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いつか聞こるといいね。
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魔族の城中では、ある噂がまことしやかに囁かれていた。国王タイラントの鼻を折り。ネフィト執事長を震え上がらせ。戦士長ザンカルと秘書官リケイ手玉に取り惑わせた。
これら全てが同一人物の仕業だと言う噂だ。メイド司令室で私は複数の視線を感じていた。
メイド達が私を見ながら小声で噂話をしている。いや、これ私だって絶対断定されてるよね?
とほほ。自業自得とは言え、私はとんでもない人間の娘だと周囲から思われるようになってしまった。
司令室から逃げるように私は調理室でクッキー制作に取りかかった。今は無心になれる作業に没頭しよう。うん。
どれ位の時間が経過しただろうか。何気なく味見した時、私はクッキーを口に入れながら言葉にならない大声を上げた。
······出来た! タイラントが指定したあのクッキーの味と同じ物が!! 私は素早くレシピを記録し、そのメモ用紙を胸に抱きしめた。
良かった。これでタイラントはお母さんの作ったクッキーと同じ味が食べられる。私は嬉しさの余り涙ぐんでしまった。
私が感激している所に、司令室にいたメイドが怯えた声で私を呼びに来た。
「リ、リリーカ様。タイラント様がお呼びのようです」
私は完成したクッキーを袋に詰め、タイラントの部屋の前に立った。時刻はもう遅い。一体何の用だろう?
ノックをすると、タイラントの声がしたので入室した。タイラントはソファーに腰掛けており、鼻は包帯で固定されていた。
い、痛々しいなあ。顔面に拳を叩き込むなんて、やっぱりちょっとやり過ぎたかしら。で、でもタイラントが悪いのよ!
あの台詞は女の子に対して酷すぎるわ! 私は沸々と怒りが甦り金髪魔族を睨んだ。睨まれた寝癖魔族は小さくため息をつく。
「まだ怒りが収まらないのか娘」
タイラントは椅子から立ち上がり私に近づく。そして右手に持った小瓶を差し出す。
「な、何よこれ?」
「打ち身の薬だ。お前が責任を持って私の鼻に塗れ」
「じ、自分で塗ればいいでしょう?」
「この怪我はお前が原因だ。お前が責任を取れ」
え、偉そうに! でも、確かに私の責任だよね。タイラントはベットに座った。私は渋々タイラントの包帯を取り鼻に塗り薬を塗った。
私の指が鼻に触れると、タイラントは微かに身体を揺らした。
「あ、ごめん。痛かった?」
「······痛くは無い。誰かに薬を塗られる事など、これまで無かったのでな」
そ、そんな事言われると意識しちゃうじゃない。
「······タイラントの御両親は、我が子がこの薬を女の子に塗って貰うなんて想像出来たかしら?」
「そんな事は知らぬな。質問しようにも、する相手が生きてない」
「······まだ、御両親の声が聞こえない? タイラント」
「······薬棚を何度か覗いたが、そんな声は聞こえないな」
「······そう。いつか聞こえるといいね」
私は薬を塗り終え、包帯をタイラントの鼻に巻いた。気づくとタイラントが私を見上げている。
「······娘。お前はせっかちだ。私の言葉を最後まで聞かず私に狼藉を働いた」
タイラントが私の手首を掴んだ。紅い両目で見つめられ、私の心臓の鼓動は急に早くなる。
「さ、最後までって何よ?」
「うむ。どこまで私は話したかな。確か、お前のあり得ないくせ毛と、貧相な顔と身体の辺りまで話した······」
学習能力を全く持たない愚かな金髪魔族が言い終える前に、私は奴の腹部に右拳をめり込ませ、部屋を出ようとした。
馬鹿魔族が悶絶しながら私を呼び止める。
「待て娘! 就寝前の口づけはしないのか!!」
「す、するわけ無いでしょ! この馬鹿!!」
私は駆け足で廊下を進んだ。無神経! 本当に無神経よアイツ! 私はふと気づき、スカートのポッケに手を入れた。
そこに入っていたのは、出番が無いまま沈黙していたクッキーの袋だ。せっかく完成したのに、渡せなかったな······
「······リリーカ様」
突然のその声に私は伏せた顔を上げた。目の前にカラミィが立っていた。その表情は暗く沈んでいる。
いや。憔悴しきっていると言っていい。そう言えばこの前の大号泣の時からカラミィの様子は変だ。
集中力に欠け、メイドの仕事も失敗ばかりしていると聞く。
「······リリーカ様。以前、タイラント様の部屋から貴方の声が聞こえました。タイラント様を愛していると言った貴方の声が」
私の顔は真っ赤になった。ま、またその話!? カラミィの話では、その後気を失った私を抱えたタイラントが部屋を出た所を目撃したらしい。
「タイラント様は貴方を抱え、救護室に向われたわ。国王自らが。タイラント様のその時の心配そうなお顔······あんなお顔、私は今まで見た事が無かった」
そう言い終えたカラミィは、両目に涙を浮かべた。そうなんだ。タイラントが私を心配して······
「リリーカ様。今すぐこの城を出なさい」
カラミィの声で、私の頭の中から金髪魔族が消えた。し、城を出るって?
