ごめんね、美子

ガイア

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謝りなよ

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この合コン(演幕)は最初から仕組まれていたんだ。安藤さんが、姫である貴子と結ばれるために。

貴子は、どうしてこんな場所に私を連れてきたんだろう。私の頭は、ずーんと重くなって、コップを握りしめ重い頭を下げながら、居酒屋の賑やかな声を耳に通していた。

笑い声、怒鳴り声、泣き声、居酒屋は時間帯もあるだろうか賑やかで、座敷の中にいても様々な声が夜光虫のように飛び交っていた。

私たちの声もこの居酒屋の騒然たる店内に溶け込んで、誰も気づかないんだ。

私がこれだけ嫌な気持ちをしているということだって。でもかといって退場する勇気もでない。貴子の顔もたてないといけないし。ただ、次会った時は文句を言わせてもらうけど。

「釣り合うわけないじゃない」

 その声は、言葉は、私の右隣から聞こえてきた。私はその声に全ての音を失ったように顔をあげることなく動けなくなった。

私は、恐る恐る彼女の顔を見上げた。私の右隣には、親友の貴子がいる。

貴子しかいない。貴子の声だった。

貴子は、私をこの場に連れてきた貴子は、笑顔でそう吐き捨てた。裏切り、その三文字がでかでかと私の脳内に浮かんだ。「だよな?貴子ちゃん!なんかこっちじろじろ見てたからさ~」


 へらへらと勝ちを確信したように貴子にすり寄っていく安藤さんに、私はもう耐えられなくなって立ち上がった。

「違うわ馬鹿なの?私が言ってるは、“あんた”が、私の大好きな“美子”に釣り合わないっつってんのよ」

 でも、立ち上がった私の右隣で、聞いたことがないような怒った低い声で、貴子は安藤さんを睨みつけていた。

「へ?ど、ど、どういうこと?」

 混乱している安藤さんと、その仲間たちに貴子は呆れたように溜息を吐いた。

「あんたみたいなクソ野郎、誰が好きになるかって話。ほんっとに馬鹿みたい。その大学生みたいなつまんないノリやめたら?他人をいじることでしか笑いとれないつまんない男だもんね、あんた」

安藤さんは、一瞬呆然として少し怒った顔に変わった。

「なんでそんなこと言うの?貴子ちゃん、ひどくない?それ」

 安藤さんも怒って低い声になった。さっきまでの明るい声とは全然違う、沈んだような低い声で、貴子を見ている。

私は立ち上がった手前、どうすればいいのかわからず、そそくさと後ろに下がった。

このまま「失礼しまーす」とはいかない。

私は、貴子から目が離せなかった。釣り合わないのは、あんたの方だ、なんてあの怖そうな安藤さんに、面と向かっていうなんて、温厚な貴子からは想像できなかった。

「そうだよ!貴子、謝りなよ!」

「貴子ちゃんらしくないって!ね、俺らも一緒に謝るしさ、なんか酔っておかしくなってんの?」

「五月蠅いのよ、金魚の糞。あんたたちも、こんなヤツに媚びてるからいつまでたっても結婚できないのよ!」

 貴子は、立ち上がった。私は、しゃがんでいたからか、貴子が凄く大きく見えた気がして、本当に彼女は私の幼馴染の貴子なんだろうかと思った。

「行こう、美子!」

 貴子は、呆然としている私の手首を掴んで引っ張った。

「あ、えっ」

 戸惑う私に、力強く貴子は私の手を引いたけれど、そんな貴子の手も震えていた。

「おい、貴子」

「なによ、貴子、あんたどういうこと?」

「貴子ちゃん、それはやばいでしょ」

 糾弾されている貴子の隣で、私は手を引かれるままに足を動かしていた。

まるで戦地で銃弾を浴びているような気分だった。

先頭には貴子、そして私。後ろからは、容赦なく私たちへと銃口を向ける敵。

私は、友達が色々言われているのに、何も言えないまま鞄を持って早歩きで、ついていく。ついていくだけ。貴子は、銃口を色々な方向に向けながら発射していく。

「貴子、その人連れてきたのだって自分の引き立て役だからでしょ?」

「そんなわけない、貴子が私の“唯一の友人”だったから、それだけ。友人を連れてくるように言ったのはあなたたちでしょ?」

「なんで急にキレたの?意味わかんないんだけど」

「私の友達を馬鹿にしたから。それ以上に理由がある?」

「バカにしてないって!いつもそういうノリだったろ?安藤に謝って、終わりにしてまた仕切り直そうぜ?」

「私が謝る前に、私の友達に失礼な態度をとったことを、安藤君が謝ったら?それともなに、自分は言ってもいいけど、言い返されたらキレるの?」

 ああ、この感じ。私は、貴子に手を引かれながら、中学生の時のことを思い出していた。

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