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クローゼットに隠れていて
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リアンは、前と変わらない笑顔でエリザベッタに笑いかけた。エリザベッタは、目を見開いて拳を握りしめる。
「久しぶりだな、じゃないわ」
エリザベッタは、声を震わせながらはっきりといった。
「帰って」
「どうしてだよ、折角会えたのに」
「どうしてあなたがここにいるのよ」
エリザベッタは、どうしようもない怒りを押し殺していった。
「どうしてって、オレの父ちゃんと母ちゃんの居場所を知ってるっていうから」
「エリザベッタ!」
つかつかつかと、鋭い足音と共に、ベニータがエリザベッタの部屋に近づいてくる。
「リアン!」
「わっ、いきなりどうしたんだよ。エリザベッタ」
エリザベッタは急いでリアンをクローゼットの中に押し込んだ。
「エリザベッタ!」
戸惑うリアンに、エリザベッタは、恐ろしい程鬼気迫る顔をし、小声でリアンを突き刺した。
「出てきたら絶交よ。後耳をふさいでいて」
エリザベッタが扉を閉め、急いでベットに飛び込むと、その5秒程後でベニータが入ってきた。
「エリザベッタ!」
「どうしたの?ベニータお姉さま」
「食料が逃げてしまったの、見ていない?」
「見ていないわ」
ベニータは、随分動揺しているようだった。
「広間に案内して紅茶を淹れて、飲んで待っているようにいったのよ。いつものようにね、その間に調理の準備をしようと思って目を離したらいなかったの」
ベニータは、いつもの穏やかな様子と打って変わって動揺を露わにし、早口でまくしたてるように言った。
「セレンナは?」
「解体準備をしてもらっていたのよ。解体はいつもあの子の役目だったから」
エリザベッタは、ベニータに動揺とリアンのことを悟られないようにするので頭がいっぱいだった。変な汗が流れ、エリザベッタは布団の下で握った手に汗がにじんでいた。
エリザベッタは、素直で正直者だったので、嘘をつくということに慣れていなかった。
更に、最愛の姉妹である2人に嘘をついたことなんて今までなかったので、余計に罪悪感に心が押しつぶされていた。
「そう・・・じゃあ帰ったんじゃない?」
「帰ったですって」
「ええ、いなかったんでしょう?」
ベニータは、エリザベッタの瞳を鏡のようにじっと見つめた。
「ど、どうしたの?ベニータお姉さま」
ベニータは、エリザベッタの頬に触れた。
エリザベッタは、緊張で体が固まり、ごくんと喉を鳴らす。
「エリザベッタ、なんだか様子がおかしいように思うわ」
エリザベッタは、思わず声をあげて体がびくりと反応してしまいそうになった。手を握りしめて必死にこらえる。手には爪が食い込んで痛いはずだが、エリザベッタはそれどころではないので、全く痛みを感じていなかった。
「ど、どうして?」
「こんな時に冗談をいう子じゃないわ。エリザベッタは」
「冗談?」
ベニータは、顔を引きつらせるエリザベッタに、キスをすると思うくらい顔を近づけ、
「だって、エリザベッタなら食料である人間が逃げたってなったらもっと焦っているはずだわ」
エリザベッタの口の中はもうからからに乾いていた。
「セレンナがこのことを知った時、焦っていたわ。当然よね、これから食べる夕食が逃げたんですもの」
ベニータの声は、どんどん低く、重くなっていく。
「どうしてエリザベッタはそんなに冷静なの?ねえ、どうして?」
ベニータは、怒っているのではなく、何かを疑っているようだった。
「ベニータお姉さま、ごめんなさい」
エリザベッタは、頬に添えてある手に力が入るベニータの手の上から優しく自分の手を添えた。
「いつも穏やかで冷静なベニータお姉さまが動揺しているようだから、和ませようと思ってあんなことを・・・」
エリザベッタは、またベニータのことをしっかり見つめて、はっきりといった。
「ごめんなさい、ベニータお姉さま、嫌な気持ちになったなら謝るわ」
そういうと、ベニータは少しぎょっとした表情をした後、
「いいえ、いいえ、いいのよ。エリザベッタ」
ベニータは、エリザベッタから両手を離して薄く微笑んだ。
「折角エリザベッタが私を落ち着けようとしてくれていたのに。私ったら、取り乱しすぎよね」
ベニータは、エリザベッタがほっとするくらい、いつもの様子で微笑んだ。
「いいえ、ベニータお姉さま。わたくしの冗談が分かりにくかったわ」
