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深夜のコンビニバイト九十日目 三びきの子豚来店
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深夜のコンビニバイト九十日目。
季節は冬という事で、雪だるまやかまくらを家の前やお店の前に作るというのが流行っている。
テレビを見ても変わった雪だるまが紹介されていたり、大きなかまくらの中で子供達が笑いあっているような光景がよく映し出されていて微笑ましい。
sns映えや、お父さんが子供を喜ばす為に張り切ったりお店側がお客様に見て楽しんでもらう為だったり。
俺の働いているコンビニでは、毎年雪使いの人間国宝と有名な店長が腕によりをかけて毎月クリスマスまでに雪の彫像を作るらしいのだけれど、店長はここ最近インフルエンザでお休みしている。
副店長の張山さんが「仕方ないなぁ!全く仕方ないなぁ!本日の報告も兼ねてゼリーでも買って行ってあげようなぁ!」と喜んで店長のお見舞いにせっせと通ってくれているけれど、やっぱり店長の事は心配だな。
今日は張山さんと一緒に深夜のシフトだった。出勤するなり、休憩室で腕を組んで唸る張山さん。
「どうしたんですか?」
「あぁ、おはよう村松君。いやね、店長が毎年一週間から二週間くらいかけてクリスマスまでにとんでもない雪だるま...っていうか彫像を作るんだけれど、今月はインフルエンザで流石にクリスマスまでに間に合わないって事でショックで更に寝込んでしまってね。お客様も毎年楽しみにしてくれてるからって余計にね」
「成る程...その、俺何かできないでしょうかね」
「ありがとう。大丈夫だよ村松君。店長の体が第一だからな。なんとしても休ませるさ」
店長は俺が見てきた中で割と色んな女性と恋愛フラグが立ってきた気がするけど、なんだこの張山さんの圧倒的正妻感。
俺はレジでただ立っている事しかできないな。店長の悩みや不安の種を少しでも取り除いてあげられたらと思うけど、俺は不器用だし店長の過去作品写真に撮ってあったから見せてもらったけど、市長から表彰されるレベルの「雪解け」とか、「春の芽生え」とか「野生」とかテーマが芸術家のそれの壮大な作品ばかりだしな。何でニホンカモシカとか、トキとか国の天然記念物を雪であんなに繊細に表現できるんだよ。雪解けを何で雪で表現しようと思えるの?店長のハイスペックさには本当に驚かされるよ。
やれやれとふいに外を見る。
雪、大分積もってたなぁ。あれ、外で何か動いてる?お客様かな?
外に出ると、すぐに店内に戻りたくなるような冬の寒さが俺の体を突き抜けた。
でもそんな事を忘れてしまうくらいに目の前の光景に俺は衝撃を受けていた。
三匹の二足歩行の子豚が、前足?いや手?で、せっせせっせと雪で何かを作っている。それは俺もよく知っている──そう、かまくらだ。
ただ、この三びきの子豚のかまくら。一匹一匹個性が違う。
三匹の子豚の中でも一番大きいのが、長兄豚だろうか、この三匹の中でも一番大きいかまくらを作っていた。
怖い事に成人済みの170センチ以上ある俺が一人入れるくらいの2メートルくらいある大きさのかまくらだった。ただ、入口が狭い。完全に一人用だが、大きくて開放感がありそうだった。
次は次兄豚だろうか、兄豚より一まわりくらい小さい豚だった。
この三匹の中でも一番横に広いかまくらを作っていた。
怖い事に成人済みの俺が一人寝返りが打てるくらいの広さのかまくらだった。ただ、高さがこの子豚達が座って天井ぎりぎりぐらいたった。
俺が座ったりしたら突き抜けそうだった。この子豚達だったら何匹も入れそうな広さで団欒できそうだな。
さて、一番小さい末豚はかまくらを作るというより、せっせせっせとどこから持ってきたのか雪かきで雪をかき集めている。これを二人の兄豚と同様にかまくらにするのだろう。兄豚達と違いまだ準備の段階というところが可愛らしいが、何故末豚だけまだ準備段階なのかは言わずもがな。
兄豚達に雪を取られたからだろう。これだけ大きい、広いかまくらを使った兄豚達はこの辺の大量に積もった雪を末豚に分けてあげなかったんだな。
可哀想な末豚はかき集めた明らかに兄豚達より少ないかまくらにはならないような雪を集めてフゥーっやり遂げたと額をこすっていた。
あれ、二匹の兄豚を見て俺は末豚もかまくらを作るのかと思っていたけど、そうじゃなかったようだ。
末豚は、せっせ、せっせと少ない雪をまぁるくまぁるく、雪だるまにしていた。
自分の友達のように仲良く愛おしく愛情を込めるように作る姿に癒された。
だが、末豚は思い出したように立ち上がると二足歩行のままとてとてとどこかへ行ってしまった。
え、どっか行っちゃったんだけど。
兄豚達は末豚がかまくら作りをやめて何処かに行ってしまったというのに然程気にしてない様子で、むしろ先程末豚のかき集めた雪をちらりと見た兄豚達はたたたっと近づいてきてキョロキョロすると、二人で末豚のかき集めた雪を後ろ足でけるようにして崩し平然とホイホイ奪い取って行った。
二匹の豚のかまくらが強化された。なんかシンデレラのお姉さん達にいじめられてるシンデレラみたいだな末豚。
一瞬の犯行で俺は止めることもできなかった。
二匹にちゃんと末豚にも雪を分けてやるように注意するべきか。首をひねるが、これは三匹の子豚の問題で俺はただここに居合わせたコンビニ店員だからな。
しばらくすると車の音が近づいてきた。
こんな時間に、珍しい。今は深夜三時を過ぎている頃だろうというのに。
ライトが眩しい。トラックが、コンビニの駐車場に現れた。
お客様だ!やばい駐車場の雪かき集めて豚がかまくら作ってるところ見られる!!!ニュースになる写真撮られるSNSに拡散されてただでさえやばいコンビニが全世界に認知される!!!!!
