9 / 96
深夜のコンビニバイト九日目 魔王来店(3回目)
しおりを挟む
今夜のコンビニバイト九日目。
ピロリロピロリロ
「い....何しに来たんですか当分の食料は最近あげたじゃないですか」
ででーんと魔王が来店した。もう3回目だ驚かない。
「食料をもらいに来たぞ」
話を聞け難聴なのか。
魔王は、店内を回って並んでいたカツサンド三つを全てカゴに入れてレジに持ってきた。
「前に食べ物あげたでしょう何でこんなにすぐ来ちゃったのまさかもうなくなったの?」
捨てられた猫に話しかけてる気分だ。
「なくなった」
胸を張ってはっきりという魔王に嘘をついているわけではない事は分かるが、どういう事か、疑問が残る。
「5000円分の食料ですよ。かなりの量でしたよね?まだ五日もたってない気がするんですけど」
「皆でお腹いっぱい食べたらなくなった。空き缶拾いの上手い山田も、河原での洗濯の仕方を教えてくれた伊藤も、テントの貼り方を教えてくれた松本も、泣きながら美味しい、ありがとうって食べてたから、我はもっと食え、お腹いっぱい食えって、皆で宴を開いたら、すぐ無くなってしまった」
ちょっとまってくれ。目が霞んで前が見えない。
「どうしたのだ?坊主よ顔を覆って」
「ちょっとまって財布取って来るから」
俺の給料全部持っていってくれ...。
ピロリロピロリロ
「ちょっと魔王様!まーたここに来て食べ物をねだってるんすか!」
エルフメイドさんがコンビニに駆け込んできて、魔王のマントを引っ張った。
「ダメっすよ!迷惑っす!ここはそういうところじゃないんすから!」
エルフメイドさんは人間界の常識を分かっているまともな人だった。
今日は赤い大きく胸元の開いたドレスを着ている。
だが俺はその健気な姿を見て余計に二人に美味しいものを食べさせてあげたいと思ってしまうんだ。
「で、でも...我は、また食料をもらって来ると言ってしまったのだ...山田達はもう死ぬ前にお腹いっぱい食べれて幸せだったと言っていたが、いつもお世話になっている恩返しがしたいのだ」
「いいよ!俺が払うから!エルフメイドさんは下がってて!」
「そんなわけにいかないっす!全くの他人の見ず知らずの店員さんにお金を払わせるなんていいわけないっす!このままだともらえるからとまた魔王様がダメな子になってしまうっす!これは魔王様の為なんすよ、少しは我慢を覚えないと」
母親が、子供の為を思って怒っている。
そんな風に思った。
俺は、この二人の絆を深く感じて目を閉じて鼻をすする。
「前にくださった分はあたしが責任持って支払うっす。もう少しだけまっててくださいっす」
何ていい子なんだこの子は...魔王とコンビで俺の涙腺を刺激して来る。
「魔王様も、ほらうちにはお金がないんすから、カツサンドを返して来るっす」
「お金ならある」
魔王は、妙に真剣な声色でごそごそと鎧をまさぐった。
「いいんですよ金貨は...」
俺とエルフメイドさんは、魔王の鎧から出てきた布切れ風呂敷から出てきたじゃらじゃらとした沢山の小銭を見て目を見張った。
「ちゃんと、人間のお金だ」
思わず呟いてしまった、魔王の紫の布切れ風呂敷には100円が二枚、10円、1円と石ころがごろごろ出てきた。
「えっ...これどうしたんですか」
「山田と空き缶をいっぱい拾った。伊藤と河原で綺麗な石を拾った。松本と自販機の下のお金を拾った」
魔王は、両手に大事そうにお金を乗せると、俺に献上するようにお金を差し出した。
「我はお金の計算の仕方がわからない。だから計算してくれ坊主。これでこの店のカツサンドは買えるのか?買えねばまた来る、から」
全部で248円。
あと少しの所カツサンドの300円まで足りなかった。
「足りますよ。ちょうどぴったりです」
俺にはできないよ、エルフメイドさん。
こんなに健気な君達に、何もしてあげられずにそのまま帰すなんて。
「本当か!?そうか...そうか、我は、初めて人間のお金で買い物ができたのだな」
「本当にぴったりなんすか?」
エルフメイドさんが涙をこらえて微笑んでいた。
きっとわかっているんだろう。
「はい。ぴったりですよ」
情けない泣きそうな声で答えた。
俺ほんとこの人達が来るとき何でこんな涙腺緩くなるんだろう。
あの横暴で、カツサンドを金払わずに寄越せと言ってきた魔王様が、ちゃんと自分のお金で、しかも誰かに買う為にカツサンドを買うなんて。
「ありがとうございました。またどうぞお越しくださいませ」
力強く答えた深夜3時。
本当に嬉しそうに袋に入れたカツサンドを抱きしめた魔王様と、
「よかったっすね、魔王様」
にっこり微笑むエルフメイドさん。
そんな暖かな空気を、
ピロリロピロリロ
1人の来客がぶち壊す。
黒いパーカーに、黒いキャップ、ジーンズのポケットに両手を突っ込んで来店してきたのは、忘れもしないクソイキリ勇者ユーチューバーだった。
「あ」
「あ」
「え」
魔王とエルフメイドさん、勇者がばったりとまさにばったりという感じで目があった。
ピロリロピロリロ