エリザベッタは、少し安心してさっきよりは笑顔を上手く取り繕う事ができた。
「ふふ、エリザベッタったら」
ベニータは、口元に手を当てて上品に笑うと、すっとエリザベッタの顔に自分の顔を近づけた。
「しんじているわ!!エリザベッタ!!」
にっこりと、ぞっとする笑顔で、ベニータはそう言った。
エリザベッタは、その表情に少し泣きそうになった。ベニータは、信じているといったのに、笑顔だったのに。エリザベッタは、その一言で体がすくんで動けなくなってしまっていた。
「じゃあ、別の部屋を探してくるわね」
ベニータは、すくっと立ち上がると、子供に言い聞かせるようにそういって部屋を出て行こうとした。
「あ、ベニータお姉さ、ま」
そんなベニータを、エリザベッタは呼び止めた。
「あら、どうしたの?エリザベッタ」
ベニータは、首だけでエリザベッタを振り返った。
「もし、人間がわたくしの部屋に逃げ込んできたときはどうしたらいいのかしら」
そういうと、ベニータは目をすっと細めて、
「入れないように、外から鍵をかけましょう」
鋭い口調だった。エリザベッタは、俯いて小さく「はい」と答えた。
「エリザベッタ」
ベニータは、扉を出る前エリザベッタの方を見ずに呼びかけた。
「どうなさったの?ベニータお姉さま」
「エリザベッタも、セレンナも、私が守るからね」
ベニータは、小さくそういってエリザベッタの部屋から出て行った。エリザベッタは、きゅっと唇を固く結んで俯いた。
「ベニータお姉さま・・・」
2人はリアンを探して屋敷中を駆け回っているんだわ。エリザベッタは、また罪悪感に飲まれそうになった。
扉の前までふらふらと歩いて行って遠くにいく足音に耳を澄ませる。
「ごめんなさい・・・ベニータお姉さま。セレンナ」
エリザベッタの部屋は、中から鍵がかけられない代わりに、外からは鍵がかけられるようになっている。基本的に、ベニータが「エリザベッタを信用している」ということで、鍵が閉められることはない。
でも、今回は少し事情が違うので、しっかり外から鍵がかけられる音がした。
それが、逆にエリザベッタにとって都合がよくなっているわけだが、エリザベッタはラッキーと思ったりすることも、安堵のため息をつくこともなかった。
「リアン」
すぐクローゼットに駆け寄り、クローゼットを開く。
「エリザベッタ・・・」
リアンは、急に明るくなる視界に目を細めた。
「久しぶりだな、じゃないわ」
エリザベッタは、声を震わせながらはっきりといった。
「帰って」
「どうしてだよ、折角会えたのに」
「どうしてあなたがここにいるのよ」
エリザベッタは、どうしようもない怒りを押し殺していった。
「どうしてって、オレの父ちゃんと母ちゃんの居場所を知ってるっていうから」
「エリザベッタ!」
つかつかつかと、鋭い足音と共に、ベニータがエリザベッタの部屋に近づいてくる。
「リアン!」
「わっ、いきなりどうしたんだよ。エリザベッタ」
エリザベッタは急いでリアンをクローゼットの中に押し込んだ。
「エリザベッタ!」
戸惑うリアンに、エリザベッタは、恐ろしい程鬼気迫る顔をし、小声でリアンを突き刺した。
「出てきたら絶交よ。後耳をふさいでいて」
エリザベッタが扉を閉め、急いでベットに飛び込むと、その5秒程後でベニータが入ってきた。
「エリザベッタ!」
「どうしたの?ベニータお姉さま」
「食料が逃げてしまったの、見ていない?」
「見ていないわ」
ベニータは、随分動揺しているようだった。
「広間に案内して紅茶を淹れて、飲んで待っているようにいったのよ。いつものようにね、その間に調理の準備をしようと思って目を離したらいなかったの」
ベニータは、いつもの穏やかな様子と打って変わって動揺を露わにし、早口でまくしたてるように言った。
「セレンナは?」
「解体準備をしてもらっていたのよ。解体はいつもあの子の役目だったから」
エリザベッタは、ベニータに動揺とリアンのことを悟られないようにするので頭がいっぱいだった。変な汗が流れ、エリザベッタは布団の下で握った手に汗がにじんでいた。
エリザベッタは、素直で正直者だったので、嘘をつくということに慣れていなかった。
更に、最愛の姉妹である2人に嘘をついたことなんて今までなかったので、余計に罪悪感に心が押しつぶされていた。
「そう・・・じゃあ帰ったんじゃない?」
「帰ったですって」
「ええ、いなかったんでしょう?」
ベニータは、エリザベッタの瞳を鏡のようにじっと見つめた。
「ど、どうしたの?ベニータお姉さま」
