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食料である人間に、恋をした
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その勢いの強さ、足の速さにエリザベッタは引っ張られながら必死についていきます。
男は、狭い道をすり抜け、板で閉ざされていた道を板をどかして切り開き、あっという間に男たちをまいてしまった。
「待て!」
背後で男たちの声がして、それがどんどん遠ざかっていくのを感じた。
なに、この人間。
さっきと同じ男の人間なのにあまり怖くない。
「ここまでくれば大丈夫だろ」
「あんた、こんな夜中に女が一人で歩き回るなよな」
はあっ、はあっ、はあっ、はあっ。エリザベッタは、こんなに全速力で走ったことが今までなかったからか、どんどん息切れが激しくなっていった。
「お、おい、どうした?」
胸が苦しい・・・こんなに走ったの初めて・・・エリザベッタの視界は、どんどん霞んでいき、頭をがんがん痛くなってきました。
「ハアっ・・・うっ」
エリザベッタの視界がぐるりと回り、そのまま地面にばたりと倒れそうになるところを、すぐに気がついた一緒にいた男が抱きとめる。
「おい!?大丈夫か?おい!」
***
ぱち。
エリザベッタは、眩しい視界を遮るように、何人もの小さな子供たちが自分を見下ろしてい現状を把握するのに時間がかかった。
「起きた」
「大丈夫?お姉さん」
「生きてる?」
口々にエリザベッタに声をかける小さな子供たち。エリザベッタの目は徐々に見開かれていく。
「きゃああああああああ!!」
「うわああああああああ!」
エリザベッタが大声をあげて叫ぶと、子供たちも髪の毛を逆立たせてびっくりしていた。
「うわあああああああああ!!どうした?」
その声を聞きつけて駆け込んできたのは、先ほどエリザベッタを助けた男だった。
あ。エリザベッタは、声には出さず男と目を合わせて口をぽかんと開けている。
「起きたのか、よかった」
男は、心底安心した様子でエリザベッタに近寄り、片膝をたてて座った。
「ここは?わたくしはどれくらい寝ていたの?」
「連れてきてそんなに経ってないぜ。突然倒れたんだ」
そう・・・・・。
「介抱、してくれたの?家族でもない赤の他人の人間なのに」
布団に寝かされていることに気付いたエリザベッタは、驚いた表情で男を見つめた。
「当たり前だろ、ほっておけねえよ。父ちゃんに困った人がいたら助けろって育てられてるからな!」
「お母ちゃんには女の人には優しくしろって散々げんこつされてたもんね!」
「うるせえ!べぇー!」
『きゃはは』と、男の妹弟たちだろう。小さな子供たちはけらけら笑った。その雰囲気があまりにも優しくて和やかなので、
「ふふ、ありがとう」
エリザベッタは、自然と笑みがこぼれた。
「別にいいよ、オレはリアン。それからこっちがエレン、アリア、ユーリカ。全員オレの妹弟。それよか、何であんなところに女一人でいたんだよ。あんた名前は?身なりもいいし、お嬢か?」
リアンと名乗る男は、1人1人子供たちを差しながら駆け足でエリザベッタに紹介していった。そして、エリザベッタが、1人1人眺めている隙も与えす、リアンは詰め寄るように質問を投げかける。
「・・・・・」
エリザベッタが先ほど質問されたことをゆっくり咀嚼している間、リアンは妹のアリアに肘で腕をこづかれていた。
「わたくしは、エリザベッタ」
わたくしは、一つ深呼吸をして話し始めた。
「わたくしは貴族の娘で、でも体が弱くて、ずっとお屋敷から出られなかったの。外の空気は体に触るから、少し運動するとすぐに心臓が痛くなってしまうから、外の景色をずっと部屋から眺めることしかできなかった。でも、どうして死ぬ前に一度でいいから外の世界をこの目で見てみたくて、こっそり抜け出してきてしまったの」
嘘は、いってないわ。エリザベッタは、自分で自分に言い聞かせた。
ベニータお姉様にもし、何かの間違いで人間と出会ったらこうお話しするように教わったことを完璧に覚えていてよかった。
「よしよし」
一番年下のユーリカが、俯いたエリザベッタの頭を撫でた。エリザベッタが顔を上げると、優しいまなざしでじっとエリザベッタのことを見つめている。
とても、小さくて温かい手に、エリザベッタはぽっと心に灯を灯されたような気持ちになった。
