深夜のコンビニバイト始めたけど魔王とか河童とか変な人来すぎて正直続けていける自信がない

ガイア

文字の大きさ
69 / 96

深夜のコンビニバイト六十九日目 デュラハン来店

しおりを挟む
深夜のコンビニバイト六十九日目。

ピロリロピロリロ。

「いらっし.....うわぁ、うわぁあああ!!!!!」

思わず叫び声をあげていた。深夜に張り裂けんばかりの大声を。
全国で働いている全てのコンビニ店員さんに問いたい。
深夜に来店してきたお客様の"首から上"がなかったら、どうするだろうか。
俺は、叫んでとりあえずレジの下に隠れた。

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い何で頭ない!?頭何でない!?
恐る恐るレジから首を出し相手の様子を伺おうと顔をそうっと出すと、レジ前には既に頭のないお客様がこちらを見下げていた。
いや、見てないけど!!頭ないから!!

「ひぃいいいいい!!!!!!」

そのお客様は、何か手に持っていた。
潤んだ目ででそれを確認すると、それはスケッチブックだった。
ペンで小さい、女の子らしい字でこう書いてあった。

「わたしの頭、しりませんか?」

いや知らん!!!!!怖い!!!
どんなホラー!?首から上のない人に頭知らないか聞かれるなんて今まで生きてきて初めてだしこんな事が起きるってここまで生きてきて思いもしなかったよ!!

「と、当店ではご取り扱いしておりません.....」

震え声でなんとか声を絞り出す。純粋に俺はお化けが怖いとか心霊系が怖いとかそういうのでなく純粋に首から上のないお客様がコンビニに来たら、怖い!!

「そうですか」

カリカリと、さっきと違って控えめな執筆音。ショックを受けている事が小さな文字から伝わってくる。
そもそも耳ないのに何で声聞こえてるのこの人。

「お騒がせしました」

また丸っこい女の子らしい文字でサラサラと書くと、首から上のないお客様は俺にくるりと背を向けた。
もしかしてこのお客様、ただ頭を探してるだけでそんなに悪い人じゃない?

「あ、あの!」

思わず呼び止めてしまった。レジ台から顔を出し、体まで出してしまった。
お客様は、黒いカーディガンにオレンジの秋らしいスカートを着た素朴な文学少女というような出で立ちをしていた。
首から上がないのに、滲み出る清楚さと純粋さから彼女の頭はきっと美しいのだろうという事は容易に想像できてしまう。
歩き方から大人しい性格が滲み出ていた。

「?」

はてなが小さくスケッチブックに描かれる。

「頭、ど、どこで無くしたんですか?」

頭のないお客様は、パンと嬉しそうに手を叩き、ガリガリとスケッチブックに書いた文字を俺の目の前にバンッと見せた。

「一緒に探してくださるのですか?」

「は、はぁ。まぁ、頭がないとこの先生きていくのに困りますよね」

そもそも頭がないのにどうして生きていられるんだ。

「わたしは、デュラハンなので頭がなくても基本的には生きていけます。でも、やっぱり頭がないとこうして筆談になりますし、デュラハンは食事をしなくても生きてはいけるんですが、食欲の秋という事でやっぱり今は食べ物も美味しい時期じゃないですか。わたしは食事を楽しみたい。だからこの姿じゃ色々不便なんですよね」

食欲の秋の話よりもっと大事な事があると思う。

「頭を無くしたのは、この辺...コンビニ付近だと思うんですが、どこを探しても見つからなくて...コンビニに頭が落とし物として届いてないかなって」

いや頭がコンビニに落し物として届いたら俺は届けた奴を現行犯で通報するんだけど。

「頭を落としたのは何でなんですか?」

「...焼き芋が美味しくてよく覚えてないんです」

てへへと、もじもじするデュラハンさん。
だめだこりゃ俺は頭を抱えた。

でもこのままだとこの付近で生首発見。バラバラ殺人か!?とか言ってニュースになりそうで怖いな。それで頭が押収されたらもう二度とデュラハンさんの元へ頭が戻る事はないだろう。

「早く探さないと!!」

「無くしたと気がついてからこの辺を探したんですけどなかなか見つからなくて。頭が近くにないと記憶力がガクンと落ちてしまうので...早く見つけたいんですけどね」

「いやその格好で探し回ったんですか!?」

「いいえ、ちゃんとその時の為に被り物をしていたんです。大きな首のマネキンを空洞にして被せたんですよ。でもそれもなくしちゃって」

「どうして無くしたんですか?」

嫌な予感しかしない。

「カスタード味のたい焼きを買った所までは覚えてるんですけど、あっわたし食べられないじゃん!って。それで...わたしどうしたんでしたっけ...よく覚えてなくて。頭もいつのまにかなくなってて」

もうこの人だめだ!!!!可愛いけどだめだ!!!!頭部に対しての危機意識がなってない!!!というか本当にそのたい焼きどうしたの!その話の行方がめちゃくちゃ気になりすぎるんだけど!!

