深夜のコンビニバイト始めたけど魔王とか河童とか変な人来すぎて正直続けていける自信がない

ガイア

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深夜のコンビニバイト十一日目 天使ちゃんと悪魔ちゃん来店

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深夜のコンビニバイト十一日目。

コンビニのゴミ箱はよくパンパンになる。
家のゴミをわざわざコンビニに持ってきてコンビニで捨てる人もいると店長が言っていた。
よくゴミが溢れていて、ゴミ箱の前にごみ袋が置いてあることもある。
だから俺は、人があまり来ないこの時間帯にレジを仕方なく無人にして、外にゴミ箱の様子を見に行くことにしている。

ピロリロピロリロ

ゴミ箱の様子を見にいこうと外に出ると、

「あっ...」

店の前にしゃがみこむ片方だけ白い羽が生え、片方には黒い羽の生えた黄色い輪っかがふよふよ浮いている白いワンピースを着た女の子が潤んだ瞳でこちらを見上げた。

「えっ...は、羽...羽生えてる」

「ボクの事...拾ってくれませんか?」

ピンクのふわふわの髪が揺れ、立ち上がった羽の生えた女の子は、俺の胸に飛び込んできた。

「何でもするから...ボク、捨てられて...ボク、ドジだから...ぐすっ...暗い夜の中、ボク、どうしたらいいか...ぐすっわからな...くて、ぐすっ...ここが光ってて、だから」

今日は、ゴミではなく羽の生えた女の子がコンビニの前に捨てられていた。
顔を上げた女の子は、泣き顔でも驚くくらい可愛かった。まつげが長い。
俺は両手を万歳して捕まるから女の子に触れないように平静を保とうと必死に平静を装った。

「ま、待って、ちょっとまって、あの、落ち着いて話そう。俺も落ち着くから。と、とりあえず中に入って」

「...ありがとう...優しいお兄さん」

きゅっと制服の背中のあたりを掴まれて、びくっとしてしまう。
何だこの子...天使かよ。

コンビニの扉に背中に生えたでかい羽が挟まって通れなかったので、横向きでご来店。羽は取ったりしまったりできないらしい。
休憩スペースで話を聞くことにした。
ポケットに小銭をもう俺はあらかじめ入れておくことにしたので、その小銭でペットボトルのミルクティーを買って渡す。女の子って皆ミルクティー飲んでるイメージなんだけど、あれ違う?

「ありがとう...ございます」

にこっと笑って、んく、んく、と飲んでいく姿を頬杖をつきながら眺める。

 何だこの子...天使かよ。

「へへ、落ち着きました。ありがとうございます」

「天使かよ...」

「あっはい、ボク、天使ですよ...あっ、いや、今は違うかな。どうなんだろ」

にっこり微笑んで自分を指差す羽の生えた女の子。
何だこの子...天使だった。

「はい、あっあの、そんな事信じてもらえませんよね...」

「いや、信じるよ。勿論信じるよ。まさに天使そのものじゃないか」

河童や魔王が来るこのコンビニで天使が来たと言ってももう俺は驚かなかった。

「信じていただけるんですか...えへへ、やっぱりお兄さん...優しいなぁ」

その一言一言お兄さんのハートを的確に撃ち抜いてくるのやめて。

「ところで君は何でコンビニの前で座りこんでたの?捨てられたって言ってたけど...」

天使ちゃんがしゅんと暗い顔になる。

「あっ、いや、話したくなかったら全然いいんだよ!?辛いことを聞いてしまったみたいでごめんね!?」

「...いや、いいんです。ボクが悪いんですから...捨てられたのも、ボクが全部悪いんです」

「そんなわけないじゃないか!一回、お兄さんに話してみて?」

こんなに可愛い子が悪い事なんかあるわけがない。
天使ちゃんは、言いにくそうに目をそらし、もじもじしながら口を開いた。
挙動がいちいち全部可愛い。

「...えっと、実はボク昔からすごく不幸体質なんだ。今日はボクの一人前の天使になれる試験の日だったんだ。ボク達天使は最初は片方しか羽が生えてなくて、試験に合格したら、もう片方つけてもらえるんだ。必死に勉強したのに、朝寝坊しちゃって、それはまぁ、想定内だったんだけど、道に迷って間違えて悪魔の試験会場に行っちゃったんだ。悪魔の会場に行ったら、人が多くて押し込まれて会場に入っちゃって、そしたら、流れで試験を受けることになっちゃって、筆記テストが選択問題で、適当にやったら受かっちゃって」

