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謎の手紙
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『早川優衣様。突然ですが、貴女は乙女ゲームの世界に飛ばされてしまいました』
「本当に突然ね!?」
冒頭から既に不安を感じさせるこの手紙。このまま読み進めて大丈夫か。
『貴女はそのゲーム『恋する貴方に愛の鮮血を』の悪役であるティア・クロストラスト令嬢へと転生したのです。
ーー今からその世界の知識を全て貴女にお伝えします』
そこまで読み終えると、突如脳裏に膨大な量の文字列が走る。気が遠くなる様な、凄まじい量の情報が脳内にインプットされていく。少し経てばそれも収まったので、とりあえず脳内からティアの情報を引っ張り出してみた。
「ティア・クロトラスト。クロトラスト公爵家令嬢。現在は齢九つ。冷酷かつ非情で利用できる物は徹底的に使い潰し、自身の邪魔になるものはどんな手段を使ってでも排除する。幼い頃から感情というものが一切無く、常に冷静、無表情」
おぉ……。流石悪役令嬢、設定がエゲツない。
特に最期の"常に冷静、無表情"って私と真反対なんだけど。常に喧しいし、顔に感情が出まくる人間なんだけど、転生させる人間間違えてない?
『このまま何も行動せずにいれば将来的に貴女は悪役として断罪、処刑されてしまう。ですから、今お伝えした情報を元にどうにか生き残ってください。』
「ちょ、ちょっと待って!?なにその物騒な未来!処刑っ!?」
嘘でしょ……?えっ、いっそ夢だって思い込みたいんだけど。
だっていきなり悪役に転生した上に未来を変えなきゃそのまま処刑エンドとか、神様私にハードな試練与えすぎじゃない!?私何か悪い事しましたっけ!?
『こんな事しか出来なくて本当にごめんなさい。
どうか、きっと未来を変えてください。』
手紙の最後はこう締めくくられていた。
「あれ……この文だけなんかインクが滲んでる……』
水滴が零れ落ちたみたいな、文字の滲み。なんだろう。誰からの手紙かわからないのに、何故か心がきゅっとする。
いや、きっと気のせいだ。
「……それにしても乙女ゲームの世界かぁ。美少女ゲームなら大歓迎だったんだけどなぁ」
そもそも私がこんなに美少女好きになったのは歳の離れた兄の影響だ。兄は親にも内緒で大量の美少女ゲームを所持しており、部屋で1人ニヤニヤとゲームする姿に最初は「お兄ちゃん気持ち悪い」と完全否定していたのだが、ある日兄が一本の美少女ゲームをあまりにもゴリ押ししてくるので仕方なくプレイしたのが始まりだった。いや、始まりというか終わりだった。真っ当な人生という名の。
ふとした瞬間に見せる仕草、声、表情。そして、その綺麗な姿の裏に隠した消えない傷、過去、因縁。主人公とヒロインが歩んでいく壮絶なストーリー。
全てが私を魅了する。元々根っからのゲーマー気質だった私はどんどん美少女ゲームにのめり込んでいき、気が付いたら兄が持っているゲームを全て看破。兄と一日中語り合える程まで知識を付けていた。
そして今や私の美少女好きはゲームに収まらず、お気に入りのアイドルやモデルをインターネットや雑誌で探す日々。
ずっと渋っていた実家の神社のアルバイトも始めた。もちろん、他のバイト巫女さん目当てで。
うん。我がことながら気持ち悪いわ。
とりあえず、この世界の情報から今知っておくべきものをピックアップして引き出すか。
「『恋する貴方に愛の鮮血を』20××年発売。R-15指定。吸血鬼達との甘くて刺激な学園恋愛を描いた乙女ゲーム。
このゲームにおいてティア・クロトラストは悪役。攻略者達に気に入られるヒロイン×××に対し様々な嫌がらせを仕掛け、なお挫けないヒロインを暗殺しようと企てるが失敗に終わり、殺人未遂の罪で処刑される」
このティアはここのヒロインを虐めに虐め倒して、それでもへこたれないヒロインに腹を立てて、殺害の計画まで立てるけど最終的にそれがバレて処刑される流れみたいだ。
