専属侍女の婚活事情…。

kitahara

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浮いた存在

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華やかで賑やかな会場の中ある一角だけが周囲から浮いていた。



そこだけは静まりテーブルに置かれた酒を女性が一人手酌で飲んでいた。


誰もが目を奪われるほど上品で美しい佇まいの女性は間違いなくこの会場で一番人気だった。

にも関わらず出会いの場に来たとは思えない異様な雰囲気を醸し出す彼女は一人だった。





彼女の近寄るんじゃねェオーラに二の足を踏んでいるのか…登場からかなりの時間が過ぎても誰も声をかける事ができなかったからだ。


そしてその一風変わった極上女性を見つめる者たちがいた。



彼女を案内した案内係だ。


案内係はその状況を歓喜の想いで見つめていた。





最初はあまりに場違いな程美貌の女性の出現に驚き浮足立ながら案内をし終えた。

自分の立ち位置に戻って悔しさがこみ上げた。


くそーっ。

あの場に居たなら…

せめて独身であったなら声をかけに行くのに…と。

案内をして戻って同僚に告げたほど、結婚したばかりの男は悔しがる。



お前なぁ嫁さんがいるじゃないか…。


と思いつつ同僚は何も言わなかった。



何故なら彼もまたその思いを理解できたから。

しかしこのパーティーに参加して伴侶を得た男だからこそ。

此処でのルールを解っているはずだとあえて言葉を飲み込んだ。

此処で伴侶を見つけた者は縁を結べた恩を返すことが義務付けられている。

救いの手を望んで参加する独身の彼らを助けるために職務に就いているのだから。



黙って相手をする同僚も過去2度参加しても相手に恵まれず3度目にしてやっと相手を見つけて結婚が出来たので現状に満足していた。


けれどこの案内係の男は少し事情が違っていた。

彼の場合酔っぱらって相手に押し切られての縁だった。

その為時期が違っていればあと少し待って参加してさえいれば目の前にいる極上の彼女と出会えたのに。
との思いから考えずにいれなかったのだろう。




まあ通常なら相手にもされないような女性相手ではあるが夢は勝手に見れるものだ。



少し年がいっているようだが決して相手が見つけられないような女性ではない。

それ程彼女は周囲から一線を画したようにひと際輝く高値の花だった。



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