最初から話がカオスすぎてついていけない。ただ、話してる天使ちゃんは可愛い。

「悪魔の試験に受かると、自動的に背中に黒い羽を背中につけてもらう事になるんだけど、つけてもらった後履歴書を見て天使だって発覚して、悪魔の試験会場から追放されて、天使の世界に戻ったら、天使の試験会場で片方悪魔の羽が生えてるから裏切り者のお前を追放するって、そして、気がついたらここにいた。ボクはこの世界に捨てられたんだ」

悪魔の羽をつける時点で天使だって分かるだろ。こんなに可愛いんだから。

「現世に辿り着いたら、知らない男の人に声をかけられてついて行ったら「おじきの死んだ娘さんにそっくりだ。おじきは娘さんが死んじまって気を病んじまった、頼むから娘さんの代わりになってくれ」って大勢のお兄さんから頭を下げられて」

いやそれやばいやつだよね。
おじきって...それ、やばいやつだよね。

「ボクにはちゃんとお母さんとお父さんがいるから断わったんだけど、あまりにもしつこくて夜にこっそり逃げたんだ」

待って今この子自然にヤクザから追われてる身になってるの?

「そしたら知らない女の人に声をかけられて、ついて行ったら着せ替え人形にされて、抱き枕にされたり頬ずりされたりしてボクはお人形じゃない!って夜に逃げたら凄い勢いで追いかけてきて、怖くて、それで道に迷ってここにたどり着いたんだ」

それ誘拐だよね。
明らかにやばい女の人にも追われてるのこの子。
背筋に嫌な汗が流れた怖い。想像したらめちゃくちゃ怖い。きっと天使ちゃんはもっと怖かったんだろうな。
素直に声をかけられて全部ついていっちゃうあたり見た目通り本当に疑う事を知らない素直な子なんだな...。

リアルに不幸が爆弾級だった。
変な汗がじわりと体にまとわりついて離れない。
ここにいたらヤクザがこの子を追ってコンビニに乗り込んでくる可能性もあるし、その変な誘拐女も危ない。

「ボク、羽も片方悪魔で片方天使だから天界には帰れないし、現世でも居場所がないんだ...でも、いいんだ。ボクを助けようとしたらお兄さんがきっと危険な目にあっちゃうんだと思うから。さっきは拾ってくれませんか?って言ったけどそんな迷惑、かけられないよ」

さっきまで可愛いと思っていた天使ちゃんが急に黒い不幸オーラをまとった爆弾になってしまった。

「分かった。お兄さんがなんとかするよ」

だが俺はこの子を見捨てる事は出来ない。
今の話を聞いて見捨てる奴はクソ野郎だ。
天界で悪魔でも天使でもないどっちつかずで現世に捨てられて、ヤクザのおじきの娘にさせられそうになって逃げて誘拐女に着せ替え人形にされて逃げてコンビニにたどり着いたってどんだけ不幸な事が重なってんだって話だが、この子の言う通りそれが天使ちゃんの不幸体質というやつなのだろう。

「お兄さん...ありがとう...ボクみたいなどっちつかずの出来損ないに優しくしてくれて」

「出来損ないなんかじゃないよ。泣かないで」

ハンカチで涙を拭いてあげると、その手をそっと頬に当てて微笑む天使ちゃんに、俺の人生を全てこの子に捧げてもいいかなと思ってしまった。

ピロリロピロリロ

「やっと見つけましたわよ!!ハムエル!」

黒い天使ちゃんの片割れの羽が両方に生えていて、黒いツインテ縦ロールに黒いチューブトップに短いフリルスカート、ヘソ出しのほぼ下着みたいな格好に黒いマントを着た恥ずかしい格好の背の小さい女の子が早歩きで来店してきた。

