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第三章 『嫌な展開』
ついに幕開け! 夏休み!
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「……のため、まず健康を第一に──」
担任の渋い声だけが響く教室内。果たして、何人の生徒がその話に真剣に耳を傾けているのだろうか。
当然のように俺は担任の長ったらしい話など聞いていない。高校生になってまで体調管理だの何だの言われて、とっくに耳に胼胝ができてるっての。
俺の心の中は──
(楽しみだなぁ。海、プール、山、全部行きたい!)
夏休み色、一色だ!
○ ○ ○
早速始まった夏休み。その予定について、香山と例年通り電話で会議。
「やっぱり、最初の方に思いで作っておきたいよな」
『そうだな。後半になるとみんな忙しいだろうし』
「とりあえず、愛花と三人で出掛けたいよな。今まで通りにさ」
もう羽衣さんからの迷惑な行為は無いということを香山を媒介にして伝えたため、彼女との関係はすっかり元通りとなった。遭遇率が低く直接話すことは中々叶わないがな。
『あー、愛花か。実はさ、お前がそう言うと思って予め予定とかアイツに訊いてみたんだけど、今年はバイトで忙しいから出掛けられないみたいだぞ』
「え、マジか……。まぁ高校生になった訳だし、愛花も忙しいよな。仕方ない、仕方ない……」
折角愛花と会うことが現実になると思っていたのに残念だ。
(去年までは毎日のように話してたのに、ここまで遠い存在になってしまうなんてな)
『そんなに気を落とすなよ。お前の女友達はアイツだけじゃないだろ?』
「そ、そうだけど……」
『無いものに縋っていても仕方ない。それに、新しい友人と親睦を深めることも大切だ』
「そう、だな。愛ちゃんとか、日溜君とか、高校生になってから知り合った人達だって大切な友達だし、一緒に過ごしていて楽しくない筈ないもんな」
『うん、その通りだ』
携帯電話越しに聴こえてくるその声がより暖かさを帯びたものになる。
「じゃあ──」
高校生になって初めての長期休暇。より有意義に、より楽しく過ごすため、会議は夜空に星が煌めくまで続いた。
そんな長時間の会議が行われた日の、二日後。
人混みに揉まれ電車に揺られ、俺達は辿り着いた。
「プール楽しみですね、晃狩さん♪」
「そうだね、愛ちゃん」
「人多いのね~。皆が自分のプールを持っていれば、こんなに混まないのに」
「メイ様、貴女方と違って庶民はそのような経済的余裕はありませんよ」
本日プールで遊ぶメンバーは、全部で六人。俺と香山、愛ちゃんと小熊さん、加納院さんと日溜君だ。男女比も同じだし、楽しくなりそうだ。
異次元的な金持ちの娘が二人も居るというのにわざわざその辺のプールまで足を運んできたのは、愛ちゃんのリクエスト。人が水の中でギュウギュウになっている姿に興味があると言っていたが、お金持ちからしたらそんなものが面白いのだろうか?
「ホント、多田のモテ具合は凄いなぁ。どうしてあんなに女の子から好かれるんだろ」
「僕は長年アイツと過ごしてるが、それでもあの唐突なモテ期の理由は分からないな。世の中不思議なことが多すぎる」
みんな思い思いの会話をしながら、更衣室へと歩を進める。
友人二人に「モテモテだな! よっ、色男!」などと揶揄されながら水着に着替えて、荷物片手に女性陣を待つ。
「お待たせしました~」
愛ちゃんのウキウキとした声が耳に届いて、その方向を見る。
「……」
同じく女子達に視線を向けていた日溜君の残念そうな吐息が俺の耳を撫でた。
「どうされましたか日溜様。魂が抜けたような顔をしていますが」
「……ハッ! いや、なんでもない。なんでもないよ、小熊さん」
焦燥感の滲み出た日溜君の言葉に首を傾げる小熊さんだが、わざわざ追及することはなかった。
「んじゃ、早くプール行くわよ。暑すぎて干からびる確率があがっちゃうわ」
「うん、そうだね、加納院さん」
そんなこんなで、ようやく入水。
「あ~、水ん中気持ち良い~」
「やっぱり夏は水の中に入らないとやってられないねぇ」
「本当だな、多田ぁ」
浮き輪でぷかぷかしつつ、水に揺られてOの形のプールを延々と旅する。これそこが夏の醍醐味だ。
女子三人は波打つプールにご執心で、香山はかき氷をガツガツ貪っているため、俺等二人はただ平和に流されていた。
しかし。
「ん? あれって……」
「あぁ? どうしたんだ、多田ぁ」
俺は見つけてしまう。
「い、いや。なんでもない」
「そうか、よかったぁ」
──俺の人生史上最大の悲劇を。
担任の渋い声だけが響く教室内。果たして、何人の生徒がその話に真剣に耳を傾けているのだろうか。
当然のように俺は担任の長ったらしい話など聞いていない。高校生になってまで体調管理だの何だの言われて、とっくに耳に胼胝ができてるっての。
俺の心の中は──
(楽しみだなぁ。海、プール、山、全部行きたい!)
