ごめんね、美子

ガイア

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その趣味「わかる」わ

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「義咲美子です、趣味は、えっとアニメとか、で」

「ははっ、“わかる”わ~」

 安藤さんは、わざと大声でそういって周りを見た。

周りの男女は、目配せしながらくすくす笑って、私はまたしても不快な気分になった。
わかるという安藤さんの言葉。

安藤さんも、アニメが好きだという意味ではなく、私みたいな地味な見た目の、いかにもオタクそうなアニメが好きそうな女だということで、「わかる」と言ったに違いない。

「それで?美子ちゃん、他には他には?」

 煽って場を盛り上げるラッパーのように、安藤さんは俯く私の顔を覗き込んだ。

これが私と同い年の30代に差し掛かる大人のやることだろうか。大学生のまま、身体だけ成長してしまったみたい。

思考と体が、急激に冷めていくのを感じる。

「えっと、他には、特に……ありません」
「え~?自己紹介アニメが好き、だけ?」 
 こういう人には情報を与えないに限る。

私はそうやってすぐに自己紹介を終わらせ、目をそらした。

安藤さんは、一瞬つまらなそうにしたが、すぐに笑顔で猿のように手を叩いた。

「じゃあ、佐竹と一緒じゃん」
「え?」

 急に振られた佐竹さんは、戸惑って安藤さんと私を交互に見た。

「こいつもアニメ好きだからさ、2人でマッチングすればいいじゃん」

「え?趣味一緒?」

「すごい偶然じゃん」

 他の男女も、ざわざわし始め、私と佐竹さんをくっつけようというような雰囲気になった。というより、私たちを中心にみんなで盛り上がろうといった雰囲気だった。

「2人、隣同士の方がいいんじゃない?」

 きんきん喋る女性がぱちぱち手を叩きながら、安藤さんをちらちらみる。

まるで媚びを売っているようだ。

私と、佐竹さんというおもちゃに、ちょっとした手を加えて、安藤さんに差し出して、こうしたら面白いんじゃないですか?って言っているみたいだ。

佐竹さんをちらりと見ると、佐竹さんは腰を浮かせてこの場から逃げようとしている。

 そんな佐竹さんを、安藤さんが無理やり肩を組んで押さえつける。

「お待たせしました」

 飲み物が届いて、一時話が止まって安堵した。飲み物を置けば、私は佐竹さんの隣に行くことも、佐竹さんも無理に私の隣に来ることもなくなる。

カシスオレンジが私の前に置かれたが、こんな不味い空気の中、お酒なんか飲んでも美味しくないだろうということは明白だった。

酒を飲んだら余計にエスカレートするんじゃないだろうか。ちらりと安藤さんを見ると、安藤さんは、生ビールを豪快に飲んでいた。

「え?なに、今めっちゃ美子ちゃんに見られたわ、俺」
「えー?」

「あー、ごめん、美子ちゃんにちらちら見られても俺困るわ~」

 安藤さんはそういって貴子を見た。

「……」

貴子に見られたよ?とでもいうようにあからさまに。ああ、そうか。

なんとなくわかってきた。

安藤さんは、貴子のことが好きで、貴子を狙っていて、周りの女性は、安藤さんのことが気になっている。

安藤さんを持ち上げたり、盛り上げている男性陣は、安藤さんの友達で、佐竹さんは他人をいじらないと、自分より下だと思っている人間をいじらないと笑いをとれない安藤さんの為のいじられ役。
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