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深夜のコンビニバイト八十四日目 シンデレラ再来店
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深夜のコンビニバイト八十五日目。
ピロリロピロリロ。
「やぁん店長いるぅ?」
くねくねと来店してきたのは、金ちゃんこと、金太郎さんだった。
もう冬に近づいてきたこともあり、ヒョウ柄のジャケットに、黒いニットを着ていた。相変わらず派手な格好だな...。
「いますけど...」
また店長が襲われる。知らせた方がいいのか、店長がいないと言った方がいいのか、でもどうせ嘘ついてもこの人にはバレそうだしなぁ。
「じゃなかった!いつもの癖で♡今日はボウヤの方に用事があるの」
「え?俺ですか」
予想外にも金太郎さんは俺の方を見てにっこりと微笑んだ。待ってくれ俺にそういう趣味はないし、彼女がいるし、俺は一歩後ずさりながら、自分をガードするように体の前でバツを作った。
「ンフフ~そんなに身構えなくてもいいのよ~金ちゃんはボウヤのこと気に入っているけど、食べたりしないから♡金ちゃんはパパに一途だからぁ」
だからパパって誰だ。いつのまにか未婚の店長をパパにするの、やめてくれ。
顔を真っ赤にしながら照れる事言わせないでよぉと頰に両手を当ててくねくねする金太郎さんに、俺は既にげっそりしそうだった。
「で、要件は何ですか」
「ふふ、そうね。今日用があるのは金ちゃんじゃないのよねぇ...ほら、人見知りしてないで、そろそろでてきなさいよぉ」
「え?」
筋肉ムキムキのたくましい体に、身長も割と大きい金太郎さんの後ろからそろろと出てきたのは、黒いタキシードを着て、ブロンドの髪を下の方で一つにくくった青い目のイケメン...いや、あれ。
「シンちゃんよ」
「えぇえええ!?」
あの継母達にいじめられて病みに病んで自殺しにコンビニにきたあのシンデレラさんが、見違えるような紳士的イケメンに変貌していた。
正直顔は西洋系の美女だったから、タキシードを着て髪を縛って男装すると顔が整いすぎてイケメンすぎる。
あのマックと同じくらいイケメンだ。
「どうしたんですかシンデレラさん!」
「シンデレラじゃないわ、シンちゃん!灰かぶりの名は捨てたのよ。そんな名は捨てて、新しくなった新(シン)ちゃんを見て!なかなかイケメンでしょう...」
ダジャレじゃん。
恥ずかしそうにしているシンデレラさん、いやシンちゃんを自分の娘のように愛おしそうに撫でる撫でるというか、手がでかすぎて鷲掴みにしてるみたい。
「し、シンちゃんさんは、何故男装を」
「金ちゃん、スナックを経営してるんだけどね?スナック金太郎で、シンちゃんにも一緒に働いてもらおうと思ったんだけど、やっぱりシンちゃんは綺麗だから、変なお客さんとかきた時に絡まれたりしたら大変だからねぇ、酔って絡んでくるお客さんもいるから。金ちゃんだって、この暴力的なワガママボディを他のお客さんに触られないように毎日必死なの。パパに悪いからぁ」
暴力的なは別の意味でって感じなんだけど...ワガママボディっていうか、喧嘩上等ボディを見て俺は目をそらした。
「はぁ、まぁその」
「あら、ボウヤも今金ちゃんの体エッチな目で見てたでしょぉ」
「最低な誤解はやめてください」
「...ママさんに、手を出したら殺す」
シンちゃんさんは、そこで初めて話したけど、非常に物騒な事を言われた気がするんだけど。
「もぉ、すーぐシンちゃんは金ちゃんの事になると怖い顔するぅ。綺麗な顔が台無しよ?」
メッとウインクする金太郎さんに、シンちゃんさんは、しゅんとして
「ごめんなさい、ママさん。でも、私ママさんが変な目で見られるのが嫌で」
「仕方ないわ、こんなボウヤも魅了してしまう金ちゃんの魅力が悪いの」
茶番はそろそろ終わりでいいだろうか。
「そうそう、用件っていうのはね」
突然ぐりんと俺の方に首を向け、金太郎さんは唐突に、突飛に今日来た要件を口にした。
