悪役令嬢を誘拐したら身代金を断られたので大喧嘩しながら同棲中

ガイア

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人売りは、人格をよく疑われる

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拝啓、ハーネス様。
あなたがあたしから目を離した少しの間に、あたしは今、大変なことになっています。
右隣には、さっき優しく声をかけてくれたおばさんがあたしの頭に拳銃をつきつけています。
左隣には、恐らくおばさんの手下だと思われる黒服があたしをサングラスの中の険しい瞳で見張っています。
運転席では、もう1人のおばさんの手下の黒服が運転をしています。
縄でしばられて身動きがとれないあたしですが、会話はできます。騒ぐことはできません、おばさんに拳銃で脅されているからです。
ハーネス、あたしはあなたを恨みます。

「久々に上等な商品が手に入ったわ」

ババア、あなたの人格を疑うわ。
さっき人のことを商品っていうなんてなんとやらとか言っていなかったかしら。

「ふふ、高く売れそうな髪と瞳」

銃を黒服に渡してババアは私の髪を触りながらうっとりしていた。

「あなた、さっきは随分なことを言っていたようだけど、これはどういうことなのかしら」

できるだけ刺激しないように丁寧に聞いたら、ババアは余裕の笑みのまま答えた。

「どうって、あたしたちは人売りから子供を買って高く転売したり、人売りから子供を盗んで売ったりしているいわゆる黒商売をしているの」

「最低じゃない!!」

「あらあら、これも立派なお金稼ぎの方法なの、あなたのような子供にはわからないでしょうけどね」

ババアは、子供に言い聞かせるように私に見下したような笑みを見せた。

「あなた、結構身なりがいいようだけど、どこからか誘拐されて売られているんじゃない?」

あたしは、思わずびくりと肩を震わせた。

「あははっやーっぱりねえ?そーだと思ったわあ」

ババアは、面白おかしいというように大げさに手を叩くとあたしの顔を覗き込んで笑った。

「じゃあ、だあれも助けにきてくれないねえ。あははっ可哀想に」

可哀想に、今日も昨日も何回言われたかわからない。可哀想なあたしを見るあの視線。思い出したくもない。
コイツが見せたあの景色、投げつけられた可哀想という言葉。最初から気に入らなかった。

「・・・これからあたしはどうなるわけ?」

ババアを睨みつけると、

「いたっ・・・!」

唐突に耳をつねり上げられた。

「な、なにするのよ!」

「口の利き方に気をつけな!これから売られる商品のくせに!」

「いっ!!」
 
今まで味わったことのない痛み、そして頬を唐突にぴしゃりと打たれ、ひりひりとした痛みがじわじわとあたしの頬をむしばんでいく。

「・・・」

あたしは、叩かれたショックと痛みで涙がじわりと溢れてきた。泣くな、泣くな、こんなヤツに、絶対負けたくない。
誰もあたしのことを助けてくれないのはわかってる。もうあたしが助かる道がないのもわかってる。
でも、泣かない!絶対に泣かない!!

あたしは、それでもババアのことをキッと睨みつけた。

「なんだい、その目は」

ババアが、またあたしに手をあげようとしたその時。

あたしの目はあるものを捕らえて大きく見開かれる。
そこには、あるはずのないものがあった。いるはずのない奴がいた。

バイクに乗ってこっちに拳銃を向けている男。
まさか―――。
あたしは、焦って頭を下げた。すると、銃弾は2発硝子を貫き、ババアの腕に1発かすった。

「ぎゃあああああ!!」

叫んで呻き声をあげるババアと対照的に私は冷静だった。

「なんだあいつは!!」

黒服が銃を取り出して窓の方に向けた。
あたしは咄嗟に銃にかみついた!

「なんだこのガキ!!」

またも響く2回の銃声。今度は車に何発か当たったらしい。
車が急ブレーキを踏んでスリップしたらしい、重力があたしを押し飛ばし、車の前座敷に頭から飛ばされた。身にくっと力を入れていたのでなんとか前座席に頭をぶつけるくらいで済んだ。
車はガードレールにぶつかったらしく、車の中の人たちはぐったりしている。

「いっ・・・」

顔をあげると、窓に手が入れられ、扉のロックを外しているところだった。
がちゃ、という音と共に、眩しい光が視界を覆った。

「おい」
ハーネスは、扉付近の座席に座っているババアに銃口を突き付けていった。

「助けにきたぞ、お嬢」
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