トラックが止まり、随分と小さなお客様が降りてきた。三頭身くらいの...二足歩行の、豚...みたいな。いや、末豚だった。いや、なんだこれ。
末豚は、自分の先程集めていた雪の場所を一瞥。何も無くなっているのを見てわかっていたようにやれやれと首を振るともう一度トラックに乗り込んだ。
ライトをピカピカさせると、バックして向きを変えるついでのように、兄豚のかまくらをぶっ壊した。
兄豚は突然の出来事に声にならない鳴き声をあげ、ぺたんと雪に膝から崩れ落ちた。
そして次はお前だ。
と言わんばかりに向きを変え、次兄豚の広いかまくらを手に止まった虫でも潰すかのようにぶっ壊す。
次兄豚は火炙りにされた豚のように雪の上で暴れまわった。
雪の轍ができた駐車場。末豚の止めたトラックの荷台には大量の雪がこんもり乗っていた。
雪が降っていたところに放置したのだろうか。それを雪かきでせっせと下におろし今度はかまくらを作り始めたようだ。
末豚は、かまくらを作る前に一緒にかまくらで過ごす友達を作っていたのだろうか。雪の上で仰向けになって呆然としている二匹の兄豚を見て俺は哀れには思わなかったが、豚の作ったかまくらというのは、今までのどの雪の彫像やかまくらや雪だるまよりおかしくて珍しいものなんじゃないか?と思い俺は寒さで思考まで凍ってツッコむ事を忘れ、あははは!!と笑った。
季節は冬という事で、雪だるまやかまくらを家の前やお店の前に作るというのが流行っている。
テレビを見ても変わった雪だるまが紹介されていたり、大きなかまくらの中で子供達が笑いあっているような光景がよく映し出されていて微笑ましい。
sns映えや、お父さんが子供を喜ばす為に張り切ったりお店側がお客様に見て楽しんでもらう為だったり。
俺の働いているコンビニでは、毎年雪使いの人間国宝と有名な店長が腕によりをかけて毎月クリスマスまでに雪の彫像を作るらしいのだけれど、店長はここ最近インフルエンザでお休みしている。
副店長の張山さんが「仕方ないなぁ!全く仕方ないなぁ!本日の報告も兼ねてゼリーでも買って行ってあげようなぁ!」と喜んで店長のお見舞いにせっせと通ってくれているけれど、やっぱり店長の事は心配だな。
今日は張山さんと一緒に深夜のシフトだった。出勤するなり、休憩室で腕を組んで唸る張山さん。
「どうしたんですか?」
「あぁ、おはよう村松君。いやね、店長が毎年一週間から二週間くらいかけてクリスマスまでにとんでもない雪だるま...っていうか彫像を作るんだけれど、今月はインフルエンザで流石にクリスマスまでに間に合わないって事でショックで更に寝込んでしまってね。お客様も毎年楽しみにしてくれてるからって余計にね」
「成る程...その、俺何かできないでしょうかね」
「ありがとう。大丈夫だよ村松君。店長の体が第一だからな。なんとしても休ませるさ」
店長は俺が見てきた中で割と色んな女性と恋愛フラグが立ってきた気がするけど、なんだこの張山さんの圧倒的正妻感。
俺はレジでただ立っている事しかできないな。店長の悩みや不安の種を少しでも取り除いてあげられたらと思うけど、俺は不器用だし店長の過去作品写真に撮ってあったから見せてもらったけど、市長から表彰されるレベルの「雪解け」とか、「春の芽生え」とか「野生」とかテーマが芸術家のそれの壮大な作品ばかりだしな。何でニホンカモシカとか、トキとか国の天然記念物を雪であんなに繊細に表現できるんだよ。雪解けを何で雪で表現しようと思えるの?店長のハイスペックさには本当に驚かされるよ。
やれやれとふいに外を見る。
雪、大分積もってたなぁ。あれ、外で何か動いてる?お客様かな?