ベニータは、エリザベッタの頬に触れた。
エリザベッタは、緊張で体が固まり、ごくんと喉を鳴らす。
「エリザベッタ、なんだか様子がおかしいように思うわ」
エリザベッタは、思わず声をあげて体がびくりと反応してしまいそうになった。手を握りしめて必死にこらえる。手には爪が食い込んで痛いはずだが、エリザベッタはそれどころではないので、全く痛みを感じていなかった。
「ど、どうして?」
「こんな時に冗談をいう子じゃないわ。エリザベッタは」
「冗談?」
ベニータは、顔を引きつらせるエリザベッタに、キスをすると思うくらい顔を近づけ、
「だって、エリザベッタなら食料である人間が逃げたってなったらもっと焦っているはずだわ」
エリザベッタの口の中はもうからからに乾いていた。
「セレンナがこのことを知った時、焦っていたわ。当然よね、これから食べる夕食が逃げたんですもの」
ベニータの声は、どんどん低く、重くなっていく。
「どうしてエリザベッタはそんなに冷静なの?ねえ、どうして?」
ベニータは、怒っているのではなく、何かを疑っているようだった。
「ベニータお姉さま、ごめんなさい」
エリザベッタは、頬に添えてある手に力が入るベニータの手の上から優しく自分の手を添えた。
「いつも穏やかで冷静なベニータお姉さまが動揺しているようだから、和ませようと思ってあんなことを・・・」
エリザベッタは、またベニータのことをしっかり見つめて、はっきりといった。
「ごめんなさい、ベニータお姉さま、嫌な気持ちになったなら謝るわ」
そういうと、ベニータは少しぎょっとした表情をした後、
「いいえ、いいえ、いいのよ。エリザベッタ」
ベニータは、エリザベッタから両手を離して薄く微笑んだ。
「折角エリザベッタが私を落ち着けようとしてくれていたのに。私ったら、取り乱しすぎよね」
ベニータは、エリザベッタがほっとするくらい、いつもの様子で微笑んだ。
「いいえ、ベニータお姉さま。わたくしの冗談が分かりにくかったわ」
エリザベッタは、少し安心してさっきよりは笑顔を上手く取り繕う事ができた。
「ふふ、エリザベッタったら」
ベニータは、口元に手を当てて上品に笑うと、すっとエリザベッタの顔に自分の顔を近づけた。
「しんじているわ!!エリザベッタ!!」
にっこりと、ぞっとする笑顔で、ベニータはそう言った。
エリザベッタは、その表情に少し泣きそうになった。ベニータは、信じているといったのに、笑顔だったのに。エリザベッタは、その一言で体がすくんで動けなくなってしまっていた。
「じゃあ、別の部屋を探してくるわね」
ベニータは、すくっと立ち上がると、子供に言い聞かせるようにそういって部屋を出て行こうとした。
「あ、ベニータお姉さ、ま」
そんなベニータを、エリザベッタは呼び止めた。
「あら、どうしたの?エリザベッタ」
ベニータは、首だけでエリザベッタを振り返った。
「もし、人間がわたくしの部屋に逃げ込んできたときはどうしたらいいのかしら」
そういうと、ベニータは目をすっと細めて、
「入れないように、外から鍵をかけましょう」
鋭い口調だった。エリザベッタは、俯いて小さく「はい」と答えた。
「エリザベッタ」
ベニータは、扉を出る前エリザベッタの方を見ずに呼びかけた。
「どうなさったの?ベニータお姉さま」
「エリザベッタも、セレンナも、私が守るからね」
ベニータは、小さくそういってエリザベッタの部屋から出て行った。エリザベッタは、きゅっと唇を固く結んで俯いた。
「ベニータお姉さま・・・」
2人はリアンを探して屋敷中を駆け回っているんだわ。エリザベッタは、また罪悪感に飲まれそうになった。
扉の前までふらふらと歩いて行って遠くにいく足音に耳を澄ませる。
「ごめんなさい・・・ベニータお姉さま。セレンナ」
エリザベッタの部屋は、中から鍵がかけられない代わりに、外からは鍵がかけられるようになっている。基本的に、ベニータが「エリザベッタを信用している」ということで、鍵が閉められることはない。
でも、今回は少し事情が違うので、しっかり外から鍵がかけられる音がした。
それが、逆にエリザベッタにとって都合がよくなっているわけだが、エリザベッタはラッキーと思ったりすることも、安堵のため息をつくこともなかった。
「リアン」
すぐクローゼットに駆け寄り、クローゼットを開く。
「エリザベッタ・・・」
リアンは、急に明るくなる視界に目を細めた。
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