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深夜のコンビニバイト七十七日目 番外編運動会前編
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深夜のコンビニバイト番外編 雲子の運動会前編
村松家は、家族行事があると張り切る。
「雲子、お弁当は期待しててね。運動会、いってらっしゃい」
「ありがとう、母さん」
そう言って無表情で雲子にグッと親指を立てるのは、村松雪穂(むらまつゆきほ)俺の母親だ。年齢よりかなり若く見られ、高校の時も晴のお母さんは美人だと言われた自慢の母さんだ。
あまり表情の変わらないところは小雨に似ていて、長くて綺麗な黒髪を一つ縛りにしている。雲子の綺麗な黒髪は母さん譲りだろう。
「そうだぞ~ママは、今日朝の三時に起きて雲子の為に張り切ってお弁当作ってたからな」
「ば、馬鹿...言わないでよ。パパったら」
隣でニコニコ微笑む、優しさが全身からにじみ出てるこの人は、村松太陽(たいよう)、俺の父さんだ。
父さんは、人柄がよく誰にでも優しい。
友達がとにかく多く、変わった人や好かれやすく常に俺の家には色んな人が父に会いに来る。名前の通り太陽のような人だとよく言われているそうだ。
「ハッハッハッ、全くママは可愛いなぁ」
さりげなく、父さんは母さんの肩に腕を回す。
「パパだって、今日も格好いいよ...」
そっと父さんに寄り添う母さん。
「いってきます」
雲子は、慣れてるというようにくるりと二人に背を向けた。
鬼夫婦の二人よりは母さん達の方がまだマシだろう。ぽむぽむきっちょむじゃなくてママとパパだからね。うん、大丈夫。
俺達は村松家の子供達は常にこんな感じの二人を常に見ながら、愛のある家庭で愛のある生活を過ごしている。
「お兄ちゃん、今日頑張って来るね」
雲子は、力強い視線を俺に向けた。
「うん、頑張ってこい」
「お、お兄ちゃん...あの、あのさ、私、選手リレーに選ばれた話は、したよね?代表で、もし一位が取れたら、私のお願い一つ聞いてくれる?」
「あぁ、何でも聞いてやるよ。頑張っておいで」
「.....うん!」
なんとも言えない光悦な表情を浮かべた雲子は、家を後にした。
とりあえず小雨を起こしてから、雲子の運動会へ行こう。
高校の運動会。
俺と、雲子は同じ高校だ。
懐かしいな、高校の母校は。でももう俺は21だ。知ってる先生なんていないんだろうな。
それに、妹がこの年で一緒に運動会を見に行く俺と同い年くらいの人なんているものなのだろうか?
まぁいいや。同級生には今は色々あって会いたくない。
ただ、過ごしていた高校の校舎、グラウンド、玄関、どこを見ても、懐かしい自分がこの学校で生活していた頃を思い出して、浮かび上がってきて、なんだか懐かしくてなんとも言えない切ない気分になった。
先生がいたとしても会いたくないな。
今何してるの?と聞かれたら...。
「晴!こっちこっち」
父さんが俺を呼ぶ声がして、俺は嫌なモヤモヤを払うように駆け出した。
父さんは早速隣のおじいさんと楽しく談笑している。コミュ力が相変わらず凄まじい、母さんは雲子と一緒にプログラム表を見ていた。
「これより、青波高校運動会を、開催致します」
赤いハチマキを巻き、ポニーテールにした雲子の後ろ姿が見えた。
凛々しく、格好良く、どのクラスメイトよりも目立っていた。
最初の競技は100m走。雲子は選手リレーに出るから出ないようだ。
次は借り物競争。これは雲子が出ていた。
よーいどんとパァンという重い音で始まるスタート。
雲子は、ぶっちぎりで他の生徒を追い抜き一番に借り物のリストが書いてある紙の場所までたどり着く。
「雲子、速いわね」
ほくほくと嬉しそうな母さんと、ちょっと自慢げな小雨が、微かに微笑んだ。
「何でもできるからね雲子お姉ちゃんは」
「いやー、あれがうちの自慢の娘雲子です。可愛いでしょう?」
「いやいやうちの孫も負けてませんよ。湖から湧き出た女神のように可愛らしいですからのう」
父さんは隣のテントのおじいさんとめちゃくちゃ話してる。
それにしても、隣の人達まだ秋っていっても暑いのに、何で皆和服なんだろう。
雲子は、相変わらずの足の速さで何故かこちらまで走ってきた。
「雲子?どうしたの?」
俺達のテントの所まで来ると、
「小雨借りて行くわ!」
「え」
小雨をお姫様抱っこしたかと思ったら、雲子はタッタッタッと相変わらずの軽やかな走りで俺達を後にした。
「一位は、村松雲子さん──同着一位、縫楽莉嘉さん」
「同着!?あの足の速い雲子と同着だと!?」
父さんが声を上げ、雲子と同着一位、縫楽さんの方を見る。