「じゃあ、俺が街案内してやるよ、秘密の抜け道いっぱい知ってんだ」
リアンの弟であるエレンが自分の胸をどんと叩いて微笑んだ。
「あたしも!お気に入りの場所教えたげる!」
「ユーリカも!」
アリアとユーリカは、手をあげながらエリザベッタにひっついていく。
「こらこらひっつくな。困ってるだろ」
リアンが注意すると、ユーリカは頬をぷくっと膨らませた。
「いいわ、わたくし家族以外の人と話すの初めてなの」
何なの、この小さな人間は。不思議なことに全く害を感じないわ。エリザベッタの顔には、自然と笑みが浮かんでいた。
そして同時に思い出すのだ。姉妹であるベニータと、セレンナのことを。
「ありがとう。でも、もう行かなきゃ。家族が帰ってきちゃうわ」
「兄ちゃん送っていってあげなよ」
「そうだよ、危ないよ」
エリザベッタに起きたことをリアン妹弟たちに話していなかったが、すぐさま、エレンとアリアがそういった。
「へいへい」
リアンは、最初からそのつもりだったようで、笑顔ですぐに立ち上がった。
「いいわ、外は危ないし」
「だから、オレがついていくんだろ。ほら、行くぞ」
リアンは、エリザベッタに来いよと手招きした。エリザベッタは、寂しそうな3人に少し微笑んでみせた。
「ありがとうね」
そういって、リアンについていこうとすると、3人は無言でとてとてエリザベッタの後ろをついてくる。その姿にエリザベッタは少し胸が苦しくなった。
リアンは、玄関の薄いグリーンの扉の前で待っていた。
「ユーリカついていく」
「だめだ、夜は危ないからな。母さんと父さんだって・・・」
リアンがそういうと、3人は泣きそうな表情になった。
「あ・・・と、とにかくだめだ。わかっただろ?」
リアンは、焦った様子で、エリザベッタの方を見た。早く来てほしいようだった。
「じゃあ、もう行くわね」
そういうと、3人のリアンの妹弟たちはエリザベッタのことを囲んだ。
「また来てね!!」
エリザベッタは、そんなことを言われたのは初めてだった。
「・・・約束はできないけど」
だが、エリザベッタは、この3人の純粋な子供たちの期待を裏切るようなことはしたくなくて曖昧な返事を返した。
エリザベッタが家から出ると、3人は心配そうにエリザベッタとリアンのことを見送っていた。
エリザベッタは、子供たちのその姿を見てなんだか心臓がむずかゆくなり、俯いた。
「まあ、また家を抜け出してこれたら、な」
リアンは、俯いたエリザベッタの頭に触れた。エリザベッタが顔をあげると、リアンは、前にエリザベッタが貧血で倒れた時、頭を優しく撫でてくれた最愛の姉、ベニータのような表情をしていた。エリザベッタは、その表情に、ぴくりとも体が動かなくなってしまった。
そのままエリザベッタの頭を優しく撫でるリアン。温かく大きい手。こんなのは初めてだわ。エリザベッタは、されるがままになっていた。
「あっ」
リアンは、はっとしてエリザベッタの頭からぱっと手を離す。
「ご、ごめん。あの、妹たちの頭いっつも撫でてるからつい、癖になってて」
リアンは、頭をかきながら困った顔でそう言った。
「いいわ」
エリザベッタが首を振って答えると、リアンは眉毛を八の字にして微笑んだ。
「エリザベッタ。難しいかもしれないけど、またこうして外に出れたらうちに来いよ。歓迎するぜ。弟や妹たちも喜ぶだろうし」
エリザベッタは、差し伸べられた手にそどうしたらいいかわからなくて、ずっと胸の前で両手を組んでいた。リアンは、微笑みながら、手を引っ込める。
エリザベッタは、3人の子供たちの顔が頭に浮かんだ。見ず知らずのわたくしが家に来ることが何故歓迎になるのかしら。
「実は、オレの父さんと母さん、一昨日仕事にいったっきり帰ってこなくなっちまったんだ」
リアンは、エリザベッタと目を合わせずそう言った。
「遠くにお仕事にいっているのではなくて?」
そういうと、リアンはエリザベッタを振り返った。
「いいや、最低でも次の日の朝までには帰るって言ったんだ」
その時のリアンの表情に、エリザベッタは目を見開いた。
リアンは、さっき弟や妹たちに見せていた強い兄の表情とは、かけ離れたように、寂しそうな顔をしていた。
「ずっと寝ずに待ってるんだ、妹弟たちは、泣き疲れて寝ちまうけどな」
リアンは、また兄の表情に戻っていた。
「その気持ちわかるわ」
「え?」
