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深夜のコンビニバイト十日目 勇者再来店
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「あ」
「あ」
「え」
クソイキリ勇者と、魔王と、エルフメイドさんがばったりと出会った。
クソイキリ勇者は、ゆっくりと魔王とエルフメイドさんはゆっくりと、お互いを指差しあった後、
「あーーーー!!!」
「あーーーー!!!」
「あーーーー!!!」
三人で同時に叫び出した。うるさいうるさいうるさい。
「えぇ!何でここにクソイキリ勇者がいるんすか!?」
お前そっちでもクソイキリ勇者やってたのかよ。
「その呼び方はやめてってずっと言ってるだろ!俺はくそいきりじゃないし!」
クソイキリじゃなかったらなんなんだよ
。
「知ってるんすよ。街で「中指一本で魔王を倒した。俺が中指を立てたら魔王が震えて背中を見せたからそこを切りつけた」って言い回ってるの。魔王様に勝てた事ない癖に」
「え?そんな事あったっけ?」
きょとんとする魔王に、俺は笑いをこらえるのに必死だった。
「なっ!ちがっ、違うし!あれだし、それは街の皆に俺が強いって事をアピールして安心してもらう為っていうか...その、あれだし」
「街の人に嘘をつく勇者なんて安心できるわけないじゃないすか。正直にホームレスとして生きている魔王様を見習ってくださいっす。ところで今はどうしてるんすか?」
エルフメイドさん、ド正論すぎて心の底から拍手を送りたい。
「ホームレスって、あのテレビでやってた...あっマジか...苦労してんだね...ちなみにどこに住んでるの?」
「ここからすぐ近くの広い公園にテントを立てて暮らしている」
「ガチやん...俺の方が現実世界ではいい暮らししてんだね。俺は今ユーチューバーやってるんだ」
「ゆーちゅーばー?なんだそれは美味そうな名前だな」
魔王が食いついてきた。
毎日空き缶拾いをせっせとしてお金を稼いでいる魔王がユーチューバーなんて職業を聞いたら我も始めるとか言いそうなんだよなぁ。
「動画を撮って投稿して、皆に動画を見てもらってその広告収入でお金を稼ぐ職業だよ。俺はほらこの通り勇者だからさ、異世界での俺の無双っぷりや、豪遊生活なんかを話しながら、商品紹介や、勇者が○○してみた。なんかの動画を撮って全世界の人に見てもらってお金を稼いでるんだ」
めちゃくちゃわかりやすく丁寧に説明した勇者に対し、エルフメイドさんの反応は冷ややかだった。
「つまり、全世界の人に嘘をついてお金を稼いでるって事っすね」
「やめてその言い方!!」
勇者は思わず顔を覆った。
違くないだろその通りだろ。
「...勇者よ。一つ問いたい」
魔王が、静かに勇者を見据える。
「何、魔王も俺のこと嘘つきって言うの?」
「いや、それは勿論そうなんだが...その、この世界の人類は空き缶拾いをしてお金を稼いでいるのではないのか?」
「へ?」
「その、どうがとーこうというのでもお金をもらえたりするのか?」
「もしかして魔王ってこの世界の職業が空き缶拾いだけだと思ってる?ははっちが」
突如、目の前のエルフメイドさんがスッと消えて勇者の背後に回り、勇者の首元に太ももに隠してあったナイフを突きつけていた。
動きが完全に殺し屋のそれだった。
「ちょ、コンビニでそういう血を流すような事はやめてくださいね!?」
俺は勝手に足が動いていた。
止めに入ろうとエルフメイドさんに近寄ると、
「それ以上言ったらどうなるかわかってるっすよね...魔王様のビジュアルで雇ってくれるような職業はないに等しいんですから。魔王様はあたしが養っていくんすよ。変な事吹き込まないでくださいっす」
エルフメイドさんは、低い声で勇者に囁いた。
「殺さないで.....」
泣きそうな声で勇者は、震えていた。
何が中指を立てたら勇者が背中を見せて震えただよ。
「なぁ、ゆーちゅーばーって」
「な、お、な、なんだもないよ!なんだもない!おれも空き缶拾いすき!なんだもナィ!」
声裏返ってるし、なんだよなんだもないって震えすぎだろ。
「なんだ、勇者もやはり空き缶拾いをしてるのだな。我も同様だ。最近の一日に稼げた最高記録は76円だ。凄かろう?勇者は一日いくらくらい稼いでいるのだ?」
「えっ.....う、うん...す、すごーい俺は三円だよ、うん、三円。はは」
無邪気な魔王に、引き気味の勇者。
優しい嘘なのはわかるがあからさますぎるだろ。もうちょっと50円代とか攻めておけよ。
それとチラチラ俺に助けを求めるように見てくるのやめてくれる?