外に出ると、すぐに店内に戻りたくなるような冬の寒さが俺の体を突き抜けた。
でもそんな事を忘れてしまうくらいに目の前の光景に俺は衝撃を受けていた。
三匹の二足歩行の子豚が、前足?いや手?で、せっせせっせと雪で何かを作っている。それは俺もよく知っている──そう、かまくらだ。
ただ、この三びきの子豚のかまくら。一匹一匹個性が違う。
三匹の子豚の中でも一番大きいのが、長兄豚だろうか、この三匹の中でも一番大きいかまくらを作っていた。
怖い事に成人済みの170センチ以上ある俺が一人入れるくらいの2メートルくらいある大きさのかまくらだった。ただ、入口が狭い。完全に一人用だが、大きくて開放感がありそうだった。
次は次兄豚だろうか、兄豚より一まわりくらい小さい豚だった。
この三匹の中でも一番横に広いかまくらを作っていた。
怖い事に成人済みの俺が一人寝返りが打てるくらいの広さのかまくらだった。ただ、高さがこの子豚達が座って天井ぎりぎりぐらいたった。
俺が座ったりしたら突き抜けそうだった。この子豚達だったら何匹も入れそうな広さで団欒できそうだな。
さて、一番小さい末豚はかまくらを作るというより、せっせせっせとどこから持ってきたのか雪かきで雪をかき集めている。これを二人の兄豚と同様にかまくらにするのだろう。兄豚達と違いまだ準備の段階というところが可愛らしいが、何故末豚だけまだ準備段階なのかは言わずもがな。
兄豚達に雪を取られたからだろう。これだけ大きい、広いかまくらを使った兄豚達はこの辺の大量に積もった雪を末豚に分けてあげなかったんだな。
可哀想な末豚はかき集めた明らかに兄豚達より少ないかまくらにはならないような雪を集めてフゥーっやり遂げたと額をこすっていた。
あれ、二匹の兄豚を見て俺は末豚もかまくらを作るのかと思っていたけど、そうじゃなかったようだ。
末豚は、せっせ、せっせと少ない雪をまぁるくまぁるく、雪だるまにしていた。
自分の友達のように仲良く愛おしく愛情を込めるように作る姿に癒された。
だが、末豚は思い出したように立ち上がると二足歩行のままとてとてとどこかへ行ってしまった。
え、どっか行っちゃったんだけど。
兄豚達は末豚がかまくら作りをやめて何処かに行ってしまったというのに然程気にしてない様子で、むしろ先程末豚のかき集めた雪をちらりと見た兄豚達はたたたっと近づいてきてキョロキョロすると、二人で末豚のかき集めた雪を後ろ足でけるようにして崩し平然とホイホイ奪い取って行った。
二匹の豚のかまくらが強化された。なんかシンデレラのお姉さん達にいじめられてるシンデレラみたいだな末豚。
一瞬の犯行で俺は止めることもできなかった。
二匹にちゃんと末豚にも雪を分けてやるように注意するべきか。首をひねるが、これは三匹の子豚の問題で俺はただここに居合わせたコンビニ店員だからな。
しばらくすると車の音が近づいてきた。
こんな時間に、珍しい。今は深夜三時を過ぎている頃だろうというのに。
ライトが眩しい。トラックが、コンビニの駐車場に現れた。
お客様だ!やばい駐車場の雪かき集めて豚がかまくら作ってるところ見られる!!!ニュースになる写真撮られるSNSに拡散されてただでさえやばいコンビニが全世界に認知される!!!!!
トラックが止まり、随分と小さなお客様が降りてきた。三頭身くらいの...二足歩行の、豚...みたいな。いや、末豚だった。いや、なんだこれ。
末豚は、自分の先程集めていた雪の場所を一瞥。何も無くなっているのを見てわかっていたようにやれやれと首を振るともう一度トラックに乗り込んだ。
ライトをピカピカさせると、バックして向きを変えるついでのように、兄豚のかまくらをぶっ壊した。
兄豚は突然の出来事に声にならない鳴き声をあげ、ぺたんと雪に膝から崩れ落ちた。
そして次はお前だ。
と言わんばかりに向きを変え、次兄豚の広いかまくらを手に止まった虫でも潰すかのようにぶっ壊す。
次兄豚は火炙りにされた豚のように雪の上で暴れまわった。
雪の轍ができた駐車場。末豚の止めたトラックの荷台には大量の雪がこんもり乗っていた。
雪が降っていたところに放置したのだろうか。それを雪かきでせっせと下におろし今度はかまくらを作り始めたようだ。
末豚は、かまくらを作る前に一緒にかまくらで過ごす友達を作っていたのだろうか。雪の上で仰向けになって呆然としている二匹の兄豚を見て俺は哀れには思わなかったが、豚の作ったかまくらというのは、今までのどの雪の彫像やかまくらや雪だるまよりおかしくて珍しいものなんじゃないか?と思い俺は寒さで思考まで凍ってツッコむ事を忘れ、あははは!!と笑った。
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