深夜のコンビニバイト始めたけど魔王とか河童とか変な人来すぎて正直続けていける自信がない

ガイア

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深夜のコンビニバイト七十四日目 忍者来店

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秋バージョンの、魔法少女プリプリハルミャン(ブルマバージョン)頑張れハルミャン運動会!の一番くじがレジの前に並んでいた。
A賞は、ブルマのハルミャンが、屈伸運動をしているフィギュア。
本当に人気なんだな、ハルミャン。
秋バージョンも出るなんて。

こうなると当然──。

ピロリロピロリロ。

深夜のコンビニバイト七十四日目。

「いらっしゃ、うわぁあ!?」

なんていうことだろう。
桃太郎が、また気持ち悪い笑みを浮かべながら来店してくると思っていた。
だが違った。
黒い影が一瞬にして入り口からコンビニの中へ。
俊敏な動きのまま、漫画雑誌の方へ影は吸い込まれていき、レジ前で突如バラバラバラと積み上がった分厚い漫画雑誌達に、俺は今の状況を理解するのにかなりの時間を要した。

「.....」

レジに置かれた漫画雑誌達。
置いたお客様は、俺の目の前にはいない。

「え!?あの、お客様?」

コンビニを見回しても、いない。返事もなかった。
ただ、一瞬で黒い影がレジ前に漫画雑誌を積み上げた。
積み上げた相手は帰った様子はなかった。
入り口の扉の閉開はしてない。
なんだったんだ、とりあえずレジ打って良いのか?

「え、えっと、268円」

ピッ、ピッ、と打っていく。五種類の週間少年、青年雑誌。
これ全部読むのか?俺も中学の時とか集めてたけど、結局読まなくなって母さんが廃品回収に出してたな。
めちゃくちゃこれ分厚いしかさばるし、本棚に入らないし、結局倉庫に行く事になるんだよな...でもたまに読み返したくなったりして。
でも流石に五種類も読んでると毎週買い集めたとしたら一ヶ月ですごい量になるぞ。
管理とかどうしてるんだろうか。

全部打ち終わり、コンビニを見回す。
誰もいない、シンとした店内。

「え、えっとお会計は──」

ジャラリと音がして、釣り銭トレイにお金が現れた。
お金が置かれたのではなく、突然お金が現れた。何!?もはや心霊現象なんだけど!?やだ!
不気味なお客様に、俺は目を泳がせながら、いや、目を溺れさせながらばっしゃばっしゃさせながら泣きそうな声で、でもしっかりと、

「ありがとうございます...ちょうど、お預かり致します」

ちゃんとレジ店員としての責務を果たした。透明なお客様に接客してるみたいだ。怖い。
今まで変な客ばっかりだったけど、対話もせず、虚空に話しかけ、お金が突然現れたのは初めてだった。

「あの、袋は」

五冊の分厚い漫画本だ。これを抱えて持って帰るのだろうか。
積まれた五冊を持ってみるが、結構、いやかなり重いぞこれ。

「え」

刹那、黒い影がレジ前を横切ったかと思ったら、俺の手に持っていた五冊の漫画雑誌が消えた。
消えて無くなった漫画雑誌のあった両手を握ったり開いたり。ない、あったはずのものがない。
怖い、怖い怖い。消えたんだけど何!?

それで終わりかと思った。
この心霊現象は、さらに続いて行く。

気がついたら、パサパサと釣り銭トレーに、ハルミャン一番くじの、くじが漫画雑誌と同様に5枚乗っかっていた。

「い、いつの間に!?なにこれ、え!?さっきはなかった...もしかして引くの!?」

どうやら、今回のお客様はハルミャンくじをご所望らしい。

「まさかあんた桃太郎か!?おい!こんな事やめろ!善良なコンビニ店員を深夜に脅かしにくるのやめろ!!」

返事はない。虚空に向かって叫んでるいたい人だ。もうやだ桃太郎だろ絶対これ。

ドンとくじの入った箱をレジに置く。

「ほら!引きに来てくださいよ!流石に秒でくじを引くのなんて」

黒い影が目の前で動き、くじ箱がかすかに動く。
パサパサと音がして釣り銭トレーにパカパカ開かれたくじの紙が置かれていた。

「いやいやいや!?あの一瞬でくじを引いてさらにくじを開いただと!?どんだけ俊敏になったんだよ桃太郎!?」

驚愕しながらくじを確認する。
ハルミャンくじは、A賞からH賞まで。
680円のくじで最低でもラバーストラップがもらえる。
引かれた5枚のくじは、H賞三枚、D賞一枚、B賞一枚だった。
割と満遍なく引かれているような気がする。ラバーストラップ三個はあれだけど。

「合計で──」

ジャラリと音がして、また小銭とお札がお会計丁度で釣り銭トレーに置かれていた。
俺はもう驚かない。冷静に会計してお客様が引いたくじの商品を取りに行く。
そういや景品、A賞と最後のラバーストラップしか見てなかったけどBとDはなんなんだろう。

冷静だった俺は、景品を見て取り乱した。

「まじかよなんだよこれ」

とりあえず持っていく。
B賞のハルミャンのリレーバトン(謎)と、D賞のハルミャンのハチマキ(謎)H賞のハルミャンのラジオ体操ラバーストラップを。

ハルミャンのハチマキってなんだよ、運動会にちなんでって事なんだろうか?
赤いハチマキに、めっちゃメッセージみたいなの書いてある。
内容的には、ハルミャンのハチマキを巻くと、女の子にモテモテだよ♡など。
占い師の「このブレスレットを買うと女性にモテモテになります」に、近いものを感じる。
あとハルミャンのリレーバトン。これも赤いバトンに黒いペンでイラストとかメッセージが書いてあった。
内容的には、一生受け継いでね、人生のバトン♡うまいこと言うな。あと重い。

レジにそれぞれ置くと、正面のレジ台の下から手がにゅっと出てきてそれらを掴んだ。
今度は消えなかったが、

「ひっ!!?」

俺は恐怖に身が固まった。

「こ、ここここ、ここ、コミュ症故、ま全くその、あの、貴殿の前にでれず、その、すす、すすすすまなかった」

どもりながら、小声で精一杯伝えてくれたお客様が何者なのかは、わからなかったが、悪い人ではないのだと思った。

「いえいえ!最近はびっくりしましたけど、でも、こうして伝えてくれて、ありがとうございます」

なんだ、普通にいい人じゃないか。
コミュ障なだけだって、だからあんな動き早かったのすごすぎだろ。

「ば、ばば、ばバトンは、すす、すぃ、すいとんの術に、は、はちはちはち、ハチマキは、にに、大事な任務の日に巻いて、ら、らららラバストはお守りにするでござる。ま、まま漫画を入れる風呂敷に、い、いち、いっこ一個つけるでござる。ふ、ぐふ、ふふふハルミャン、嬉しい」

ボソリと聞こえたその声に、反応しようとした時には、

ピロリロピロリロ。と音がしてお客様は去っていった。
ござる、すいとんの術、それらの少ない情報で導きだした今回のお客様の正体。

「もしかして、忍者?」

オタク....忍者?
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