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しおりを挟む目を開けると、そこには見慣れた天井。私はいつの間にか自分のベッドに寝かされていた。ここまで運んでくれたのは恐らくロイだろう。
「…っ」
体を起こすと酷い眩暈を感じた。でも私はロイの状況が気になり、体が悲鳴を上げるのも気にせず、重い体を引きずりながらリビングへ向かう。暗闇に支配された部屋に月の明かりだけが差し込んでいた。ロイと出会った日を思い出しつつ、ソファーにできた毛布の丸いふくらみに声を掛ける。
「ロイ…大丈夫?」
毛布がピクリと揺れた。私の質問への回答はすぐ返されることはなく、待ちきれずにまた口を開く。
「ごめんね…」
「…なぜ謝る…」
私の謝罪にロイの硬い声が返ってきた。重い足取りでソファーのすぐ横まで近づく。
「ロイの異変に気付いたのに止めれなかったから」
そういうと、ソファーから伸びてきた手に手首を掴まれ、力任せにソファーへ引きずり込まれた。気づくと、私はソファーでロイに押し倒されていた。なぜかロイに組み敷かれている。抗議しようと声を上げる前にロイが私に覆いかぶさってきた。
「…っ!」
突然のことに目を見開く。
ドキドキドキ
心臓の音がうるさい。人との接触が久しぶりだからって、これはまずい。何がまずいかというと、いろいろまずい。なんて頭で混乱していると、苦しそうな、ふり絞るような声が耳に届いた。
「…殺す…ところだった…」
ロイが私と視線を合わせようとしてして顔を上げた。その瞳からは雫が一筋零れ落ちた。
「でも死んでないよ…」
「俺は幼少の頃…人を殺しかけたことがある…魔力のなかった両親は俺を恐れ、魔女のところへ預けられた…力がコントロールできるようにって…実際は捨てられたってことなんだが…そこでの生活は酷いもので、奴隷のようにこき使われる毎日だった…力の抑え方なんて教える気なんてサラサラなかったんだ……」
そう言って言葉を切ると、ロイの瞳から堰を切ったように涙が零れた。
「ずっと自分が恐ろしかった。俺がまた誰かを傷つける日が来るんじゃないかって…次は気づかないうちに大切な誰かを殺してしまうんじゃないかと…」
ロイの頬に手を伸ばそうと、手を持ち上げる。明らかにびくついたロイに構わず頬に手を添えた。
私も前世、同じような体験をしたことがある。だからこそ自分を重ねてしまった。
弱弱しく涙するロイ。そんな顔をさせたかった訳ではない。前世では幸せに、穏やかに暮らしてほしい。本気でそう思っていた。私のせいで、私の失敗で彼をまた不幸にしてしまった。そんな気持ちでいっぱいになった私はつい口を開いていた。
「ロイ、あなたを私の弟子にしてあげる。私の持てる知識を授けてあげる。だから、悲しまないで、怯えないで、魔力はコントロールできるんだから」
「エマ…」
ロイの眉が弱弱しく下がる。
「私の弟子になるんだから、中途半端なことは許さないわよ?覚悟してね」
そう言って茶化せば、ロイの顔が近づいてきた。何事かと思って目を閉じれば、おでことおでこをくっつけられた。
「ありがとう、エマ」
温かい雫が私に再び降り注いだ。
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