深夜のコンビニバイト始めたけど魔王とか河童とか変な人来すぎて正直続けていける自信がない

ガイア

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深夜のコンビニバイト二十日目 勇者の愉快な仲間達来店

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深夜のコンビニバイト二十日目。

「キャー!ぶつかるぅー!」

ピロリロピロリロ

女の子の高い叫び声が聞こえたかと思ったら、箒に乗ったピンクの人影が、コンビニに突っ込んできた!

「ひっ!?な、何!?」

箒は来店時にピタリと止まり、そこから放り出された人影は、勢い余ってコロコロ転がり、コンビニの壁に激突。
コンビニの床でぐったりと倒れている全身ピンクの...魔法使いみたいなコスプレしてる女の子に恐る恐る近寄る。

「あの...だ、大丈夫ですか?」

「うぅ...だ、大丈夫な訳ないでしょぉ...」

弱々しく答えて、立ち上がる──かと思ったらずっとその場に倒れている魔法使いのコスプレした女の子は、こっちをちらりと見て、

「女の子が倒れているのよ!手を差し出して「お嬢さんお手を貸しましょうか?」でしょー?」

うっわ...。

「何よ!その顔!」

怒りながら普通に自分で立ち上がった女の子は、腰に手を当ててプンスコと怒っていた。

「あたしは天才美少女魔法使いサッコ!あんたは、レディの扱いになれていないのね!いいわよ!気にしなくてサッコみたいな最っ高に可愛い魔法使いに出会っちゃったらウンウン、仕方ないわよ冷静な判断ができないわよねっ!」

全身ピンクの魔法使いはきゅぴーんと目元でピースしてラブリーポーズをキメていた。
緑のマッシュヘアに魔法使いっぽい三角のピンクフリルの帽子、ロリータ風というのだろうか、白とピンクのフリフリのでも魔法使いっぽいワンピースに趣味の悪いマンドラゴラとか、毒キノコとか描かれた缶バッチがいくつかついている。怖い。

背中には、変な色と柄のマスキングテープか何かでぐるぐると巻かれた魔法の杖らしきものを背負っていた。キャラクターのシールとか貼ってるよこの人...。
魔法の杖らしきものそんな風にデコったりしていいの?
よく見たら箒もなんかマスキングテープや包帯?らしきものが巻いてあってデコってある。

「魔法少女...ではなく魔法使い?」

「そうよ!ふっふっふ...」

ドヤって笑う割にファッションのセンスが俺みたいな常人には理解できない領域だ。俺こんな人原宿の特集の時テレビで見たぞ。

「俺ファッションとかよくわかんないんですけど、そんな風に魔法使いの杖とかデコっちゃっていいんですか?」

「男の子にはわかんないわよね!これはさぶかるファッションっていうの!ハラジュクを歩いていたら色んな女の子から声をかけられて、このファッションで人気者になったわ!サッコはファッションセンスがまじやばいらしいわよ!スターの素質があるのよ!すごいでしょー!ふっふっふ」

最近の女の子はわからないけどそのまじやばいってダサいの方なのか、可愛いの方なのかよくわからないな。
俺はこの子の格好にやばいとしか言えないけどもしかして他の人も同じ気持ち?

「喋ったら喉乾いちゃったー!飲み物買おっと」

そういや魔法使いサッコ...どっかで聞いたような気がする。
そういや...どこで聞いたんだっけ。アニメでそんなキャラいたっけ。

「はーい!可愛いサッコには~いちごみるくが似合う~☆」

いちごみるくを持ってくるりとターンしてレジにきた魔法使いサッコさんは、小さい気持ち悪い立体的なゴブリンの形のポシェットを出すと、口の中から小銭を取り出した。気持ち悪!

「はーい!お金」

あっ、ちゃんとお金払えるんだ。

「サッコはこっちの世界に来て雑誌のモデルとかやってるからね!えっへん!」

ん?こっちの世界...?ん...?あっ、あっー!!

「もしかして、勇者の愉快なパーティの仲間の一人?全身ピンクの魔法使いサッコ!?さん?」

「勇者?え?あんた勇者と知り合いなの?」

ここに来て初めて勇者パーティの一人と出会うことができた、勇者に連絡しなくちゃ!