なら、話は簡単。私が悪役じゃなく良い令嬢になれば良いのでは。
ヒロインを虐めたり、殺害しようとしなければ処刑にだってならない筈。つまり、私はまわりに美しくて明るい、その上とてつもなく器の広い優しい令嬢だとアピールしなくてはならない。
「そうとなればやる事は一つだよね」
手に力を入れて再び鏡と向き合う。それから、鏡の前でニコッと笑……。
「人に心を開いてもらうには、まず明るい笑顔からっ!なんで笑、えない、のっ!このっ……!」
手を使って無理矢理頬を引き上げるとなんだか恐ろしい笑みになってしまった。これでは理想の笑顔とは程遠い。
「はぁはぁ。ぜ、絶対に笑顔をマスターしてみせるんだから……っ!」
こうして、私と彼女の鋼の頬筋との格闘は一時間にも渡って行われたのだった。
「本当に突然ね!?」
冒頭から既に不安を感じさせるこの手紙。このまま読み進めて大丈夫か。
『貴女はそのゲーム『恋する貴方に愛の鮮血を』の悪役であるティア・クロストラスト令嬢へと転生したのです。
ーー今からその世界の知識を全て貴女にお伝えします』
そこまで読み終えると、突如脳裏に膨大な量の文字列が走る。気が遠くなる様な、凄まじい量の情報が脳内にインプットされていく。少し経てばそれも収まったので、とりあえず脳内からティアの情報を引っ張り出してみた。
「ティア・クロトラスト。クロトラスト公爵家令嬢。現在は齢九つ。冷酷かつ非情で利用できる物は徹底的に使い潰し、自身の邪魔になるものはどんな手段を使ってでも排除する。幼い頃から感情というものが一切無く、常に冷静、無表情」
おぉ……。流石悪役令嬢、設定がエゲツない。
特に最期の"常に冷静、無表情"って私と真反対なんだけど。常に喧しいし、顔に感情が出まくる人間なんだけど、転生させる人間間違えてない?
『このまま何も行動せずにいれば将来的に貴女は悪役として断罪、処刑されてしまう。ですから、今お伝えした情報を元にどうにか生き残ってください。』
「ちょ、ちょっと待って!?なにその物騒な未来!処刑っ!?」
嘘でしょ……?えっ、いっそ夢だって思い込みたいんだけど。
だっていきなり悪役に転生した上に未来を変えなきゃそのまま処刑エンドとか、神様私にハードな試練与えすぎじゃない!?私何か悪い事しましたっけ!?
『こんな事しか出来なくて本当にごめんなさい。
どうか、きっと未来を変えてください。』
手紙の最後はこう締めくくられていた。
「あれ……この文だけなんかインクが滲んでる……』
水滴が零れ落ちたみたいな、文字の滲み。なんだろう。誰からの手紙かわからないのに、何故か心がきゅっとする。
いや、きっと気のせいだ。
「……それにしても乙女ゲームの世界かぁ。美少女ゲームなら大歓迎だったんだけどなぁ」
そもそも私がこんなに美少女好きになったのは歳の離れた兄の影響だ。兄は親にも内緒で大量の美少女ゲームを所持しており、部屋で1人ニヤニヤとゲームする姿に最初は「お兄ちゃん気持ち悪い」と完全否定していたのだが、ある日兄が一本の美少女ゲームをあまりにもゴリ押ししてくるので仕方なくプレイしたのが始まりだった。いや、始まりというか終わりだった。真っ当な人生という名の。
ふとした瞬間に見せる仕草、声、表情。そして、その綺麗な姿の裏に隠した消えない傷、過去、因縁。主人公とヒロインが歩んでいく壮絶なストーリー。
全てが私を魅了する。元々根っからのゲーマー気質だった私はどんどん美少女ゲームにのめり込んでいき、気が付いたら兄が持っているゲームを全て看破。兄と一日中語り合える程まで知識を付けていた。
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うん。我がことながら気持ち悪いわ。
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「そうとなればやる事は一つだよね」
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