「と、ところで魔王、もう一人の世話係のメイドはどうしたの?」
空気を変えようとわざと明るい声で勇者は話題を変える。
エルフメイドさんは、やっとナイフを下ろし、勇者は胸をなでおろす。
「あぁ、クロノアか。こちらにきた時はぐれてしまったのだ」
魔王にはもしかしてもう一人メイドがいるのか?
「クロノアなら大丈夫っすよ。あの通り完璧超人ですし...ただ、確実に今この世界のどこかでクロノアの犠牲者がいる事は確かっすね」
犠牲者....。俺は、先程のプロの殺し屋のようなエルフメイドさんの動きを思い出し、思わず声を荒げた。
「ぎ、犠牲者って人殺しとかですか!?」
三人は一斉に俺を見る。
エルフメイドさんは、困ったように頰をかいた。
「や、そういう犠牲者じゃなくて、クロノアは完璧超人で史上最悪なダメ人間製造機なんすよ...魔王が魔界で我儘放題好き放題ぐうたれ甘ったれになっちゃったのも、クロノアが甘やかしすぎたせいっすね」
「おい、ぐうたれ甘ったれってなんだシェリィ」
史上最悪なダメ人間製造機ってすごいパワーワードだよな...。
魔王のツッコミをガン無視してエルフメイドさんは続ける。
「クロノアが好みの男性は、自分が絶対的に正しいと自信があり、プライドが高い、部下からの信頼も厚く実際地位が高かったりすると尚ポイントが高いっす。更にクロノアが優秀だと思った人材──そういう元から優秀な人間を180度ただのダメ人間に変えてしまうんすよ」
「まぁ、コンビニ店員のあなたには関係ない話だけどね。俺は声をかけられた事もないけどさ」
なんか勇者に言われると凄いムカつくんですけどね。
「勇者こそ、あの愉快な仲間達はどうしたのだ?」
「俺もバラバラだよ。四人でこっちに来たと思ったら俺一人。途方にくれたよね。まぁ、今はなんとかやってるけどさ」
こんなポンコツ勇者に三人も仲間がいたのかよ。
「あっ!そうじゃん。店員さん、俺の仲間がコンビニに来たら連絡先渡すから連絡してくれない?」
勇者はぽんと手を叩いて俺を見た。
「えぇっ...」
「そんな露骨に嫌な顔しないでよ!今度俺の動画に出させてあげるからさ!」
「いや、結構です」
俺があんたの動画に出て得るものはない。隣にイキリ勇者かいて恥ずかしいだけだ。
「真顔で言われると傷つくな...いや、じゃあ動画に出なくていいから代わりに連絡してくれない?」
「何も等価交換になってないけど...えっと、一応みなさんの特徴は?」
店長に新しいことを教えてもらったらメモする為にポケットに入れてあったメモ帳とペンを用意する。
「えっと、まず赤色の鎧を着た赤鎧の女騎士の「アイリス」黒いシスター服に緑と黄色の目のオッドアイシスター「クレア」全身ピンクの美少女魔法使い「サッコ」」
全員女!?
見かけによらずハーレムだったのこの勇者!?