「...マニーシャちゃん!?」

天使ちゃんは立ち上がって、驚きの声を上げる。

「べ、別にわたくしは天界から追放された貴方を心配して悪魔界から急遽こちらにきたわけではなくってよ」

悪魔界って事はこの子悪魔なのか?
悪魔の尻尾がふよふよ揺れている。

「ボクの事...心配してこっちにきてくれたの?」

「ち、違うっていってるでしょうに分からず屋さん!悪魔界の水晶を使って貴方を見つけましたわ。貴方を追っていた人間達の記憶は綺麗さっぱり消しておきましたので安心しなさい。全くこれだからわたくしがついてないとハムエルは本当にダメなんだから」

嬉しそうに尻尾はふよふよ揺れている。
違うっていってるのに後半思いっきりカミングアウトしてるよね。

「あっ...幼馴染の悪魔界主席の天才マニーシャちゃんです。いつもダメダメなボクの事を助けてくれるんです」

俺を振り返って悪魔ちゃんを紹介する天使ちゃん。
その隣で悪魔ちゃんが俺の事をじーっと見つめている。可愛い。

「えっと...なんでしょう」

「あなたも、ハニエルの可愛さに騙された可哀想な人のようね」

「それはどういう...」

俺はこんなに聞かなければよかったと思う事はなかった。

「ハニエルは男の子よ」

「!?!?!?!?!?」

「えへ...あれ、お兄さんわかってるかと思ってた」

「!?!?!?!?!?」

俺はしばらく呆然としていた。
こんなに可愛い天使ちゃんが男の子...?
そして俺の視線は自然に天使ちゃんと同様に胸がぺたんこの悪魔ちゃんに向いた。

「わ、わたくしは女ですわよ!見ないでください!このゲス!変態!」

尻尾がキーっ!と逆立っていた。可愛い。
もう俺は何が本当で何が嘘なのか信じられなくなっていた。

「お兄さんは変態じゃないよ。ボクを助けてくれたんだ」

悪魔ちゃんのマントをくいくいっと引っ張る天使ちゃんに、

「可愛い...」

悪魔ちゃんも思わず声を漏らす。なんだこの子も俺と同じか...わかる。わかるよ。

「ご、ごほん。とりあえずハムエルは貴方の手にはおえないでしょうしわたくしが連れて行きますわ。わたくしのハムエルがお世話かけましたわね」

さりげなくわたくしを強調してわたくしのハムエルっていうところ、この子天使ちゃん大好きだな。

「お兄さん...迷惑かけちゃってごめんなさい。本当にありがとう」

ぺこりと頭を下げて、天使のハムエルちゃんは、飲み終わったミルクティーのペットボトルを持って、

「このお礼は必ず返すからねお兄さん。これ、持ち帰ってもいい?」

「ゴミのペットボトルなんてどうするの?」

「ハムエル、後で新しいのをあげるからわたくしにそのペットボトルを渡しなさい、いいわね?」

ハムエルちゃんの飲んだペットボトルをマニーシャちゃんはどうするつもりなのかすごく気になるよ俺は。

「ダメだよ、マニーシャちゃん。これはダメ。このペットボトルがあれば、いつでもボクを助けてくれたお兄さんの事、忘れないでしょ?」

お兄さん嬉しい...。

「ハムエルにはマニーシャがいればいいの。わたくしがいれば何もいらないんだから。ほら、行くわよ」

悪魔のマニーシャちゃんは、天使のハムエルちゃんの手を引いた。
コンビニから出る時一瞬、ハムエルちゃんはこっちを向いて、

「優しいお兄さん、また来るね、この世界にきて唯一お兄さんが優しかったよ。ありがとう」

「またいつでもおいで。何でも好きなものを買ってあげるからね」

可愛すぎてお兄さん死んじゃうかと思った。
マニーシャちゃん、ついでにハムエルちゃんが男の子って記憶、俺の脳から抹消してくれないだろうか。
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