縫楽さんは、俺のバイト仲間で夏休みだけコンビニでバイトしていたらしい。
一回だけ一緒に深夜一緒になって話をした。ギャルっぽい見た目だが、あぁ見えてぬらりひょんの孫なんだそうだ。
縫楽さん、運動できたんだな。
「村松さんのお題は、「可愛い妹」」
小雨は、嬉しそうな恥ずかしそうな表情を浮かべて雲子の隣に立っていた。
「小雨ちゃん!?」
どこかで、天邪鬼君の声がしたような気がした。
「すぐに見つかるお題でよかったです」
いやイケメンすぎんだろ俺の妹。
その横で照れてる俺の妹可愛すぎるだろ。
「一方、縫楽さんのお題は「笛」これは結構難しかったんじゃないですか?」
「イェーイ楽勝☆楽勝☆身内が持ってて助かったわ」
縫楽さんが持っていた笛は、黒光した立派な横笛だった。
あれ待って俺なんかあれに似たの見た事ある気がする。
「久々だな。人の子よ」
隣のテントから聞き覚えのある声がした。
マスクと帽子とサングラスに、黒い着物をきた見るからに怪しい人。だが声は聞き覚えがある。あの横笛の主──。
「覚えているか?烏天狗だ」
「な!?何でこんなところにいるんですか!?」
思わず大きな声を出しそうになったがグッと堪える。
「お嬢を応援に来たんだよ」
「お、お嬢...?」
「うぉおおおおお!!りかぁあああ!!!可愛いぞおおおお!!最高じゃぞおおお!!一位おめでとうおおお!!!!」
父さんがさっきまで話していたおじいさんが感極まり涙を流しながら立ち上がった。おじいさんは、特徴的な形の坊主の頭を隠すためか、帽子をかぶっていたが、ハチマキをおもむろに取り出して帽子を脱ぎ捨て、特徴的な形の坊主頭に「孫命」という白地に赤文字のハチマキを巻いた。ボロボロと涙を流し、高そうな着物に涙が流れ落ちて行く。
父さんも、涙を流して喜んでいる。
「おめでとうございます!お互い娘とお孫さんが一位なんて...嬉しい限りです!」
「最高の孫じゃあ!!!」
「あの、待ってください。確か縫楽さんのお爺さんって.....あの」
俺は恐る恐る立ち上がったおじいさんを指した。
「あぁ、そうだぞ。知らなかったのか?あのお方は百鬼夜行を率いる妖怪の総大将。ぬらりひょん様だぞ」
父さんが、涙を流しながら妖怪の総大将に肩を組んだ。
「お互い愛する家族を応援しましょう!おじいちゃん!」
「おうよ!」
父さん!!!!それおじいちゃんじゃない!妖怪の総大将!!いやいや待って待って待って待って父さんとんでもない人と肩組んじゃってんだよ今!?ねぇ!?大丈夫この運動会!?
村松家は、家族行事があると張り切る。
「雲子、お弁当は期待しててね。運動会、いってらっしゃい」
「ありがとう、母さん」
そう言って無表情で雲子にグッと親指を立てるのは、村松雪穂(むらまつゆきほ)俺の母親だ。年齢よりかなり若く見られ、高校の時も晴のお母さんは美人だと言われた自慢の母さんだ。
あまり表情の変わらないところは小雨に似ていて、長くて綺麗な黒髪を一つ縛りにしている。雲子の綺麗な黒髪は母さん譲りだろう。
「そうだぞ~ママは、今日朝の三時に起きて雲子の為に張り切ってお弁当作ってたからな」
「ば、馬鹿...言わないでよ。パパったら」
隣でニコニコ微笑む、優しさが全身からにじみ出てるこの人は、村松太陽(たいよう)、俺の父さんだ。
父さんは、人柄がよく誰にでも優しい。
友達がとにかく多く、変わった人や好かれやすく常に俺の家には色んな人が父に会いに来る。名前の通り太陽のような人だとよく言われているそうだ。
「ハッハッハッ、全くママは可愛いなぁ」
さりげなく、父さんは母さんの肩に腕を回す。
「パパだって、今日も格好いいよ...」
そっと父さんに寄り添う母さん。
「いってきます」
雲子は、慣れてるというようにくるりと二人に背を向けた。
鬼夫婦の二人よりは母さん達の方がまだマシだろう。ぽむぽむきっちょむじゃなくてママとパパだからね。うん、大丈夫。
俺達は村松家の子供達は常にこんな感じの二人を常に見ながら、愛のある家庭で愛のある生活を過ごしている。
「お兄ちゃん、今日頑張って来るね」
雲子は、力強い視線を俺に向けた。
「うん、頑張ってこい」
「お、お兄ちゃん...あの、あのさ、私、選手リレーに選ばれた話は、したよね?代表で、もし一位が取れたら、私のお願い一つ聞いてくれる?」
「あぁ、何でも聞いてやるよ。頑張っておいで」
「.....うん!」
なんとも言えない光悦な表情を浮かべた雲子は、家を後にした。
とりあえず小雨を起こしてから、雲子の運動会へ行こう。
高校の運動会。
俺と、雲子は同じ高校だ。
懐かしいな、高校の母校は。でももう俺は21だ。知ってる先生なんていないんだろうな。
それに、妹がこの年で一緒に運動会を見に行く俺と同い年くらいの人なんているものなのだろうか?
