青天の霹靂は、村娘の一言から

tosa

文字の大きさ
5 / 52

きょ、今日はここ迄!

しおりを挟む
「人間も魔族も、お互いをよく知らないから争うのよ。相手が得体が知れない存在だから、用心して、疑って、偏見の目で見てしまう」

 私は机の上を手で叩き、四人の魔族達に熱弁をふるう。こ、ここはもう勢いでごまかすしかないわ!

「······なる程。娘のいう事にも一理あるな。では問おう。どうすればお互い事を理解し合えるのだ?」

 金髪の国王タイラントが机の上に肘をつき質問してくる。いや、だから! 私は今それを全力でごまかす為に必死なのよ! そこをほじくり返すな金髪魔族!

 ······あれ? この金髪魔族、昨日と同じつむじの所が寝癖で跳ねてる。周りの部下はなんで何も言わないのかしら?

 あ、いやいや、今はこの金髪魔族の寝癖なんてどうでもいいわ。私は無い知恵を振り絞り、頭が知恵熱で沸騰する程考えた。

 その時私の脳裏に浮かんだのは、村一番の美青年フェトの端正な顔だった。

「まずは挨拶よ!!」

 私は再び机を叩く。私のあまり良くない脳みそが結論を出した。このまま勢いで押し切れと。

「まずは相手に挨拶をするの。そして相手の警戒心を解く。そこで相手も挨拶を返してくれれば御の字よ。その時相手が笑顔だったら脈ありよ!」

「······脈? 脈とはどう言う意味だ? 娘」

「人の話は黙って最後まで聞くの!」

 私はタイラントの質問を斬って捨てた。私の脳みそが警告する。連中に考える暇を与えるなと。

「脈ありなら次は食事に誘うのよ。いきなり二人きりだと相手が警戒するから友達同士で。そうね。二対ニぐらいが丁度いいわ」

「リリーカ殿。魔族と人間の人口比は一対三です。その比率から言うと、一対三が良いのでは?」

「そんな人数配置じゃ、只の食事会で終わっちゃうの! なんの進展もないの!」

 私は問いかけて来た白髪眼鏡魔族リケイを怒鳴りつける。私の脳みそが再び警告する。躊躇するなと。

「その食事で会話が弾んだら、今度は一対一で食事を誘うの。向こうが了承したら、かなり脈ありよ!」

「リリーカ。私さっきから気になっていたのだけど。その食事の際、当然お酒を飲んでもいいのよね?」

「お酒飲んで酔っぱらったら、ただの飲み会になっちゃうでしょ! お酒は禁止です!」

 質問して来た紫長髪魔族シースンが残念そうな顔をする。私の脳みそが最終警告する。ここで一気にたたみ込めと。

「二人が会う場所は静かな所がいいわ。そうね。森の中の泉の前なんていいわね。夕暮れ時だったら尚いいわ」

 四人の魔族は椅子に座りながら前のめりになっていた。よし! どうやら話に食いついてきてるわ。

「お喋りしたい気持を抑えて、なるべく口数少なくするのよ。そうすれば、相手はこちらをお淑やかな女の子と思うわ」

「女? 今女と言ったか娘! 片方は女の設定か? もう片方は男と女どちらだ?」

「黙っていろタイラント! 今大事な所だ!」

 金髪魔族国王とザンカルが何か言っているが、集中した私の耳には入ってこなかった。

「······そして待つの。相手がこちらの手を握ってくるのを。そして二人は見つめ合い······」

 私の妄想の中で、村一番の美青年フェトが私に顔を近づけてくる······

「だ、駄目よ! いきなり唇を許したら軽い女と思われるわ! お、おでこなら。い、いや頬ならいい······かな?」

「娘! おでこと頬! どっちなら許すのだ!」

 タイラントが椅子から立ち上がり叫ぶ。

「村娘! そこで一気に押し倒すのは駄目なのか?」

 ザンカルも叫びながら椅子を蹴飛ばす勢いで立つ。

「リリーカ! やっぱり少しは酔ってないと駄目よ! お酒が無いと!」

 シースンが両拳を机に叩きつけこれまた叫ぶ。

「リリーカ殿! やはり魔族と人間の人工比率的に、一対三がいいかと」

 リケイが三人の魔族と同様に大声を張り上げる。

 魔族達の叫び声で私は我に返った。え? 私。今何をこいつらに話していたの? これって、絶対に起こり得ない私の中の空想よね?

 私は猛烈に恥ずかしくなってきた。でも、今は暴徒化しつつある目の前の連中を黙らせないと!

 バンッ!!

 私は机の上を力の限り叩いた。暴徒化一歩手前の四人の魔族達は、一瞬動きが止まった。

「······きょ、今日はここ迄! 続きはまた明日よ!!」

 私は振り返らず講義室を出て一直線に自室に全力で走って行った。わ、私はなんて事を口走ったのかしら。

 続きは明日!? 明日、一体何の続きを私は喋るの? 部屋に戻った私は、ベットに腰かけ今日の愚かな自分を猛省した。

 か、考えるだけで顔から火が出る程恥ずかしい!! その時、突然部屋のドアが開けられた。

 乱暴にドアを開けたのは、息を切らしているザンカルだった。え? ノックは? ザンカルさん? 女性の部屋のドアをいきなり開ける普通?

 私が抗議する前に、ザンカルは大股でズカズカとこちらに歩いてくる。な、何の御用ですかザンカルさん?

 ドンッ。

 気づいたら私は、ベットの上でザンカルに押し倒されていた。私の大きく見開いた両目に、天井の模様とザンカルの顔が映る。

「······講義の続きだ。村娘」

 ······た、助けて。世界の何処かにいらっしゃる勇者様。私の心臓は、祭りの太鼓のように大きな音を鳴らしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?

すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。 人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。 これでは領民が冬を越せない!! 善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。 『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』 と……。 そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

見捨ててくれてありがとうございます。あとはご勝手に。

有賀冬馬
恋愛
「君のような女は俺の格を下げる」――そう言って、侯爵家嫡男の婚約者は、わたしを社交界で公然と捨てた。 選んだのは、華やかで高慢な伯爵令嬢。 涙に暮れるわたしを慰めてくれたのは、王国最強の騎士団副団長だった。 彼に守られ、真実の愛を知ったとき、地味で陰気だったわたしは、もういなかった。 やがて、彼は新妻の悪行によって失脚。復縁を求めて縋りつく元婚約者に、わたしは冷たく告げる。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

処理中です...