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レーバンと皇太子の出会い(番外編)
レーバンのもと婚約者3
しおりを挟むレーバンが帝国に留学して半年、エミリアはドルテア王立学園の4学年になり、いつものように楽しんでいた。
その間に素行の悪かった第一王子が何人かの貴族令嬢を妊娠させたとして、王立継承権を剥奪の上、嫡男のいない一番身分の高い伯爵令嬢のもとに婿養子として嫁ぐことが決まっていた。
既に、一ヶ月前にこの学園を去って伯爵のもとに送り届けられているらしい。
エミリアはあくまでも本命はレーバンであり、第一王子は火遊び仲間でしかなかった。
王位継承権第一位ではあったが、身分の低い側妃の子で後ろ楯も弱く素行が悪いから、玉座を狙うのはまず無理だろうと判断していた。
だから、妊娠にも気をつけていてし、周りにもばれないように注意していた。
まさか、自分以外に四人と関係して妊娠させていたとは思わなかった。
妊娠していない関係のあった令嬢が他にもいるかもしれないが。
彼は根っからの女好きで快楽さえ楽しめればそれでよかったのかもしれない。
一応自分の立場をわかっているのか、王位を狙うこともなく、婚約者のいない令嬢ばかりを狙っていたようだ。
ただ、エミリアを覗いて。
エミリアを誘ったのは第一王子の気まぐれだったのかもしれない。
けれど、エミリアとしては新しい世界の扉を開けてくれて、この世の快楽を教えてくれたから、特に恨みもないし感謝しているくらいだ。
まぁ、第一王子が一番上手かったから、他の人では物足りなさを感じるだろうが。
とりあえず、もう第一王子はいないし、自分は関係ないからと、忘れることにしたのだが。
その2週間後、エミリアの状況は一変する。
来るものがこないのだ。
一ヶ月を過ぎても月のものが。
考えれば考えるほど思考は絡まり焦りしかなくなってしまう。
改めて振り替える。
もし妊娠しているとしたら、一番可能性が高いのは第一王子だった。
何故なら、前回月のものがきた後に事に及んだのは第一王子しかいないからだ。
第一王子は、最後にした日の次の日に退学処分が決まって、すぐに伯爵家に送られている。
そして、第一王子が貴族令嬢数人を妊娠させたという噂もあっという間に広がったので、エミリアにも火の粉がくるかもしれないと、約一ヶ月はほど大人しくしていた。
それからも、火遊びは再開しても最後まではせず、戯れ程度で終わらせていたのだ。
つまり、ほぼ第一王子の子供で間違いないだろう。
そして、第一王子と閨をしたのは約一ヶ月半前だ。
その日も確かに避妊薬を飲んだのにどうしてと思ってしまう。
第一王子が避妊していなくても、自分は気を付けていたはずなのに。
最初の一回目はなしくずしでされてしまったが、運よく妊娠は免れた。
あの時は月のものがくるまでは恐怖と不安で気が気じゃなかったけれど、無事にきてほっとした。
だから、次からは同じ失敗はしないようにと避妊薬を用意して、妊娠をしないように気をつけていたはずだった。
心配で改めて避妊薬を確認してみれば、100分の1の確率で妊娠してしまうこともある、と注意書きされていた。
え!?絶対防止じゃないのかと、エミリアは絶望した。
それからは、いつバレるかもしれないと怯え、どうすればこの状況を乗りきれるのかと頭をフル回転して考えた。
そうして出した結論!
(レーバンと一晩寝たことにしたら、誤魔化せないかしら?なんとか早産てことにして……)
堕胎も一瞬考えたが、未成年のエミリアには親の同意が必要だし、内緒で医師に見てもらうにしても周りの目を誤魔化すには無理がありすぎる。
貴族令嬢が侍女や護衛のお供もなく外に出歩くのは危険すぎるし。
闇医師……という手もないこともないが、そもそも、そんな知り合いはいない。
それに万が一見つけられても、自身が危険な目にあう危険性が高くなる。
となると、やはりレーバンと閨を共にした、ということにした方が、まだ現実的な気がした。
レーバンはそっち方面には純朴だから、うまく誘導すれば騙せるのではないかと考えた。
だが、その肝心の本人がドルテア王立学園にいないどころか国にもおらず、いるのは隣国の帝国だ。
簡単に行ける場所ではない。
なら、どうするか。
(取り合えず、レーバンに助けを求めてみよう。婚約者が困っているんだもの、あの優しいレーバンなら話を聞いてくれるはず!)
エミリアは早々にレーバンに手紙を書いた。
一時的でよいので今すぐ帰国できないか、結婚を早めることは出来ないか、どうしても両親にも言えない内密な相談があり、この手紙のことも内緒にして欲しいと書いて手紙を送った。
手紙を送るときに、向こうに着くのは2週間かかると言われて更に絶望した。
けれど、返事が一ヶ月後にきたから、直ぐに私を心配して返事を送ってくれたのだと思って、期待して封を開けた。
だが。
『一時帰国は難しいと思う。一応今回の留学には皇帝陛下に特別に許可をもらって、一年間の滞在を許されている。帰国するだけで2週間はかかるのに、一時帰国といえど、いくら婚約者の頼みだとしてもそう簡単に許可はおりないだろう。
それより、どんな悩みかはわからないが、やはり先に自身のご両親に相談してみてはどうだろうか?
婚約者の立場では手を貸せる範囲は限られているし、ご両親の助けを借りた方が良いと思う。
優しいご両親なのだから、信じてみてはどうだろうか?
君が何をそんなに抱え込んで悩んでいるかは分からないが、早く解決できることを祈っている』
という返事が書かれていた。
その内容に、時間がないエミリアにとって怒りが増すのは当然のことだった。
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