「わかった、来店したら連絡する。その前に一発殴ってらせてくれませんか」
「何で!?俺なんかした!?」
焦る勇者はぼきぼきと肩を回す俺からじりじりと後ずさりして、くるりと俺達に背を負けた。
「じゃ、そ、そういう事だから!またお願いね!じ、じゃあね!」
尚、逃げ足は速い模様。
「シェリィ、我らもいくぞ。クロノア、彼奴も我の大切なメイドだ。早く見つかると良いのだがな。坊主、クロノアが来たら今度我が来店した際に教えてくれ」
「...わかりました、一応特徴とかは」
「黒い短い髪に漆黒の目だから見ればすぐわかるっすよ。一目見ただけで只者じゃないってわかるっすから」
魔王が説明しようとしたのを遮って静かに言ったエルフメイドさんに、何だか違和感を覚えた。
魔王は、カツサンドを抱えて
「頼むぞ、坊主」
と力強く言うと店内を後にした。
俺の隣にひょこっと来てエルフメイドさんは最後に本音をこぼした。
「あたしはできればこのままクロノアに会わない方が魔王様の為ではあると思うんすけどね...出会ったら最後豪邸でふかふかのベッドで養われて魔王様は前みたいにぐうたら甘ったれで動かなくなってしまうっす。あたしは、今魔王様がこうして成長していく過程を見られて嬉しいんすよ。だから、このままホームレスだろうとも、幸せなんすよ」
胸に手を当てて、魔王のお母さんのような母性溢れる微笑みを見せるエルフメイドさんの健気さにまた涙腺が...。
「それじゃ、今度はお給料が出た時に会いましょうっす。親切なコンビニ店員さん」
にっこり微笑んで魔王を追いかけるように帰っていったエルフメイドさん。
俺は、メモ帳とペンをポケットにしまってまたレジに立った。
そこでふと思い出す。
そういや、勇者に連絡先もらうの忘れた。
まぁ、いっか...。
***
別に興味があったからじゃない。
ただちょっと暇だからのぞいてみるだけだ。
「勇者ユーチューバーマックの異世界動画配信」
チャンネルを開くとずらりと今までの動画が並んでいる。
その中で、一つ目に入ったのが
『異世界のコンビニで700円くじを全部引いてみた』
「稼ぎすぎだろ!700円くじがすごいスピードで無くなったって話を聞いたけどお前かよ!!」
再生数とコメントが凄まじかった。
コメント欄を見ると、
「クソイキリ勇者系ユーチューバーウケる笑」
「嘘つきユーチューバーマック」
お前こっちの世界でユーチューバーやってても異世界の時と同じ事言われてんのかよ。
そう心の中でツッコんで、チャンネル登録のボタンを押して眠りについた。
「あ」
「え」
クソイキリ勇者と、魔王と、エルフメイドさんがばったりと出会った。
クソイキリ勇者は、ゆっくりと魔王とエルフメイドさんはゆっくりと、お互いを指差しあった後、
「あーーーー!!!」
「あーーーー!!!」
「あーーーー!!!」
三人で同時に叫び出した。うるさいうるさいうるさい。
「えぇ!何でここにクソイキリ勇者がいるんすか!?」
お前そっちでもクソイキリ勇者やってたのかよ。
「その呼び方はやめてってずっと言ってるだろ!俺はくそいきりじゃないし!」
クソイキリじゃなかったらなんなんだよ
。
「知ってるんすよ。街で「中指一本で魔王を倒した。俺が中指を立てたら魔王が震えて背中を見せたからそこを切りつけた」って言い回ってるの。魔王様に勝てた事ない癖に」
「え?そんな事あったっけ?」
きょとんとする魔王に、俺は笑いをこらえるのに必死だった。
「なっ!ちがっ、違うし!あれだし、それは街の皆に俺が強いって事をアピールして安心してもらう為っていうか...その、あれだし」
