婚約保留!?私が貴方に劣るとでも?!!いざ尋常に勝負ですわ!

りっか

文字の大きさ
16 / 18
レーバンと皇太子の出会い(番外編)

事の顛末

しおりを挟む


ケールマン侯爵はまずエミリアを医者に見せ、妊娠していることを確かめた。
既に妊娠5ヶ月目入っていてるようだった。
次に娘が出産する前にドルテア王立学園の卒業式が終わってしまうので、結局行かないまま退学とした。
その事実は大きな噂になりいろいろな憶測をよんだが、ケールマン侯爵もクロックベル公爵も沈黙を貫いた。

そうして同時にクロックベル公爵にも包み隠さず真実を伝え、正式に婚約破棄の書類を揃えて伺った。
当然驚かれたが、最近のエミリアの行動に不安をお覚えていたから、真実を聞いてどこかほっとしたように納得した。
むしろ、クロックベル公爵はケールマン侯爵を心配してくれた。
誠心誠意土下座までして謝罪してくれたのだから、ケールマン侯爵の信頼は疑ってはいない。
それよりも信じていた娘の素行の酷さにショックを受け、精神的に落ち込んでいるのではないかと心配してくれた。
そんなクロックベル公爵の優しさに心打たれて、ケールマン侯爵はだただ感謝した。

だが、娘がレーバンを裏切ったのは事実だ。
だから、慰謝料と業務提携の話をしようとしたが、それはレーバンが帰国してからにしようと言われてしまった。
本人がいない場所で勝手に決めるのもレーバンに悪いからと。
最もな話だったのでそれに対しては了承した。
ただ、婚約破棄だけは親の代筆でその場で行った。
それが最大限の誠意だと思ったからだ。

ケールマン侯爵はそれを直ぐに陛下まで届け、その日のうちに了承してもらった。
陛下はまさかの結果に驚いていたが、自分も第一王子の子育てを失敗しているので、なんとも言えず無言で判子を押した。

それから数日後、レーバンとエミリアが婚約破棄になったことが噂された。
エミリアが学園を退学したこともあって、エミリアが浮気していたのではないかと囁かれた。
けれど、ケールマン侯爵もクロックベル公爵も暫く社交界をお休みしていた為、詳細を知るものはいかった。

が、そのうち何処からか漏れたのか、旧校舎に出入りしていたのではないかと言われ始めた。
そこで複数の男達と戯れていたのではないかと。
出所はとある子爵家の三男からである。

ケールマン侯爵は当然のようにとある子爵家三男の脅迫を拒絶した。
我々は、一切お前に支払う気はない!と。
好きにすれば良いと啖呵を切るように手紙を送った。

その手紙を子爵家の当主が先に目を通したので、怒り心頭で息子を学園卒業前に貴族籍を抜けさせ追い出した。
三男宛に事情を知らずに侯爵家から手紙がきたら、ビックリして思わず確認してしまっても仕方がないだろう。
なんせ素行の悪い三男だ。
三男が侯爵様に何かしてしまったのだと疑ったとしても、当然ではないだろうか。
案の定、侯爵相手に脅迫文を送っていたのだから、肝を冷やすには十分だ。
即座に謝罪の手紙を送り、息子を勘当したとしたためた。

そうしたら、恨みに思った三男があれやこれやと暴露したのだ。
それが瞬く間に広がり、ケールマン侯爵の娘エミリアは醜聞まみれになった。
子爵家の当主はその事実を知って大慌てで放逐した三男を探したが、見つかった時には死体として発見された。

どうやら家を叩き出された後、学園時代に遊んだ女の家に上がり込んでケールマン侯爵家に送りつけたのと同じように脅しをかけて、渡り歩いていたようだ。
結果としてたくさんの恨みを買い、闇討ちされたらしい。
複数の刺し傷があり、根は深そうだった。
容疑者になる可能性の人物があまりにも多く、結局犯人は特定できず、そのまま未解決で終了した。

とりあえず、ケールマン侯爵に再度詫びを入れた子爵だが、返事はお互いに子育ては苦労するなという労いの言葉だった。
それに涙した子爵は、他にも迷惑を被った他家にも詫び状を送って、出来る限りのことをすると書き綴った。
その誠意にほとんどの家と和解が成立し、ケールマン侯爵もそれをサポートしてくれた。
クロックベル公爵も支援に乗り出し、救われた下級貴族も多く存在した。

これを縁に、小さなネットワークが構築されつつあった。
ケールマン侯爵とクロックベル公爵に救われた下級貴族は二つの高位貴族に感謝をし、恩義を感じると共に密かに忠誠を誓う家が続出した。
ケールマン侯爵とクロックベル公爵はまだ知らないことだが、これによってこの二つの貴族が業務提携している仕事に大きな影響を与え、今後の貴族社会における影響力をより磐石なものとした。

こうして、ケールマン侯爵家は何を噂されても沈黙を保ち公然とした態度で受け止めていたからか、一切の言い訳をしない侯爵の態度に、しだいと称賛の声が集まった。

そして、ある程度処理が終わってからイスペラント帝国に留学している、もと婚約者だったレーバンに事の顛末を知らせると共に、謝罪をした。
多分クロックベル公爵からも連絡がいっているだろう。

それから1ヶ月後にレーバンから返事をもらった。
非常にショックだったけれど、話は理解したと。
直ぐに心の整理はつかないけれど、ケールマン侯爵の誠意は伝わったから、あまりご自身を責めないでほしいと気を使ってくれた。
本当に素晴らしい青年だけに、申し訳なさしかなかった。