「この城には、タイラント様の花嫁を決める人物がいるの。貴方はその御方に狙われているわ」
カラミィの言葉の意味を、私はすぐに理解出来なかった。私が原因でとんでもない大騒動が起こるなんて、この時の私は知る由もなかった。
これら全てが同一人物の仕業だと言う噂だ。メイド司令室で私は複数の視線を感じていた。
メイド達が私を見ながら小声で噂話をしている。いや、これ私だって絶対断定されてるよね?
とほほ。自業自得とは言え、私はとんでもない人間の娘だと周囲から思われるようになってしまった。
司令室から逃げるように私は調理室でクッキー制作に取りかかった。今は無心になれる作業に没頭しよう。うん。
どれ位の時間が経過しただろうか。何気なく味見した時、私はクッキーを口に入れながら言葉にならない大声を上げた。
······出来た! タイラントが指定したあのクッキーの味と同じ物が!! 私は素早くレシピを記録し、そのメモ用紙を胸に抱きしめた。
良かった。これでタイラントはお母さんの作ったクッキーと同じ味が食べられる。私は嬉しさの余り涙ぐんでしまった。
私が感激している所に、司令室にいたメイドが怯えた声で私を呼びに来た。
「リ、リリーカ様。タイラント様がお呼びのようです」
私は完成したクッキーを袋に詰め、タイラントの部屋の前に立った。時刻はもう遅い。一体何の用だろう?
ノックをすると、タイラントの声がしたので入室した。タイラントはソファーに腰掛けており、鼻は包帯で固定されていた。
い、痛々しいなあ。顔面に拳を叩き込むなんて、やっぱりちょっとやり過ぎたかしら。で、でもタイラントが悪いのよ!
あの台詞は女の子に対して酷すぎるわ! 私は沸々と怒りが甦り金髪魔族を睨んだ。睨まれた寝癖魔族は小さくため息をつく。
「まだ怒りが収まらないのか娘」
タイラントは椅子から立ち上がり私に近づく。そして右手に持った小瓶を差し出す。
「な、何よこれ?」
「打ち身の薬だ。お前が責任を持って私の鼻に塗れ」
「じ、自分で塗ればいいでしょう?」
「この怪我はお前が原因だ。お前が責任を取れ」
え、偉そうに! でも、確かに私の責任だよね。タイラントはベットに座った。私は渋々タイラントの包帯を取り鼻に塗り薬を塗った。
私の指が鼻に触れると、タイラントは微かに身体を揺らした。
「あ、ごめん。痛かった?」
「······痛くは無い。誰かに薬を塗られる事など、これまで無かったのでな」
そ、そんな事言われると意識しちゃうじゃない。
「······タイラントの御両親は、我が子がこの薬を女の子に塗って貰うなんて想像出来たかしら?」
「そんな事は知らぬな。質問しようにも、する相手が生きてない」
「······まだ、御両親の声が聞こえない? タイラント」
「······薬棚を何度か覗いたが、そんな声は聞こえないな」
「······そう。いつか聞こえるといいね」
私は薬を塗り終え、包帯をタイラントの鼻に巻いた。気づくとタイラントが私を見上げている。
「······娘。お前はせっかちだ。私の言葉を最後まで聞かず私に狼藉を働いた」
タイラントが私の手首を掴んだ。紅い両目で見つめられ、私の心臓の鼓動は急に早くなる。
「さ、最後までって何よ?」
「うむ。どこまで私は話したかな。確か、お前のあり得ないくせ毛と、貧相な顔と身体の辺りまで話した······」
学習能力を全く持たない愚かな金髪魔族が言い終える前に、私は奴の腹部に右拳をめり込ませ、部屋を出ようとした。
馬鹿魔族が悶絶しながら私を呼び止める。
「待て娘! 就寝前の口づけはしないのか!!」
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私は駆け足で廊下を進んだ。無神経! 本当に無神経よアイツ! 私はふと気づき、スカートのポッケに手を入れた。
そこに入っていたのは、出番が無いまま沈黙していたクッキーの袋だ。せっかく完成したのに、渡せなかったな······
「······リリーカ様」
突然のその声に私は伏せた顔を上げた。目の前にカラミィが立っていた。その表情は暗く沈んでいる。
いや。憔悴しきっていると言っていい。そう言えばこの前の大号泣の時からカラミィの様子は変だ。
集中力に欠け、メイドの仕事も失敗ばかりしていると聞く。
「······リリーカ様。以前、タイラント様の部屋から貴方の声が聞こえました。タイラント様を愛していると言った貴方の声が」
私の顔は真っ赤になった。ま、またその話!? カラミィの話では、その後気を失った私を抱えたタイラントが部屋を出た所を目撃したらしい。
「タイラント様は貴方を抱え、救護室に向われたわ。国王自らが。タイラント様のその時の心配そうなお顔······あんなお顔、私は今まで見た事が無かった」
そう言い終えたカラミィは、両目に涙を浮かべた。そうなんだ。タイラントが私を心配して······
「リリーカ様。今すぐこの城を出なさい」
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