所であります。」

私（村上義清）「わかった。虎綱、続けてくれ。」

春日虎綱「はい。先程『今の所』はと申し上げましたのには理由があります。実は堅田は今。信長にとって難しい場所になってしまっています。どのような理由でなのかと言いますと……。」



　堅田は１００年前まで一向宗の拠点であった場所。



春日虎綱「信長が堅田に対し権利を保障しているのは臨済宗の者であり、一向宗を信仰している者ではありません。その事も影響しているのかもしれません。先の姉川のいくさ以降、堅田の一向宗は反信長の態度を鮮明にしています。それに追い打ちを掛けたのが石山からの檄。『信長を討ち果たせ！！』であります。現状、信長は堅田を全く使えなくなってしまったわけではありません。ありませんが、堅田の誰が味方で誰が敵になるのかわからなくなってしまっています。故に今、信長は堅田を使う事が出来ない状況に陥っています。」