「もうそれスペア見つけても無くしちゃいますよ」

俺が諦めたように言うと、焦ったように怒ったようにデュラハンさんは手でジタバタとそんなことない!とジェスチャーした。

「そんな事ないです!つ、次から肌身離さず.....」

スケッチブックに筆圧の濃い字で書かれた文字。今の話を聞く限り心配しかないんだよなぁ。

「うぅ...今日は一旦帰りますぅ」

肩をがっくりと落とすデュラハンさん。
不憫だが、こればかりはもうドジというかおっちょこちょいというか、心配になるけど仕方ないな。
入り口あたりまでついていって、

「ま、まぁまぁそのうち見つかりますよ」

首だけで頷くデュラハンさんを励ましながら、一緒に外に出て──。

「あ.......あど.....」

出入り口で、いつぞやのフランケンシュタインさんが待ってましたというように、飛び出してきた。

「あ!フランケンシュタインさん!!どうしたんですか?」

「あ....あど...あど...これ」

フランケンシュタインさんは、後ろ手に隠していた"女性の頭部"を俺達に差し出した。

「!!!!!?!?!!?!?」

俺は声にならない声を上げて何も言えなくなった。固まった。思考が停止した。

「これ...わたしの頭」

スケッチブックにサラサラと書かれる感動を露わにした文字。両手でそっと整った顔立ちの黒髪ショートヘアの頭を受け取るデュラハンさん。

「お.....ひ...るの...ど..ぎ..だい....やぎ...ぐ.......れだ。ご....まっ....でだ....ざ....がじだ」

頭がなくて食べられなかったカスタード味のたい焼きをどうやらフランケンシュタインさんにあげたらしい。

「いや、それはわたしが食べられなかったからで...あっ!思い出した!!あなた公園で焼き芋を焼いていた!!」

デュラハンさんは、頭が戻ってきたので首に装着してスケッチブックではなく自分の口で喋っている。

「.....ご...どぼ...だぢに....やいで...だ..やぎい...ぼ...お...いじ...ぞ...に...だ...べで...だ...」

「本当に美味しかった!!ありがとう。そっか、その時にわたし、もしかして首を置いてきてしまったの?」

「.....ぞ...う...ぞ...のあど....あだだを....ざがじ...だ。みづ....げだ...ら、だい...やぎをぐ...れで...ぞのまま...いぞいで..はじっで...いっで...わだぜな...がっだ」

「うん、あの時物凄く急いでたから...ありがとう!よかった!ありがとう」

デュラハンさんは、フランケンシュタインさんの両手をそっと握って微笑んだ。

つまり、デュラハンさんはフランケンシュタインさんが子供達のために焼いていた焼き芋を食べている間に頭部をなくし、それをフランケンシュタインさんが発見した。
デュラハンさんに届けようとしたが、自分では食べれないカスタード味のたい焼きを渡された後急いで自分の首を探しに行ってしまった彼女に、渡す事ができず今まで彼女を探し回ってやっと見つけたって感じなんだろうか?
再会できたことは良かったが、これまた──。

「よかった。焼き芋また食べに行きますね」

にっこり笑うデュラハンさんに、フランケンシュタインさんは俯いてコクリと頷いた。

おいおい、またその焼き芋食べてまた頭忘れたりしないよなこの人...。
しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました

東野あさひ
ファンタジー
無能の烙印、婚約破棄、そして辺境追放――。でもそれ、全部“勘違い”でした。 王国随一の名門貴族令嬢ノクティア・エルヴァーンは、魔力がないと断定され、婚約を破棄されて辺境へと追放された。 だが、誰も知らなかった――彼女が「古代魔術」の適性を持つ唯一の魔導士であることを。 行き着いた先は魔物の脅威に晒されるグランツ砦。 冷徹な司令官カイラスとの出会いをきっかけに、彼女の眠っていた力が次第に目を覚まし始める。 無能令嬢と嘲笑された少女が、辺境で覚醒し、最強へと駆け上がる――! 王都の者たちよ、見ていなさい。今度は私が、あなたたちを見下ろす番です。 これは、“追放令嬢”が辺境から世界を変える、痛快ざまぁ×覚醒ファンタジー。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

白苑後宮の薬膳女官

絹乃
キャラ文芸
白苑(はくえん)後宮には、先代の薬膳女官が侍女に毒を盛ったという疑惑が今も残っていた。先代は瑞雪(ルイシュエ)の叔母である。叔母の濡れ衣を晴らすため、瑞雪は偽名を使い新たな薬膳女官として働いていた。 ある日、幼帝は瑞雪に勅命を下した。「病弱な皇后候補の少女を薬膳で救え」と。瑞雪の相棒となるのは、幼帝の護衛である寡黙な武官、星宇(シンユィ)。だが、元気を取り戻しはじめた少女が毒に倒れる。再び薬膳女官への疑いが向けられる中、瑞雪は星宇の揺るぎない信頼を支えに、後宮に渦巻く陰謀へ踏み込んでいく。 薬膳と毒が導く真相、叔母にかけられた冤罪の影。 静かに心を近づける薬膳女官と武官が紡ぐ、後宮ミステリー。

後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜

二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。 そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。 その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。 どうも美華には不思議な力があるようで…?

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

処理中です...