「シンちゃんに、同い年くらいのお友達を作って欲しいの」
「友達...ですか?」
シンちゃんさんは、眉を下げて金太郎さんの後ろに隠れた。
「あの後シンちゃんのメンタルケアをして、少しずつだけどシンちゃんは明るくなって来てる。お客さんとお話とかも割と業務的な事は出来るようになって来たんだけどね?シンちゃん、やっぱり同年代のお友達がいないから、金ちゃんにべったりなの。金ちゃんは可愛くて嬉しいんだけど...やっぱりそれじゃあ金ちゃんの為にもならないかなって」
自殺するって言っていた顔から、大分柔らかい表情になった。シンちゃんさんは、申し訳なさそうに俯いた。
「私なんかに...と、友達なんて、その、私はママさんがいればそれでいいんです」
「ダメ。シンちゃんは年頃の女の子なんだから、お友達の一人くらい作っていつまでも家で金ちゃんと一緒に韓国ドラマ見る日々から、脱却するのよ!」
捨てられた子犬みたいな顔のシンちゃんさんの頭をまたがしがしと撫でて、
「うちの可愛いシンちゃんを一日、ここに預けてみようと思って。ここならおじさんや紳士のお客さんだけじゃなくて、若い人も来るでしょう?友達はハードルが高いかもしれないけど、ちょっと話したり、一緒にパラパラ踊るくらいの人ができならなって思ってるわ」
いやかなりそれ奇妙な関係なんですけど。友達よりちょっと難しくないか。
そもそも、コンビニはスナックと違ってお客さんとあんまり深く関わったりしないしな──
「シンちゃんは本当にいい子だからきっと皆気に入ってくれると思うわ。パパには許可とっておくからよろしくねん。ボウヤしか、シンちゃんの事情は知らないから、優しくしてあげて」
聖母ゴールドと言われるだけある、まさに聖母のような神々しい母の笑顔で俺に微笑んだ金太郎さん。
この有無を言わさない感じ...そうか、俺は頼まれているんじゃなくて既にもう任されているんだ...。
店長に、どんな手を使ったかあっさり許可をもらった金太郎さんは、
「明日、連れて来るわん。よろしくねぇ」
とうちの子を頼むわよ~というように、可愛く手を振って帰っていった。
ピロリロピロリロ。
「やぁん店長いるぅ?」
くねくねと来店してきたのは、金ちゃんこと、金太郎さんだった。
もう冬に近づいてきたこともあり、ヒョウ柄のジャケットに、黒いニットを着ていた。相変わらず派手な格好だな...。
「いますけど...」
また店長が襲われる。知らせた方がいいのか、店長がいないと言った方がいいのか、でもどうせ嘘ついてもこの人にはバレそうだしなぁ。
「じゃなかった!いつもの癖で♡今日はボウヤの方に用事があるの」
「え?俺ですか」
予想外にも金太郎さんは俺の方を見てにっこりと微笑んだ。待ってくれ俺にそういう趣味はないし、彼女がいるし、俺は一歩後ずさりながら、自分をガードするように体の前でバツを作った。
「ンフフ~そんなに身構えなくてもいいのよ~金ちゃんはボウヤのこと気に入っているけど、食べたりしないから♡金ちゃんはパパに一途だからぁ」
だからパパって誰だ。いつのまにか未婚の店長をパパにするの、やめてくれ。
顔を真っ赤にしながら照れる事言わせないでよぉと頰に両手を当ててくねくねする金太郎さんに、俺は既にげっそりしそうだった。
「で、要件は何ですか」
「ふふ、そうね。今日用があるのは金ちゃんじゃないのよねぇ...ほら、人見知りしてないで、そろそろでてきなさいよぉ」
「え?」
筋肉ムキムキのたくましい体に、身長も割と大きい金太郎さんの後ろからそろろと出てきたのは、黒いタキシードを着て、ブロンドの髪を下の方で一つにくくった青い目のイケメン...いや、あれ。
「シンちゃんよ」
「えぇえええ!?」
あの継母達にいじめられて病みに病んで自殺しにコンビニにきたあのシンデレラさんが、見違えるような紳士的イケメンに変貌していた。
正直顔は西洋系の美女だったから、タキシードを着て髪を縛って男装すると顔が整いすぎてイケメンすぎる。
あのマックと同じくらいイケメンだ。