「街の人に嘘をつく勇者なんて安心できるわけないじゃないすか。正直にホームレスとして生きている魔王様を見習ってくださいっす。ところで今はどうしてるんすか?」
エルフメイドさん、ド正論すぎて心の底から拍手を送りたい。
「ホームレスって、あのテレビでやってた...あっマジか...苦労してんだね...ちなみにどこに住んでるの?」
「ここからすぐ近くの広い公園にテントを立てて暮らしている」
「ガチやん...俺の方が現実世界ではいい暮らししてんだね。俺は今ユーチューバーやってるんだ」
「ゆーちゅーばー?なんだそれは美味そうな名前だな」
魔王が食いついてきた。
毎日空き缶拾いをせっせとしてお金を稼いでいる魔王がユーチューバーなんて職業を聞いたら我も始めるとか言いそうなんだよなぁ。
「動画を撮って投稿して、皆に動画を見てもらってその広告収入でお金を稼ぐ職業だよ。俺はほらこの通り勇者だからさ、異世界での俺の無双っぷりや、豪遊生活なんかを話しながら、商品紹介や、勇者が○○してみた。なんかの動画を撮って全世界の人に見てもらってお金を稼いでるんだ」
めちゃくちゃわかりやすく丁寧に説明した勇者に対し、エルフメイドさんの反応は冷ややかだった。
「つまり、全世界の人に嘘をついてお金を稼いでるって事っすね」
「やめてその言い方!!」
勇者は思わず顔を覆った。
違くないだろその通りだろ。
「...勇者よ。一つ問いたい」
魔王が、静かに勇者を見据える。
「何、魔王も俺のこと嘘つきって言うの?」
「いや、それは勿論そうなんだが...その、この世界の人類は空き缶拾いをしてお金を稼いでいるのではないのか?」
「へ?」
「その、どうがとーこうというのでもお金をもらえたりするのか?」
「もしかして魔王ってこの世界の職業が空き缶拾いだけだと思ってる?ははっちが」
突如、目の前のエルフメイドさんがスッと消えて勇者の背後に回り、勇者の首元に太ももに隠してあったナイフを突きつけていた。
動きが完全に殺し屋のそれだった。
「ちょ、コンビニでそういう血を流すような事はやめてくださいね!?」
俺は勝手に足が動いていた。
止めに入ろうとエルフメイドさんに近寄ると、
「それ以上言ったらどうなるかわかってるっすよね...魔王様のビジュアルで雇ってくれるような職業はないに等しいんですから。魔王様はあたしが養っていくんすよ。変な事吹き込まないでくださいっす」
エルフメイドさんは、低い声で勇者に囁いた。
「殺さないで.....」
泣きそうな声で勇者は、震えていた。
何が中指を立てたら勇者が背中を見せて震えただよ。
「なぁ、ゆーちゅーばーって」
「な、お、な、なんだもないよ!なんだもない!おれも空き缶拾いすき!なんだもナィ!」
声裏返ってるし、なんだよなんだもないって震えすぎだろ。
「なんだ、勇者もやはり空き缶拾いをしてるのだな。我も同様だ。最近の一日に稼げた最高記録は76円だ。凄かろう?勇者は一日いくらくらい稼いでいるのだ?」
「えっ.....う、うん...す、すごーい俺は三円だよ、うん、三円。はは」
無邪気な魔王に、引き気味の勇者。
優しい嘘なのはわかるがあからさますぎるだろ。もうちょっと50円代とか攻めておけよ。
それとチラチラ俺に助けを求めるように見てくるのやめてくれる?
「と、ところで魔王、もう一人の世話係のメイドはどうしたの?」
空気を変えようとわざと明るい声で勇者は話題を変える。
エルフメイドさんは、やっとナイフを下ろし、勇者は胸をなでおろす。
「あぁ、クロノアか。こちらにきた時はぐれてしまったのだ」
魔王にはもしかしてもう一人メイドがいるのか?