「わたくしの両親も、お仕事に行ってから帰ってこなかったわ。そして、わたくしのお姉様と、妹が、体の弱いわたくしの為にお仕事にいってくれているの。」
「そうなのか」
「実は、昨日の夜には帰れると思うって言っていたのに、お姉様と妹は帰ってきていなくて、わたくしは、心配になって家から飛び出してきたの」
エリザベッタは、リアンに話す予定のなかったことを話してしまっていた。エリザベッタは、こんなことを彼に話してどうしようというのかしら。と、話したあと、自分に問いかけた。
「そうだったのか」
「でも、きっと帰ってくるって信じているわ」
エリザベッタは、前を向いてはっきりとそう言った。
「また、寝ながら待つつもりよ。わたくしはね。待つのには慣れているの、ずっと家にいるんだもの。起きたらあの2人がおはようっていってくれることを信じてね」
エリザベッタは、自分の胸に手を当てて、リアンに今日一番力のこもった口調でそう言った。
「あなたたちは、待つのに慣れていないだけだわ。必ず帰ってくるわよ、沢山、お土産を買っているから遅れているだけだわ」
エリザベッタは、リアンの顔をはっきり見てそう言った。リアンの目は、一瞬きらりと輝いたように見えた。
「ありがとな、エリザベッタ」
リアンは、とっても優しい笑顔で微笑んだ。
「お礼なんていいわよ、それより、もうこの辺で大丈夫よ」
わたくしは、リアンを元気づけようとしたのかしら。あえて、強気な口調でリアンに話してから、自分も不安で仕方ないのに、わざと元気に振舞っている気がするわ。
エリザベッタは、リアンに出会ってから今まで感じたことのない感情を沢山抱くことに戸惑いを覚えていた。まるで、自分の知らない自分が、少しずつ少しずつむけていくような感覚だった。
「もう、ここでいいのか?」
山に入る前の賑やかな通りが少しすぎたあたりで、エリザベッタは立ち止まった。
「ええ、もう家は近いから一人で帰れるわ」
あとは、山を登るだけだもの、人間もいないはずよ。そう自分に言い聞かせた。
「そうか、気を付けて帰るんだぞ」
そういったリアンは、少し寂しそうな表情をした。
「あ、ちょっと待ってな」
リアンは、服の上から手を入れて、胸にかけていた白い、綺麗な装飾を施してある角笛をわたくしに見せた。
「これ、あげるよ。エリザベッタ」
男は、狭い道をすり抜け、板で閉ざされていた道を板をどかして切り開き、あっという間に男たちをまいてしまった。
「待て!」
背後で男たちの声がして、それがどんどん遠ざかっていくのを感じた。
なに、この人間。
さっきと同じ男の人間なのにあまり怖くない。
「ここまでくれば大丈夫だろ」
「あんた、こんな夜中に女が一人で歩き回るなよな」
はあっ、はあっ、はあっ、はあっ。エリザベッタは、こんなに全速力で走ったことが今までなかったからか、どんどん息切れが激しくなっていった。
「お、おい、どうした?」
胸が苦しい・・・こんなに走ったの初めて・・・エリザベッタの視界は、どんどん霞んでいき、頭をがんがん痛くなってきました。
「ハアっ・・・うっ」
エリザベッタの視界がぐるりと回り、そのまま地面にばたりと倒れそうになるところを、すぐに気がついた一緒にいた男が抱きとめる。
「おい!?大丈夫か?おい!」
***
ぱち。
エリザベッタは、眩しい視界を遮るように、何人もの小さな子供たちが自分を見下ろしてい現状を把握するのに時間がかかった。
「起きた」
「大丈夫?お姉さん」
「生きてる?」
口々にエリザベッタに声をかける小さな子供たち。エリザベッタの目は徐々に見開かれていく。
「きゃああああああああ!!」
「うわああああああああ!」
エリザベッタが大声をあげて叫ぶと、子供たちも髪の毛を逆立たせてびっくりしていた。
「うわあああああああああ!!どうした?」
その声を聞きつけて駆け込んできたのは、先ほどエリザベッタを助けた男だった。
あ。エリザベッタは、声には出さず男と目を合わせて口をぽかんと開けている。
「起きたのか、よかった」
男は、心底安心した様子でエリザベッタに近寄り、片膝をたてて座った。
「ここは?わたくしはどれくらい寝ていたの?」
「連れてきてそんなに経ってないぜ。突然倒れたんだ」
そう・・・・・。
「介抱、してくれたの?家族でもない赤の他人の人間なのに」
布団に寝かされていることに気付いたエリザベッタは、驚いた表情で男を見つめた。