まぁいいや。同級生には今は色々あって会いたくない。
ただ、過ごしていた高校の校舎、グラウンド、玄関、どこを見ても、懐かしい自分がこの学校で生活していた頃を思い出して、浮かび上がってきて、なんだか懐かしくてなんとも言えない切ない気分になった。
先生がいたとしても会いたくないな。
今何してるの?と聞かれたら...。
「晴!こっちこっち」
父さんが俺を呼ぶ声がして、俺は嫌なモヤモヤを払うように駆け出した。
父さんは早速隣のおじいさんと楽しく談笑している。コミュ力が相変わらず凄まじい、母さんは雲子と一緒にプログラム表を見ていた。
「これより、青波高校運動会を、開催致します」
赤いハチマキを巻き、ポニーテールにした雲子の後ろ姿が見えた。
凛々しく、格好良く、どのクラスメイトよりも目立っていた。
最初の競技は100m走。雲子は選手リレーに出るから出ないようだ。
次は借り物競争。これは雲子が出ていた。
よーいどんとパァンという重い音で始まるスタート。
雲子は、ぶっちぎりで他の生徒を追い抜き一番に借り物のリストが書いてある紙の場所までたどり着く。
「雲子、速いわね」
ほくほくと嬉しそうな母さんと、ちょっと自慢げな小雨が、微かに微笑んだ。
「何でもできるからね雲子お姉ちゃんは」
「いやー、あれがうちの自慢の娘雲子です。可愛いでしょう?」
「いやいやうちの孫も負けてませんよ。湖から湧き出た女神のように可愛らしいですからのう」
父さんは隣のテントのおじいさんとめちゃくちゃ話してる。
それにしても、隣の人達まだ秋っていっても暑いのに、何で皆和服なんだろう。
雲子は、相変わらずの足の速さで何故かこちらまで走ってきた。
「雲子?どうしたの?」
俺達のテントの所まで来ると、
「小雨借りて行くわ!」
「え」
小雨をお姫様抱っこしたかと思ったら、雲子はタッタッタッと相変わらずの軽やかな走りで俺達を後にした。
「一位は、村松雲子さん──同着一位、縫楽莉嘉さん」
「同着!?あの足の速い雲子と同着だと!?」
父さんが声を上げ、雲子と同着一位、縫楽さんの方を見る。
縫楽さんは、俺のバイト仲間で夏休みだけコンビニでバイトしていたらしい。
一回だけ一緒に深夜一緒になって話をした。ギャルっぽい見た目だが、あぁ見えてぬらりひょんの孫なんだそうだ。
縫楽さん、運動できたんだな。
「村松さんのお題は、「可愛い妹」」
小雨は、嬉しそうな恥ずかしそうな表情を浮かべて雲子の隣に立っていた。
「小雨ちゃん!?」
どこかで、天邪鬼君の声がしたような気がした。
「すぐに見つかるお題でよかったです」
いやイケメンすぎんだろ俺の妹。
その横で照れてる俺の妹可愛すぎるだろ。
「一方、縫楽さんのお題は「笛」これは結構難しかったんじゃないですか?」
「イェーイ楽勝☆楽勝☆身内が持ってて助かったわ」
縫楽さんが持っていた笛は、黒光した立派な横笛だった。
あれ待って俺なんかあれに似たの見た事ある気がする。
「久々だな。人の子よ」
隣のテントから聞き覚えのある声がした。
マスクと帽子とサングラスに、黒い着物をきた見るからに怪しい人。だが声は聞き覚えがある。あの横笛の主──。
「覚えているか?烏天狗だ」
「な!?何でこんなところにいるんですか!?」
思わず大きな声を出しそうになったがグッと堪える。
「お嬢を応援に来たんだよ」
「お、お嬢...?」
「うぉおおおおお!!りかぁあああ!!!可愛いぞおおおお!!最高じゃぞおおお!!一位おめでとうおおお!!!!」
父さんがさっきまで話していたおじいさんが感極まり涙を流しながら立ち上がった。おじいさんは、特徴的な形の坊主の頭を隠すためか、帽子をかぶっていたが、ハチマキをおもむろに取り出して帽子を脱ぎ捨て、特徴的な形の坊主頭に「孫命」という白地に赤文字のハチマキを巻いた。ボロボロと涙を流し、高そうな着物に涙が流れ落ちて行く。
父さんも、涙を流して喜んでいる。
「おめでとうございます!お互い娘とお孫さんが一位なんて...嬉しい限りです!」
「最高の孫じゃあ!!!」
「あの、待ってください。確か縫楽さんのお爺さんって.....あの」
俺は恐る恐る立ち上がったおじいさんを指した。
「あぁ、そうだぞ。知らなかったのか?あのお方は百鬼夜行を率いる妖怪の総大将。ぬらりひょん様だぞ」
父さんが、涙を流しながら妖怪の総大将に肩を組んだ。
「お互い愛する家族を応援しましょう!おじいちゃん!」
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