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レーバンと皇太子の出会い(番外編)
レーバンのもと婚約者2
しおりを挟むエミリアが危険な遊びを覚えて2年が経過し、ドルテア王立学園の3学年になった。
その間、家族にバレることなく、婚約者にも知られることはなかった。
エミリアの火遊びは学園内の中だけだった。
旧校舎は第一王子を始め素行の悪い令息の溜まり場で、良くない噂が広まっていたから常識のある生徒は近づかず、人目のつかない秘密のルートを見つけたので、今までは上手いこと誰にも見つからずにすんでいた。
気づけば第一王子以外にも火遊び仲間は増えていて、エミリアはどっぷりはまったように刺激を楽しんでいた。
もちろん妊娠はご法度だから、避妊薬を飲んで気を付けている。
周りにも気をつけ、普段は貞淑な淑女を演じるのも忘れない。
それでも自分だけでなく、他の人達も楽しんでいるという事実がエミリアを油断させ目を曇らせた。
いつものように第一王子の呼び出しに応じ、この日も激しく堪能したが、誰かに見られているということには気づけないでいた。
それから数日後、そろそろ婚約者とのお茶会の日だなと思っていたら、婚約者からお断りの連絡が来た。
どうしても外せない用事があり、申し訳ないと。
この埋め合わせは必ずするから、暫く会えないかもしれないともきた。
こんなことは初めてだった。
必ず用事の理由、次はいつなら会えるという事が明記されているのに、こんな用事の内容がなく、曖昧に暫く会えないとしか書かれたことはなかった。
小さな違和感はあったが、それでもエミリアはレーバンの事を信じていたので、たまたまだろうと思って深く考えていなかった。
家族もレーバンが生徒会で忙しく後継者としての勉強や執務に追われていることを知っていたので、きっと17才になって成人まであと1年だから、更に忙しくなったのだろうと、軽く考えていた。
けれど、3学年になって半年以上も会いに来ることはなく、クラスも違うからすれ違うこともあまりなく、気づいたら3学年終わり間近になってレーバンから連絡が入った。
やきもきしながらも漸くかと思い、文句でも言ってやろうと放課後、学園内の指定された人気のない場所に向かった。
そこには久しぶりに会うレーバンがいた。
どこか違和感を感じるがエミリアにはわからず、レーバンと向き合った。
「イスペラント帝国の皇太子と仲良くなってね、来年は帝国の帝都学園に留学してこないかと誘われたんだ。だからアルジオ皇太子が帰国すると同時に留学することになったんだけど、知らせるのが遅くなって申し訳ない」
その瞬間、何を言われているのかわからなかった。
ついかっとして叫んでしまう。
「待って!私そんなこと聞いてないわ!それにご両親や私達の家族には許可をとってるの!?」
信じられなかった。
婚約者を置き去りにして隣国に留学するなのて、どうかしているとしか思えなかった。
帝国の皇太子と仲良くなったからといって、婚約者を優先するのが当然だと思ったエミリアは、憤慨してレーバンに詰め寄った。
「両親の許可も、君のご両親の許可も既に了承を頂いているよ。陛下にもね。むしろ繋がりが強化されるなら、1年と言わず多少伸びても構わないとまで言って下さったよ」
「そんな!私とあなたの結婚は学園を卒業して直ぐの予定だったのよ!それなのに……。それに、ドルテア王立学園はどうするの?まだ1年残ってるのに留学だなんて、卒業はどうするの!?」
「それに関しては学園側と相談して1年分を前倒しして試験を受けて合格することで、特別に飛び級として卒業できるようにしてもらった」
「な!まさか……」
「うん、無事に試験をクリアーして、卒業証書ももらっている」
「うそ……何で!?お兄様も知ってるの?もしかして知らなかったのは私だけ?」
「……その、試験が受からなかったら行けなくなるから、合格が確定するまでは恥ずかしくて。君に心配もかけたくなかったから」
レーバンは淡々と言葉を続ける。
最後は少しだけ困ったように眉を下げ、すまなさそうにレーバンは謝った。
あり得ないと思った。
婚約者の自分に内緒で隣国に留学することを決めたのも、勝手に試験を受けて飛び級して卒業証書を既に受け取っていることも。
こんなにも自分をむしろにする人だったのかと、怒りしかわかなかった。
けれど、わめくだけじゃ解決にならない。
落ち着いて、エミリアはいつ帰ってくるのか確認した。
「じゃあ……帰ってくるのは一年後なの?こっちの卒業式にはもう出ないの?」
「向こうの学園の予定だと難しいかな。ドルテア王立学園の卒業式の3ヶ月後くらいになると思う」
「てことは、学園の卒業パーティーは私一人なの?パートナーがいないなんて最悪!!」
まさか、卒業式の時まで戻って来ないとは思わなかった。
一番大事な卒業パーティー。
婚約者のお披露目もかねたパートナーなのに。
これでは一人寂しく婚約者に見捨てられたようにみえるじゃない!
ここまで考えなしとは思わず、怒りが沸々と沸き上がる。
腹が立ちすぎて文句の一つでも言ってやろうかと思ったとき。
「すまない。卒業パーティーには君の家族の誰かに頼んでほしい。そのかわり、戻ってきたら君の言うことを何でも聞くよ」
その言葉で、考え方が180℃変わった。
何でも言うことを聞く。
それはつまり。
「本当ね?約束よ!帰ってきたらいっぱいおねだりしちゃうんだから♪我慢して待ってるんだから当然よね?ふふ、どんなドレスやアクセサリーを頼もうかしら~」
何だ、ちゃんと悪いと思ってくれてるんじゃない。
まぁ、あと一年だし、それまで楽しくばれずに遊べると思えれば損はないか。
それに、一年も我慢してあげるんだから、贅沢なお願い以外にもいろいろお願い事を聞いてもらえるかも♪
現金なもので、エミリアはレーバンの言葉を信じ彼が隣国に行くことを快く許した。
そうして、レーバンはドルテア王立学園の4学年に上がる前に卒業し、イスペラント帝国の帝都学園に留学した。
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