「当たり前だろ、ほっておけねえよ。父ちゃんに困った人がいたら助けろって育てられてるからな!」
「お母ちゃんには女の人には優しくしろって散々げんこつされてたもんね!」
「うるせえ!べぇー!」
『きゃはは』と、男の妹弟たちだろう。小さな子供たちはけらけら笑った。その雰囲気があまりにも優しくて和やかなので、
「ふふ、ありがとう」
エリザベッタは、自然と笑みがこぼれた。
「別にいいよ、オレはリアン。それからこっちがエレン、アリア、ユーリカ。全員オレの妹弟。それよか、何であんなところに女一人でいたんだよ。あんた名前は?身なりもいいし、お嬢か?」
リアンと名乗る男は、1人1人子供たちを差しながら駆け足でエリザベッタに紹介していった。そして、エリザベッタが、1人1人眺めている隙も与えす、リアンは詰め寄るように質問を投げかける。
「・・・・・」
エリザベッタが先ほど質問されたことをゆっくり咀嚼している間、リアンは妹のアリアに肘で腕をこづかれていた。
「わたくしは、エリザベッタ」
わたくしは、一つ深呼吸をして話し始めた。
「わたくしは貴族の娘で、でも体が弱くて、ずっとお屋敷から出られなかったの。外の空気は体に触るから、少し運動するとすぐに心臓が痛くなってしまうから、外の景色をずっと部屋から眺めることしかできなかった。でも、どうして死ぬ前に一度でいいから外の世界をこの目で見てみたくて、こっそり抜け出してきてしまったの」
嘘は、いってないわ。エリザベッタは、自分で自分に言い聞かせた。
ベニータお姉様にもし、何かの間違いで人間と出会ったらこうお話しするように教わったことを完璧に覚えていてよかった。
「よしよし」
一番年下のユーリカが、俯いたエリザベッタの頭を撫でた。エリザベッタが顔を上げると、優しいまなざしでじっとエリザベッタのことを見つめている。
とても、小さくて温かい手に、エリザベッタはぽっと心に灯を灯されたような気持ちになった。
「じゃあ、俺が街案内してやるよ、秘密の抜け道いっぱい知ってんだ」
リアンの弟であるエレンが自分の胸をどんと叩いて微笑んだ。
「あたしも!お気に入りの場所教えたげる!」
「ユーリカも!」
アリアとユーリカは、手をあげながらエリザベッタにひっついていく。
「こらこらひっつくな。困ってるだろ」
リアンが注意すると、ユーリカは頬をぷくっと膨らませた。
「いいわ、わたくし家族以外の人と話すの初めてなの」
何なの、この小さな人間は。不思議なことに全く害を感じないわ。エリザベッタの顔には、自然と笑みが浮かんでいた。
そして同時に思い出すのだ。姉妹であるベニータと、セレンナのことを。
「ありがとう。でも、もう行かなきゃ。家族が帰ってきちゃうわ」
「兄ちゃん送っていってあげなよ」
「そうだよ、危ないよ」
エリザベッタに起きたことをリアン妹弟たちに話していなかったが、すぐさま、エレンとアリアがそういった。
「へいへい」
リアンは、最初からそのつもりだったようで、笑顔ですぐに立ち上がった。
「いいわ、外は危ないし」
「だから、オレがついていくんだろ。ほら、行くぞ」
リアンは、エリザベッタに来いよと手招きした。エリザベッタは、寂しそうな3人に少し微笑んでみせた。
「ありがとうね」
そういって、リアンについていこうとすると、3人は無言でとてとてエリザベッタの後ろをついてくる。その姿にエリザベッタは少し胸が苦しくなった。
リアンは、玄関の薄いグリーンの扉の前で待っていた。
「ユーリカついていく」
「だめだ、夜は危ないからな。母さんと父さんだって・・・」
リアンがそういうと、3人は泣きそうな表情になった。
「あ・・・と、とにかくだめだ。わかっただろ?」
リアンは、焦った様子で、エリザベッタの方を見た。早く来てほしいようだった。
「じゃあ、もう行くわね」
そういうと、3人のリアンの妹弟たちはエリザベッタのことを囲んだ。
「また来てね!!」
エリザベッタは、そんなことを言われたのは初めてだった。
「・・・約束はできないけど」
だが、エリザベッタは、この3人の純粋な子供たちの期待を裏切るようなことはしたくなくて曖昧な返事を返した。
エリザベッタが家から出ると、3人は心配そうにエリザベッタとリアンのことを見送っていた。
エリザベッタは、子供たちのその姿を見てなんだか心臓がむずかゆくなり、俯いた。
「まあ、また家を抜け出してこれたら、な」