そして、業務提携はそのままで、慰謝料なども最低限で構わないとまで書かれている。
好青年だけでなく慈悲深くて、さらに頭が下がる思いだ。
だが、その辺は帰国してから改めてそちらのご両親と共に話をさせてほしいと、手紙を送った。
取敢えずは、予定取りの帰国にしてもらい、残りの3ヶ月ほどのんびりしてほしいと伝えた。

この手紙を送る頃には、ドルテア王立学園の卒業式は終わっていた。
クロックベル公爵もケールマン侯爵もどちらも参加していないので、きっといろんな噂話がどひかっているだろうとは予想している。
けれど、今回の経験から多くを学び、こういう時こそ敵味方がよくわかるし、人の本質がよく見えると理解した。
これを切っ掛けに、ケールマン侯爵は付き合う貴族を整理し、同じ価値観、不器用でも誠実さ、優しさ、周りへの気配り、それと失敗したことを素直に反省できる人柄かを見極め、高位も下位貴族関係なく本当に信頼が出来る人達とだけ交流すれば良いと、考えを改めた。
それはクロックベル公爵も同じで、これまで以上に親密に絆は深く結ばれることとなった。

まさに、雨降って地固まる、である。
そしてこれはレーバンとドミニクにも受け継がれ、アルジオも巻き込んで大きな力となっていくが、まだ先の話である。

そして、レーバンが貴国する前にエミリアは無事女の子を出産した。
金髪碧眼の可愛らしい女の子であり、見た目の特徴から第一王子の子供だと認定された。
既に王家には連絡済みで、話し合いも終わらせた。

エミリアが修道院に行くのは子供を生んで体調が回復してからになるが、だいたいレーバンが帰国して一ヶ月後くらいに決まった。

最後に娘と会うかと確認したところ、本人に確かめたいこともあるから会いますと返事が来た。


こうして、レーバンは一年ぶりにエミリアに会うことになったのだった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!

志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」  皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。  そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?  『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!

家の全仕事を請け負っていた私ですが「無能はいらない!」と追放されました。

水垣するめ
恋愛
主人公のミア・スコットは幼い頃から家の仕事をさせられていた。 兄と妹が優秀すぎたため、ミアは「無能」とレッテルが貼られていた。 しかし幼い頃から仕事を行ってきたミアは仕事の腕が鍛えられ、とても優秀になっていた。 それは公爵家の仕事を一人で回せるくらいに。 だが最初からミアを見下している両親や兄と妹はそれには気づかない。 そしてある日、とうとうミアを家から追い出してしまう。 自由になったミアは人生を謳歌し始める。 それと対象的に、ミアを追放したスコット家は仕事が回らなくなり没落していく……。

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

【完結】公爵令嬢は、婚約破棄をあっさり受け入れる

櫻井みこと
恋愛
突然、婚約破棄を言い渡された。 彼は社交辞令を真に受けて、自分が愛されていて、そのために私が必死に努力をしているのだと勘違いしていたらしい。 だから泣いて縋ると思っていたらしいですが、それはあり得ません。 私が王妃になるのは確定。その相手がたまたま、あなただった。それだけです。 またまた軽率に短編。 一話…マリエ視点 二話…婚約者視点 三話…子爵令嬢視点 四話…第二王子視点 五話…マリエ視点 六話…兄視点 ※全六話で完結しました。馬鹿すぎる王子にご注意ください。 スピンオフ始めました。 「追放された聖女が隣国の腹黒公爵を頼ったら、国がなくなってしまいました」連載中!

悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした

ゆっこ
恋愛
 豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。  玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。  そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。  そう、これは断罪劇。 「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」  殿下が声を張り上げた。 「――処刑とする!」  広間がざわめいた。  けれど私は、ただ静かに微笑んだ。 (あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)

《本編完結》あの人を綺麗さっぱり忘れる方法

本見りん
恋愛
メラニー アイスナー子爵令嬢はある日婚約者ディートマーから『婚約破棄』を言い渡される。  ショックで落ち込み、彼と婚約者として過ごした日々を思い出して涙していた───が。  ……あれ? 私ってずっと虐げられてない? 彼からはずっと嫌な目にあった思い出しかないんだけど!?  やっと自分が虐げられていたと気付き目が覚めたメラニー。  しかも両親も昔からディートマーに騙されている為、両親の説得から始めなければならない。  そしてこの王国ではかつて王子がやらかした『婚約破棄騒動』の為に、世間では『婚約破棄、ダメ、絶対』な風潮がある。    自分の思うようにする為に手段を選ばないだろう元婚約者ディートマーから、メラニーは無事自由を勝ち取る事が出来るのだろうか……。

婚約破棄? 国外追放?…ええ、全部知ってました。地球の記憶で。でも、元婚約者(あなた)との恋の結末だけは、私の知らない物語でした。

aozora
恋愛
クライフォルト公爵家の令嬢エリアーナは、なぜか「地球」と呼ばれる星の記憶を持っていた。そこでは「婚約破棄モノ」の物語が流行しており、自らの婚約者である第一王子アリステアに大勢の前で婚約破棄を告げられた時も、エリアーナは「ああ、これか」と奇妙な冷静さで受け止めていた。しかし、彼女に下された罰は予想を遥かに超え、この世界での記憶、そして心の支えであった「地球」の恋人の思い出までも根こそぎ奪う「忘却の罰」だった……

処理中です...