「他のお仲間さんは?」

一応勇者の為に色々と聞いておかないとな。世界は狭いな。まさかこんなに早くお仲間がコンビニにくるとは。

「あぁ、いるわよ。三人で一緒に住んでるの。勇者とだけサッコ達は別れて三人は一緒にこっちに来たから」

「そうなんだ...よかった。勇者が前に君達がコンビニに来たら教えてって」

三人既にいるなら話は早い、三人とも勇者に会わせることができる!

「あぁ...そうなの。勇者がねぇ、まぁ、どっちでもいいけど...」

勇者には興味がないというように目をそらす魔法使いサッコさんに、少し違和感があったが、それより俺はさっきまでのぶりっ子キャラがブレブレなサッコさんに違和感を抱いてそれどころじゃなかった。さっきまでのぶりっ子はキャラだったんだ...。

ピロリロピロリロ

「おいおいてめー!どこに行ってたんだよ!」

薄紫色の短髪のいかにも男の子のような容姿だが、声が女性らしい全身赤い鎧を着た女騎士がズカズカと店内に入ってきた。

「夜の散歩よ?アイリス。あんたこそ何でこんな所に来てんのよ?」

「あー?夜の散歩だぁ?いっつもこんな所来ねーだろ。さっさと帰るぞ!こら!」

口の悪い赤い鎧を着た女騎士はサッコさんの手を引いた。

「あんたのいびきがうるさいから外に出て箒の練習してたらこのコンビニに来ちゃったのよ

「あーん?あたしのいびきがうるさいって...おいおい冗談だろ?お前自分の寝言のうるささ知らねーのか?何て言ってるか教えてやんよ」

女騎士アイリスさんは、鼻をつまんで

「あたしを迎えに来てくれる王子様...ついに会えたわ!素敵!サッコにキスして魔法の馬車で魔法の国へ連れて行って~うふへへふへへ」

最後の笑い方でちょっと不意打ちで笑いそうになったがサッコさんの為に必死に耐える。

「いやなーにが魔法の国だ。おめーは魔法使いじゃねーかっつーの!魔法の馬車を出す方だっつーの。ぷぷ」

やめろ。可哀想だろサッコさんが...ぷぷ。

「そんな気持ち悪い笑い方してないわよ!あんたねぇ...いいわよ!あんたのいびきの真似してあげましょうか?こんなんよ」

顔を真っ赤にして地団駄を踏むサッコさんは、大きく手を広げて、精一杯口を開き、大地を踏ん張った。

「ぐぅおおおおおお!!ぐぉおおお!ぐおぉおおおお!!ぐぅぉおおお!!」

ガタガタガタッ!!休憩室から物凄い物音がして、そうっと店長が扉から俺を除いた。

「ひっ!今の音はなんだぃ!?獣の鳴き声みたいな音がしたけど!?」

めっちゃ店長びっくりしてんじゃん!やめて!店長の安らかな安眠を妨げないで!

「だ、大丈夫ですよ...くっ...くっくっ店長。何も聞こえませんでしたよ?きっと夢だと思います」

本当...やめて。笑っちゃいけないんだろうけど、本当に面白かった。やめてほしい。

「フゥ、本当かい?夢か...何だ、疲れてるんだな寝るか...」

店長がパタリと扉を閉めた後、女騎士アイリスさんが吹き出した。

「ヒィーッ!!ヒッヒッー!何だよお前さっきの!!やばすぎだろ!!あはっはあはははは!!!」

「むむむむむ!!むうー!!絶対許さないんだから!何よ!!あんたのいびきあんな感じなんだから!」

涙目で顔を真っ赤にして怒るサッコさんに、さらに追い討ちをかけるように爆笑が止まらないアイリスさん。

「流石にあれはねぇだろ!!!ヒッー!あははは!!店員さん...くっぷっくくく起きてきちゃってたじゃん!!あはははは!!」

「な、なっ!何よ何よ!あんた!あんたも何か言ってやりなさいよ!」

突然俺に振られて困惑していると、

「お、お兄ちゃん?サッコの代わりにぃ、このがさつ赤メスブタに反撃してほしいなぁ~?」

「誰が赤メスブタだ。サブカルピンクゴリラ」

二人はつかみ合いの喧嘩を始めた。
喧嘩するなら外でやってほしいが女の喧嘩は怖いので俺は何も言えない。
ただ、サブカルピンクゴリラは本当にネーミングセンスがずば抜けてると思うので笑いそうになる。

