旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

俣彦

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 北条兵と共に崩れ落ちた元坂道を見た村上義清は……。



私(村上義清)「幸隆!」

真田幸隆「はい。」

私(村上義清)「ちょっといい?」

真田幸隆「今、敵方へ射掛けている最中でありまするが。」

私(村上義清)「すぐに終わるから。」

真田幸隆「如何なされましたか?」

私(村上義清)「今、北条が落ちた坂道あるだろ。」

真田幸隆「はい。」

私(村上義清)「あの坂道をさ。出来た後に……。俺を独りで歩かせたよな。」

真田幸隆「えぇ。」

私(村上義清)「その時既に。あの仕掛けを……。」

真田幸隆「施しておりましたが。」

私(村上義清)「俺の体重に耐える事が出来るかの実験は……。」

真田幸隆「計算上問題はありません。」

私(村上義清)「出来た後、誰か俺と似たような体重の者を歩かせたりとかは?」

真田幸隆「いえ。完成した後、最初に歩いたのは殿であります。」

私(村上義清)「と言う事は、俺が歩いても大丈夫だと言う確証は?」

真田幸隆「計算上問題はありません。」

私(村上義清)「もしもって事は想定しないの?」

真田幸隆「何を。でありまするか?」

私(村上義清)「坂道に不備があって、俺が落とし穴に転落する恐れに決まってるだろ!」

真田幸隆「誰も踏み入れていない真っ新な坂道を殿には歩いていただきたいと思っておりまして。」

私(村上義清)「それなら実証実験した後に、もう一度均せば済む話であろう。」

真田幸隆「整備中に落ちてしまうかもしれません。我が部下をそのような危険な目に遭わせるわけにはいけません。」

私(村上義清)「主君の俺が落ちても問題無いの?」

真田幸隆「人の命に身分の差など御座いませぬ。」

私(村上義清)「(間違ってはいないけど……。)それはわかった。俺が悪かった。」

真田幸隆「気を付けて下さい。」

私(村上義清)「でもさ。」

真田幸隆「まだ何かありまするか?」

私(村上義清)「今俺にもしもの事があったら困らない?それも氏照が奪い返そうとしている最前線の城で。急に居なくなったら動揺しない?」

真田幸隆「家督は国清様に譲られております。殿は既に隠居の身であります。いつ何時どのような事がありましても村上家が揺るぐ事は御座いません。」

私(村上義清)「俺はお前の部下よりも命は軽いって事?」

真田幸隆「何故そのような解釈になるのでありまするか?先程も述べましたように人の命に軽重を語るなど愚の骨頂であります。」

私(村上義清)「でも俺って名前があるじゃん。敵から恐れられているでしょう?」

真田幸隆「存じ上げております。」

私(村上義清)「俺が居なかったらこの作戦にも支障を来すだろう?」

真田幸隆「それでしたら心配ありません。ここに四郎を残すだけでありますので。」
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