リアンは、俯いたエリザベッタの頭に触れた。エリザベッタが顔をあげると、リアンは、前にエリザベッタが貧血で倒れた時、頭を優しく撫でてくれた最愛の姉、ベニータのような表情をしていた。エリザベッタは、その表情に、ぴくりとも体が動かなくなってしまった。
そのままエリザベッタの頭を優しく撫でるリアン。温かく大きい手。こんなのは初めてだわ。エリザベッタは、されるがままになっていた。
「あっ」
リアンは、はっとしてエリザベッタの頭からぱっと手を離す。
「ご、ごめん。あの、妹たちの頭いっつも撫でてるからつい、癖になってて」
リアンは、頭をかきながら困った顔でそう言った。
「いいわ」
エリザベッタが首を振って答えると、リアンは眉毛を八の字にして微笑んだ。
「エリザベッタ。難しいかもしれないけど、またこうして外に出れたらうちに来いよ。歓迎するぜ。弟や妹たちも喜ぶだろうし」
エリザベッタは、差し伸べられた手にそどうしたらいいかわからなくて、ずっと胸の前で両手を組んでいた。リアンは、微笑みながら、手を引っ込める。
エリザベッタは、3人の子供たちの顔が頭に浮かんだ。見ず知らずのわたくしが家に来ることが何故歓迎になるのかしら。
「実は、オレの父さんと母さん、一昨日仕事にいったっきり帰ってこなくなっちまったんだ」
リアンは、エリザベッタと目を合わせずそう言った。
「遠くにお仕事にいっているのではなくて?」
そういうと、リアンはエリザベッタを振り返った。
「いいや、最低でも次の日の朝までには帰るって言ったんだ」
その時のリアンの表情に、エリザベッタは目を見開いた。
リアンは、さっき弟や妹たちに見せていた強い兄の表情とは、かけ離れたように、寂しそうな顔をしていた。
「ずっと寝ずに待ってるんだ、妹弟たちは、泣き疲れて寝ちまうけどな」
リアンは、また兄の表情に戻っていた。
「その気持ちわかるわ」
「え?」
「わたくしの両親も、お仕事に行ってから帰ってこなかったわ。そして、わたくしのお姉様と、妹が、体の弱いわたくしの為にお仕事にいってくれているの。」
「そうなのか」
「実は、昨日の夜には帰れると思うって言っていたのに、お姉様と妹は帰ってきていなくて、わたくしは、心配になって家から飛び出してきたの」
エリザベッタは、リアンに話す予定のなかったことを話してしまっていた。エリザベッタは、こんなことを彼に話してどうしようというのかしら。と、話したあと、自分に問いかけた。
「そうだったのか」
「でも、きっと帰ってくるって信じているわ」
エリザベッタは、前を向いてはっきりとそう言った。
「また、寝ながら待つつもりよ。わたくしはね。待つのには慣れているの、ずっと家にいるんだもの。起きたらあの2人がおはようっていってくれることを信じてね」
エリザベッタは、自分の胸に手を当てて、リアンに今日一番力のこもった口調でそう言った。
「あなたたちは、待つのに慣れていないだけだわ。必ず帰ってくるわよ、沢山、お土産を買っているから遅れているだけだわ」
エリザベッタは、リアンの顔をはっきり見てそう言った。リアンの目は、一瞬きらりと輝いたように見えた。
「ありがとな、エリザベッタ」
リアンは、とっても優しい笑顔で微笑んだ。
「お礼なんていいわよ、それより、もうこの辺で大丈夫よ」
わたくしは、リアンを元気づけようとしたのかしら。あえて、強気な口調でリアンに話してから、自分も不安で仕方ないのに、わざと元気に振舞っている気がするわ。
エリザベッタは、リアンに出会ってから今まで感じたことのない感情を沢山抱くことに戸惑いを覚えていた。まるで、自分の知らない自分が、少しずつ少しずつむけていくような感覚だった。
「もう、ここでいいのか?」
山に入る前の賑やかな通りが少しすぎたあたりで、エリザベッタは立ち止まった。
「ええ、もう家は近いから一人で帰れるわ」
あとは、山を登るだけだもの、人間もいないはずよ。そう自分に言い聞かせた。
「そうか、気を付けて帰るんだぞ」
そういったリアンは、少し寂しそうな表情をした。
「あ、ちょっと待ってな」
リアンは、服の上から手を入れて、胸にかけていた白い、綺麗な装飾を施してある角笛をわたくしに見せた。
「これ、あげるよ。エリザベッタ」
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