「にゃあ!お兄ちゃ~ん?お兄ちゃんはサッコの味方だよね?」

可愛く猫のポーズをとって猫なで声で俺を味方につけようとするサッコさんに、

「いや、俺妹いるんで」

「真顔でマジレスしないでよ!馬鹿ぁあ!」

「へん!そこのお兄ちゃんを味方につけようったってそうわいかねぇぜ!もう化けの皮なんて剥がれてんだろ。ぶりっ子ピンクゴリラめ!」

「誰がぶりっ子ゴリラよ!いびきうるさいがさつ赤鎧メスブタ!」

「そのまんまじゃねぇか!ったく、起きたらいねーから心配して町中探してやったってのによ!そんなひでぇ事言われるとは思わなかったぜ!」

ぽりぽり頭をかいてぶっきらぼうにいうアイリスさんに、顔をぼっと真っ赤にしてサッコさんは、目をそらした。

「...は?何よそれ...ば、バッカじゃないの?あんた?その..サッコだって、あんたが箒で空飛んで見たいっていうから、サッコ...空飛ぶの下手だから。練習してただけなんだから」

「は、はぁ?そ、そんなの昼にやりゃいいだろ?」

「こ、こっそり練習してあんたを驚かせたかったの!上手く行かなかったけど...」

「あ、あぶねえだろうが!深夜に一人で練習したりして!こんな時間に!馬鹿じゃねぇのか!まだ上手く乗れねえくせに!」

「上手く乗れるようになるもん!上手く乗れたら...アイリスをびっくりさせようって、思ってたんだから...」

「ったく、お前って奴は...」

へへと笑い合う2人。何この2人...何この気持ち。何この雰囲気。俺いたらダメ?空気になるよ今から。空気かなもう。二人の世界だもんもう既に。

ピロリロピロリロ

「あらあら~深夜にこんな所で何してるの貴方達~?」

「ヒッ!」

「ヒッ!」

二人はビクッと体を震わせズザッと二人同時に声のした方に正座した。

来店してきたのは、白髪三つ編みの薄緑色のネグリジェ姿の緑と黄色のオッドアイの女性。恐らく、いや確実にこの人シスター服着てないだけで緑と黄色のオッドアイシスタークレアさんだ。
物騒な鞭を持ってにっこり暗黒微笑を浮かべ、正座した二人にあくまで優しく語りかけていた。

「あら?私は、こんな時間に、部屋を抜け出して、何をしていたのかと、聞いていたのよ?」

「ごめんなさい!もういびきうるさくしません!」

「ごめんなさい!もう夜に寝言言いません!変な笑い方しません!」

 二人で震えながら必死に謝っている。どういう状況なんだこれ...。

「人様にご迷惑をおかけしてないでしょうねぇ?」

俺をカエルを視界に捕らえた蛇のような目でちらりと見るクレアさんに、捨てられた子犬のような目で俺を見るアイリスさんとサッコさん。

「迷惑なんてかけられてませんよ。大丈夫ですよ」

にっこり笑うと、アイリスさんとサッコさんは、祈るように安らかな瞳で俺を見ていた。
まるで神にお祈りをお祈りをしているシスターのようだった。

「そうですか...よかったですわ。わたくしはクレアと申します。二人が失礼いたしました。それでは」

にっこり笑って二人の首根っこを掴むと、引きずるようにサラッと店外に連れて行こうとするクレアさんに、

「あの...!」

俺は勇気を出して声をかけた。

「どうされました?」

綺麗な声で振り返り微笑むクレアさんに、

「勇者が、勇者さんが、皆さんに会いたがってましたよ!」

一瞬の沈黙。
そりゃ嬉しいよな。仲間に会えるんだもん。仲間が、会いたがってるんだもんな。

クレアさんは、ゆっくりと振り返り微笑んだ。

「そうですか。わたくし達は会いたくありませんとお伝えくださいまし。それでは御機嫌よう」

二人をずるずる引きずって外に出たクレアさん。

...仲間にあんな風にあっさり会いたくないと言われるって、勇者お仲間さん達に何したんだよ。あのポンコツ勇者じゃあ、なんとなく色々やらかしてそうだとは思うけど....。

クレアさんを怖がってる二人の様子じゃあ、勇者に会いたいなんて言えないだろうし、勇者とあの人達が会うことはこの先あるんだろうか?
一応勇者の動画のコメント欄にお仲間来たよ。とだけ伝えておこうかな。
そうだ、一応もしエルフメイドさんが来店して来たら、クロノアさんが来たという事だけは伝えておきたい。

──そういや最近魔王達来ないな。
何してるんだろ。
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