願いがかないますように…

kitahara

文字の大きさ
5 / 17

事実は…。

しおりを挟む
そして今、目の前には、トウゴが立っている。

扉を開けて入ってきたのは、3年半ぶりにみるトウゴだった。

 「トウゴ…」

それ以上言葉を続けることもできず、泣くオリビア。

抱き寄せて小さく「ごめん…」と呟くと優しく背中を撫でて慰めた。





トウゴの胸の中で泣いていたオリビアが少し落ち着くと、トウゴは静かに話し始めた。



「本当は俺たち兄弟は、仲がいい」

という、トウゴの第一声から始まった話は、驚く内容だった。

そもそもトウゴの兄たちの兄弟間による内戦ではなかったか?
 
その戦いも第一王子が王位を継ぎ終結しているが。

 「は?」

 「親を含め、周りの貴族たちは、知らないが、対外的に敵対関係を装っているだけで俺たち兄弟は仲が非常によい。子供の頃からそれこそ、溺愛と言われるほど、俺は、二人の兄に可愛がられていた。」

 「はあ…」

 「元々、母親が違う兄弟であったが親たちからは離され、妬み嫉みとは無縁な環境で育った。
 勲等を受けた師が優れた人で、ともに学ぶ中で交流も深める事ができた。
 王城や人前では、取り繕い他人行儀に振舞うが実際は、ほんのひと握りの者が知る事だが、兄弟仲は非常によく、友人のような同士のような存在だった。
 第3王子である俺は幼い頃、身体が弱く見た目も弱々しくて兄たちは、うざい程構い可愛がっってくれた。

その内、成長とともに丈夫になって、身体も兄たちよりも大きく力も強くなって騎士となる事ができた。」

外交と内政を二人の兄王子が担い、兄王子たちの手腕とともにトウゴが武に優れ、将軍位について数年の後なは、3人の合わせた力で国が大きくなっていった。と話す。

それこそ、大国と肩を並べるまでに急速にトウゴの国は成長を遂げた。

大人になってからも兄たちとの仲は変わらず良好で、将来的にも国を運営していく上で、何の心配もいらなかった。


ただ、幾つかの問題や障害はあった。

王子付きの派閥をつくる貴族たちと父王の存在だ。


事の発端は、父王とセレナ王国王女との結婚話だ。

 父王による娘ほど年の離れた王女への求婚…。

 
その為既に5人もの王妃側妃がいながら、元々欲深い驕った王が望んだのは、美しいと評判の年若い王女との婚姻。

 王女を欲した父王の命令により訪れたセレナ王国は、小さな国で武力で押さえ込めばたわいも無い程簡単に落とせそうな国だった。

トウゴは、王女との縁談話を苦々しい思いで嫌々来ていた。

そんな思いのまま、 連夜の宴に嫌気がさしていたトウゴは、涼みに人気のない場所へと足を伸ばしているうちに迷い込み、庭園でオリビアと会った。

それは、運命の出会いであった。強引に取付けたオリビアとの婚約。


しかし、自国の父王の意向を無視した取引であった為。

 帰国したトウゴを待っていたのは、王の逆鱗と嫁いできた際、オリビアの身柄を王に差し出すようにとの命令だった。

トウゴの婚約者となった年端もいかない少女の譲渡要求。

けれどトウゴは要求を撥ね付ける。

その後、王による度重なる圧力で徐々に王城から距離を置くことになっていった。

 国の防衛の要であるトウゴの不在。

 別の者が管理する王城は、隙を突かれ、何者かによって王は暗殺される。

それを発端に王子付き政敵同士による揉め事が頻繁に起こる。

 内乱が起こり、戦火の波はみるみる内に国中に広がっていく。

 実際、戦乱の原因は、二人の兄の不仲によるものでなかった。

だからこそ、トウゴたち兄弟はこの機会を逆手にとって、裏で連絡を取りながら、政敵たちを一掃するために動くことになる。

その中、ある疑惑が浮上する。


 王の暗殺と意図的に操作されたような内乱。

それが、自国の高位貴族と周辺国が繋がり、引き起こされた事だという事を突き止める。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

処理中です...