「クロノアなら大丈夫っすよ。あの通り完璧超人ですし...ただ、確実に今この世界のどこかでクロノアの犠牲者がいる事は確かっすね」
犠牲者....。俺は、先程のプロの殺し屋のようなエルフメイドさんの動きを思い出し、思わず声を荒げた。
「ぎ、犠牲者って人殺しとかですか!?」
三人は一斉に俺を見る。
エルフメイドさんは、困ったように頰をかいた。
「や、そういう犠牲者じゃなくて、クロノアは完璧超人で史上最悪なダメ人間製造機なんすよ...魔王が魔界で我儘放題好き放題ぐうたれ甘ったれになっちゃったのも、クロノアが甘やかしすぎたせいっすね」
「おい、ぐうたれ甘ったれってなんだシェリィ」
史上最悪なダメ人間製造機ってすごいパワーワードだよな...。
魔王のツッコミをガン無視してエルフメイドさんは続ける。
「クロノアが好みの男性は、自分が絶対的に正しいと自信があり、プライドが高い、部下からの信頼も厚く実際地位が高かったりすると尚ポイントが高いっす。更にクロノアが優秀だと思った人材──そういう元から優秀な人間を180度ただのダメ人間に変えてしまうんすよ」
「まぁ、コンビニ店員のあなたには関係ない話だけどね。俺は声をかけられた事もないけどさ」
なんか勇者に言われると凄いムカつくんですけどね。
「勇者こそ、あの愉快な仲間達はどうしたのだ?」
「俺もバラバラだよ。四人でこっちに来たと思ったら俺一人。途方にくれたよね。まぁ、今はなんとかやってるけどさ」
こんなポンコツ勇者に三人も仲間がいたのかよ。
「あっ!そうじゃん。店員さん、俺の仲間がコンビニに来たら連絡先渡すから連絡してくれない?」
勇者はぽんと手を叩いて俺を見た。
「えぇっ...」
「そんな露骨に嫌な顔しないでよ!今度俺の動画に出させてあげるからさ!」
「いや、結構です」
俺があんたの動画に出て得るものはない。隣にイキリ勇者かいて恥ずかしいだけだ。
「真顔で言われると傷つくな...いや、じゃあ動画に出なくていいから代わりに連絡してくれない?」
「何も等価交換になってないけど...えっと、一応みなさんの特徴は?」
店長に新しいことを教えてもらったらメモする為にポケットに入れてあったメモ帳とペンを用意する。
「えっと、まず赤色の鎧を着た赤鎧の女騎士の「アイリス」黒いシスター服に緑と黄色の目のオッドアイシスター「クレア」全身ピンクの美少女魔法使い「サッコ」」
全員女!?
見かけによらずハーレムだったのこの勇者!?
「わかった、来店したら連絡する。その前に一発殴ってらせてくれませんか」
「何で!?俺なんかした!?」
焦る勇者はぼきぼきと肩を回す俺からじりじりと後ずさりして、くるりと俺達に背を負けた。
「じゃ、そ、そういう事だから!またお願いね!じ、じゃあね!」
尚、逃げ足は速い模様。
「シェリィ、我らもいくぞ。クロノア、彼奴も我の大切なメイドだ。早く見つかると良いのだがな。坊主、クロノアが来たら今度我が来店した際に教えてくれ」
「...わかりました、一応特徴とかは」
「黒い短い髪に漆黒の目だから見ればすぐわかるっすよ。一目見ただけで只者じゃないってわかるっすから」
魔王が説明しようとしたのを遮って静かに言ったエルフメイドさんに、何だか違和感を覚えた。
魔王は、カツサンドを抱えて
「頼むぞ、坊主」
と力強く言うと店内を後にした。
俺の隣にひょこっと来てエルフメイドさんは最後に本音をこぼした。
「あたしはできればこのままクロノアに会わない方が魔王様の為ではあると思うんすけどね...出会ったら最後豪邸でふかふかのベッドで養われて魔王様は前みたいにぐうたら甘ったれで動かなくなってしまうっす。あたしは、今魔王様がこうして成長していく過程を見られて嬉しいんすよ。だから、このままホームレスだろうとも、幸せなんすよ」
胸に手を当てて、魔王のお母さんのような母性溢れる微笑みを見せるエルフメイドさんの健気さにまた涙腺が...。
「それじゃ、今度はお給料が出た時に会いましょうっす。親切なコンビニ店員さん」
にっこり微笑んで魔王を追いかけるように帰っていったエルフメイドさん。
俺は、メモ帳とペンをポケットにしまってまたレジに立った。
そこでふと思い出す。
そういや、勇者に連絡先もらうの忘れた。
まぁ、いっか...。
***
別に興味があったからじゃない。
ただちょっと暇だからのぞいてみるだけだ。
「勇者ユーチューバーマックの異世界動画配信」
チャンネルを開くとずらりと今までの動画が並んでいる。
その中で、一つ目に入ったのが
『異世界のコンビニで700円くじを全部引いてみた』
「稼ぎすぎだろ!700円くじがすごいスピードで無くなったって話を聞いたけどお前かよ!!」
再生数とコメントが凄まじかった。
コメント欄を見ると、
「クソイキリ勇者系ユーチューバーウケる笑」
「嘘つきユーチューバーマック」
お前こっちの世界でユーチューバーやってても異世界の時と同じ事言われてんのかよ。
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