夏休み色、一色だ!
○ ○ ○
早速始まった夏休み。その予定について、香山と例年通り電話で会議。
「やっぱり、最初の方に思いで作っておきたいよな」
『そうだな。後半になるとみんな忙しいだろうし』
「とりあえず、愛花と三人で出掛けたいよな。今まで通りにさ」
もう羽衣さんからの迷惑な行為は無いということを香山を媒介にして伝えたため、彼女との関係はすっかり元通りとなった。遭遇率が低く直接話すことは中々叶わないがな。
『あー、愛花か。実はさ、お前がそう言うと思って予め予定とかアイツに訊いてみたんだけど、今年はバイトで忙しいから出掛けられないみたいだぞ』
「え、マジか……。まぁ高校生になった訳だし、愛花も忙しいよな。仕方ない、仕方ない……」
折角愛花と会うことが現実になると思っていたのに残念だ。
(去年までは毎日のように話してたのに、ここまで遠い存在になってしまうなんてな)
『そんなに気を落とすなよ。お前の女友達はアイツだけじゃないだろ?』
「そ、そうだけど……」
『無いものに縋っていても仕方ない。それに、新しい友人と親睦を深めることも大切だ』
「そう、だな。愛ちゃんとか、日溜君とか、高校生になってから知り合った人達だって大切な友達だし、一緒に過ごしていて楽しくない筈ないもんな」
『うん、その通りだ』
携帯電話越しに聴こえてくるその声がより暖かさを帯びたものになる。
「じゃあ──」
高校生になって初めての長期休暇。より有意義に、より楽しく過ごすため、会議は夜空に星が煌めくまで続いた。
そんな長時間の会議が行われた日の、二日後。
人混みに揉まれ電車に揺られ、俺達は辿り着いた。
「プール楽しみですね、晃狩さん♪」
「そうだね、愛ちゃん」
「人多いのね~。皆が自分のプールを持っていれば、こんなに混まないのに」
「メイ様、貴女方と違って庶民はそのような経済的余裕はありませんよ」
本日プールで遊ぶメンバーは、全部で六人。俺と香山、愛ちゃんと小熊さん、加納院さんと日溜君だ。男女比も同じだし、楽しくなりそうだ。
異次元的な金持ちの娘が二人も居るというのにわざわざその辺のプールまで足を運んできたのは、愛ちゃんのリクエスト。人が水の中でギュウギュウになっている姿に興味があると言っていたが、お金持ちからしたらそんなものが面白いのだろうか?
「ホント、多田のモテ具合は凄いなぁ。どうしてあんなに女の子から好かれるんだろ」
「僕は長年アイツと過ごしてるが、それでもあの唐突なモテ期の理由は分からないな。世の中不思議なことが多すぎる」
みんな思い思いの会話をしながら、更衣室へと歩を進める。
友人二人に「モテモテだな! よっ、色男!」などと揶揄されながら水着に着替えて、荷物片手に女性陣を待つ。
「お待たせしました~」
愛ちゃんのウキウキとした声が耳に届いて、その方向を見る。
「……」
同じく女子達に視線を向けていた日溜君の残念そうな吐息が俺の耳を撫でた。
「どうされましたか日溜様。魂が抜けたような顔をしていますが」
「……ハッ! いや、なんでもない。なんでもないよ、小熊さん」
焦燥感の滲み出た日溜君の言葉に首を傾げる小熊さんだが、わざわざ追及することはなかった。
「んじゃ、早くプール行くわよ。暑すぎて干からびる確率があがっちゃうわ」
「うん、そうだね、加納院さん」
そんなこんなで、ようやく入水。
「あ~、水ん中気持ち良い~」
「やっぱり夏は水の中に入らないとやってられないねぇ」
「本当だな、多田ぁ」
浮き輪でぷかぷかしつつ、水に揺られてOの形のプールを延々と旅する。これそこが夏の醍醐味だ。
女子三人は波打つプールにご執心で、香山はかき氷をガツガツ貪っているため、俺等二人はただ平和に流されていた。
しかし。
「ん? あれって……」
「あぁ? どうしたんだ、多田ぁ」
俺は見つけてしまう。
「い、いや。なんでもない」
「そうか、よかったぁ」
──俺の人生史上最大の悲劇を。
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