「い....何しに来たんですか当分の食料は最近あげたじゃないですか」
ででーんと魔王が来店した。もう3回目だ驚かない。
「食料をもらいに来たぞ」
話を聞け難聴なのか。
魔王は、店内を回って並んでいたカツサンド三つを全てカゴに入れてレジに持ってきた。
「前に食べ物あげたでしょう何でこんなにすぐ来ちゃったのまさかもうなくなったの?」
捨てられた猫に話しかけてる気分だ。
「なくなった」
胸を張ってはっきりという魔王に嘘をついているわけではない事は分かるが、どういう事か、疑問が残る。
「5000円分の食料ですよ。かなりの量でしたよね?まだ五日もたってない気がするんですけど」
「皆でお腹いっぱい食べたらなくなった。空き缶拾いの上手い山田も、河原での洗濯の仕方を教えてくれた伊藤も、テントの貼り方を教えてくれた松本も、泣きながら美味しい、ありがとうって食べてたから、我はもっと食え、お腹いっぱい食えって、皆で宴を開いたら、すぐ無くなってしまった」
ちょっとまってくれ。目が霞んで前が見えない。
「どうしたのだ?坊主よ顔を覆って」
「ちょっとまって財布取って来るから」
俺の給料全部持っていってくれ...。
ピロリロピロリロ
「ちょっと魔王様!まーたここに来て食べ物をねだってるんすか!」
エルフメイドさんがコンビニに駆け込んできて、魔王のマントを引っ張った。
「ダメっすよ!迷惑っす!ここはそういうところじゃないんすから!」
エルフメイドさんは人間界の常識を分かっているまともな人だった。
今日は赤い大きく胸元の開いたドレスを着ている。
だが俺はその健気な姿を見て余計に二人に美味しいものを食べさせてあげたいと思ってしまうんだ。
「で、でも...我は、また食料をもらって来ると言ってしまったのだ...山田達はもう死ぬ前にお腹いっぱい食べれて幸せだったと言っていたが、いつもお世話になっている恩返しがしたいのだ」
「いいよ!俺が払うから!エルフメイドさんは下がってて!」
「そんなわけにいかないっす!全くの他人の見ず知らずの店員さんにお金を払わせるなんていいわけないっす!このままだともらえるからとまた魔王様がダメな子になってしまうっす!これは魔王様の為なんすよ、少しは我慢を覚えないと」
母親が、子供の為を思って怒っている。
そんな風に思った。
俺は、この二人の絆を深く感じて目を閉じて鼻をすする。
「前にくださった分はあたしが責任持って支払うっす。もう少しだけまっててくださいっす」
何ていい子なんだこの子は...魔王とコンビで俺の涙腺を刺激して来る。
「魔王様も、ほらうちにはお金がないんすから、カツサンドを返して来るっす」
「お金ならある」
魔王は、妙に真剣な声色でごそごそと鎧をまさぐった。
「いいんですよ金貨は...」
俺とエルフメイドさんは、魔王の鎧から出てきた布切れ風呂敷から出てきたじゃらじゃらとした沢山の小銭を見て目を見張った。
「ちゃんと、人間のお金だ」
思わず呟いてしまった、魔王の紫の布切れ風呂敷には100円が二枚、10円、1円と石ころがごろごろ出てきた。
「えっ...これどうしたんですか」
「山田と空き缶をいっぱい拾った。伊藤と河原で綺麗な石を拾った。松本と自販機の下のお金を拾った」
魔王は、両手に大事そうにお金を乗せると、俺に献上するようにお金を差し出した。
「我はお金の計算の仕方がわからない。だから計算してくれ坊主。これでこの店のカツサンドは買えるのか?買えねばまた来る、から」
全部で248円。
あと少しの所カツサンドの300円まで足りなかった。
「足りますよ。ちょうどぴったりです」
俺にはできないよ、エルフメイドさん。
こんなに健気な君達に、何もしてあげられずにそのまま帰すなんて。
「本当か!?そうか...そうか、我は、初めて人間のお金で買い物ができたのだな」
「本当にぴったりなんすか?」
エルフメイドさんが涙をこらえて微笑んでいた。
きっとわかっているんだろう。
「はい。ぴったりですよ」
情けない泣きそうな声で答えた。
俺ほんとこの人達が来るとき何でこんな涙腺緩くなるんだろう。
あの横暴で、カツサンドを金払わずに寄越せと言ってきた魔王様が、ちゃんと自分のお金で、しかも誰かに買う為にカツサンドを買うなんて。
「ありがとうございました。またどうぞお越しくださいませ」
力強く答えた深夜3時。
本当に嬉しそうに袋に入れたカツサンドを抱きしめた魔王様と、
「よかったっすね、魔王様」
にっこり微笑むエルフメイドさん。
そんな暖かな空気を、
ピロリロピロリロ
1人の来客がぶち壊す。
黒いパーカーに、黒いキャップ、ジーンズのポケットに両手を突っ込んで来店してきたのは、忘れもしないクソイキリ勇者ユーチューバーだった。
「あ」
「あ」
「え」
魔王とエルフメイドさん、勇者がばったりとまさにばったりという感じで目があった。
0
あなたにおすすめの小説
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる