ごめんね、美子

ガイア

文字の大きさ
10 / 12

ごめんね、貴子

しおりを挟む
中学の時、大縄跳びがあった。

運動神経が最悪な私は、跳ぶ側より縄を回す側になりたかった。でも、縄跳びを回すのには、力のいる男子の方がいいって貴子が提案して、私は飛ぶ側になったのだ。

 貴子は、腕が痛くなったり力がいるから飛ぶだけの飛ぶ側の方がいいって私に提案してくれて、私は縄跳びを飛んだけれど、全然飛べなくて、クラスメイトから糾弾された。

「じゃあ、みんなはたったの一回もミスせず飛ぶことができるのね?」

 貴子は私の楯になって怒ってくれた。何度も何度も、でも私はそもそも、縄を回す側だったら、あんな風にクラスメイト中から敵意を向けられることはなかったんだと思う。

 貴子が怒って、皆は影で私の悪口を言う様になったけれど、貴子はそれをみんなは分かってくれたんだと言って私の練習に遅くまで付き合ってくれた。結局運動会当日は、頑張って飛んだけれど、引っかかって私のせいで負けてしまった。

 運動会のラストで、貴子は私に言ったのだ。

「中学最後の運動会で、美子ちゃんの後ろで一緒に飛べてよかった」って。

 居酒屋を2人で出た後、しばらく手を繋いで無言で歩いた。少しして、貴子が先に口を開いた。

「美子、ごめんね。折角の合コンだったのに」
「……」

 貴子は、そういって振り返った。

私は、貴子の表情を見て、【あの時】と一緒だと思った。運動会で大縄跳びを飛んだ後、運動会のラストで、貴子は映画のワンシーンのような満足そうな顔をしていたのだ。

「美子……?」

 俯いて立ち止まった私に、貴子は首を傾けた。唯一の友人だ。私なんかに定期的に元気?とか、最近仕事どう?とか連絡をくれる唯一の美人で、自慢の幼馴染だ。

だから私は、貴子のことを友人だと思っていたし、思いたかった。でも、結果私は貴子に会おうと言われても、なんだかんだ今まで理由をつけて断っていた。

 合コンに行ったのは、下心だ。でも、合コンに行ったのも、縄跳びの飛ぶ側を了承したのも、私にとっては一緒のことだった。

「貴子は、どうして私を誘ってくれたの?」

「美子も彼氏いないって言ってたから。たまたま大学時代のサークル仲間で合コンをやることになったから誘ったの」

 貴子は、薄い紙一枚に書いたセリフのようにすらすらと答えた。

「それだけ?」
「勿論、久々に美子と会いたかったっていうのもあるよ」

「他には?」

「他?」

「うん、最初女側の人数が圧倒的に足りないからって誘われたのに、安藤さんの取り巻きと、向こうは佐竹さん以外は皆安藤さんの知り合いっぽかったし、だから他にも理由あるんでしょ」

 私は、岩のように答えを聞くまで動かない意思を見せて、足をコンクリートに貼り付けた。歩道を歩く人は、背景のように私たちを通り過ぎていく。私たちを囲んでいる店たちは、大道具のように私たちの顛末を見下ろしていた。

「私は、美子が一番の親友だと思ってるよ」

 怒っていて語気を強める私に対し、貴子は爽やかな笑みを浮かべていた。

「私、貧乏だったから化粧品も買えなくて、クラスメイトに「いいね、メイクしなくても可愛いから」って嫌味言われてたけど、美子だけは化粧品が買えないってことを知ってたからそういうこと言わなかったし、痩せているのも、「スタイルいいね」って言われてる中、美子はそういうこと、言わなかったし、お母さんが風俗嬢の人気ナンバーワンで、そんなお母さんと2人暮らししてることも、言わなかったし」


 何も言わなかった。私は、クラスメイトが嫌味や妬みを貴子に言っている中、確かに何も言わなかったよ。

 でも、それ以外でも私は何も言わなかった。今日の合コンだって、縄跳びの時だって。

「ごめんね、貴子」

 私は、喉から言葉を絞り出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

それは、ホントに不可抗力で。

樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。 「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」 その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。 恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。 まさにいま、開始のゴングが鳴った。 まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。

イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

楠ノ木雫
恋愛
 蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……

ズボラ上司の甘い罠

松丹子
恋愛
小松春菜の上司、小野田は、無精髭に瓶底眼鏡、乱れた髪にゆるいネクタイ。 仕事はできる人なのに、あまりにももったいない! かと思えば、イメチェンして来た課長はタイプど真ん中。 やばい。見惚れる。一体これで仕事になるのか? 上司の魅力から逃れようとしながら逃れきれず溺愛される、自分に自信のないフツーの女子の話。になる予定。

子持ち愛妻家の極悪上司にアタックしてもいいですか?天国の奥様には申し訳ないですが

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
胸がきゅんと、甘い音を立てる。 相手は、妻子持ちだというのに。 入社して配属一日目。 直属の上司で教育係だって紹介された人は、酷く人相の悪い人でした。 中高大と女子校育ちで男性慣れしてない私にとって、それだけでも恐怖なのに。 彼はちかよんなオーラバリバリで、仕事の質問すらする隙がない。 それでもどうにか仕事をこなしていたがとうとう、大きなミスを犯してしまう。 「俺が、悪いのか」 人のせいにするのかと叱責されるのかと思った。 けれど。 「俺の顔と、理由があって避け気味なせいだよな、すまん」 あやまってくれた彼に、胸がきゅんと甘い音を立てる。 相手は、妻子持ちなのに。 星谷桐子 22歳 システム開発会社営業事務 中高大女子校育ちで、ちょっぴり男性が苦手 自分の非はちゃんと認める子 頑張り屋さん × 京塚大介 32歳 システム開発会社営業事務 主任 ツンツンあたまで目つき悪い 態度もでかくて人に恐怖を与えがち 5歳の娘にデレデレな愛妻家 いまでも亡くなった妻を愛している 私は京塚主任を、好きになってもいいのかな……?

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

元カノと復縁する方法

なとみ
恋愛
「別れよっか」 同棲して1年ちょっとの榛名旭(はるな あさひ)に、ある日別れを告げられた無自覚男の瀬戸口颯(せとぐち そう)。 会社の同僚でもある二人の付き合いは、突然終わりを迎える。 自分の気持ちを振り返りながら、復縁に向けて頑張るお話。 表紙はまるぶち銀河様からの頂き物です。素敵です!

お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚

ラヴ KAZU
恋愛
忌まわしい過去から抜けられず、恋愛に臆病になっているアラフォー葉村美鈴。 五歳の時の初恋相手との結婚を願っている若き御曹司戸倉慶。 ある日美鈴の父親の会社の借金を支払う代わりに美鈴との政略結婚を申し出た慶。 年下御曹司との政略結婚に幸せを感じることが出来ず、諦めていたが、信じられない慶の愛情に困惑する美鈴。 慶に惹かれる気持ちと過去のトラウマから男性を拒否してしまう身体。 二人の恋の行方は……

処理中です...