「どうしたんですかシンデレラさん!」
「シンデレラじゃないわ、シンちゃん!灰かぶりの名は捨てたのよ。そんな名は捨てて、新しくなった新(シン)ちゃんを見て!なかなかイケメンでしょう...」
ダジャレじゃん。
恥ずかしそうにしているシンデレラさん、いやシンちゃんを自分の娘のように愛おしそうに撫でる撫でるというか、手がでかすぎて鷲掴みにしてるみたい。
「し、シンちゃんさんは、何故男装を」
「金ちゃん、スナックを経営してるんだけどね?スナック金太郎で、シンちゃんにも一緒に働いてもらおうと思ったんだけど、やっぱりシンちゃんは綺麗だから、変なお客さんとかきた時に絡まれたりしたら大変だからねぇ、酔って絡んでくるお客さんもいるから。金ちゃんだって、この暴力的なワガママボディを他のお客さんに触られないように毎日必死なの。パパに悪いからぁ」
暴力的なは別の意味でって感じなんだけど...ワガママボディっていうか、喧嘩上等ボディを見て俺は目をそらした。
「はぁ、まぁその」
「あら、ボウヤも今金ちゃんの体エッチな目で見てたでしょぉ」
「最低な誤解はやめてください」
「...ママさんに、手を出したら殺す」
シンちゃんさんは、そこで初めて話したけど、非常に物騒な事を言われた気がするんだけど。
「もぉ、すーぐシンちゃんは金ちゃんの事になると怖い顔するぅ。綺麗な顔が台無しよ?」
メッとウインクする金太郎さんに、シンちゃんさんは、しゅんとして
「ごめんなさい、ママさん。でも、私ママさんが変な目で見られるのが嫌で」
「仕方ないわ、こんなボウヤも魅了してしまう金ちゃんの魅力が悪いの」
茶番はそろそろ終わりでいいだろうか。
「そうそう、用件っていうのはね」
突然ぐりんと俺の方に首を向け、金太郎さんは唐突に、突飛に今日来た要件を口にした。
「シンちゃんに、同い年くらいのお友達を作って欲しいの」
「友達...ですか?」
シンちゃんさんは、眉を下げて金太郎さんの後ろに隠れた。
「あの後シンちゃんのメンタルケアをして、少しずつだけどシンちゃんは明るくなって来てる。お客さんとお話とかも割と業務的な事は出来るようになって来たんだけどね?シンちゃん、やっぱり同年代のお友達がいないから、金ちゃんにべったりなの。金ちゃんは可愛くて嬉しいんだけど...やっぱりそれじゃあ金ちゃんの為にもならないかなって」
自殺するって言っていた顔から、大分柔らかい表情になった。シンちゃんさんは、申し訳なさそうに俯いた。
「私なんかに...と、友達なんて、その、私はママさんがいればそれでいいんです」
「ダメ。シンちゃんは年頃の女の子なんだから、お友達の一人くらい作っていつまでも家で金ちゃんと一緒に韓国ドラマ見る日々から、脱却するのよ!」
捨てられた子犬みたいな顔のシンちゃんさんの頭をまたがしがしと撫でて、
「うちの可愛いシンちゃんを一日、ここに預けてみようと思って。ここならおじさんや紳士のお客さんだけじゃなくて、若い人も来るでしょう?友達はハードルが高いかもしれないけど、ちょっと話したり、一緒にパラパラ踊るくらいの人ができならなって思ってるわ」
いやかなりそれ奇妙な関係なんですけど。友達よりちょっと難しくないか。
そもそも、コンビニはスナックと違ってお客さんとあんまり深く関わったりしないしな──
「シンちゃんは本当にいい子だからきっと皆気に入ってくれると思うわ。パパには許可とっておくからよろしくねん。ボウヤしか、シンちゃんの事情は知らないから、優しくしてあげて」
聖母ゴールドと言われるだけある、まさに聖母のような神々しい母の笑顔で俺に微笑んだ金太郎さん。
この有無を言わさない感じ...そうか、俺は頼まれているんじゃなくて既にもう任されているんだ...。
店長に、どんな手を使ったかあっさり許可をもらった金太郎さんは、
「明日、連れて来るわん。よろしくねぇ」
とうちの子を頼むわよ~というように、可愛く手を振って帰っていった。
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